こればっかりは慣れだと思うのでゆっくり慣れていけたらいいなと思います
光に包まれた俺は森のような不思議な空間の中にいた
「ここは一体」
時間が止まったような静寂に不可思議な光と言う未知の状況であるにも関わらず、俺の頭は冷や水をぶっかけられたように冷静だった。
「ここが何処か分からない以上、下手に動かない方がいいか」
それから巨大な枝のような場所に隠れ動かずにいると、少し遠くから音が聞こえた
「なんだ?」
影から顔を出して音がした方を見ると、そこにいたのは正面に巨大な口がついた異形の怪物
その怪物は俺に気が付くと向きを変え俺の方に向かってくる
「さっきから何が起こってんだ...」
次々起きる訳の分からない状況に困惑しながらも、あの怪物に掴まるのは不味い気がすると感じた俺はその怪物から逃げる為に走り出す、少しでも怪物と距離を離す為に必死で走り続けるが人の足では空を飛ぶ怪物と距離を取ることが出来ず、少しずつ距離を詰められる
「不味いな」
危機的な状況であるにも関わらず冷静になっている頭を必死に動かしながらこの場をどう切り抜けるかを考えていると俺の事を追ってきていた怪物が消滅する
「勇者以外の人が樹海にいるだと!?」
「ほんとだ!なんで!?」
その声と共に俺の近くに降りてきたのは2人、金色の髪に刀を持った少女と腕に籠手を着けた赤みがかった髪の少女
「君たちは一体、それにここは何処だ?」
「それはこちらのセリフだ、勇者でもないのにどうして樹海で動けてる」
「どうしてと言われても、俺は偶然ここに迷い込んだ?だけだ」
「迷い込んだだと?」
「あぁ、病室で起きたら様子が可笑しかったから、少し考えこんでいたらここにいた」
「ねぇ若葉ちゃん!詳しい話はひとまず後にしてみんなと合流しようよ!」
「...そうだな、すまないが君もついてきてくれ」
「わかった」
俺は二人の後をついていく傍らで、さっきの怪物を薙ぎ払っていく
「凄いな」
「この程度すごくもなんともない、この怪物を倒すのが私達勇者の役目だからな」
俺のつぶやきを聞いたのか金髪の少女はそういってくる
彼女の口ぶりからすると、勇者というのはこの怪物どもを倒すことを役目としているらしい
「そうだ!私は高嶋友奈!君の名前は?」
「不知火要だ」
「じゃあ要くんだ!よろしくね!」
赤みがかった髪の少女、高嶋友奈はそう言うと、もう一人の少女の方を向く
「...乃木若葉だ」
「不知火要だ、少しの間だがよろしく頼む」
俺の言葉に答えることなく乃木若葉は、敵を切り伏せながら進んでいく
それからしばらくの間走り続けていると彼女たち以外の人影が見えてくる
「みんなー!」
「友奈さん!若葉さん!」
「大丈夫だったかー!ってなんで不知火がここにいるんだ!?」
「えっ!?ほんとだ!?」
高嶋と乃木の近くに声をかけてきたのは、昨日知り合ったばかりの二人だった
「成り行きだ、それより二人はどうしてここに?」
「どうしてって、そりゃタマたちは勇者だからな!」
言われてみればそうだ、乃木と少し言葉を交わした時にも出た勇者という言葉、その言葉は昨日タマと杏の二人も言っていた。ならば二人がここにいたとしても不思議じゃない
「話はそれくらいにして...敵が来るわ」
言葉を交わしていた俺たちに対してそういったのは二人と共にいた鎌を持っていた少女
「俺はそこらへんに隠れてることにする」
「大丈夫なんですか?」
「あぁ...それに、俺みたいなのが近くにいない方がいつも通り戦えるだろう」
杏にそういった俺は、先ほどのように木の根の陰に隠れると、勇者と呼ばれた少女たちは怪物との闘いを始める、次々と怪物を薙ぎ払っていくその光景を見ていると不意に俺の方を見たタマが叫んだ
「不知火!危ない!」
その言葉を聞いた俺は後ろを振り返ると、かなり近くにいた化け物に噛みつかれ、激痛と共に意識を失った
