不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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お待たせしました、第拾話更新です


第拾話 平和Ⅰ

 あの総攻撃の後、病院まで運び込まれた俺達は検査の為に入院することになった

 

『昨日の工事中の高架道路が落下した事故の続報です。事故現場周辺で発生した大規模な火災は消し止められ。奇跡的に被害者はいませんでした、事故の原因については調査中で―――』

 

「道路の落下事故...か」

「徹、もしかして落ち込んでる?」

「もしかしなくても落ち込んでますよ...風先輩こそ、満開使ったのにやたら元気ですね」

「...私だって無理くり元気にやってるだけよ。自分で覚悟を決めたとはいえ...やっぱりね」

 

 あの戦いで俺と三好さん以外の全員は満開を使用し、体の一部を代償として捧げてしまった

 

「おっ、友奈も検査終わったみたいね」

「はい...って風先輩、その目」

「ふっふっふ...これは先の暗黒戦争で――」

「満開の代償でしょ、なにバカな事言ってんのよ」

「誰がバカよ!」

 

「そういう友奈は、どっかに違和感はないのか?」

「うん、私は今のところ大丈夫だよ...」

 

 どうやら友奈は今のところ何処か失ったりはしていないらしい、それは風先輩のようにわかりやすい代償ではないのかそれとも本人が気づいていないだけなのか...

 

「徹くん、どうしたの?」

「あぁ、いや...元気そうで良かったなって」

「そっか」

 

 俺たちがそんなことを話していると、検査を終えたのか東郷と樹ちゃんもやって来た

 

「私達も検査終わりました」

「お疲れ様、東郷、樹ちゃん」

「樹~、注射されて泣かなかった?」

 

 そうして俺と風先輩が声をかけてみると、東郷からの返事は貰ったが樹ちゃんは喋る様子がない...というより、喋ろうとしているのに喋れていないといった方が正しい気がする

 

「...樹?」

「まさか...」

 

「えぇ、どうやら声が出ないみたいです」

「...東郷は、どっかに変化はないのか?」

「...私は左耳が聞こえなくなったわ」

 

 樹ちゃんは声...というより声帯か? そして東郷は左耳

 

「でも、徹くんのお師匠さんたちが直す方法探してるんならきっと大丈夫だよ! ...そうだっ、私達バーテックスを全部やっつけたんだから、お祝いしないと!」

「...そうだな! いつまでも暗くなってる訳にもいかないし、パーッと行こう!」

 

 ひとまず暗くなった考えは振り切って目の前の勝利を喜ぶことにする、それに師匠たちがどうにかする方法を探してるんだ...きっと何とかなる

 

 

 

 

 

 そうと決まれば進みは速いのが勇者部、売店でおかしや飲み物等を適当に買い漁ると、みんなのところまで戻る

 

「売店で買ってきましたー!」

「適当に見繕ったら結構大量になっちゃいましたけどね」

「ほんと、随分買ってきたみたいね」

 

 まぁいいけど、と風先輩は言うと買ってきたジュースを一本手に取る。それを合図に俺達全員それぞれジュースを手に取ると風先輩が口を開いた

 

「なにはともあれ、みんなよくやった! 勇者部の勝利を祝って、かんぱーい!」

 

「「「「かんぱーい!」」」」

 

 乾杯した後にみんなそれぞれジュースを一口飲むと、友奈の反応に少し違和感を感じる、どうやらそれを感じたのは東郷もだったようでとりあえず後で聞いてみることにして...今は楽しもう

 

「そうだ、みんなにこれ、新しい携帯」

「新しい携帯...でもなんで急に?」

「代替え機って奴ね、前のは回収されたでしょ? メンテナンスとかで戻ってくるのに時間がかかるからしばらくそれ使って」

「...あのアプリ、ダウンロードできなくなってますね」

「あれは勇者部専用だからね、私たちの戦いは終わったんだし」

「そっか...勇者になる必要なくなりましたんもんね...あの、牛鬼は?」

「...ごめん、アプリが使えないからもう精霊は呼びだせない」

「そうですか...ちゃんとお別れしたかったな」

 

 二人の話を聞きながら、新しいスマホに目を向ける...でもそうか、ここに来てようやく本当に戦いが終わったんだっていう実感を持てた気がした

 

 

 

 

 

 祝勝会を終えた俺が病室に戻ろうと歩いていると少し奥の方から言い争うような声が聞こえてくる。廊下の角から声のする方を覗いてみると、そこにいたのは師匠ともう一人、スーツ姿の男の人だった

 

「だーかーら、もう大丈夫だって!」

「ダメです、今日...というより一か月は病室で安静にしていてください」

「一か月も留守にしてたら依頼が溜まるだろうが!」

「それなら私達で何とかしておきますから、大人しくしていください」

 

 なんというか、師匠っていっつもどっか落ち着いてるイメージがあったから、ああやって声を上げて言い争いしているのは少し新鮮だ

 

「というか、なんだよこの包帯...布の上からペタペタ札貼りやがって、そんな事しなくても大丈夫だっての」

「万が一があったりしたら、僕たち...というか僕がご先祖様に顔向けできないので」

「心配性と言うかなんというか...まぁいいや、分かったよ、大人しくしてりゃいいんだろ」

「わかってくれたようで何よりです...あぁそれと、貴方から目を離さないように病院にはしっかり言ってあるので、抜け出そうなんて考えないでくださいね」

「...っち」

「やっぱり抜け出そうとしてましたね...」

「だぁもう! わーったよ! 抜け出さねぇ! だからもう帰れ!」

「えぇ、私にも仕事があるのでこれで失礼します」

「...ったく、心配しすぎなんだよ」

 

 スーツの男の人が帰るのを見送った後、師匠のぼやいた声が聞こえてくる

 

「おい、そこに隠れてる奴出て来い」

 

 どうやら師匠にはバレていたようだ...廊下の角から出ると師匠は少し頭を掻いた後にこっちへ向かってくる

 

「...盗み聞きか?」

「すみません、聞くつもりはなかったんですけど」

「まぁいいや、時間も時間だしさっさと部屋戻れ」

「...あの、師匠。もしかしてあの時の戦いで何かあったんですか?」

「別になんもねぇよ、考えすぎだ」

「なら、その腕の包帯どうしたんですか...よく見ると腕だけじゃなくて全身に巻いてるし」

「なんもねぇって言ってんだろ、ただの打撲だ...じゃあな」

 

 師匠はそういって病室の中に帰ってしまい、それ以上聞くことはできなかった

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