不知火 要は勇者でない   作:SoDate

71 / 110
神世紀300年/冬~神世紀301年-結城友奈は勇者である 勇者の章-
勇者の章,1-1 日常


 バーテックスとの戦いが終わり、勇者としての役目を終えた俺たちは、元の日常を謳歌していた

 

「讃州中学勇者部は、勇んで世の為になることをするクラブです。なるべく諦めない、成せば大抵何とかなるなどの精神で頑張っています。今日も勇者部、しゅっぱーつ! っと」

「小学生の作文か」

「中学生だよ」

 

 なんかこのやり取りもすっかり懐かしくなってしまった俺は、友奈たちのやり取りを聞きながらお茶を飲む……それにしても、なーんか今まで飲んでたのに比べると味が落ちてるような、違うような……自分でいれたからか? 

 

「友奈ー、タウン誌で勇者部の活動を紹介してもらうんだから、良いキャッチコピー考えてよね」

「はーい」

「あの、風先輩。お茶の葉買い替えました?」

「えっ? 別に買い替えてないと思うけど」

「ですよねぇ、やっぱ淹れ方の問題か……」

 

 一応風先輩に確認を取ってみたものの、やっぱりお茶の葉を買い替えたリはしてないらしい……となるとやっぱり淹れ方の問題か、普段通り淹れた筈なのになんだこの言い知れぬ違和感というか、物足りなさは

 

「お姉ちゃん! 幼稚園からお礼のメールが沢山来てる!」

 

 パソコンの前に座っていた樹ちゃんからそんな言葉が飛んできた、とりあえず全員につられるように俺もパソコンも近くまで行きモニターを確認すると、確かにかなりの量のお礼メールが受信ボックスに入っているのが見える

 

「ふむ、この間のはバカ受けだったからねー」

「親御さんは苦笑いしてたわよ」

「確かに苦笑いしてたな……それより、やっぱりお茶の葉変わってない?」

「アンタはまだそれ言うか」

 

 そんなことを話しているとガラガラッと部室の扉が開き新しい声が一つ、聞こえてくる

 

「ごめんごめん~! もう始まってるー? 掃除当番の途中で寝てしまったんよ~」

「園子……そんな時に寝ることが出来るのはあなたくらいよね……」

「わぁ! 褒められた―!」

「良かったね! 夏凜ちゃんはなかなか人を褒めないんだよ」

 

 と、三人が話していると園子の背後からさらに新しい声が聞こえてきた

 

「すみません遅れましたー! 実は部室に来る途中体調悪そうな子を見かけちゃって保健室に送ってました!」

「相変わらずその体質は治ってないみたいだな、銀」

「いやー、むしろ酷くなってるというか……寝てた分の反動が一気に来てるというか」

 

 散華の代償で意識を失っている間に随分とため込んだ……らしいのだが俺にはそこら辺よくわからない

 

「それじゃ、”全員揃った”ことだし。十二月期の部会、始めるわよ!」

 

 人数が増えた讃州中学勇者部だが、それでもバカみたいに元気にやっている……のだが、どうにもうっすら違和感があるような

 

 

 

 

 そんな中で今回の部活を終え、友奈と二人で帰宅途中な訳だがやっぱり心の中にある違和感がぬぐい切れない

 

「徹くん、どうかしたの?」

「えっ、いや……何でもない」

「徹くん、悩んだら相談。だよ?」

「わかってるよ」

 

 そんなことを話していると、そういえば最近師匠に会ってない事を思い出した

 

「そういや友奈、最近師匠経由の依頼ってあったっけ?」

「師匠って、不知火さん……だよね?」

「あぁ、そういや最近姿を見かけないなぁと思ってさ」

「うーん、どうなんだろ。でも、確かに最近不知火さんの名前聞かないかも」

「だよなぁ、一体どこで何をしてるんだか」

 

 ふと目に映った夕焼けを見ながら、俺たち二人は再び帰り道を歩き出した

 

 

 

 

 

 四国、壁の外。俺の目に映るのはこちらに向かってくる大量の白い塊と、空高い場所にあるブラックホール

 

「ったく、いい加減思い切りが良すぎる性格どうにかなんねぇのかよ。大和撫子っつうには少しお転婆が過ぎんだろッ!」

 

 誰に聞かせる訳でもなく……いや、どうせ聞こえてないだろうがあのブラックホールの中にいるであろう少女に対してそんなことを言いながら左手に持った槍を振るう。こっちの事を噛み殺そうとしてくる星屑どもだが、もうこの程度に負ける程落ちぶれちゃいねぇ

 

「届くかわかんねぇけど、飛んでみるか」

血戦偽装(けっせんぎそう)── 大天狗(おおてんぐ)

 

 身体の内側から焼かれていくような感覚と共に溢れ出る血液が陣羽織を形作り、背中から赤黒い一対の翼が出現する。そして手に持っていた槍の形状も変化し、納刀された状態の日本刀になった

 周りに集まってきた星屑どもを無視して翼をはためかせると上空にあるブラックホールに向かって一直線に飛ぶ、時折近づいてきた星屑を足場にしつつ少しずつ近づいていったのだがあと一歩という所で、足場にしていた星屑に何かが衝突し、爆発した所為で足止めを食らう……というか爆発って事は

 

「やっぱ乙女座……それも中途半端に完成してるんじゃなく外観完璧に出来上がってる奴か、面倒だな」

 

 真正面から叩き潰すのは簡単にできるが、今だって血戦偽装でゴリゴリ体力を削られてる状態……これで乙女座相手して倒した後ブラックホールに突っ込んで体力なくなってお陀仏は流石に避けたぃ

 

「乙女座倒して今回も撤退だな」

 

 こっちに向けて相変わらず爆弾を撃ち出してくる乙女座を避けつつ接近し、まずは爆弾の発射口をぶった切る。まずは攻撃手段を奪い後は輪切りにすれば……それで終わりだ

 

「輪切りにしてすぐ消えたって事は御魂なしのやつか」

 

 丁度そのタイミングで血戦偽装が解けて元の状態に戻る。上空にいた俺は重力に逆らわずそのまま落下している途中で武器をワイヤーショットに変化させて壁に撃ち込み、そのまま壁の中まで戻る

 

「大天狗の力を借りればあのブラックホールには届くが……アレがマジモンのブラックホールだったら目的の場所に辿り着く前にこっちがぺしゃんこ。一体どうしたもんかね」

 

 現状、あの場所への突入は可能って事は理解できた以上次にやる事は突入方法の模索をするために今の拠点……壁の入口近くに張っているテントに戻ることにする

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。