不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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第参話、投稿です


第参話 輝く心

「あ、あれ? ここ...」

「学校の屋上?」

「神樹様が戻してくれたのよ」

 

「師匠、大丈夫ですか?」

「あぁ、もう平気だ...助かった」

 

 樹海から戻ってきた俺達と一緒に師匠も讃州中学の屋上に戻っていた、差し出した俺の手を制した師匠は軽く体を伸ばすと俺達の方を向く

 

「それじゃあ俺はこれから学校側に説明してそのまま帰る、学生はさっさと教室に戻って勉学に励め...じゃあな」

 

 そう言うと俺達が声をかける前に師匠はそそくさと学校の屋上からいなくなってしまった。友奈たちは友奈たちで何か話していたようで話を終えた俺もそっちに合流した後、それぞれ教室に戻った

 

 

 

 

 

 八重樫と別れた後、少し怪訝な表情をされた俺は何とか先生方に対する説明を終え、一人帰路につく

 

「それにしても、今回も予想通りか...調整を急がないとな」

 

 今回の戦いで八重樫が使用していたのは、彼が記憶を失う前...つまり五体満足の時に使っていた護人システムを2年で少しだけ改良したものだ。現在の勇者システムに性能は近づいているもののそれでもまだ十分とは言えない

 

「プロトタイプの調整完了まで...もう少し待って欲しかったけどな」

 

 八重樫に渡すために現在勇者システムのプロトタイプを大赦が調整中だが、この様子だと八重樫に届くのはもう少しだけ先になりそうだなどと考えながら歩いていたら、急に体の力が抜けていく感覚に襲われ、倒れそうになる

 

「死なず怪我せずでもそろそろガタが来たか...上等」

 

 いつの頃からか忘れたが、今みたいに体の力が入らなくなることが起こるようになった...そしてこの現象が起こる時には決まって体の所々が起こる、もっと言うと痛むところは決まって若葉たちと一緒に戦ってた時に傷を負った場所だけ

 

「三百年前の呪いが今更発症とかだったら、笑えるんだけどな」

 

 自分に対して軽く冗談を言うと、重くなった体を動かして、再び仮設事務所まで歩き始める

 

 

 

 

 

 

 あの戦いがあった次の日の放課後、勇者部に集まった俺達は風先輩から改めて説明されることになった

 

「戦い方はアプリに説明テキストがあるから、今は何故戦うのかって話をしていくね...こいつがバーテックス」

 

 そういいながら風先輩は黒板に書かれた奇抜な絵を指さしているが...

 

「流石に難解すぎる...」

「あっ...これ、この前の敵だったんだ」

「奇抜なデザインをよく表した絵だよね」

 

 どうやら俺以外にも同じような意見の人は居たらしい、風先輩はそんなことを気にせずに更に説明を続ける

 

「人類の天敵があっち側から壁を越えて十二体が攻めてくることが神樹様のお告げでわかったわけで、目的は神樹様の破壊、つまり人類の滅亡。以前にも襲ってきたらしいけどその時は追い返すのは精一杯だった見たい...」

 

 なるほど、それじゃ俺たちの前にも先代の勇者かそれに近いものが居たという事になる

 

「それじゃあ、俺達の前にもバーテックスと戦ってた勇者が居たという事ですか?」

「えぇ、詳細は知らされていないから分からないけどね」

「なるほど...」

「それじゃ、説明を続けるわ。攻めてくるバーテックスに対抗するために大赦が作ったのが、神樹様の力を借りて勇者と呼ばれる姿に変身するシステム、人智を超えた力に対抗するにはこっちも人智を超えた力って訳ね」

 

「その絵私達だったんだ...」

「げっ...現代アートって奴だよ!」

「やはり絵は難解だ...」

 

 真面目に説明されているお陰で内容は頭の中に入ってくるが、やはり絵は奇抜...いや、難解で分からない

 

「コホンッ...ちゅ、注意事項として樹海が何かしらの影響でダメージを受けると、その分日常に戻った時に何かの災いとなって現れると言われているわ...」

 

 少し照れた様子の風先輩が言った言葉を聞いた瞬間、今朝の教室で隣町で事故があったとか話題になっていたのを思い出す、それが恐らく災いと言う事なのか...

