不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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第拾漆話、投稿です


第拾漆話 犠牲

「東郷、今日も休みなんだな」

「あっ、徹くん...おはよう」

「おう、おはよう」

 

 教室に入ってすぐ友奈に挨拶をすると、東郷の机がある方を見るが...どうやら今日も休みらしい

 あの日、東郷から話を聞いて以降、彼女は学校を休む事が多くなっている。勇者システム関連の何かを調べているのは分かっているが、何をしているのかは俺達にも教えられていない

 そんなことを思っていると友奈の様子が少し暗いことに気付く

 

「やっぱり、東郷の事が心配か?」

「うん、東郷さん大丈夫かな...」

「それだけ心配なら、今日お見舞いにでも行くか」

「お見舞い...?」

「もしかしたら風邪ひいて寝込んでるのかも知れない、部活が終わったらお見舞いに行こう」

「うん! 行こう、お見舞い!」

 

 俺がそう言うと、友奈は明るい表情に戻り笑顔で返事を返してくると、何かを思い立ったように席を立った

 

「どっか行くのか?」

「東郷さんに連絡してくる!」

「待て待て待て、もうすぐ先生が来るぞ? 連絡するにしても部活の前とかにした方が良いだろ」

「でも...」

「でもじゃない、それに今すぐ連絡したら東郷が気を遣うかも知れないだろ」

「...わかった」

 

 一応納得したであろう友奈が席に戻った所で、先生が教室のドアを開けて入ってくるのが見えたため、俺も急いで席に着いた

 

 

 

 

 

 

 それから時間は進み放課後、席を立った友奈は一足先に部室に向かって走って行ってしまった

 

「ねぇ、友奈何かあったの?」

「夏凜か」

「夏凜かじゃないわよ、それで何かあったの?」

「実は部活終わったら東郷の見舞いに行くことになってな、夏凜も行くか?」

「...私は別にいいわ」

「そういう割に、別に良いって顔してないが?」

「う、うっさいわね...良いから部室に行くわよ」

「はいはい、分かった」

「はいは一回」

「...はい」

 

 俺と夏凜が部室に向かっている途中で、友奈に追いつく

 

「友奈」

「徹くん、夏凜ちゃん」

「どうだった?」

「留守電だった...」

「でも、留守電は入れといたんだろ?」

「うん」

「なら、帰りがけに立ち寄ればいいだろ、とりあえず...今は部活に行こう」

 

 とりあえず、ここ最近はまっとうに部活動もできていなかったし、そろそろ活動を再開した方が良いだろうと思ったところでスマホからけたたましいアラームが鳴り響く

 

「「「!?」」」

「何!?」

「敵!? だけど敵は俺達が全部倒した筈じゃ」

「おかしいよ、アラームが鳴りやまないッ!」

 

 困惑する俺達を他所に、世界は光に包まれ樹海と化す

 

「樹海化した...?」

「どうして、敵は全部倒したのに...」

「とりあえず、まずは勇者にならないと...樹海化した以上、敵が来るのは間違いないし」

 

 夏凜の言葉を聞いた俺達は勇者服を纏うと、スマホのマップアプリを起動して敵の位置を確認するが、そこに表示されていたのはいつもと全く違う、自分たち以外の位置が真っ赤に表示されている様子

 

「なに...これ」

「赤いの全部が敵...ほんとに、何が起きてるんだよ」

「...東郷さん」

「東郷がどうした?」

「東郷さんが、敵の近くにいる...行かなきゃッ!」

「友奈ッ!?」

「夏凜、友奈を頼む!」

「ちょっと、どこ行くのよ」

「風先輩たちに合流するッ! とりあえず状況を伝えないと!」

「...わかったわ!」

 

 ひとまず友奈の事を夏凜に任せると、俺は風先輩たちの方に向かっていると先輩たちも考えてることは同じだったようで思ったよりも早く合流することが出来た

 

「徹!」

「風先輩! 樹ちゃん!」

「これ...一体どういう事よ」

「俺にもわかりません、でも友奈が東郷の方に向かって...ッ!」

 

 風先輩に状況を説明しようとした瞬間、俺達に襲い掛かって来たのは人の歯を付けたような気持ちの悪い化け物

 

「なんだ、こいつら」

「さっきから一体、何なのよッ!」

「...ッ!」

 

 三人で背中合わせになると、襲ってくる化け物を一匹ずつ潰していく

 

「こいつら、一体一体はそんなに強くない」

「けど、こうも数が多いとキリがないわよ」

「ここは...使うしか」

「駄目よ」

「風先輩...けどッ!」

「絶対にダメ...満開は、本当に必要になった時に使いなさい」

「じゃあ、どうするんですか...?」

 

「とりあえず、お互いにフォローしあいながら東郷のところに行くわよ、何をしたか問い詰めてやるんだから!」

「了解」

 

 風先輩の言葉に樹ちゃんもぐっと拳を握りオーケーの合図をすると、三人で移動しながら壁を目指す

 

「徹ッ!」

「任されましたッ!」

「!」

「ナイス樹!」

 

 風先輩が道を切り開いて、俺が風先輩の撃ちもらした敵を、そして樹ちゃんが俺達の死角になっている所から来る敵を倒し続ける

 そうして三人で進んでいると、俺達とは離れた場所で大輪の華が咲くのが見えた

 

「満開...」

「今は、東郷の方に行きましょう...きっと大丈夫だから」

「...わかりました」

 

 それから俺達は何度も花が咲き続けるのを横目に見ながら進み続けて、東郷の場所に辿り着く

 

