不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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十一話、投稿になります


十一話, 決戦

「これが、新しい勇者システム」

「なーんかそこまで変わった様子ないよな」

 

 俺達の決断から早くも二週間の時が流れ、アップデートの為に大赦に渡していたスマートフォンが帰ってきた所だ

 

「そりゃそうだ、変わったのは中で外は変化なし」

「そうなんですか?」

「あぁ...それより、本当に分かってるよな」

「分かってます...満開は最終手段。力を合わせて満開を使わなくても済むようにする!」

「その通り、分かってるなら大丈夫だ」

 

 俺と不知火先生が話を終えると今度は銀が手を挙げて質問する

 

「はい質問! アップデート何か変わった所ってあるんですか? 満開とバリア以外で!」

「勇者服と武器も少しだけ新しくなってる筈だ...その中でも特に変わってるのは鷲尾と乃木の勇者システムだな」

「えー! アタシは!?」

「俺も変化なしですか...」

「三ノ輪はともかく護人システムにバリアと満開を搭載出来たのは奇跡に近いんだ、あんま言わないでくれ」

「奇跡って...そうなんですか?」

「あぁ、バリアはともかく満開に関しては無垢な少女が使うこと前提で作られたからな...正直は話、満開を使ったら何が起きるか一番分からないのはお前だ、八重樫」

 

 俺が使ったら何が起こるのか...分からない

 

「それなら、私たちが力を合わせれば問題ナッシングだね~」

「頑張りましょう、皆で」

「アタシ達なら大丈夫! きっと次の戦いもみんなで頑張れる!」

 

「そうだな...みんなでがんば――」

 

 そう言った直後、世界が止まる

 

「言った直後からおいでなすったか」

「...引率役みたいになるが、改めて言うぞ...絶対に死ぬな、そして満開システムは可能な限り使うなよ」

「分かってます」

 

 

 

 

 樹海化の光が晴れると、俺達の目に映ったのは三体のバーテックス

 

「今度は四体か、ホントに総力戦って感じ」

「気を引き締めていきましょう...みんなで帰る為に」

「うん、約束だね」

「あぁ、約束だな」

 

 四人で一緒に帰るという約束、それを果たすために俺たちは戦う。そう決意した俺たちは勇者システムを起動する

 

血闘(けっとう)、開始」

 

 システムを使って変身する俺たちの横で、不知火先生はそう呟くと先生の周りに血が現れて鎧を形作っていく

 

「...それが先生の?」

「あぁ...お前達のとは、まったくの別物だがな」

 

「これが新しい勇者の力...」

「この子たちかわいい~」

「全然変わってないと思ったけど、結構変わってんじゃん」

 

 俺と先生が話している間に須美たち三人は新しい勇者システムを感じているらしい、そういう俺もアップデートされた護人システムを肌で感じていた。確かに今までよりも体に力が満ちるのを感じる

 

「それじゃあ、いつも通りアタシたちが――」

「待てッ!」

「先生、どうしたんですか?」

「奴らの周りを見ろ」

 

 そう言われた俺達は、バーテックスの周りを観察すると、いつもの大きさとは別に小さいのがうじゃうじゃと湧いて出てきていた

 

「うわっ、なにあれ...」

「星屑...ヒーローもので言う戦闘員みたいなもんだが、舐めてかかると痛い目見るから気を付けろ」

「妙に実感こもってますね、先生」

「経験談だッ!」

 

 そう言うと不知火先生はいつの間にか手に持っていたボウガンでバーテックスを狙撃するが、少し掠った程度で大ダメージを与えた様子はない

 

「やっぱ威力不足か」

「それなら、私が...ッ!」

 

 今度は須美が手に持った銃で狙撃をすると今までなら怯む事のなかったバーテックスが一撃で沈める

 

「すごい...ッ!」

「力を感じてる場合じゃねぇぞッ!」

 

 そう言うと不知火先生は俺達を抱えてその場を離れると、大規模な爆発が起こる

 

「何なんですか、あれッ!?」

「すっごい爆発~!」

「あの化け物どもの能力の一つだ、お前らも知ってるだろうがあいつら初見殺しが多いから気を付けろよ!」

 

 少し離れた場所で俺達を降ろした不知火先生は武器をボウガンから槍に持ち替えていた

 

「そのっち、どうするの」

「う~ん、一人だと危ないから二人一組で戦った方が良いと思う」

「そうだな、じゃあいつも通りアタシと園子、須美と徹で良いか?」

「ううん、今回はミノさんとわっしー、私とやえくんの方が良いと思う」

「そっか、わかった」

「それじゃあ...行こう」

 

