不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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第玖話、投稿です


第玖話 試練に打ち勝つ【後】

「残り七体、全部来てるんじゃないの、これ」

 

 俺達のスマホの画面に表示漁れているバーテックスの数は三好さんの言う通り七体

 

「総攻撃、最悪の襲撃パターンね...やりがいありすぎてサプリも増しましだわ...樹もキメとく?」

「その表現はちょっと...」

 

 それにしても動きがないな

 

「なんですぐ攻めてこないんだろ」

「さぁ...どのみち神樹様の加護が届かない壁の外に出てはいけない教えがある以上、私達からは攻め込めないけどね」

 

 問題はそこだ、こっちから攻め込めるのが一番いいが壁の外に出ることを禁じられている以上、敵が動いてこっちに来ない限り攻められないのが少し辛いところ、そんなことを考えていると先行して偵察に行ってた風先輩がこっちまで戻ってきた

 

「敵さん、壁ギリギリの位置から動きそうよ...皆も準備を」

 

 風先輩の言葉を聞いた俺達全員が勇者服へと変身して、横一列に並びたつ

 

「敵ながら圧巻ですね」

「こいつらを殲滅すればもう戦いは終わったようなもんでしょ」

「皆、ここはアレいっときましょう」

「あぁ、アレですか」

「ア...アレ? どれ!? またなんか変なことするのアンタたち!?」

「別に変な事じゃない、円陣だよ」

「円陣? それ必要!?」

「気合いをは必要でしょ?」

 

 そういいながら俺達は円陣を組んだ後に少しためらった後に三好さんも入ってくる

 

「あんたたち、勝ったら好きなもの奢ってあげるから。絶対死ぬんじゃないわよ!」

 

「美味しいものいーっぱい食べよっと! 肉ぶっかけうどんとか!」

「言われなくても、殲滅してやるわ」

「わ...私も、叶えたい夢があるから」

「皆を...国を! 護りましょう!」

「あぁ、絶対に護ろう...俺達の飼えるべき場所を!」

 

「よーっし! 勇者部ファイト!」

 

「「「「「「おーッ!!」」」」」」

 

 円陣を組んで気を引き締めた後、俺達は改めて敵に向き直ると、先陣を切る形で三好さんが敵に向かう

 

「突っ込むわ!」

「私達も!」

 

 俺たちがバーテックスと接敵すると、三好さんが一番先行していたバーテックスに一撃を叩き込み、続けざまに東郷の放った一撃が当たったことで、目の前の奴は地面に落ちる

 

「まずは一匹目! 封印するわよ!」

「すごいよ夏凜ちゃん!」

「他の敵が来る前に倒そう...ってこいつ、御魂が凄い速さで!?」

 

 ものすごい勢いで回転する御魂に三好さんは刀を投げつけるが突き刺さることなく弾かれた

 

「ちっ」

「それなら俺が動きを...止める!」

 

 蛇腹剣を使って御魂をぐるぐる巻きにすると、動きが少しだけ鈍る

 

「友奈!」

「任せて!」

 

 俺の意図を組んだ友奈が御魂にパンチを叩き込むと、一部が欠けて動きが止まる。その瞬間を見逃さなかった東郷が御魂を撃ちぬき、消滅した

 

「ヒュー、ナイス連携!」

「ありがとう! 東郷さーん!」

 

 友奈が手を振ってる方向にグッドサインを送った直後、地面が震えるほど大きな音が樹海中に鳴り響く

 

「な...何よこの音、気持ち悪...っ」

「頭に...響くッ」

「こ...これくらい、勇者なら...うぅっ」

 

「音は...皆を幸せにするもの、人を苦しめる音は...こんな音はぁー!」

「ナイス樹! 次は私が...お前らまとめてぇー!」

 

 根性を見せた樹ちゃんが敵のベルのような器官を拘束した隙に風先輩が俺達の近くにやって来ていた三体に一撃を叩き込むと音が止み、バーテックスに大ダメージを与えることに成功する

 

「よしっ、三体纏めて封印するわよ!」

「先輩、待ってください!」

「...バーテックスの様子がおかしい、戻っていく...後退? いや、集まってるの?」

 

 目の前で起こっている事態が何なのか観察していると、程なくして何故バーテックスが一か所に集まっているのかを理解する

 

