さてと、とりあえず全員の実力を見てみたが
「てんでダメ…って訳じゃないが、なーんかピンとこねぇんだよな」
全員そこそこなんだがピント来る奴がいねぇ
「そんじゃ、次は…」
「私です」
「そか、そんじゃ、お手柔らかに頼む」
次の相手は楠か、武器は他と同じく銃剣…まぁそれが防人のメイン武装になるから当然か、訓練で実弾使うわけにもいかないから中身はペイント弾だけど
「それでは、始め」
「ッ!」
「まずは真正面からか…いいねぇ嫌いじゃない」
まずは銃撃で様子を見たりすることが多かったから、こうして真正面から来るのは嫌いじゃない
「が、そうそう当たる程俺は弱くもない…って、あぶねッ!」
楠の振るってきた銃剣をひらりと避けて距離を取るとすかさず銃撃、慣れてりゃ出来る芸当だがここでお目にかかるとは思わなかった
「…ギア上げるか」
「えっ?…ッ!!」
思いっきり大地を蹴って楠まで接近すると右足軸で体を回転させて蹴りを放つ、がこれもガードされた…こっからどうするか見ようと思った矢先、しゃがんだ楠が軸にしてた右足を蹴って俺の体勢を崩した
「貰ったッ!」
「そう簡単には、やらねぇよ」
俺もそうそうやられるわけにはいかないからな、体勢は崩されたが今度は腕を軸にすりゃいいだけだ…と言うわけで右手を地面につけると側転の要領で体を動かして体勢を元に戻す
「そんな…」
「ここまでだな」
正直、負けはしないがこれ以上やっても時間の無駄になりそうだしここら辺でやめとくのが得策だ。楠は不服そうだったがこれ以上付き合う気もない
「お疲れ様です…それでは、結果を」
「…少しも休ませてくれない感じですか」
「結果は決まっているでしょう、発表したら後は休んでもらって構いません」
「はいはい…そんじゃ、隊長を誰にするか発表するぞ」
集まった防人等の前で誰を部隊長にするのかを発表する
「防人部隊の隊長は、楠芽吹」
「はい」
「それじゃ、そう言う事で」
そう言い残して俺は訓練所を後にした
それから時は進み、防人たちが初めての御役目の日
「なぁ神官さん、俺は同行しなくても大丈夫なのか?」
「はい、不知火さんはあくまで教官…それに、今回は防人たちに経験を積ませる必要もあります」
「経験…か」
そりゃそうか…でもやっぱり心配なんだよな
「なぁ…気づかれないようについていくのは…」
「駄目です」
やっぱそうだよなぁ…でも心配なんだよな、少し過保護になりすぎてる気もするが勇者システムに搭載されてるバリアが無い…代わりに装備されてる盾は結構な耐久を誇ってるがそれでも不安なのに変わりないんだよなぁ
「はぁ…」
心配するだけ無駄だとわかるが、今の俺には防人たちを見送るしかできなかった…ヤバそうだったら今度は無理にでも同行しようと心に誓う…それから数時間後、帰ってきた彼女たちはボロボロだったが、犠牲者は一人もいなかった
「ごめん…本当に、ごめんなさい」
「あなたはそれでいいの!?せっかく防人として訓練してきたのに、ここで諦めたら何もならない!人が少なくなったら、私たちの任務だって――」
「ごめん…私には無理だったんだよ、ごめん…」
喉か湧いたからエレベーター前の自販機まで行こうとしたところで、楠の部屋から何度か聞いたことある問答が聞こえてきた…防人たちが初めての任務を行った後、心が折れてゴールドタワーを去る子が現れ始めた…それに関しては予想出来た事だから仕方ない
「っ!…ごめんなさい」
盗み聞いていると、楠の部屋から出てきた少女とばったり出会い謝れた
「別に謝んなくていい…それより、少し時間良いか?」
「…はい」
自販機近くのベンチまで行くと、水を一本買って彼女に渡す
「どうぞ」
「…ありがとう、ございます」
一人分間隔をあけて、ベンチに座った俺は彼女に話しかける
「先に謝っとく、楠の部屋での会話盗み聞ぎした」
「…いえ、大丈夫…です」
「そっか…それで、防人辞めたいんだよな」
「はい…私には、無理です」