タマっち先輩の声をきいた私達も要さんの方を見ると、星屑に右腕を食いちぎられ、血だまりを作っている要さんの姿が目に入る
「要さん!」
要さんの近くにいた星屑を倒すと、急いで彼の方に向かう
呼吸を確認するとまだ生きていることがわかり、ひとまず安心するが体温は少しずつ下がり始めていた
「杏!不知火は!」
「何とか生きてますけど...このままじゃ」
「なら急いで星屑を倒して不知火を...」
「あんちゃん!タマちゃん!要くんは...え?」
タマっち先輩と近くに来た友奈さんの言葉が途中で止まった。二人の表情はまるで信じられないようなものを見るようで、二人の視線の先にあるものを見て私も言葉を失う
「どういう...こと?」
唯一絞り出せた言葉はそれだけだった、要さんの身体から流れ出た筈の血液は時間を巻き戻すように要さんの身体に戻っていっていたから
水の底に沈んでいく感覚に襲われ、俺は目を覚ました
身体を動かそうとしても動くことが出来ない、ただ身を任せて沈んでいくだけ
そして実感する、自分はもう死ぬのだと
このまま流れに身を任せようとした瞬間、食いちぎられた筈の右腕が熱くなり始める
「...ッ!」
咄嗟に熱くなりはじめた右腕を抑え、自分の身体が動くことに気付いた
『―――、―――――』
聞こえてくる、頭の奥底から
『―の―、―えて―ね』
「誰だ?」
『私の事、覚えててね』
その言葉を聞いた瞬間、ビデオの巻き戻しのように映像が頭に流れ込んできた
崩壊した街の風景
人々を襲う異形の怪物 ”星屑”
そしてその星屑と戦う一人の少女
彼女と共に戦う、俺の姿
流れ込んできた記憶はその程度だったが、多少なりと思い出すことが出来た
とりあえず、俺にも戦う力があることは理解できた。それなら今やるべきことは一つだ
「彼女たちと一緒に...戦おう」
その言葉に呼応するように現れたのは昨日夢の中で見た一本の槍。血塗られた槍ではなく深紅の槍に変わったそれを掴んだ瞬間、温かい光に包まれ意識が薄れていった
目を覚ますとそこにいたのは、呆然とした表情の杏たちだった
「どうかしたのか?」
「いや、どうかしたのかって...大丈夫なのか?」
「大丈夫って、そうか...俺はあの怪物に腕を食われたのか」
「そうですよ!星屑に腕を食いちぎられたかと思ったら血が要さんの中に戻っていくし...何が何だか」
「詳しい話は後でする...今はあの怪物を、星屑を倒す」
杏の助けを借りて、なんとか起き上がった俺は右腕のあった筈の場所に力をこめると、流れ出た血液が腕を形作り始める
「なんだそれッ!?」
「そうなってるの!?」
「これも後で話す...必ず話す」
驚いていた高嶋とタマに言葉を返すと、腕が完全に復元される
「よし」
復元された右腕の親指を噛み血を出すと、流れ出た血が槍を形成した
「これで俺も戦える、少しだけおぼつかないがよろしく頼む」
「だーッ!よく分からんがタマたちに任せタマえ!」
「よーっし!私もうやるぞー!」
「要さん...本当に大丈夫なんですよね?」
「あぁ、心配ない」
「わかりました、サポートは任せてください!」
右腕で槍を構えた俺は、二人と共に星屑に向かっていく
「...キリがないわね」
「ぐんちゃん!大丈夫!」
「高嶋さん...えぇ、こっちは問題ないわ」
「よかったぁ」
高嶋がぐんちゃんと呼ばれた少女と合流しているのを見ながら、俺の方に向かってくる星屑を槍で貫いていく
「不知火、やけに戦い慣れてるな」
「昔取った杵柄って奴だ...っと、よそ見は禁物か」
話しの最中も容赦なく襲ってきた星屑を叩き潰していると、周りにいた星屑が一つにまとまり始める
「あれは?」
「バーテックスが進化しようとしてるんだ!」
「不味そうだ、みんなと合流した方がいいんじゃないか?」
「そうだな、行くぞ不知火!」
タマと俺の二人は星屑を蹴散らしながら前線に出ている乃木の元まで向かっていると、その途中で杏たちも合流した