 俺達は二手に分かれてバーテックスと向かい合う

 

「園子、どうして今回はこの組み合わせなんだ?」

「わっしーの武器が弓矢から銃になったから今までよりずっとミノさんの事をサポートできるようになったと思うんだ。だからわっしーがミノさんを守って...私はやえくんに背中を任せることにしたんだ~」

「そっか、分かった...行くぞ!」

「うん!」

 

 俺と園子はこちらに迫ってくる星屑に攻撃を仕掛ける、本当に今までとは比較にならない程の力が出ているのを感じる、この調子ならとは思ったが俺の手の甲にある花の印が少しずつ色付いていくのも視界に入った

 

「これが満開ゲージ」

「やえくん、使おうとか思ってないよね?」

「思ってない、だから心配しなくても大丈夫だ」

 

 そうして戦い続けていると、攻撃を抜けた星屑の一体が俺に向かってぶつかってくるが、直前で星屑は障壁に阻まれ動きを止めていた

 

「やえくん大丈夫!?」

「あぁ、さっきのが精霊バリア」

「この子達って凄いんだね」

「あぁ...だがキリがないな、ホントに」

 

 今は優勢だが、人数はこちらの方が圧倒的に少ない...このままじゃあ。そう思った矢先須美たちの居る方から眩い光が俺たちの方まで見えてきた。そして俺たちの目の前で赤い大輪の華が...咲いた

 

「あれは...まさか」

「満開...」

 

「これが満開か! この力なら...いけるッ!」

 

 こっちまで銀の声が聞こえてくる、満開をした銀はそのまま周りにいる敵を一振りで殲滅していった

 

「満開の力...あれが」

「出し惜しみをしてる場合じゃないか...」

「やえくん、待って!」

「いや、この場を切り抜ける為なら待たない! ...いくぞ、満開!」

 

 俺がその言葉を言うのと同時に、体に強大な力が入ってくるのを感じる、背に大輪の華を咲かせた俺の戦闘服は所々に鎧武者を思わせる甲冑が現れ。手に持ったチャクラムも通常の物より一回り巨大になっていた

 

「俺達の世界で好き勝手するなぁ!」

 

 眼前の敵に向けてチャクラムを振るうと、チャクラムの巻き起こした風は巨大な竜巻となり星屑を巻き込み道を切り開いた

 

「行こう、園子!」

「...わかった!」

 

 園子の手を掴んだ俺は壁の近くで鎮座していた敵の元に向かっていると満開を使った状態の銀と、銀に抱えられている須美、そして色々な感情を混ぜ合わせた表情の不知火先生が合流する

 

「...監督不行き届きだ、お前達に満開を使わせてしまうとは」

「満開を使ったのは俺たちの意思です。それにこれ一回切りですから」

「...信用できないが、信じる。デカいのが来る! お前らは左右に避けろ!」

「先生は!?」

「あのデカブツの火球は受け止め慣れてる、いいから行け!」

 

 俺達が今までいた場所から離れた瞬間、神樹様を狙った火球があの巨大バーテックスから放たれた

 

「どんときタマえ! 意地でも受け切ってやる!」

 

 不知火先生は武器を巨大な...盾? にすると火球を受け止める、それを見ながら俺達二人は雑魚を倒しながら巨大バーテックスの元に向かっていると、俺と銀の満開が解ける

 満開が解けた瞬間、左腕の力が入らなくなり、手に持っていたチャクラムを落とす

 

「やえくん、どうしたの!?」

「左腕が急に動かなくなった...銀は!?」

「アタシは右耳が急に聞こえなくなった!」

「これが満開の代償...」

「やえくん前!」

「しまッ...!」

 

 園子の声で目の前に星屑の迫っていることに気付いた俺は咄嗟に園子の事を突き飛ばすと目の前に迫っていた星屑の体当たりを喰らい地面に叩きつけられる

 

「わっしー...」

「...えぇ、今度は私たちの番、だよね」

 

「「満開!」」

 

 俺達二人の代わりに満開をした須美と園子は青と紫、二輪の巨大な華を咲かせると巨大バーテックスの元に向かっていった

 

「大丈夫か、徹!」

「あぁ...それより銀、行けるよな」

「あったりまえよ! ゲージもマックス!」

「それじゃあ、いくぞ!」

 

「「満開!」」

 

 再び満開をした俺と銀も先行していた二人と合流する

 

「二人とも、また――!」

「お小言は後々ね! 今は目の前の敵を倒して帰ろう!」

 

 その言葉と共に、俺達はまっすぐ戦い続ける、目の前の敵を倒して帰る為に

 

 

 

 

 

 

