不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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勇者の章,2-3 突入

 園子が満開で出現させた船に乗ってブラックホールになった東郷の元に向かっている我ら勇者部一同……なのだが

 

「みんな! 乗り物酔い大丈夫!?」

「酔いって言うか……普通にヤバいよこれ……」

 

 ただでさえ壁の外って言う今までとは全く違う環境いるのに加えて、台風以上の暴風に襲われている現在……正直飛ばされないようにするのが精一杯だ。などと考えていると風の中からバーテックスが複数現れる

 

「! 仕掛けてきたか」

「あいつらもしかして、ここ守ってるの……」

「うーん、囲まれちゃってるねぇ」

「私が東郷さんの所へ行くよ」

「ちょっと、大丈夫なの!?」

「大丈夫、絶対一緒に戻ってくるから」

「それなら、俺も一緒に──」

「徹くんは、皆と一緒に私と東郷さんが帰ってくる場所を守って……お願い」

 

 俺の方に視線を向けてきた友奈は、どうやらいつもの絶対に自分を曲げないモードに入ってしまっているみたいだ……押しに弱いのはいつもの事だが、今回ばっかりは仕方ない

 

「わかった、でも……前みたいにあんま待たせないでくれよ?」

「わかってる」

 

「ちゃんと帰ってきなさいよ、友奈。部長命令!」

「邪魔してくるのは私たちで叩いちゃいますから!」

「あんなもんの中じゃ、何が起きても不思議じゃないわ! 気合いよ!」

「ゆーゆ。わっしーの事、お願い」

「アタシからも、須美のこと、絶対連れ戻してきて」

「うん。任せて、園ちゃん! 銀ちゃん!」

 

「よーしっ! それじゃあ、一気に行くよー!」

 

 改めて前を向いた園子は、今までよりも速度を上げてブラックホールの中心部まで向かう、程なくして突入をしても問題ない範囲まで到着したのを見た友奈は改めて俺たちの方を振り返る

 

「それじゃ、行ってきます!」

 

 その言葉を最後に、友奈は船から飛び降りてブラックホールの中へと入っていった

 

 

 

 

 

 東郷さんを助ける為に、私はブラックホールの奥に進んでいく。バリアで守られているけれど、それでも周りの重力が私を押しつぶそうしてくる

 

「……っ!」

 

 後ろからバーテックスが向かって来たけれど、重力に耐えられず潰されてしまった。もし途中でバリアが切れてしまったら私もああなってしまうのだという事を理解すると、恐怖で身体が震えてしまう……けど、怖がってる場合じゃない

 

「東郷さん……」

 

 助けるんだ、絶対に、戻るんだ、みんなの所に

 その思いだけでブラックホールの中を進んでいると、突然視界が真っ白になった

 

「え──?」

 

 真っ白だった視界が元に戻ると、私がいたブラックホールの中じゃなかった。それに目の前にあるのは私の身体

 

「ゆ……幽体離脱!?」

 

 初めての経験にビックリしていると、私のほうに向かって火の矢? みたいなものが降ってきた。咄嗟に受けの姿勢を取ったけれど、火の矢は私の身体に当たり、その部分が焼けるように熱くなる。痛みを感じた瞬間、直感的に理解する

 

「──もし私が砕けたら、身体は、このまま」

 

 何処とも知らない場所、何が起こるのかわからない場所で──そんなことを考えていると、私の目の前に、水の雫みたいなもの。横を通り過ぎようとする雫の中には東郷さんが映っていた。それを見た私が咄嗟にその雫に触れる

 

──そのっちが私たちの中学に来てから、大赦にとって予測してない事態が起こっていた

 

「これって……」

 

──私が結界の一部を壊してしまった事で、外の火の手が活性化してしまっているのだ。このままでは外の炎が世界を飲み込む、大赦が進めていた反抗計画を凍結し、現状を打破する必要があった

 

「今見えたのは……東郷さんの記憶。東郷さん、やっぱり中にいるんだねっ! 他には──」

 

 どうして東郷さんが私たちの記憶から消えたのか、この場所のどこに居るのか、それがもしかしたらわかるかも知れないと思った私は、近くにあった別の雫に触れる

 

──火の勢いを弱めるには、奉火祭(ほうかさい)しかない。それは、神の声が聞こえる巫女を外の炎に捧げ、天の神の許しを請う。昔、西暦の終わりにも行われた生贄の儀式である、と……

 

──今、大赦でお役目を果たしている巫女達数人が、生贄のお役目に選ばれた……だけど、私でもその変わりが出来るという。私は勇者の資格を持ちながらも巫女の力を持つという、唯一無二の存在だとか

 

──悩むまでもない、結界に穴を開けたのは私だ。私は償わなければいけない。友奈ちゃんやみんなが無事なら、私一人なら……

 

──私がいなくなれば、きっとみんなが私を探す……そうしないように、神樹様、お願いします……

 

「東郷さんはいつも突っ走るなぁ、自分をいないことにしちゃうなんて……でも、約束したもん。東郷さんを一人にしないって──だから、何度でも、助ける!!」

 

 瞬間、私の視界は、再び真っ白になった

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