話してる彼女の肩は震えてた、大方壁の外の光景を思い出しちまったんだろうな
「その事で、俺は君を止めるつもりはない」
「えっ?」
「だってそうだろ、あんな地獄を目の前にバケモンと戦うんだ…怖くて当たり前、トラウマになっても仕方なしだ」
それが当たり前の反応で、人として正しい反応だからな
「…だから、俺は君が辞めるのを止めないし楠みたいにもう少し考えてみてって言う気もない」
「じゃあ…どうして私を?」
「なんつーかなぁ、強いて言うなら思い詰めて欲しくなかったからだよ…あんな光景見て、戦って、ビビッて逃げて…それが悪いとか一切ない、だから罪悪感なんざ感じなくていいって事を伝えたかっただけだ」
そういい終わるとベンチから立ち上がって彼女の方を向く
「とりあえず言いたかったのはそれだけ、時間貰っちまって悪いな」
「いえ…なんだか、少しだけ楽になった気がします」
「そりゃよかった…じゃあな」
同じく彼女の事を見送ると、俺はエレベーターに乗って展望台から外の景色……いや、丸亀城を見る
「そうだよ…ビビッて、足がすくんで、逃げんのが当たり前だ」
アイツらも、勇者部も、鷲尾達も…若葉たちも少なからずそう言う感情はあったと思う。だけどもし、その恐怖を感じ無い奴がいるとしたら――
「そいつはきっと、よっぽど覚悟がキマってるか……とっくにぶっ壊れてるかのどっちかなんだろうな」
楠には後者であって欲しくないな、などと思っているとエレベーターからチンと音が鳴り、中から楠が出てきた
「よう」
「…どうも」
「お前も黄昏に来たのか?」
「いえ…少し、考え事がしたかったので」
「それって、防人をやめたいって言った子をどうにかして引き留められないかって事か?」
「ッ!?…どうして」
「これでも、他人の考えを読むのは得意なんだよ」
まぁ実際には、楠と彼女の話していた内容からざっと推理しただけだがな…気配を感じて少し視線を動かすと、隠れてこっちを見ている安芸ちゃんの姿が見えた。大方補充要員の事を伝えに来たんだろう
楠に見えないように伝えておくと安芸ちゃんに合図を送ると、もう一度話を始める
「そういえば、楠は補充の話は聞いてるか?」
「補充…?」
「あぁ、防人の御役目を辞退したいって子が二人、それに先の御役目での重傷者が二人…戦力的には痛てぇだろ?」
「…そうですね」
「だが、次の御役目まで回復を待ってる時間もないし、待つ気も更々ない…そして、能力的に優秀な指揮官型には欠員が出てない」
「まさか…補充って…」
「そういうこった」
補充、その意味をある程度理解したであろう楠は、怒りと…そして戸惑いのような感情を見せた
「もしそれに不服があるなら、俺から言えることは一つ…強くなれ、そして認めさせてやれ、お前らはその程度の存在じゃないって事を」
「…失礼します」
響いたのかは知らないし俺の知ったこっちゃねぇがな、エレベーターの扉が完全に締まると影に隠れてたであろう安芸ちゃんがこっちにやって来た
「すみませんでした」
「すみませんって、何が?」
「要さんに…役割を押し付けてしまって」
「別に、これで嫌われたら仕方ないし…嫌われるのには慣れてるからな」
雪花と一緒に生活してた頃から今に至るまででどんだけ他所の連中から負の感情を向けられたか、最初は胸糞悪かったが今じゃもう慣れちまった
「それより、補充要員は?」
「全部で四人です、明日の朝…楠さん達にも伝達します」
「そか…あれならその役目も俺が変わるけど」
「いえ、私にも私のやるべきことがありますから」
やっぱ、安芸ちゃんは強いな…俺の周りにいる奴らは、俺なんかよりずっと強い
「どうかしましたか?」
「…いや、あの時はチビ助だった安芸ちゃんも随分成長したなと思ってさ」
「……からかってます?」
「そんな訳ないじゃん、そんじゃ…俺も部屋戻るから」
最後にもう一度だけ丸亀城を見るとエレベーターに乗り自分の部屋へと戻った