不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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書いているうちに、不知火くんの事を診察してくれたお医者さんに名前を付けたくなったので付けました


3話-質問-

 目を閉じて、さっき起こった戦いの事を考えていると扉の開く音が聞こえてくる。

 

「おぅ不知火! さっきぶりだな!」

「あぁ、さっきぶりだ」

 

 タマの言葉に反応しながら、体を起こすとタマと杏の二人以外にももう一人、初めて見る少女がいた。その少女は俺に会釈をした後言葉を発した

 

「初めまして、不知火要さんですよね?」

「あぁ、君は」

「私は上里ひなたと言います」

 

 彼女が一緒に来たという事は恐らく勇者の関係者なのだろうと考えていると彼女は俺に声をかけてきた

 

「不知火さん、疲れてると思いますが幾つか質問をさせていただいても良いでしょうか?」

「大丈夫、質問に答えるくらいは出来る」

「なぁひなた、タマと杏もここにいて構わないか?」

「要さんの事は、私たちも聞きたいです」

「...要さん、構いませんか?」

「問題ない」

 

 上里にタマ、杏の三人は丸椅子に腰をかけると、上里がカバンの中に入れていたノートパソコンを取り出す

 

「それでは、質問を始めます」

「あぁ」

 

 パソコンの画面を見ながら上里は質問を始める

 

「一つ目の質問です。あなたの名前を教えてください」

「不知火要」

 

「二つ目の質問です。性別と年齢を教えてください」

「性別は男、年齢は15だ」

 

「三つ目の質問です。あなたは何処から来ましたか?」

「壁の外だと思う...すまないが詳しい場所は覚えていない」

「覚えていない?」

「あぁ、さっきの戦いで昔の事を少しだけ思い出したが、詳しい場所はまだ覚えてないんだ」

「わかりました、それでは次の質問に移ります」

 

「四つ目の質問です。あなたはバーテックスと戦った時に不思議な力を使っていたと聞きました、その力はなんなんですか?」

「俺が使った力は血を操る力...だと思う、詳しいことはまだ思い出せてないんだ」

「どういうことですか?」

「俺が思い出せたのは力の使い方だけで、どうしてこの力を使えるのかはまだ思い出せてないんだ」

「そうなんですか?」

 

 それから新たに二つ三つ質問をされた後、上里は軽く息を吐くと再び話し始める

 

「それでは、最後の質問です...不知火さんは勇者の事をどう思っていますか?」

 

 上里にその質問をされた瞬間、頭の中に今まで見たものとは別の記憶が流れ込んでくる

 

 前に見た荒廃した街に立っている、俺ともう一人の少女

 顔がはっきりと見えないその少女は笑みを浮かべているが何処か寂しそうに見えて、手を伸ばそうとしたところで上里の声が聞こえてきた

 

「不知火さん、大丈夫ですか?」

「...あぁ、問題ない。それで勇者をどう思っているかだったか?」

「はい」

「勇者の事はまだわからない、けれど助けになりたいとは思ってる」

「そうですか...質問は以上です、ありがとうございました」

 

 上里が質問を終えると、横で静かにしていたタマが俺のことを小突いてくる

 

「助けになりたいとか、いいこと言うじゃねぇか」

「そうか?」

「そうですよ、助けになりたいって言ってくれるだけでも勇気が湧いてきますから」

 

 タマと杏からそう言われた俺は少しのむず痒さを覚えていると、ノートパソコンを閉じた上里が二人に言う

 

「球子さん、杏さん、お二人は不知火さんに伝えることがあったんじゃないんですか?」

「そうだった、よく聞け不知火! お前はタマたちと同じ学校に通うことになった!」

「学校?」

「はい、私たち勇者は全員一つの教室で授業を受けてる...それだけじゃなくて共同生活もしているんです」

「なるほど」

「ほんとは大社が適当なアパートの一室を用意する予定だったんだけど、戦いでのことを聞いた大社が急いで手配したんだ!」

 

 タマの言葉に出てきた大社と言うのは恐らく勇者を支援する組織か何かなのだろう、仮に勇者と一緒に生活することになるのなら関わることもあるだろうから、心の片隅に留めておくことにする