高嶋と一緒にいた少女は驚いたように俺の方を見る
「貴方...その武器は」
「タマ達にもいったが、詳しい話は後でする」
合流した俺たちが乃木の元に辿り着くのと同じタイミングで星屑も合体を終え、四本の角が足のようになっている姿に変わった
「わかちゃーん!」
「みんな!...と不知火!?」
「詳しい話は後って、このセリフ何回目だ?...まぁいいか、俺も手を貸す」
「大丈夫なのか?」
「大型と戦うのは初めてだが何とかなる筈だ...秘策もあるから心配しなくていい」
「そうか...ならばここで、不知火要、君に協力を要請する」
「協力、受諾した」
俺のその言葉を聞いたみんながそれぞれ武器を構え、進化体バーテックスと対峙する
「いくぞッ!」
俺たちは乃木を先頭に進化体バーテックスに攻撃を仕掛ける
進化体バーテックスに向かっていく途中に現れた星屑を俺とタマ、高嶋で迎撃をし、杏がサポートをするなか乃木と鎌を持った少女はまっすぐバーテックスへ突っ込み四本ある角のうち一本を切断しようとするが軽く一撃を与えることしかできなかった
「ダメかッ!」
「星屑は任せた、俺が二人の支援に向かう」
「私も!」
「大丈夫だ...やりようはある」
「よっしゃ!任せたぞ不知火!」
「あぁ、任された」
タマにそういって、俺は乃木達の方に向かう
「大丈夫か?」
「不知火...あぁ、問題ない」
「なら、俺に力を貸してほしい」
「何をする気だ?」
「槍を突き刺して中に俺の血を流し込む」
「血を流し込むって、どういうことだ?」
「星屑に腕を食われて思い出したが、どうやら俺の血は特別らしい」
「よく分からんが、分かった」
乃木のその言葉を聞くと、次は乃木の近くにいた鎌を持った少女に声をかける
「君の力も貸してほしい、頼む」
「貴方の方法なら、バーテックスを倒せるの?」
「倒せるかどうかは分からない、だからこそ少しでも多くの力を借りたい」
「...わかったわ」
「ありがとう...えっと」
「郡千景よ」
「ありがとう、郡」
「それで、どうするんだ?」
乃木にそう問われた俺は、二人に対してこれからすることについてを説明する
「まず、俺があのバーテックスに近づくまで、二人にはアイツの注意を引いてほしい」
「注意を引く?」
「あぁ、そうしたら俺がバーテックスに槍を突き刺す」
「了解した」
「少し不安だけど...わかったわ」
「よろしく頼む」
俺がそういったのと同時に、乃木と郡の二人は左右に散開して進化体バーテックスの注意を引く
バーテックスの注意が二人に向かったのを確認すると、全力疾走で進化体の元に向かう
途中で、バーテックスの攻撃がこちらに向かいそうになったが乃木と郡の二人がその攻撃を事前に防いでくれたおかげで何とかバーテックスの眼前まで辿り着く
「後は全力で...飛ぶ!」
足に力を集中させジャンプをしたが、後少し距離が足りずバーテックスに触れることが出来ない
「不知火ぃ!これを使いぃタマえ!」
背後から聞こえた声に振り返ると、タマが使っていた盾をこちらに向かって投げてくる
それを足場に使い更に跳躍した俺は槍をバーテックスに向かって突き刺す
「槍を茨のように...溶かして内側から貫く!」
俺のその声に反応した槍は元の血液に戻りバーテックスの中に木が根を張るように広がっていく、ある程度広がりきった所で根のように張られた血液から長めの棘が生え、内側からバーテックスを貫き、消滅する
「やったな!不知火!」
「あぁ」
近くに来ていたタマにそう答えると、他の勇者たちと合流する
俺が近づいたのを確認すると乃木は俺に話しかけてくる
「不知火...お前は一体」
「俺の方も色々と話したいが...ここで詳しいことを話すのは無理そうだ、この現象が解ける」
その声と共に俺たちは再び光に包まれる
光が晴れると俺は一人、病室の中に戻っていた
すぐに誰か来るわけでもないと思った俺は、ベットに寝転がると目を閉じた