不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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第拾肆話、投稿です


第拾肆話 真実を求める

「戻ったけど...学校の屋上じゃないよね、ここ...」

「そう...みたいだな」

 

 戦いを終えた俺達が戻されたのは学校の屋上ではない場所

 

「みんなは...」

「あっ、大橋...!」

 

 俺と友奈も東郷の見ている方を見ると、確かに目の前に大橋があった

 

「...ほんとだ、結構離れた所にきちゃったね」

「そうだな...それにしてもなんでこんな所に」

 

 とりあえず今いる場所を風先輩たちに報告するためにスマホの画面を付けるが、電波が入ってない

 

「あれ? 電波が入ってない」

「私の改造版でもダメ...」

「バージョンの違う俺のもだ...ほんと、なんでこんなところに」

 

「私が呼んだんだよ」

 

「声が...」

 

 疑問に聞こえたえるように発せられた俺たち以外の声、その声が聞こえてきた方に向かうとそこにいたのは全身に包帯が巻かれ、ベットに寝かされた少女

 

「...ずっと呼んでたんだ、それでようやく呼びだしが成功したよ」

「君が、俺達を呼んだのか?」

「うん、そうだよ...やえくん」

「やえくん...?」

「わっしーも、やっと会えた...」

 

「わっしー? ...鷲?」

「あだ名だろうな...だが、なんでわっしー?」

 

 ここにきて訳の分からない事が色々出てきた、ここが何処なのか、彼女は誰なのか、どうして俺達を此処に呼んだのか、色々聞きたい事が多すぎる

 

「二人が戦ってるのを感じて、ずっと呼んでたんだよ」

「東郷さんの知り合い?」

「いいえ、初対面よ...八重樫君は?」

「...俺も知らない」

 

 その言葉を聞いた時、少女の瞳には少し悲しみのような感情が見えた気がした

 

「...あ~、はは...わっしーって言うのはね、私の大切なお友達の名前なんだ~、やえくんも同じ。いつもその子達の事を考えててね...つい口にでちゃうんだよ~」

 

 目の前の少女は最後にごめんねと言うと笑顔を向けてくるが...なんだろう、この胸が締め付けられる感覚...何か大切だったことを...いや、大切な事を忘れているような感じが頭の中でぐるぐる回っている

 

「あの...私達を呼んだんですか? どうやって...」

「その祠」

「これ...うちの学校の屋上にもある!」

「バーテックスとの戦いが終わったあとなら、その祠使って呼べると思ってね~」

 

 少女の言ったバーテックスと言う単語を聞いた俺たちはハッとなる

 

「バーテックスをご存じなんですか?」

「一応、あなた達の先輩って事になるのかな。私、乃木園子って言うんだよ~」

「さっ、讃州中学の結城友奈です!」

「...友奈ちゃん」

「...東郷美森です」

「八重樫...徹です」

「......美森ちゃんと徹くん、か」

「...バーテックスが先輩をこんな目に合わせたんですか?」

 

 友奈がそう言うと先輩は少し複雑そうな表情を浮かべながら答えた

 

「あ、ん~とね、敵じゃないよ、私これでもそこそこ強かったんだから~」

 

 明るくそうは言うが、バーテックスの脅威を俺達は知っている

 

「あ...そうだそうだ、友奈ちゃん達は満開について聞いてるよね?」

「はい、その...代償の事も」

「そっか...でも、あなた達に伝えられてない事が一つだけあるんだ」

「伝えられて...ないこと?」

 

 師匠たちが満開システムについてを話した時、俺達に伝えてない事がある? 

 

「うん、勇者は満開の花を咲かせて、咲き誇った花は散って、体のどこかが不自由になる...ここまでは大丈夫だよね」

「はい...」

「じゃあ続き、勇者は満開を使って体のどこかが不自由になる代わりに、決して死ぬことはないんだ」

「し、死なないなら良い事なんじゃ...ね? 東郷さん、徹くん」

 

 死ぬことはない、それを好意的な解釈をするのかは個人の自由だが...俺にはそれを良い事だとは考えることは出来ない。東郷はどうか分からないが、俺達は友奈の言葉に返事をすることが出来ない

 

「そうして戦い続けて、今みたいになっちゃったんだ~。元からぼーっとするのが特技で良かったかなって、全然動けないのはつらいからね~」

「...痛むんですか?」

「痛みはないよ、敵にやられたものじゃないから。満開して戦い続けてこうなっちゃっただけ、敵はちゃんと撃退したよ」

「満開して戦い続けた...」

「じゃあ、その身体は代償で...」

「うん」

 

 乃木さんの発したその言葉は、満開の代償を知っている俺達にとっても衝撃的なものだった。あんな体になってしまうまで戦いを続けたという事実が俺たちにとって重くのしかかってきた

 

「ど...どうして、私達がそんな」

「いつの時代だって、神様に見初められて供物になったのは無垢な少女だから。穢れなき身だからこそ、大いなる力を宿せる...徹くんが勇者と同じ力を使えてるのは、私達とは少し違うけどね」

「そうなんですか?」

「うん...でもそれは、私よりも君の先生に聞いた方が良いと思う」

「師匠に...」

 

 そう言うと乃木さんは再び話しを再開する

 

「大きな力を使う代償として体の一部を神樹様に供物として捧げていく...それが勇者システム」

「私達が、供物...」

「でも、徹くんの先生たちは勇者システムの改良をしてるって...」

「もちろん、私たちの為に頑張ってくれてる人が居るのもほんとだよ...でも、どうしようもなかったんだ。頑張っても一歩進んでもそれ以上進めない」

 

