時は流れて日曜日、幼稚園前に集合した勇者部一同だった三好さんの姿が見えない
「三好さん、なにかあったのか?」
「プリント、ちゃんと渡してたわよね」
「確かに渡してたと思いますよ」
「ほんとにどうしちゃったんだろ...私、電話してみます」
友奈が三好さんに電話をしてみるが出る気配はないみたいだ
「電話にも出ない...」
「体調でも崩したのか?」
「...時間も時間だし、ひとまず子供会の手伝いは私達だけでやりましょう」
「そうですね、ここからだと讃州まで少し距離ありますし」
流石にここでキャンセルと言うわけにもいかない以上、自分たちだけ子供会の手伝いをする他ないか。メインイベントに関しては...最悪家に向かって渡すもんだけ渡すか
それからの俺達勇者部は子供会の手伝いを始めるが、中々に子供達は盛り上がっている。この調子だと讃州に戻った時には日が暮れてるだろうな等と考えながら子供会を終え、終わったころにはすっかり日が沈んでしまっていた
「それじゃ、次の目的地に向かいましょうか」
「「はいっ!」」
「三好さんの住所ってわかりますか?」
「そこは問題なし! バッチリ調べてあるわ!」
「それじゃあ、はやく行きましょう」
そこから讃州に戻り、諸々調達した俺達は三好さんの家に向かって歩いていると海沿いのアパートが見えてくる
「あそこね」
「あのアパートですか?」
「えぇ、あのアパートの二階みたい」
風先輩はそう言うと、さっさと二階に上がって扉の前で止まる
「この部屋ですか」
「えぇ...それじゃあ、押すわよ」
チャイムを押すが、出てくる気配はない
「出てきませんね」
「おかしいわね」
そういいながら風先輩がチャイムを連打すると...
「だ...誰よさっきから! もぅ...!」
三好さんが木刀を片手に出てくる、どうやら病気とかではなかったらしい
「あ、あんたたち...どうして...」
「まったく、何度も電話してるのに電源オフにして...心配して見に来たのよ?」
「よかったぁ、寝込んだリしてたんじゃなかったんだね」
「心配...?」
「風邪とか拗らしてたら大変だから、なにはともあれ元気そうでよかったよ」
「じゃ、上がらせてもらうわよ~」
「ちょ...ちょっと」
家主の断りもなく上がっていいのかと思ったが...まぁここは流れるままに身を任せよう。そして部屋に入って真っ先に思ったのは...何と言うか、年不相応な気がする
「これすごい! スポーツ選手みたい」
「勝手に触んないでよ!」
「水しかない」
「勝手に開けないで!」
「ま、いいから座って座って」
「いきなり来て何なのよ!?」
ビックリするくらいのフリーダム振りだなぁ、勇者部はなどと考えていると
「あのね...ハッピーバースデー夏凜ちゃん!」
「「「「「おめでとう!」」」」」
そう、わざわざ三好さんの家にやって来たのは彼女の誕生日を祝う為である
「あんた今日誕生日でしょ、ここに書いてあるじゃない」
「友奈ちゃんが見つけたんだよね」
「あって思っちゃった。だったら誕生日会しないとねって!」
「歓迎会も一緒に出来るねって」
「本当は子供達と一緒に児童館でやろうと思ってたの」
「驚かそうと思って黙ってたんだけど」
「でも当のあんたが来ないんだもの、焦るじゃない」
「迎えに行こうと思ったんだけど、少し距離はあるし子供たちは盛り上がっちゃうしで中々解放されなかったんだよな」
「そ、それでこの時間になっちゃったって訳...ん、どうした? ひょっとして自分の誕生日も忘れてた?」
俺たちの話に一向に入ってこない三好さんを少し不思議に思ったのは風先輩が三好さんに声をかけるが彼女は黙ったまま俯いていた
「...あほ...ばか...ぼけ...おたんこなす」
「何よそれ?」
「えっ? えっ?」
まさかの罵倒である、だけど不思議とそんなに嫌な感じはしない
「誕生日なんてやったことないから、何て言ったらいいのか分からないのよ...!」
成る程...そう言う事ならいやな感じはしないわけだ。俺達だけじゃなく勇者部のみんなもそんな三好さんの事を優しい表情で見ていた
「お誕生日おめでとう、夏凜ちゃん」
友奈がそう言った後すぐ、三好さんも席についていよいよ誕生会が始まった
「ワハハ、飲め飲め~」
「コーラで酔っぱらうんじゃないわよ」
「あっ、夏凜さん折り紙練習したんですか? 凄い上手」
「わーっ、みるなーっ!」
思わぬ形で判明する、三好さんの真実...というか何だかんだ言って三好さんも楽しみにしてたようである
「勇者部の予定と私達の遊びの予定、えーと後は...」
「コラーッ! 勝手に書き込むなーッ!」
「忙しくなるわよ~」
「勝手に忙しくするなッ!」
「文化祭でやる演劇の練習もあるし、忙しいよ~」
友奈の一言を聞いた瞬間、その場から音が消えた
「...演劇?」
「今年演劇やるんだな...知らなかった」
「いつ決まったんですか?」
「あ...あれれ? もしかして。私の中のアイデアを勝手に口走っちゃった...かも」
「バカなの?」
三好さん、一刀両断である
「いいわね、演劇」
そんな中、友奈の案を聞いた風先輩は俺たちの方を向いてきた
「決まり! 今年の文化祭の出し物は演劇で行きましょう!」
少し前に話合った議題がこんな所で決まるとは予想外だが...
「俺も良いと思いますよ、演劇」
「でしょ? ...というわけで、分かったわね夏凜、期待してるわよ?」
「私を巻き込まないでよ!」
「巻き込むも何も、一応部員だから手は借りるつもりだったし」
「よかったね、友奈ちゃん」
「うん!」
俺たちが話をしている横から、友奈と東郷の声が聞こえてくる...そっからは何事もなく誕生会を終えた俺達は軽く片付けを済ませるとそれぞれの帰路につく、俺と友奈、東郷は同じ道である為並んで歩きながら、今日の事を振り返る
「成功して良かったね!」
「そうね、夏凜ちゃんも喜んでいたみたいだし」
「文化祭でやる内容も無事決まった...明日から忙しくなるなぁ」
まぁ、脚本を書くであろう風先輩が完成させるまで具体的な動き始めは出来ないものの、それでもやる事が決まったのは大きいと思う
「おっと、それじゃあ俺の家はこっちだから。また明日」
「うん、またね! 徹くん!」
「また明日」
「あぁ、またな」
それにしても、ここまで平和だと逆にそろそろ何か大きな事件が起きそうで怖くなってくる...けれど、それでも俺に出来るのは目の前の日常を守るだけだから、死ぬ気で頑張ろう