 そんなことを考えていると上里が俺たちに言葉をかけてくる

 

「あまり長居するのもどうかと思うので、今日の所はそろそろお暇しましょう」

「そうだな、タマたちはここら辺で失礼するか」

「ちょっと待ってくれ、俺は今日で退院じゃなかったのか?」

 

 昨日の段階では昨日一日大事を取ってと言う話だった筈だ、もう一日入院するのは病院側にも迷惑がかかるだろう、そんな俺の考えを読み取ったのか杏が疑問を解消してくれた

 

「病院側には大社が事情を説明して置いたらしいので心配はいりませんよ、要さん」

「...何も言ってないんだが」

「要さんは意外とわかりやすいですから、ね? タマっち先輩」

「おう! 不知火は意外とわかりやすいぞ!」

 

 出会って間もない二人にそう言われるという事は、意外とわかりやすいのだろう

 その後、三人は病室を後にすると、入れ違いで昨日俺の事を診察してくれた医者が入ってくる

 

「やぁ、息災かい?」

「一応」

「勇者と一緒に戦ったんだってね、大社から説明を受けた時はビックリしたよ」

「そうですか?」

「あぁ、勇者たちが戦っていると聞かされても私達にそれを確認する方法はないからね」

 

 医者の言葉を聞いて昨日樹海と呼ばれる場所に行く前に起こっていたことを思い出す。

 まるで世界のすべてが静止したような静寂それは周りが静かになっただけでなく本当に世界の時間が止まっていたらしい

 

「何か考え込んでいる所で悪いが、またついてきてくれないか?」

「また検査ですか?」

「あぁ、大社からの依頼で君の身体を検査するように頼まれたんだ...可能であれば血液のサンプルも取ってくれとね」

「不満そうですね」

「当然だろう、私達医者の仕事は患者の病気を治し、健康になった人を笑顔で送りだす事だ...検査に関しては私の方でもう一度しようと思っていたが血液サンプルに関しては少しね」

「立派なんですね」

「立派なんかじゃない、私のくだらないプライドだよ...それじゃあ、そろそろ移動しようか」

「わかりました」

 

 そういって俺と医者は病室から検査室に移動している最中に、あることを思い出した。

 俺はこの医者の名前を聞いていない、たった二日とはいえお世話になった人だから、忘れないようにしっかりと名前を聞いておきたい

 

「あの、名前を聞いても良いですか?」

「あぁそういえば名乗ってなかったね...三好冬吾(みよし とうご)、それが私の名前だ」

「三好さんですか」

「冬吾でいい、そっちの方が私としても気が楽だ」

「わかりました、冬吾さん」

 

 それから検査が終わったのは、日付けが少し変わったころだった

 これは余談になるが、食いちぎられた右腕は完全に修復されていたが僅かに跡が残っておりそれを冬吾さんに質問され、正直に答えたら説教されてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 検査を終え、晴れて退院となる日

 病室に置かれていた僅かな荷物を纏め、冬吾さんと共にエントランスで迎えを待っているとタマと杏がこちらに向かってきているのが見えた

 

「おーい! 不知火ー!」

「お待たせしました、要さん」

「俺もついさっき荷造りが終わったところだから気にしなくていい」

「そっか! それじゃ早く行くぞ!」

「ここから少し歩きますけど、大丈夫ですか?」

「心配ない、体力には自信があるからな......冬吾さん、お世話になりました」

 

 俺は冬吾さんの方を振り返り頭を下げると、柔らかい笑みを浮かべながら冬吾さんは俺に言った

 

「気にしなくていい、患者が退院するのは喜ばしいことだからね」

「本当にありがとうございました」

 

 もう一度深く頭を下げた俺は、二人と共に病院から出て新しい住居がある丸亀城へと足を進めた

 

 

 丸亀城に着いた俺は二人と共に教室の前に立つ、二人が先に入っていったのを見ていた俺は一、二回深呼吸をして教室の中に入る

 教室の中にいたのはタマと杏を含めた六人、全員ここ数日の間に出会った少女たちだ、そんな彼女たちに向かって俺は軽く頭を下げて言葉を紡ぐ

 

「不知火要です、これからよろしくお願いします」

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