不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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第拾参話、投稿になります


第拾参話 変化

「バーテックスに生き残りが居て、戦いは延長戦に突入した...まとめるとそういうこと、だから皆にこれが帰ってきた」

 

 合宿から数日の時が流れ、勇者部の部室に集まった俺達が聞かされたのは予想している中でも最悪の事態。バーテックスの生き残りが存在し再び勇者として戦うことになる

 

「いつもいきなりでごめんね...」

「先輩もさっき知ったことじゃないですか、仕方ないですよ」

「そうですよ、それにもう風先輩のごめんねは聞かないって、俺達言ったはずですよ」

「ま、そいつ倒せば済む話でしょ。私達は敵の一斉攻撃だって殲滅したんだから、生き残りの一体や二体どんとこいよ」

【勇者部五箇条 なせば大抵なんとかなる!!】

「その通りですよ、皆がいれば大丈夫です! それに徹くんも言った通り風先輩のごめんはもう聞かないです」

「ありがとう...よーし! バーテックスいつでも来なさい! 勇者部六人がお相手だー!」

 

 

 

 

 などと風先輩が意気込んだものの、夏休みが終わり二学期が始まっても生き残りのバーテックスが来る気配はなく日常が過ぎていた

 

「全然こないねぇ、バーテックス」

「気にしすぎるのも良くないわ、友奈ちゃん」

「そうだな、ずっと気を張ってたら気が滅入っちまうよ」

「二人とも落ち着いてるなぁ、その秘策は?」

 

「師匠から面倒なことは頭で考えるなって教わった」

「かつて国を護り戦った英霊たちの活動記録、うちで映像みる?」

「で、できればわかりやすくアニメがいいなぁ」

「大丈夫、あるわ」

「あるんだ...」

「八重樫君も一緒にどう?」

「途中で寝る自信があるから遠慮しとく」

 

 そんなことを話しながら歩いていると、友奈の周りを一匹の精霊が周り始めた、俺達の元に戻ってきた勇者システムは俺を除くみんなを守っていた精霊の数が増えた。と言っても増えたのは満開を使用した四人のみで夏凜の精霊は一体から増えた様子はない

 

「ありゃ? あわわ、火車! 急に出て来ちゃダメだって!」

「牛鬼に比べると随分自由な奴だな、新しい精霊」

「でも、この子も牛鬼みたいにいたずらっ子なんだよ」

「友奈ちゃんが優しいからわんぱくなのよ」

「戻ってね」

 

 友奈が火車をスマホの中に戻すのを見た後、少し東郷の方に目を向けるとなにか考え事をしているようだが、今はそこまで気にする事ではないと思っておこう

 それから三人で取り留めのない話をしながら歩いていると、部室の前まで到着する

 

「結城友奈、入りまーす!」

「こんにちは」

「お疲れさまでーす」

 

「ウィーッス」

【ウィーッス です】

 

「すっかりそのキャラ定着しましたね」

「いやぁ、こんなに眼帯が似合うとはね」

「いい加減挨拶には慣れましたけど...いつまで続けるんすか、その挨拶」

「いつまでって、そりゃ飽きるまでに決まってるじゃない」

 

 マジでいつまで続くんだろうなと思いはしても口には出さないで、カバンを机の上に置くと東郷の目の前に風先輩の新しい精霊が現れていた

 

「あーごめん、そいつ好奇心旺盛で犬神と違ってあんま言う事聞かなくてさ」

 

 一匹現れたのをきっかけに他の精霊もぞろぞろと部室の中に現れる

 

「新しい精霊をアップデートしてくれたのは良いけど、ちょっとした百鬼夜行ね」

「もういっそ文化祭これでいいんじゃないですか?」

「よくないわ」

「...だが、精霊喫茶ってのはアリなんじゃないか? 奇抜さで言えば一番じゃ」

「八重樫君?」

「...なんでもないです」

 

「...ったく、あんたたち精霊の管理くらい東郷みたいにちゃんとしなさいよ」

 

 夏凜の方を見たら樹ちゃんの精霊が頭の上でポンポンはねていると思ったら今度は牛鬼に夏凜の精霊が捕食されていた。前と似たような光景だが精霊が増えた事でカオスさが段違いになってしまっている

 それからしばらくわちゃわちゃしていたが、精霊は全員スマホの中に戻っていった

 

「ようやっとみんな端末に戻ったわね」

 

 風先輩がそう言うと、夏凜と東郷の二人は自分のスマホを見ていた。東郷の方は分からないが夏凜の方は自分にだけ精霊が増えていないのを疑問に思ってるんだろう...俺には元々精霊いないし

 