「これは...」

「合体!? そんなの聞いた事ないわよ!」

「ふぇぇぇぇ」

「でも、まとめて倒せるよ!」

「友奈の言う通り、まとめて封印開始よ!」

「待ってください...全員避けてッ!」

 

 敵の様子がおかしいと思い観察していると、火球が俺達の方に向かって飛んできた。まずは一撃目を避けた俺達は各自バラバラに動き火球を避けようとするが、追尾弾のような軌道で俺達の方に向かってくる

 

「避けられ...ッ!」

「重力に身体を預けてそのまま下に降りろ!」

 

 聞こえてきた声の通りにすると、火球と俺の間に何かが割って入り、火球は目の前で爆発した

 

「うわッ!」

「大丈夫か?」

 

「...師匠!」

「悪い、少し入るのに手間取った」

「それは良いんですけど、皆が!」

「心配ならお前は他の奴の所に行ってやれ...アイツの足止めは俺がしとく」

「大丈夫...なんですか?」

「あぁ、俺はお前の師匠だからな...わかったらさっさと行け」

「ッ! ...お願いします!」

 

 俺は師匠に背を向けると、ばらけてしまっているがみんなと合流するために走りだした

 

 

 

 

 

 

「さてと、八重樫にあぁ言ったものの...俺一人で何処まで持つか」

 

 正直目の前にいるバカみたいな大きさのバーテックス、地味に因縁深いレオ・バーテックスを見上げながら俺はそう言ってみるが...正直言ったところでどうしようもない

 

「なら、やる事は一つだよな」

 

 あの子達の覚悟が決まる前に、目の前のデカブツを叩き潰す。そう決めると俺は目の前のバーテックスに向かう、手に持った武器を盾から鎌に変化させる

 敵もこっちに気が付いたのに気づきデカブツは火球を放ってくるが、鎌を振るって俺は火球を切り裂く

 

「切っても切ってもキリがないな...それならぶん投げてみるかッ!」

 

 鎌を思いっきりぶん投げると火球の間をすり抜けてデカブツの身体に突き刺さる

 

「よし、後は近づくだ...ッ!」

 

 近づこうとした瞬間、足が動かなくなった。自分の足に目を向けると右足の太ももの辺りがひび割れている、それだけじゃない、右足だけでなく左足や両腕も少しずつひび割れ初めている

 

「時間が...クソがッ!」

 

 俺の身体がどうなろうと知ったこっちゃねぇがこれ以上あの子達に負担をかけるわけにはいかない。このまま戦いを続けてたらあの子達は満開を使うことになる

 

「俺のエゴでも...そんなの許容できねぇよなぁ!」

 

 ひび割れ始めた体を動かし、バーテックスに突っ込む走っているうちに右腕の感覚が消える。ひびの入った腕は砕けていないものの完全に動かなくなっている、西暦の頃は腕がなくなったり腹に風穴が空くなんて日常茶飯事だった。このくらいなんてことない

 

「右が動かなくても、左が...動く!」

 

 バーテックスに突き刺さった鎌の柄を持って思い切り体重をかけ表面に切り裂いていく。体をブランコのように動かして鎌の柄の上に乗ると、左手に籠手を出現させる

 

「借りるぞ、友奈...はぁッ!!」

 

 左腕に出現させた籠手で思いっきりぶん殴って表面にクレーターを作った直後、足場にしていた鎌と左腕の籠手が消滅し、俺は地面に叩きつけられる

 

「あぁ...くっそ、俺一人じゃここが限界か...結局...なんも守れなかったな...」

 

 

 

 

 

 風先輩たちの方に向かっていると、大きな爆音が聞こえてくる。振り返ってみるとバーテックスには大きな窪みが出来ていた

 

「師匠がやったのか? でも、今はそれよりみんなを...ッ!」

 

 その言葉を後すぐに、それに満開の花が咲く

 

「まさか...満開!?」

 

 どうしてと思ったすぐあと、別の場所でもう一輪の花が咲くのを見ながら走っていると、友奈の姿が見えてくる

 

「友奈! 大丈夫か!?」

「徹くん! うん、大丈夫だよ」

「良かった...でも、アレは」

 

