私が目を覚ました場所は、前に一度だけ来たことのある場所だった
「やっぱり、あの時の場所だ」
満開を使った私が、みんなの所に帰る前にいた場所……あの人達から”生きろ”って言うバトンを受け取った場所
「東郷さんっ! ……それに、不知火さん!?」
周りを見回してみると、そこには鏡みたいなものに埋まってる東郷さんと、全身を槍に貫かれた状態の不知火さんの姿があった、どうして不知火さんまでここに居るのかはわからなかったけれど、ひとまず東郷さんの方に視線を向けて──私は呆然としてしまった
「これ……なに?」
鏡に埋まってる東郷さんの後ろには、私と同じ状態になっている東郷さんが焼かれていた。多分このまま放置していたら東郷さんは帰れなくなってしまう。そう思った私は東郷さんの身体を掴んで、引き戻そうとする
その瞬間、胸に激痛が走るけど、そんなの──
「構わないッ! 東郷さんを放してッ!!」
自分がどうなったとしても、絶対に東郷さんは……東郷さんだけは──
「帰ろうっ! 東郷さん!!」
全力の力で引っ張ると、鏡から東郷さんの身体が抜けた
「やった、これで──っ!?」
直後、私の身体に激痛が走った──
ここは、何処だ?
目を開くと、そこには途方もない闇が広がっていた
──俺は
確か俺は、東郷を助ける為にブラックホールの中に突入して……東郷を見つけたすぐ後に、そらから降ってきた槍に身体中を貫かれて
──あぁ、そうか……ついに逝っちまったのか。俺
まさか、こんな所で逝くことになるとは思わなかった。しかも天の神に殺されるとか……なっさけねぇな
「なーに納得しちゃってんの?」
誰かの声が聞こえる、随分と聞いていなかったのにやけに耳に馴染む声……けど、それが誰なのか思い出せない
──納得も何も、アレで死んでないって方が無理だろ
「何言ってんの、殺しても死なないでしょ。要は」
──そりゃそうだ……でも、現にこうして死んじまってる。体も動かねぇし、頭も回んねぇ
「全く、なっさけないなぁ。伊達に長生きしすぎたんじゃないの?」
──そうかもな
「まーたそうやって諦めてる、ほら。シャキッとしなって」
さっきから何なんだ、ボーっとする意識を無理やり引き留める誰かがいい加減鬱陶しくなってきた
──さっきから知ったような口きいてるけど誰なんだよ
「うっ、何となくわかりきってたけど流石にその台詞は堪えるなぁ……流石にショックだわ」
その言葉を聞いてすぐ、動かなかった筈の身体に誰かが触れる
「ねぇ、要……なんかイラついてるのは分かるけどさ。それでも、忘れちゃいけないものがあるんじゃない」
──忘れちゃ、いけないもの?
確かにあったのかも知れないが、今はただ……この感覚に身体を
「お願い、私の事……忘れないでね」
あった、そうだ……忘れちゃいけない
「目に生気が戻ったね。それなら行こっか、苦しんでる後輩を救いに」
──そうだな、仕事納めにはまだ早かった
闇が晴れ、周りに光が溢れ出す
「久しぶりだな、イマジナリーじゃないだろ?」
「当たり前でしょ、正真正銘本物の雪花さんです……まぁ、精神体だけどね」
「精神体でも、また逢えてうれしいよ」
「随分デレるね、こっちまで気恥ずかしくなる」
懐かしい人との懐かしい会話だが、あんまり長話をしている時間はないだろう。今の俺も精神体ではあるが気を失ってる
「結城のやつ、随分と無茶をしてるな」
「要も人のこと言えないでしょ」
「それもそうだな……よし、それじゃあ行くか」
「オッケー、久々に気合い入れますか」
その言葉と共に、光の扉が現れ……俺と雪花はそこに向かって一歩踏み出した
痛い、痛い、痛い
痛みで気を失っちゃいそう、でも……帰らないと
「そうだな」
誰かの声が聞こえてきて、痛みに耐えながら目を開くと、そこには見慣れない槍を持った不知火さんが立ってた
「しら……ぬいっ……さ──」
「すまない、辛い役回りをお前ひとりに押し付けてしまって……だから、できるだけお前に降りかかる厄災を俺に移す。できるよな、雪花?」
『できない事はないけど……正直、要が傷つく姿はもう見たくないんだけど』
「今更だろ、頼む」
『仕方ないなぁ……わかったよ』
不知火さん以外の誰かの声が聞こえてからすぐ、私の身体から痛みが少しずつ引いていく
「ぐっ……この程度、ならッ!」
ある程度まで痛みが引き、声をかけようとしたところで何かが割れる音共に空間そのものが光に包まれ、私は意識を失った
目を覚まして一番最初に目に入ったのは、友奈ちゃんや徹くん、それに勇者部みんなの顔
「やった! 目が覚めた!」
「わっしー!」
「全く、心配かけさせやがってもう」
「みんな……ここ……」
「あんた数日寝てたのよ」
風先輩の言葉を聞いて、私のいる場所は壁の外ではないのだと理解する
「助けて……くれたの……?」
「うん!」
「でも、このままじゃ……世界が火に……」
私がやらないと、このままじゃあ世界が──
「事情聞いたわよ。火の勢いはもう安定したから、生贄は必要ないってさ」
火の勢いが安定した、それって、もしかして誰かが
「誰か、代わりの人が……」
「違うわ。東郷、普通なら死んでる位の生命力をごっそり奪われてたんだって。それできっとお役目を果たしたのよ。でもタフだからまだ生きていた。で、私たちが間に合った。そんな感じみたい」
「いっぱい身体を鍛えててよかったねー」
「どこも以上なしみたいです!」
なんだか、まだ夢の中にいるみたいだ
「本当に、私助かったの……?」
「そうよ、セーフ!」
「お勤めご苦労様。まぁ、もうしばらくは病院でしょうけど」
「相変わらず、無茶ばっかりしやがって……けど、無事で良かった」
「これで改めて、勇者部全員集合だぜー!」
「みんな……」
「東郷さん、ごめんね」
本当に、助かったんだ。そんな気持ちを感じていると不意に友奈ちゃんが謝ってきた、謝られることをした覚えなんてないのに
「東郷さんの事、絶対忘れないって約束してたのに、何日か忘れちゃってて……」
「私のほうこそ、ごめんね。そんなに心配させて……」
「仕方ないよ、多分私でも同じようにしてたよ」
「次からは全部話しなさいね」
「まぁ、お互い様という事で良いんじゃない? 私たちも忘れてたし」
「それでも、皆思い出してくれた……夢じゃないのね……」
「あぁ、夢じゃない。俺も友奈も、みんなこうして一緒に居られてる」
夢みたいな状況でも、夢じゃない。みんなの温かい気持ちが今この時が現実なのだと教えてくれた
「一件落着ね」
「よーっし、これで全員揃ってクリスマス、それに大晦日にお正月だぁ!」
「遊ぶことばっかじゃない」
私は、日常を取り戻すことが出来た。その安心感で……私の胸は一杯になった
その日の夜、シャワーを浴びている友奈の胸には、半分になっているが太陽のような紋章が刻まれていた──ならば、もう半分は誰に映ったのか
未だ、日常の中に禍根は潜んでいる