不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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勇者の章,2-1 捜索

 そして時は流れ、翌日の部室。園子と銀以外の全員が集まったが、結果は散々なものだった

 

「東郷さん、元からいない事になってる……教室に机もないし」

「ウチにあるアルバムからも、須美……いや、東郷は全部消えちまってた。父さんも母さんも覚えてなかった」

「全員……手がかりなしか……」

「みんなから貰った応援メッセージ、消えてますけど……東郷先輩がみんなカボチャって書いてくれたんです」

「たちの悪いイジメみたいじゃない……」

 

 ここまで綺麗に痕跡を消されてしまうと、信じていても少し不安になってくる。それに、ここまで情報がないとなると後調べてない所は大赦くらいしかない。そう考えていたのは俺だけではなかったようだ

 

「大赦なら何か知ってるだろうけど」

「でも、私には何も知らないって……」

「こっちも、同じ答えが返って来たわ」

「っ、また、大赦はとぼけてるってこと?」

「本当に何も知らないみたいだよ。大赦は」

 

 部室の扉を開けて入ってきた園子はさらに言葉を続ける

 

「わっしーの事、私が話せる地位の神官さんたちに聞いたけど、皆震えながら知らないって……」

「大赦すら知らない事態なんて……」

「東郷さん……」

 

 園子が入ってきてから少し遅れて、両手にアタッシュケースを抱えた銀も部室の中にやってきた

 

「園子、預かって来たよ」

「ありがとミノさん」

「気にしないで、結局これしかないみたいだし」

 

 そう言いながら銀が開いたアタッシュケースの中に入っていたのは、七台のスマートフォン。正直身に覚えしかないし……できることなら一生見たくなかった忌々しいモノ

 

「これって……!」

「勇者、システム……」

「でも、これをどうして──」

「私たちが言いに行く前に、大赦の職員さんから渡されたんだ。もし私たちが大赦に来たら渡してあげて欲しいって、頼まれたんだって……これで、見つけに行こう」

「見つけるって……」

「今も変身できるのよね」

「そうだよにぼっしー」

 

 そう言いながら園子はアタッシュケースの一角、不自然に空きが出来ている部分を指さす

 

「見て、わっしーの端末がないんだよ。でも、私の端末のレーダーにわっしーの反応がない」

「園子のだけじゃなくて、アタシの端末にも反応がないし。故障って可能性もゼロ」

「つまり、わっしーは凄くびっくりする所にいるんじゃないかな」

 

 勇者システムを所持しているのならレーダーに映る。でもそこに反応が表示されてないって事は……東郷のいる場所は、まさか──

 

「「……壁の外!?」」

「東郷はぶっ飛んでるからあり得るわね」

「その通り、だから勇者になって行ってみようと思うんだ」

「勇者になったら、また力の代償があるんですか?」

 

 勇者の代償──散華、師匠から聞いたどれだけ技術を進歩させても改善することのできなかった勇者の支払う代償

 

「大丈夫。今までよりも更にバージョンアップして散華することもないんだって……少し力は落ちちゃったみたいだけど」

「なんか、出来すぎてるって言うか……」

「そうよ。いくら新しいシステムになったって……結局また……」

 

 けれど、やるしかない。今の状況を打開できるのは、壁の外に出て東郷を探すには、勇者の力に頼らないといけない

 

「よしっ! 東郷さんを見つける為なら、私は……」

「待ちなさい」

「でも──」

「初めての時とは違うの、私は部長としてみんなをおいそれと変身させたくない。勢いで、何て言うのはやめて」

「乃木、三ノ輪。アンタたちもよ」

 

 風先輩の言う事も最もだ

 

「わかってます」

「うん。たしかに、私たちはひどい目に遭ったけど、勇者が身体を供物にして戦わなければ世界が滅んでいた。大赦はやり方がまずかっただけで、誰も悪くない」

 

 あの人たちも、元を辿れば人類を救うために動いていた人たちだ。只やり方がまずかっただけで、個人が悪かったというのは違う……それでも複雑な気分ではあるし、俺はもうあの組織を信用出来てない

 

「確かに、少しむっとする所はあるけど。それでも私たちの為に頑張ってくれた人たちはいる……だから、もう一度だけ私は信じてみようと思ったんだ」

 

 俺たちの方を見る園子の目には確かな決意が宿っている

 

「だから前とは違う。今度は納得してやるから、私は行くよ」

「アタシも、勇者の力を使うことに納得はしてます」

 

 園子と銀の瞳を見て、俺も自分の端末に手を伸ばす

 

「徹……」

「大丈夫です。確かに大赦は信用しきれません。だけど俺は二人を、二人の信じた者を信用しますし、覚悟はできてます」

「私も、大赦の人とかよくわからないけど、園ちゃんがそう言ってるんだから信じるよ」

 

 俺と友奈は端末を持って風先輩の方を見ると、少し頭を掻いた後に端末を手に取った

 

「……あーもう、部長を置いていくんじゃいわよ」

「風先輩っ!」

「まぁ、勇者部員が行方不明っていうんなら、同じ勇者部員が探さないとね」

「……私も、行きます!」

「にしても壁の外か、樹。とりあえずサプリキメときなさい!」

「ちょっ──」

「今回はキメていきますっ!」

「……良いチームだね」

 

 三人でわちゃわちゃやり始めた三人を見ながら、ぽつりと園子の呟いた言葉を聞いた俺と銀は彼女の頭に軽く手を置いた

 

「やえくん、ミノさん……」

「アタシたちもその仲間、だろ?」

「そういうこった、絶対に帰ってこよう。みんなで一緒に」

「……うんっ!」

 

 決意を固めた俺たちは、もう一度アプリを立ち上げ──友奈たちは勇者に、俺は護人に、再び変身した

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