「それじゃあ、私達はこれからも体の機能を失い続けて...」

「でも、十二体のバーテックスは倒したんだから...! 大丈夫だよ、東郷さん」

「友奈ちゃん...」

「倒したのはすごいよね、私たちの時は追い返すのが精一杯だったから」

「そうなんですよ、もう戦わなくていい筈です...!」

 

「...そうだと、いいね」

 

 友奈の言葉に応えた乃木さんの言葉は、何処か含みを持っているように感じたけれど、今聞かなきゃいけないのはそれじゃない

 

「失った部分はこのまま、なんですか...? どうにかして治す方法は...」

「治りたいよね、私も治りたいよ...歩いて友達を抱きしめに行きたいよ...」

 

「友奈ちゃん、徹くん...!」

 

 気が付くと、俺達の周りを囲むように大赦の人達に囲まれていた

 

「大赦の人たち...?」

「彼女たちを傷つけたら許さないよ、私が呼んだ大切なお客様だから、あれだけ会わせてって言ったのに会わせてくれないんだもん、先生たちの事は締め出しちゃうから頼れないし、しょうがないから自力で呼んじゃったよ~」

 

 乃木さんの言葉を聞くと、大社の人達は一斉に乃木さんを崇めるように地に頭をつける

 

「私は今や半分神様みたいなものだからね、崇められちゃって困ってるんだ~。あっ、安心してね、あなた達も丁重に元の町に送ってもらえるから」

 

 俺たちに笑顔を向けてくる乃木さんを俺たちは見る事しかできなかった

 

「悲しませてごめんね、大赦の人達もこのシステムを隠すのは一つの思いやりではあると思うんだよ~...でも、私はそういうのちゃんと言って欲しい人だから...もっと、たくさん遊んで...いっぱい思い出作りたかったから...!」

「...師匠は、乃木さん達に教えなかったんですか?」

「教えてもらったよ...それでも、自分たちで決めた事だとしても...やっぱり辛かったから」

 

 俺の言葉に応えながら涙を流していた乃木さんに、東郷が近づいていくと自分の手で乃木さんの流す涙をぬぐう

 

「...そのリボン、似合ってるね」

「このリボンは、とても大事なもの...それだけは覚えているけど...ごめんなさい、私、思い出せなくて...」

「仕方がないよ~...」

 

「方法は...このシステムを変える方法はないんですか!」

「見つかってないってのが現状だよ」

「師匠...」

 

 友奈の問いに答えたのは乃木さんじゃなかった、声の聞こえた方を見るとやって来てたのは俺の師匠

 

「久しぶりだな、乃木」

「うん、先生も久しぶり~」

「...お互い、随分と変わっちまったな」

「そうだね、先生も相変わらずボロボロだ」

「それをお前に言われるとはな」

 

「それで師匠、見つかってないって、どういう事なんですか?」

 

 乃木さんと話していた師匠に話しかけると師匠はゆっくりとこっちを向く、その目は普段俺に向けるものではなくここじゃない何処かを見つめてるように見えた

 

「神樹の力を使えんのは、勇者だけ...その中でも勇者になれんのはお前らだけだ...俺達も色々やったが、システムを変える方法は見つかんなかった」

「そんな...」

「力になれなくてすまない」

「師匠...」

 

 ふと、花が舞いざぁっと音が鳴り響く

 

「返してあげて、彼女の街へ」

 

 そう言ってからすぐに、乃木さんは東郷の方を向く

 

「いつでも待ってるよ、大丈夫...こうして会った以上もう大赦側もあなたの...ううん、あなた達の存在をあやふやにはしないだろうから...」

 

 乃木さんは言葉を続けながら視線を東郷から一瞬だけ俺に移して再び東郷に戻した

 その後俺たちは師匠と乃木さんの二人を残して大赦の人が運転する車で讃州まで戻った

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、先生はどうしてここに来たの?」

「急に気配を感じたからな...どうやらこの体は自分が思ってた以上に勇者とかの存在を感じやすくなってるらしい」

「...そうなんだ」

 

 八重樫たちを見送った俺は、乃木と二人になった空間で話をする

 半分神様として崇められてる存在の言葉は相変わらず権力が他の比ではないらしく、二人で話したいと彼女が言ったらその意見はあっさり通った、こっちとしても二人の方が話しやすいから助かる

 

「そういえば、安芸先生は?」

「元気にやってるよ、今は春信と一緒に色々駆け回ってる所」

「そっか...みんな頑張ってるんだ」

「...三ノ輪もな」

「ミノさん...そっか」

「あぁ...まぁ、なんだ...だから荒事は任せろ、保証はないが死ぬまでにはなんとかしてやる」

「そう言う所は相変わらずだね、先生」

「昔っからそうだからな」

 

 そういった俺の事を見てた乃木は笑顔から一転真剣な表情に変わる

 

「ねぇ...先生は一体誰の事を見てるの」

 

 そう言った乃木の声は今までとは違う真剣なもの...そしてそれがどういう意図で発せられた言葉なのかは理解出来た

 

「先生は私達が戦ってた頃からいつも私達じゃない別の誰かを見てたよね...先生って、一体何なの?」

「それを教えるのはここじゃない方が良い...お前らと、讃州中学の全員が揃った時に絶対話す」

「...わかった、約束だよ?」

「あぁ、約束だ」

 

 俺の事を話すのは、きっとこの場所じゃない...いつか、あいつらが全員揃った時に、すべてを話そう

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