「東郷ぉぉぉ!」

「風先輩...ッ!」

「あんた、自分が何をしたか分かってるの!?」

「それでも、この光景を見たらわかる筈です。この世界が...大赦のやり方が、勇者と言う存在がいかに悲惨なものか、私達が救われる方法はこれしかない...!」

「それでも...私は部長として、先輩として...アンタを止めるッ!」

「わかってください」

 

「今だ、樹ちゃんッ!」

「ッ!」

 

 東郷が風先輩に銃を向けた瞬間、樹ちゃんが糸を使って東郷の腕を絡めとる

 

「東郷」

「八重樫くん...」

「これ以上は、流石に見過ごせない」

「八重樫君、貴方ならわかるでしょ...この世界がどれだけ悲惨なものか」

「そうだな、今の光景はまるで地獄だ...」

「それなら...」

「けど、それでも俺は止めるよ...この世界を、壊させない」

 

 俺はそう言うと東郷に一撃喰らわせる

 

「少し頭を冷やせ...風先輩、俺達も友奈たちのところに」

「そうね...樹、どうかした?」

 

 樹ちゃんの指さした方を見ると、小さい奴らの動きが止まっている

 

「小さい奴らが動いてない...」

「敵の侵攻が、止まってる? ...一体何が」

 

 俺たちが敵の方を向いた直後、背後で大輪の華が咲いた

 

「な...!?」

「三人とも、退いてください」

「どくわけ、ないでしょ!」

「東郷...お前は一体何をッ!」

 

「ごめんなさい」

 

 満開をした東郷はその一言の直後、神樹様に向かって主砲を放った

 

「させないッ!」

「無茶苦茶にも...程があるだろッ!」

「...ッ!」

 

 三人で必死にその一撃を抑えるが、満開した勇者の一撃は強力で、俺達のバリアは破れそのまま地面に激突する

 

「くっ、スタミナが...」

「まだ、動...ッ!?」

「樹! 徹!」

「風先輩...」

「あんた...その腕」

「まだ、大丈夫です」

「大丈夫な訳ないでしょ! 何があったの!」

 

「バリアのダメージが容量を超えたんだよッ!」

 

 風先輩の問いに答えたのは、俺ではなく師匠の声だった。師匠は上空に浮遊している小さい奴を切り裂きながら俺達の元にやってくる

 

「勇者部ってのは、どいつもこいつも思い切りが良すぎるだろ」

「師匠...」

「どういう事ですか、バリアのダメージ容量って」

「詳しい話はもう少し後だ...まだ動けるな」

「私は大丈夫です」

「それなら、話は移動しながらだ」

 

 師匠は俺の事を背負うと移動を始める、風先輩も師匠の樹ちゃんを背負って師匠の後を追ってきている

 

「それで、どういう事なんですか?」

「八重樫の勇者システムには精霊がいない、つまりお前らの勇者システムに比べると不完全な代物なんだ...それは勇者が普通に使える者にも影響する」

「それって...」

「思ってる通りだ、それで今日はそれを補うための端末を八重樫に渡そうとしてたんだが...状況が変わったから、なッ!」

 

 俺を背負ったまま襲ってくる小さいのを蹴散らしながら樹海の陰に隠れる

 

「ふぅ...お前らはここで休んどけ」

「貴方は、どうするんですか?」

「決まってるだろ...世界を救いに行ってくる」

「けど、師匠一人じゃ...」

「心配すんな、これでもあいつらとの戦闘経験だけは豊富だからな...っとそうだ、ほれ」

 

 師匠は俺にやけに傷の多い端末を投げて渡してくる

 

「これは」

「さっき言ってた、お前の補助端末...後は任せたぞ」

 

 そう言うと師匠は、振り返ることなく東郷と、あの巨大バーテックスが居る方に戻って行ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この体も後どれだけ持つか...文字通り時間との勝負って奴だな」

 

 八重樫たちと分かれた俺は一人で、アイツらに対して立ちふさがる

 

「よう、随分と意気な散歩だな」

「...不知火先生」

「その呼び方、乃木から聞いたのか?」

「やっぱり、そうなんですね」

 

 どうやら東郷に鎌をかけられたらしい

 

「やっぱり、不知火先生は前の勇者に関係があったんですね」

「その通り...関係者って言うか、ほとんど教え子みたいなもんだったな」

「なら分かってる筈です、それなのにどうして!」

「愚問だな...そんなの、終わらせない為に決まってんだろ」

 

 アイツらと戦ってた日から、それだけはずっと変わらないものを今更変えようがない

 

「それじゃ、そこを退いてもらおうか...俺が用あるのはお前じゃねぇ、お前の後ろのクソ野郎だ」

「それは出来ません」

 

 その言葉と共に東郷は俺に向かって一撃ぶっ放してきた、この際だ...大盤振る舞いで行こう

 

我が身に降りよ! (力を貸せ)輪入道!」

 

 久々に感じる体を蝕まれる感覚に耐えながら、俺は武器を槍から旋刃盤に変化させ、力が完全に体の中に入った直後、肥大化させた旋刃盤で東郷の一撃を防ぐ

 

「その姿は...」

 

「とりあえず説教は後にして...鷲尾、さっさとそこを退かしてやるから、覚悟しタマえ」

 

 自分のタイムリミットを早めるだけだが...それでもやらないよりはマシだと考え、かつて共に戦った姫百合の勇者(大切な仲間の一人)と同じ切り札の外装を纏い、俺は鷲尾の前に立ちふさがる

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