【敵...いつ来るかな ドキドキ】

「こればかりは分からないから、私達は劇の練習をはじめよっか」

「私の勘では来週あたりが危ないわね」

「実は敵の襲来は気のせい~、とかだったらいいんだけどね、あの諸葛亮公明だって負け戦はあるのよ? 弘法も筆の誤り、神樹様の予定もミスくらい――」

 

 そういったタイミングで樹海化警報が鳴る

 

「えぇ!?」

「見事なまでのフラグ回収お疲れ様です」

「...噂をすればってやつかなぁ」

「風が変な事言うから神樹様からの的確なツッコミね」

「アンタだって勘、外してるじゃない」

 

 そんなことを言っている間にも樹海化の光が広がっている

 

「...来ちゃったわね」

「上等、殲滅してやるわ!」

 

 その言葉を最後に俺たちは樹海化の光に飲み込まれ、目を開けると二度と見たくなかった景色が広がっている。俺達はアプリを起動し勇者に変身した後、地図に目を向ける

 

「敵は一体、あと数分で森を抜けます」

「前の総攻撃の双子型...双子っていうくらいだからもう一匹いて当たり前か」

「でも、一体だけなら」

 

 そう言い終わると友奈は手の甲にある自分の満開ゲージを見ている、かくいう俺の満開ゲージもほぼマックス。慎重に動いた方が良いだろうな

 

「今回の敵で延長戦も終わり、ゲームセットにしましょう...よし! またアレやろうか!」

「ほんと、好きねこういうの」

「先輩が体育会系気質だから」

 

 俺達六人は円陣を組むと、風先輩が口を開く

 

「さぁ! 敵さんきっちり昇天させてあげましょ! 勇者部ファイト!」

 

「「「「「「おー!」」」」」」

 

 円陣を終えた俺達は目視できる距離になったバーテックスを見る、案の定前に樹ちゃんが倒した奴と同じ姿の敵だ

 

「やっぱり徹の言った通りか」

「元から二体のバーテックス...」

「まぁ素早いだけだしそこまで脅威じゃないだろ」

「いずれにせよやる事は同じ、止めるわよ!」

「...よしっ」

「そうよね、やらないと」

 

 さっき気合いを入れたものの満開の代償の事がある以上少し億劫になってしまうのは仕方ない、俺は自分を鼓舞するために片手で頬を軽く叩き気合いを入れる

 

「よしっ、先行します!」

「私も!」

「あっ、私も!」

 

 俺と友奈、夏凜の三人で先行してバーテックスに向かっていると友奈が口を開く

 

「あいつを封印すれば、生き残りも終わりだったよね」

「風先輩の話だとな」

「それじゃあ、ちゃちゃっと終わらせて文化祭の劇の話をしよう!」

「そうだな、それじゃあ俺がアイツの足を止めるから、後は二人に任せて良いか?」

「うん、任せて!」

「わかったわ!」

 

 二人の了解を取った俺はバーテックスに近づくと蛇腹剣を伸ばして足にダメージを与える

 

「今だ!」

 

「行くわよ!」

「うんっ!」

 

 その声と共に二人の放った攻撃がバーテックスを地面に倒すと、倒れた状態で敵さんはじたばたしている。足の修復が終わり立ち上がろうとしたタイミングで追いついた風先輩の一撃が再び敵を地面に寝かせる

 

「風先輩!」

「ありがとね、三人とも」

 

 樹ちゃんも合流した直後、バーテックスの頭のような部分が撃ちぬかれ動かなくなる

 

「よし、封印の儀行くわよ!」

 

 五人で敵を囲むように封印の儀を行うと、御魂は出てきたが数が多い

 

「何この数!?」

「...私がやるわ!」

「いいえ、トドメは私に任せて貰うわよ!」

「夏凜!? やめなさい、部長命令よ!」

「私は助っ人で来てるのよ、好きにやらせてもらうわ」

 

 などと言っている間に、飛び上がっていた友奈が敵に向かって蹴りを放っていた

 

「勇者...キーック!!」

 

 火車がサポートした事で炎を纏った友奈の蹴りは敵の御魂を打ち砕き、光が天に昇っていく

 

「やった! ...うん、何事もなかった、なせばたいていなんとかなるね」

「ちょっと友奈、なんで勝手に」

 

「思ったより簡単だったね、みんな!」

 

 そういう友奈の満開ゲージは溜まり、残り二つで満開が使用可能になる

 

「あ...ごめんね、新しい精霊の力を使いたくなっちゃって、先走っちゃった」

「体は平気?」

「大丈夫、元気そのものだよ」

「まったく、新しい力が試したいってお前、そのセリフどっかの戦闘狂みたいだぞ?」

「そうかな? でも、みんなに怪我なく終わって良かった」

 

 その言葉を聞くと、友奈以外のみんなも安心した表情に変わった、それからすぐに樹海化は解けみんなと一緒に元いた場所に戻る...筈だった

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