不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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十話、投稿です


十話, 選択

「不知火先生が俺達に用って...一体何なんだろうな」

「重要な話みたいだけれど」

「まぁ行ってみればいいんじゃない?」

「そうだね~」

 

 あの戦いから二週間ほどの時間が流れ、すっかり元気になった俺達は不知火先生から呼び出しを受け神樹館の用務員室まで向かっていた。俺達の通ってる教室から用務員室は少し歩くことになるが、四人で一緒に歩いていけばそこまで長いって感じはしなかった。用務員室の前に到着した俺たちは扉をノックすると中から声が聞こえてきた

 

「開いてるぞ」

「「「「失礼します」」」」

「とりあえずソファにでも座って待っててくれ」

 

 俺達が用務員室の中に入って一番最初に目に着いたのは、机の上に置かれた大量の書類だった、不知火先生はその書類を纏め終える座っている俺達の前にホッチキスで止められた4枚のプリントを差し出してくる

 

「これは?」

「今回の話で必要になってくるプリント、目を通すのは後で良いから俺の話しを聞いて欲しい」

 

 そう言うと不知火先生は、いつも以上に真剣な目線を俺たちに向けてくる

 

「いいか、俺がこれから話すことはお前達にとって重要な事だ...だからよく考えて答えを出して欲しい」

「...わかりました」

 

 俺達四人は不知火先生の言葉に頷くと、先生は話始める...その内容は俺達にとって予想もしていなかった事、勇者システムのアップデートで新しく実装される機能についてだった。最初に先生が話したのは精霊バリアと言うものだった。神樹様の力を借りて勇者を保護するバリアを張る。これは俺たちにとっても安全に戦えるのだから大歓迎だったが問題はもう一つの方。”満開”...協力な力と引き換えに勇者の身体を神樹様に捧げるというものだった

 

「それは...俺達が生贄ってことですか?」

「言い方を変えると、そうなる...大赦の上層部は神樹様への供物になるのだから光栄な事って考えてるみたいだけどな」

「...今日はその話を私達にするために呼んだんですか?」

「厳密に言うと、少し違う」

 

 そう言うと要さんはプリントを置いて、俺達の方を真っすぐ見る

 

「お前たちに決めて欲しい...満開システムを導入するか、しないのかを」

「...どういう、意味ですか?」

「言葉通りだ...システムを使うお前達の意思を聞きたいんだ」

「私たちが嫌だって言ったら、どうするの~?」

「満開に関する資料はすべて廃棄する」

 

 俺達の意思...そんなことを急に言われても、答えを出す事なんて出来ない

 

「今すぐとは言わない...一週間後にもう一度お前らの意思を聞かせて欲しい」

 

 そう言うと不知火先生は一人で用務員室を出て行った

 

 

 

 

 不知火先生の話を聞いてから三日後、俺達四人はいつものように机をくっつけてこの前のことについてを話していた

 

「それで、みんなはどうするのか決まった?」

「...私は、まだ迷っているわ。体を供物になんて...」

「私も...やっぱりまだわかんない」

「うーん、よし!」

 

 少し悩んでいた銀は腕をポンッと叩くと、笑顔で俺達に話しかける

 

「今日みんなで祭りいかない?」

「銀、急にどうしたの?」

「だってここ数日うだうだ悩んでても結論出ないだろ? なら、みんなでパーッと遊んでから答えをださない?」

「...そうだな、そうするか」

「うん、私も賛成~!」

「...仕方ないわね」

「よし! それじゃ今日の夕方に待ち合わせな!」

 

 そう言うと銀は足早に帰ってしまった

 

「俺達も帰ろうか」

「そうね」

「うん、かえろかえろ~」

 

 

 

 学校から帰ってきた俺は、両親に祭りに行くことを話すとあれよあれよと浴衣に着替えさせられてしまった。時間も丁度いいくらいなので両親に挨拶をして家を出ると、須美とばったり会った

 

「徹くんも浴衣なのね」

「あぁ、須美も...やっぱり浴衣か」

「変...かしら?」

「いや、似合ってると思う。須美は美人さんだから」

「もう、徹くんはそうやって...まぁいいわ、行きましょう?」

 

