不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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第捌話、投稿です


第捌話 試練に勝つ【前】

 相も変わらない日常を送っている勇者部部室、頭に牛鬼をのせた友奈は活動報告に貼る新聞の場所決めを、東郷は勇者部公式サイトの更新、そして風先輩は文化祭でやる演劇用の脚本作りをしている。俺は読書中、樹ちゃんはタロットカードを見つめ、三好さんは煮干しを齧っている...いつもならこういう場面は基本的に何かしらの依頼があるのだが、今日は随分と暇らしい

 

「あーもうっ、ストーリーが思いつかん!」

「いつもの人形劇でやってる奴じゃダメなんですか?」

「それでもいいけど、少し子供っぽすぎる気がするのよねー」

 

 どうやら早々簡単にはいかないらしい

 

「そういえば、にぼっしーちゃん」

「ちょっと待って、それ私の事?」

「いーじゃない、可愛くて」

「ゆるキャラみたいなあだ名つけるな!」

「語尾はぼっしーだな、何々ぼっしー」

「だからゆるキャラじゃないって言ってるでしょうが!」

 

 相変わらずからかい甲斐のある子だなぁ、この子は...

 

「それより、猫探しのポスター...」

「そんなのもう作ってあるわよ」

 

 そういえば、三好さんにポスター作って来てもらう予定だったな、どんなもんなのか覗いてみると...中々に個性的

 

「...妖怪?」

「...神話の怪物だろ」

「猫よ!」

 

「はぁぁぁぁぁ」

 

「樹? どうしたのため息なんてついて」

 

 確かに、あまり気にしていないが樹ちゃんがここまで落ち込んでるのも珍しい気がする。風先輩が樹ちゃんに何があったのかを聞くとおずおずと話始めた

 

「...あのね、もうすぐ歌のテストでうまく歌えるか占ってたんだけど」

「死神の正位置か...意味は確か、破滅とか終局だったっけか...それにしても、不吉だな」

「気にしすぎは良くないわよ」

「そうだよ! こういうのってもう一度占ったら全く別の結果が!」

 

 友奈のその言葉を信じて改めて三回ほど占ってみるが

 

「...見事に全部、死神の正位置だな」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 この結果は流石に全員絶句せざる得ない

 

 

 

 そして流石にこのままではまずいと思ったのか風先輩は俺達をいつも黒板の前に議題を書き始める、緊急会議である

 

「勇者部は困ってる人を助ける! それは部員だって同じことよ」

「歌が上手くなる方法かぁ...」

「まずは歌声でアルファ波を出せるようになれば勝ったも同然ね...良い音楽や歌というものはたいていアルファ波で説明がつくの」

「アルファ波...そうなんですか」

「んなワケないでしょ!」

 

 所説...あるようなないような、とりあえずアルファ波にはリラックス効果...というか心身にいい影響を及ぼす効果があるとも言われているらしいが...流石に突拍子がヤバい

 

「樹は一人で歌うとうまいんだけどね、人前で歌うのは緊張するってだけじゃないかな?」

「それならどうにかしてリラックスできる状況を作るか、人前で歌うのに慣れるしかないですかね」

「それなら、あそこに行こう!」

 

 何か思いついたらしい友奈の言葉を聞いてやって来たのはカラオケ、確かに人前で歌うのに慣れるという観点から見るとカラオケは良い気がする

 

 

 

 

 バッサリと時間を飛ばして結果だけ申し上げると...ダメでした

 優先輩が高得点出したり、友奈と三好さんがデュエットしたり、東郷がいつもの歌ったりしたけど、やっぱり樹ちゃんは歌うときになるとカッチカチになっていて...正直目も当てられなかった、歌声の中に光るものがある分、少し勿体ない

 因みに、先人の知恵を借りるという事で師匠に対処方が無いか電話をしたりもしたのだが...

 

「緊張しないで歌を歌う方法ぅ? んなの、場数こなすしかねぇに決まってんだろ」

 

 というありがたい一言を頂いた後に切られた、流石の師匠も歌は専門外だったらしい。流石に時間も時間なので解散という事になった翌日の勇者部、机の上に置かれているのは大量のサプリメントと調味料

 

「喉に食べ物とサプリよ」

 

 三好さん、自信満々である

 

「マグネシウムやリンゴ酢は肺にいいから声が出やすくなる。ビタミンは血行を良くして喉を健康に保つ、コエンザイムは喉の筋肉の活動を助けオリーブオイルと蜂蜜も喉にいい」

 

 詳しい、まるでサプリ博士だなと言わんばかりに知識を披露している三好さんである

 

「夏凜ちゃんは健康食品女王だね!」

「健康のためなら死んでもいいって言いそうなタイプね」

「さぁ樹、これを全種類飲んでみて、ぐいっと」

 

 まさかの全種類いっき、それは喉の云々よりも体調が壊される危険性があるだろう

 

「ぜ...全種類って多すぎじゃ? 流石の夏凜でもムリでしょ!?」

「さすがの夏凜だって...ねぇ」

 

 風先輩の一言がどうやら三好さんのスイッチを入れてしまったらしい

 

「いいわよ、お手本見せてあげるわ!」

 

 ものすごい勢いでサプリと調味料を流し込んでいく三好さん、全部平らげるとその顔がみるみる青くなると、脱兎のごとく部室を出て行く

 

「サプリメントは用法容量を守って使いましょう」

 

 それを実感することの出来る実演だった...

 

 

「サプリは一つか二つで十分よ...」

 

 三好さんが戻ってきた後、サプリを飲んだ樹ちゃんが歌を歌うが固さは抜けきっている様子はない

 

「喉よりもリラックスの問題じゃない?」

「体と言うよりもメンタル的な問題っぽいですよねぇ」

「じゃあ次は緊張を和らげるサプリを持ってくるわ」

「やっぱりサプリなんですか...」

 

 なんかこう、もっと別の物はないんだろうか...

 

 

 

 そして来るべき樹ちゃん、歌のテスト当日

 

「樹ちゃん、歌のテスト大丈夫かな」

「大丈夫よ、あの子は私の自慢の妹なんだから」

「応援メッセージは風先輩が教科書に挟んでくれたみたいだし、後は信じるしかないでしょ」

 

 そんなことを話していると部室の扉が開いて樹ちゃんが入ってきた

 

「樹ちゃん...ど、どうだった?」

 

「...バッチリでした!」

 

 樹ちゃんのその言葉を聞くと、俺達全員の表情が崩れる...本当に良かった

 

「やったやった!」

「きっと皆をかぼちゃだと思ったのが良かったのね」

 

「夏凜さんもありがとうございます!」

「私はべつに...その」

 

 樹ちゃんがちらっと風先輩の方を見た後、俺達全員は天高く拳を突き上げる

 

「「「「「「やったー!」」」」」」

 

 樹ちゃんが無事乗り切った日の学校も無事終わり、何気ない一日で終わると思っていた

 

 太陽が沈み始め、赤みがかった空が広がる中...世界は静止した

 

「このタイミングで来るのか...よしっ、気合い入れるか」

 

 その言葉を最後に俺は世界に広がっていく眩い光に包まれた




因みに徹くんは樹ちゃんへの応援メッセージに書いた言葉か以下の通りです

『心穏やかに頑張れ』
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