不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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第壱弐話、投稿です


第拾弐話 期待

 夏休み前に我ら勇者部一同がバーテックスを十二体倒した、そんな俺達に対して大赦はご褒美として合宿先を用意してくれたらしい

 

「と言う事で、夏休みに突入した勇者部一同...合宿に来てます」

「あんた、誰に向かって言ってんのよ」

「...いやっ、何となく言いたくなっただけ。暑さにやられたかな?」

 

 何となく声に出したくなったから出したら夏凜に変な表情をされたが、まぁ気にしなくて良いか

 

「それにしても、友奈たちも楽しそうだなぁ」

「そう言うあんたは、随分と疲れてるみたいじゃない」

「貴重な男手と言うわけで色々荷物持たされたからなぁ、少しは休憩もしたくなる」

「あっそ、それじゃ私は風に勝負でも挑んでこようかしら」

「おー、行ってこい行ってこい」

 

 風の方に向かっていく夏凜の事を見送ると、俺は目の前に広がる海を眺める

 

「この広い海も、俺達が守ったんだよなぁ」

「随分と年に似合わずアンニュイな顔してんな、八重樫」

「...へっ!? 師匠!?」

「ようっ、お前らも旅行か?」

「いえっ、俺達は合宿です...そういう師匠は?」

「俺は無理やり休養を取らされたんだよ...アイツら心配しすぎなんだよ」

 

 師匠は師匠で休養の為にここに来たらしい

 

「それで、随分とアンニュイな表情をしてる八重樫君は...一体どうしたんだ」

「何と言うか、少し感慨深くって...本当に戦いが終わったんだなって」

「...そうか、そうだよな」

「どうかしたんですか?」

「いやっ、何でもねぇよ...そんじゃ、俺はもう行くからお前らも楽しめよ」

「はい、師匠もしっかり体を休めてくださいね」

「お前までそれ言うのかよ...まぁわかったよ」

 

 師匠はそう言うと浜辺を歩いてどっか行ってしまった...そういえば師匠の身体、まだ包帯が巻かれたままだったな

 

 

 

 それから浜辺で色々と遊んでいるとすっかり日も沈み始めていた

 

「楽しかったぁ、もうお腹ペコペコ~」

「夏凜かじってガマンして」

「それどういう意味よ!?」

 

「どうした、東郷」

「あっ、八重樫君」

「なんか気になってることでもあるのか?」

「...なんだか、まだ少し不安に思って」

「不安?」

「えぇ、本当に戦いは終わったのかなって」

 

 確かに、そこは少し疑問に思っていた所だ...バーテックスは全部で十二体と言われていたが本当にそれだけなのかとも思う、もし不測の事態が起きない可能性は無いのだろうかとも考えてしまう

 

「確かに...本当に終わったのか気になる所はある」

「八重樫君も?」

「あぁ...だけど、今は喜んでもいいんじゃないか?」

「えっ?」

「だってさ、これからの事は分からないけどさ、今は戦いは終わったんだから...今を楽しめればいいかなって」

「今を...楽しむ」

「難しいことはわかんないけどな」

 

「おーい! 東郷さーん! 徹くーん!」

 

 話が終わってすぐに友奈が手を振って俺達の事を呼ぶ

 

「そろそろ行くか」

「そうね」

 

 

 旅館に戻ってきた俺達はそれぞれ着替えを終えると、勇者部一同(俺除く)の宿泊する部屋にやってくると目の間に用意されていたのはビックリするくらい豪勢な料理の数々

 

「凄いご馳走...!」

「何と言うか、流石に恐縮するな...」

「あの~、部屋間違っていませんか? ちょっと私達には豪華すぎるような」

「とんでもございません、どうぞごゆっくり」

 

「私達、好待遇みたいね」

「ここは大赦がらみの旅館だし、お役目を果たしたご褒美って事じゃない?」

「つっつまり、食べちゃってもいいと...!」

【でも、友奈さんが...】

「あ...」

 

「おぉっ、このコリコリした歯ごたえ、たまりませんねぇ...このつるつるしたのど越しもいいね!」

「もう友奈ちゃん、いただきますが先でしょ」

「そうだった、ごめん」

 

「あらゆる手段で味わおうとしてるとは」

「いろいろと敵わないわね、友奈には...」

 

 ポジティブと言うか、真っすぐなのが友奈の良いところだと改めて実感する、食事を終えた俺達は風呂に入りそれぞれ部屋に戻って布団の中に入って改めて今までの事を考える

 

「ほんとに、色々あったな」

 

 今にして思うと、あの引っ越してきたときからすべては始まってたのかも知れない

 始めて引っ越して友奈や東郷と会って、讃州中学に入学して...そして勇者になって戦い夏凜と出会った

 

「そしてこうやって、戦いが終わって日常を取り戻した」

 

 未来に何があるのか分からないけど、今はただこの日常を噛み締めよう

 

 

 

 翌日の帰宅直前、目の前に広がる海を見ていると風先輩が目の前に広がる海を見ながら少し痛いポーズを取っていた

 

「海が、騒がしいわね...!」

 

 言動も少し痛かった

 

「で、どうしたんですか先輩、改まって」

「そして、そのポーズは?」

「帰る前には私達にはやる事があるでしょう」

「なんかあったけ、花火?」

【ナンパされてないとか言いそう】

「バーべキューですかね」

 

「ちゃうわ! 一応勇者部の夏合宿なのよ、少しは内容のある話をしないと! 文化祭とか...文化祭とか、文化祭とか!」

【三回も言った】

【でも、確かにお姉ちゃんの言う通り】

「劇をやるって話でしたよね、中身をつめていかないと」

「車の中で予定や配役の話し合いね」

「バーテックスを倒しても私達の日常が被害受けてちゃ世話ないわ。しっかり日常のスケジュールを守って完全勝利といきましょう!」

「まぁ、賛成してあげてもいいわ」

【帰るまでが合宿です】

「やるからには、全力で...だよな」

 

「よーっし! 文化祭、必ず成功させよう!」

 

「おー!!!!!!」

 

 今度の文化祭は絶対に成功させることを当面の目標にこれからも日常が続いていく

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