 そういいながら須美が差し出してきた手を握ると二人で待ち合わせ場所まで向かう

 

「おっ、来たな二人とも」

 

 待ち合わせ場所に到着すると、既に銀は到着していたようで俺達に話しかけてくる。銀も須美や俺と同じように浴衣姿だった。オレンジ色の浴衣が銀によく似合ってると思う

 

「おまたせ~、遅れてごめんね~」

「いや、俺達も今着いた所だから」

「よし、全員揃った事だし、早速行こう! 今日は思いっきり楽しむぞー!」

「お~!」

 

 銀と園子はノリノリで歩きだすと、その後に続く形で俺と須美の二人も歩き始める

 

「それにしても、今日はみんな気合い十分だね~」

「せっかくのお祭りだからね、全力で楽しまないと」

「...俺は私服でもよかったけど、母さんが無理やり」

「わ、私も親がこれを着て行けって」

「うんうん、ミノさんもやえくんもわっしーも良く似合ってるよ~、もうちょっと寄ってみようか~」

 

 そういいながら園子は俺達の方にスマホを向けてくる、奴め俺達の事を写真に収めようとしているな

 

「こらこら、写真撮影は禁止よ」

「堅苦しい事言わなくてもいいじゃん、せっかくだしみんなで撮ろう」

 

 銀はそう言うと俺と須美の事を抱き寄せて園子に向かってピースをすると、園子の方からパシャリと言う音が聞こえてきた。

 

「ありがと~、ミノさん」

「そうじゃなくて、園子もこっちに来るんだよっと」

「わわっ」

 

 銀にお礼を言う園子の事もこっちに抱き寄せると、いつの間にか取り出してスマホを斜め上に掲げて俺達四人の事を写真に撮った

 

「これでよしっと、後でみんなのスマホにも写真送っとくよ」

「それじゃあ、私はその写真待ち受けにしちゃおう~」

「よし、それじゃ改めて出発だー!」

 

 屋台の出ている場所までやってくると、四人で歩きながら屋台を見て回る

 

「チョコバナナとかりんご飴とか、もう定番過ぎて珍しくないよね~」

「その割には満喫しているみたいだけど」

「でも、お祭りの屋台とかで食べるのっていつもより美味しく感じるよな、なんでだろ」

「...銀は流石に食べすぎじゃないか?」

 

 そう言ってみた銀の手の中には既に、屋台で買った数々の食べ物を持ちながら歩いていた

 

「いやぁ、自分で食べる用もあるけど弟たちへのお土産とかもあるんだよ」

「そうなのか」

「むっ!? 何やらイケてる香り...!?」

「ほんとか園子、何処だ!」

「こっち!」

「ちょっと、銀、そのっち!」

「俺達もいこう」

 

 走り去っていった二人を追っていくと串焼きを注文して、食べようとしている二人の姿が目に入った、近づいた所で目を輝かせた園子が懐から紙切れを取り出して串焼き屋の店主に見せてすぐ、園子の事を引き摺った銀が俺たちの方に戻ってくる

 

「何があったの...?」

「串焼きの余りのおいしさに感動した園子が串焼き屋を丸ごと買おうとした...」

「相変わらずと言うか...何をするか分からないなこの子はほんとに」

「そうね...」

 

 ちょっとしたハプニングがあったものの、おおむね楽しんでいた俺達は射的屋台の前に居た、鎮座する景品の数々と対面する園子の前には山積みにされたコルク...そのうちの一発をファンシーなニワトリのぬいぐるみに当てるが倒れる気配は一切ない

 

「ぬぅ~、ちょこざいな...でも、まだまだストックは沢山あるんだよ...!」

「おこづかい、見事に全部使い切ったわね」

「流石のアタシもこの使い方はビックリしたかな...」

「ある意味見習いたい行動力...だけどな」

 

 それから園子は山積みにされたコルクの弾を的確に当てるが一向に倒れる気配はない

 

「あうぅぅ、なんてこったい」

 

 あっという間にコルクの弾は残り一発、その様子を後ろで見ていた俺達だったが須美が一歩前に出て園子に近寄っていく

 