 

「派手に破壊されて大惨事なんてことにならないように私達勇者部が頑張らないと! 大赦側もサポートに動き始めてるから」

「...その勇者部も、先輩が意図的に集めた面子だったというわけですね...」

 

 ずっと黙っていた東郷がようやく口を開くと、出てきたのはそんな言葉、風先輩もバツが悪そうな表情を見せた後、再び話し始めた

 

「...そうよ、適性が高い人はわかってたから。私は神樹様を奉っている大赦から指令を受けたの、この地域の担当として」

「知らなかった...」

「...黙っててごめんね」

 

 その言葉を聞いた友奈は少し前のめりになると風先輩に質問をする

 

「次は敵がいつ来るんですか?」

「明日かも知れないし、一週間後かも知れない。そう遠くはない筈よ」

「なんで、もっと早く勇者部の本当の意味を教えてくれなかったんですか...友奈ちゃんに徹くん、樹ちゃんも死ぬかも知れなかったんですよ」

「...ごめん、でも勇者の適正が高くてもどのチームが神樹様に選ばれるか敵が来るまでわからなかったんだ、むしろ変身しないで済む確率の方が高くて...」

 

「そっか、各地で同じような勇者候補生が...いるんですね」

「...人類存亡の一大事だからね」

「そんな大事なこと、ずっと黙っていたんですか...」

 

 そう言うと東郷は一人で教室から出て行ってしまった

 

「風先輩、私行ってきます」

「俺も行ってきます...結局、重要事項なら黙ってられても仕方ないですから」

 

 俺と友奈の二人は部室を出て東郷の後を追う

 

 

 

 二人で東郷を探して歩いていると、廊下の隅に見慣れた車椅子を見つけた、俺達二人は顔を見合わせて東郷の元に向かう

 

「はい、東郷さん」

「...友奈ちゃん、徹くんまで」

「お茶どうぞ、私のおごり」

「え...でも、そんな」

「本人が奢るって言ってるんだから、貰うが吉だと思うぞ」

「そうだよ! それにさっきの東郷さん、私達の為に怒ってくれたから...ありがとうね」

 

 東郷にそう言った友奈の姿は、やけに眩しく見えた

 

「あぁ...なんだか友奈ちゃんが眩しい」

 

 どうやら友奈が眩しいと感じていたのは俺だけじゃなかったらしい...やっぱり思うが友奈には人を惹きつける何かがある気がする

 

「あのね、私、昨日ずっとモヤモヤしてたんだ...このまま変身できなかったら。私は勇者部の足手まといになるんじゃないかって...」

 

 なるほど、この前変身できなかったことを気にしていたのか

 

「だから、さっき怒ったのもそのモヤモヤを先輩にぶつけてた所もあって...悪い事、言っちゃった」

「それなら謝ればいい、悪いことをしたら謝る、良い事をされたら感謝する。難しいけど勇気を出せば簡単だ」

「徹くん...そうね、でも」

「「でも?」」

「友奈ちゃんは皆の危機に変身したのに、徹くんも風先輩たちと頑張ってたのに...国の危機なのに...」

「と、東郷さん...?」

 

 これは、なんか雲行きが怪しくなってきたぞ? 

 

「私は、私は...勇者どころか...敵前逃亡」

「東郷さーん!?」

「おーい、しっかりしろー!?」

 

「風先輩の仲間集めだって国や大赦の命令でやっていたことだろうに...あぁ、私はなんてこと...」

「そうやって暗くなっちゃダメー!」

「そうだ! 前を見よう! ポジティブに行こう!」

 

 なんとか励ますが一向に元の東郷に戻る気配がない、さて...どうしよう

 

「どうする、友奈」

「そうだ! 元気の出るもの見せてあげるね! 私と徹くんで! きっとすごく楽しくなるよ! ね、徹くん!」

「へッ!? ...あ、あぁ、見たら絶対笑顔になること間違いなしだ!」

 

 そういって俺と友奈の二人は突発で芸を披露したわけだが...東郷の表情は真顔

 

「私の為にこんなネタまでやらせて、ほんとにごめんね...」

「逆効果ぁ! どうしよう徹くん!」

「いやどうしようって言っても、ほんとどうしよう!」

 

 割とマジでてんぱってる、ホントにどうしよう

 

「二人は、大事な事隠されていて怒ってないの?」

 

「俺は、まぁしょうがないかって感じだな...それに、みんなを守れる力がある。なんというか、それがどうしょうもなく嬉しいんだよ」

「私も、そりゃ驚きはしたけど、でも嬉しいよ! この適正のお陰でみんなに会えたんだから!」

「確かに、適正なかったらまったくの他人だったって考えると、適正にも感謝かもしんない」

 

「この適正の、お陰...」

「うん!」

「あぁ」

 

「私は...中学に入る前に事故で足が全く動かなくなって記憶も少し飛んじゃって...学校生活を送るのが怖かったけど、二人に会ったから不安も消えて...勇者部に誘われてから学校生活がもっと楽しくなったんだ...そう考えると適正に感謝かも」

「これからも楽しいよ、ちょっと大変なミッションが増えるだけで。ね、徹くん」

「そうだな、それに大変なくらいの方がやりがいあるだろ?」

 

 そう言うと俺も友奈と東郷の手の上に自分の右手を重ねる

 

「そっか...そうだね。二人とも本当に前向き」

 

 ようやく元の東郷に戻ったかと思った瞬間...スマホが鳴り始めた

 

「これって...」

「もう、二度目...」

 

 その言葉を最後に、窓の外から広がってきた光は俺達の事を包み込んだ

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