 とめどなく現れる目の前の敵を倒すために満開を使い続ける。俺と銀は既に四回、園子は三回、そして須美は二回...不知火先生との約束を破っちゃったことは後で謝ればいい。その為にも――

 

「帰るんだ...絶対にッ!」

 

 その想いが繋がったのか、巨大バーテックスは少しずつ後退を始める

 

「よし、このまま――ッ!」

 

 そのタイミングで俺たちの満開は解けてしまった。四回目満開で俺が失ったのは左耳...左腕、右目、そして内臓のどこかに続いて左耳...軽傷で済んでるものの持っていくなら全部内蔵にしてほしかったなどと考えていると、その場にいた銀が意識を失い倒れこんだ

 

「銀ッ!」

「ミノさんッ!」

「銀ッ! しっかりしろッ!」

 

 俺達がそう言うが銀は目を覚ます様子はない...もしかして

 

「まさか、意識を...そんな事あるのかよ」

「須美は、大丈夫か?」

「私は...もう足が」

 

 この状況になったタイミングで、俺達とは別の所で戦ってた不知火先生が合流してくる

 

「不知火...先生」

「...すまない、お前達との約束...守れなかった」

「それは...」

「それだけじゃない、ひよりや安芸ちゃんとした依頼も達成できなくなった...ほんとに不甲斐ないな」

「それは違います、みんな...自分で選んだんです」

「...そうか」

「はい、先生は銀をお願いします。俺はあの大型を」

「そこは俺たちじゃないかな、やえくん?」

「園子...」

「私も行くわ、満開なら足が動かなくても二人のサポートくらいなら出来るから」

「須美...わかった、行こう」

 

 俺たちは改めて不知火先生の方を向く、よくみると傷はないっぽいけど来てた服はもうボロボロだった

 

「今気づきましたけど、先生も結構無茶してますよね?」

「お前らには及ばないよ...行ってこい」

「はい、行ってきます」

 

「「「満...開!」」」

 

 俺にとっては、五度目の満開...ここまで来たらいくところまでいってやる。その想いで俺達三人は後退を始めた巨大バーテックスを追う。それを阻む形で他の二体がこちらに向かってくるが今は相手をしてる余裕はない! 

 

「邪魔だぁぁぁぁぁぁ!」

 

 片手でチャクラムを振るい目の前の敵を真っ二つにした後、園子が槍で串刺しにする

 

「何処かに、弱点は...」

「もしかして...」

「何か分かったのか?」

「うん、わっしー! 大きいのの真ん中が弱点だと思う!」

「わかったわ!」

 

 園子の言葉にうなづいた須美は、巨大バーテックスの中心に向けて一撃を放った瞬間、それを迎撃するように巨大バーテックスも火球を放ってきた。火球によって須美の一撃は飲み込まれこちらに向かってくる

 

「当てさせない、絶対にッ!」

 

 二人の前に出た俺は風の結界を作りだしてバリアとの二重体勢で火球の侵攻を止める

 

「今のうちに二人は行けッ!」

「でも...ッ!」

「大丈夫だ、俺にはお前達がついてる...それに、銀から教わった根性もあるからッ!!」

 

 正直少しだけきつくなり始めたが、まだ耐えることは出来る。この間に二人であの巨大バーテックスを倒してくれれば...それで終わりだ

 

「...わかった」

「絶対にまた会おうな、約束だ」

「...うん、約束」

「えぇ...だから徹くんも絶対に」

「あぁ」

 

 二人を見送りながら俺は目の前の火球と向き合う、正直このままだと押し返すどころかそろそろ体が限界を訴え始めた

 

「いやっ...根性見せないとなぁッ!!」

 

 その言葉を放った瞬間、パキリと言う音を立ててバリアにヒビが入り始める

 

「せめて...少しでも威力を...」

 

 その後も抑え続けたが、魂よりも先に悲鳴を上げたのは身体...結界とバリアを砕かれた俺は...いつの間にか破壊されていた大橋の上に落下する...体が痛い...少しずつ意識も朦朧としてくる...結局、俺はここまでか

 

「......その...こ...?」

 

 その言葉を最後に俺は、意識を失った






ここに散華した箇条書きしときます

・鷲尾須美 → 両足、記憶(計三回)
・乃木園子 → 原作同様、体のほとんどを散華
・三ノ輪銀 → 右耳、右腕、右足、右目...そして、意識
・八重樫徹 → 左腕、右目、内臓機能の一部、左耳、大切な人たちの記憶

追記
描写の薄かった不知火先生に関しては、単独で星屑と戦っていました。
体質上問題ありませんが普通ならゲームなら十回は死んでます
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