「そのっち、あれが欲しいのね」

「うん、一等の鳥さん」

「そのっち、落ち着いて...肩の力を抜いて」

 

 園子の横で一緒に銃を構えた須美は、園子に何をすれば良いのかを教えるように話を続ける

 

「銃の癖は見てたわ。調整は私に任せて」

 

 そう言うと須美は園子のサポートをするように一緒に銃を構える

 

「呼吸...呼吸...照準に集中して...今!」

 

 その声と共に放たれたコルクの弾は鳥の眉間に直撃する

 

「あとは気合い! 徹くんと銀も一緒に!」

「えっ、はい!」

「はっ、はい!」

 

 まさかこっちにも飛び火するとは思わなかった為二人そろってビックリしたが、四人で気合いの念を鳥のぬいぐるみに向けて放つとグラグラ揺れたぬいぐるみはそのまま倒れ、落っこちた

 

「「やったー!」」

「凄いな...気合い」

「確かに凄いな...気合い」

 

「マジかよ...こんなのコルク弾で倒せるわけないのに」

 

「それはどういう意味かしら...」

「あっ!? いや...あはは」

 

 ボソッと呟いただけのはずなのに、それを須美は聞き逃さなかったらしい。須美に睨まれたおっちゃんは苦笑いを浮かべながら園子にぬいぐるみを差し出してくる

 

「持っていきな、お嬢ちゃん」

「やったー! やったねわっしー!」

「引き金を引いたのはそのっちよ」

 

 園子は手に入れたぬいぐるみをおっちゃんに差し出した

 

「そのキーホルダー四つとこれ、交換して!」

 

 

 

 

 

 キーホルダー四つとぬいぐるみを交換してもらった園子から一人一個キーホルダーを受け取った俺達四人は須美の案内で花火の見える場所までやってきた

 

「ここからなら一番よく花火を見えるわ、穴場なの」

「下調べバッチリだね」

「えぇ、過去のブログから特定したの」

「あはは、須美ってそういうのほんと得意だよね」

「そういう部分は昔から変わらずだな」

 

 そんなことを話していると、空に大輪の花が咲いた

 

「...ありがとう」

 

 声が聞こえた俺達が須美の方を向くと、須美はお揃いのキーホルダーを見せてきた

 

「そういえば言ってなかったっけ。ありがとね」

「...ありがとな」

「私のほうこそ、ありがとね」

 

 園子はそう言うと、花火が彩る空を見ながら言葉を続ける

 

「私、一緒に選ばれたのがみんなで良かった...私ってほら、変な子じゃない? だから、なかなか友達できなくて」

「...そのっちは変なんかじゃない、素敵よ」

「そうだな、アタシと徹は突っ込む事しか出来ないから、園子が居てくれて本当に助かった」

「...須美は融通が利かないからな、柔軟な発想力のある園子がいて本当に良かったと思うよ」

「徹くんの言葉は少し否定したいけど否定できない......でも、私たちだから頑張れたのは事実よ、そのっち」

「...うん!」

 

 俺達四人は手を繋いで立ち上がると、空を見上げる

 

「...そういえば、不知火先生のアレ、答えでた?」

「えぇ...私は決めたわ」

「私もきめたよ」

「俺も...決めた」

 

 多分、俺達の出した結論は一緒だと思う...何があってもこの絆は切れないって信じてるから。この選択を出来るんだ

 

「私...二人と友達になれて良かった...徹君が幼馴染で良かった」

「私も...友達になれて良かった」

「アタシたちはこれから先もずっと友達、何があってもずっと...だよね?」

「うん」

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺達四人は不知火先生と安芸先生に答えを告げる

 

「私たちは、満開を使います」

「...本当に良いんだな?」

「俺達は守りたいものを守るために、この結論を出しました」

「...わかった」

「ごめんなさい...貴方達にこんな事を強いてしまって」

「気にしないで、安芸先生...何があっても、私たちは絶対に帰ってくるから」

 

 これが俺達の出した答え、大切なものを守るために...大切な友達を失わない為に、力を使う

 その結末がどんなものであろうと...真っすぐ前に進むために

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