 友奈と合流してすぐ、地面から出てきたバーテックスを東郷が攻撃をすると、すぐに御魂が出てくると、それを撃ちぬいた

 

「強い...」

「徹くん、これ!」

 

 友奈に差し出されたスマホを見ると、神樹様のすぐ近くにバーテックスが一体いることに気付く

 

「神樹様に近いッ...けどここからじゃ、間に合わない」

 

 続けざまに三輪目の花が咲く淡い緑色の花、満開をした樹ちゃんは糸を使ってバーテックスを切り裂き、御魂を砕いた

 

「やった...残るは」

「あの大きいのだけ...だね!」

 

 俺達も残り一体を向くと、あの一体は火球を集中させて巨大な火の塊を作った。風先輩がその火球を抑えてすぐに俺達にも聞こえる声で叫んだ

 

「勇者部一同封印開始! 私がこいつの相手をしている間に、早く!」

 

「よし、行こう」

「あぁ...ッ!」

 

 配置に着いた俺達がバーテックスを囲むと封印のカウントが開始されると同時に御魂が排出された

 

「あれが御魂、うそでしょ...」

「マジかよ...」

 

 現れた御魂は俺たちがみたどれよりも巨大なモノだった

 

「何から何まで規格外すぎるわ...」

「しかもあの御魂、出てる場所が...宇宙!?」

「お...大きすぎるよ、あんなのどうやって」

「あんなの...どうすれば」

 

「大丈夫、御魂なんだから今までと同じようにやればいいんだよ...どんなに敵が大きくたって諦めるもんか! 勇者ってそういうものだよね」

「行こう、友奈ちゃん...今の私なら友奈ちゃんを運べると思う」

「三人は封印をお願い」

 

「早く殲滅してきなさいよ」

「任せてください!」

「友奈...満開は」

「大丈夫だよ、覚悟はできてる」

「...わかった、頑張れ!」

 

 友奈たちを見送ってすぐ、封印を続けるが予想よりも速く浸食がすすんでいく

 

「クソッ! 浸食が速い」

「時間が無い、拘束力がなくなっちゃう」

「このままじゃ...ッ!」

 

 少し焦りを感じていると、樹海の影から出てくる人影が見えた

 

「師匠!?」

「...手を貸す、力不足だが多少の足しには、なるだろ」

 

 そう言うと師匠は友奈のいた場所に立つと、槍を出現させて地面に突き刺すと僅かではあるが拘束時間が延びる。全力で拘束を続けていると空がまばゆく輝き、なにかが降ってくるのが見える

 

「友奈、東郷...」

「...ッ!」

 

 樹ちゃんが糸を伸ばすとが落ちてくる速度が速いのか、すぐに切れる

 

「ものすごい衝撃、もしこのまま落ちたら...」

「絶対に助けて見せます!」

 

 その言葉の通り、樹ちゃんは幾重にも糸を張り巡らせて振ってきた花の蕾をキャッチした

 

「ナイス根性! すごいわ樹、みて、アンタが止めたのよ!」

「夏凜さん、徹さん、行ってあげてください」

「わかったわ!」

「樹ちゃんは?」

「この子は俺が見てるから...行ってやれ」

「わかりました!」

 

 三好さんと共に花の蕾に近づいていくと、花が開き眠った状態の二人が見える。周りを見ると全員生きているのかどうか分からなかったが。友奈の声が聞こえたのを皮切りに全員生きている事が分かった

 そのことに三好さんと二人で安堵していると樹海化は解け、讃州中学の屋上に戻って来ていた

 

「いやぁー、美人薄命だから私は危なかったけど、セーフ」

「師匠、大丈夫ですか?」

「あれ? 無視?」

 

 樹ちゃんの近くにいた師匠に声をかけると少し辛そうな笑顔を見せてグッドサインを送ってくるのを見てすぐに、三好さんの携帯が鳴る

 

「三好夏凜です...バーテックスと交戦、負傷者四名。至急、医療班の手配をお願いします...尚、今回の戦闘で十二体のバーテックスはすべて殲滅しました! 私達、讃州中学一同が!」

 

 そういう三好さんの姿、とても誇らしそうに見えた

 なにはともあれ、これで戦いは終わったのだと思う...そして俺達は守ったんだ、いつもの日常を

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