不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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勇者の章,3-1 現状

 目を覚まし、最初に目に入ったのはいつぶり以来かの見慣れた天井

 

「あー、そうか……帰ってきたんだっけな」

『あっ、起きた。おはようさん』

「……雪花?」

『はい、雪花さんですよ』

 

 一瞬頭がフリーズしかけるが、そういえばで思い出した。東郷を助けた時に雪花と再会したんだっけか……まぁ雪花の方は精神体だけど──

 

「──って、ちょっと待て。お前が俺に話しかけられたのってあの場所だからじゃなかったのか?」

『ん? あー……っとねぇ、それを説明するにはまず今の要の状況を知ってもらわないといけないんだけど』

「俺の状況って、胸に出来てるこれのことか?」

 

 来ていたTシャツを軽く捲り上げて、左胸に浮かび上がってきた紋章を見せる。それを見た雪花は頷くと改めて言葉を続ける

 

『そう、それのこと。最初に行っておくとね、その紋章は天の神のタタリなんだ』

「天の神のタタリ?」

『そう、正確にはタタリの半分って感じかな。もう半分は多分──』

「結城の所か」

『多分だけどね』

 

 天の神のタタリ、雪花がどうしてそんなことを知ってるのかも気になるがまずはこのタタリにどんな効果があるのか

 

「それで、このタタリってのはどんな効果があるんだ?」

『そこまでは私もわかんないかな。天の神のタタリってわかったのも私から見てる要がヒビだらけってのとあの時の状況から推測しただけだし』

「成る程な……ってちょっと待て、俺がヒビだらけ?」

 

 どういうことだ、確かに一時身体が崩れそうにはなってたがそれは神樹に直されたはず

 

『そ、それでここからが私が要に憑いてる理由』

 

 その言葉のすぐ後、雪花はいつものどこか飄々としている雰囲気ではなく真面目な雰囲気になる

 

『私が要に憑いてるのは、魂の崩壊を止める為』

「魂の崩壊?」

『うん、今の要は今まで受けてた呪いに呪いが重なって本来とは違う効果が出ちゃってるんだ』

「本来とはって事は、今の俺は普通に怪我するし普通に死ぬって事か?」

『そういう事、元々の呪いの効果は消えて別の効果が出ちゃってるの……それが魂の崩壊』

「とりあえずそれは理解できた……それでさっきから言ってる魂の崩壊ってのは言葉通りで良いのか?」

 

 言葉通りであるのなら俺の魂は少しずつ崩れて言っているって感じになのだろうか

 

『要が考えてるよりも事態は深刻だよ』

「考えてること読めるのか、今のお前」

『まぁね、今の私は要と一つだし……ってそうじゃなくて、今の要は魂そのものが壊れかけをギリギリ維持してる状態なの、だから今までみたいに無茶はしないで』

「壊れかけをギリギリ……か」

 

 そんなの今更な気もするけど、決定的な違いは今の俺は普通に怪我するし、その怪我もすぐには治らない。即死級のダメージを負っても復活できない

 

「簡単に言うと残機が一気にゼロになった感じか」

『なんか認識が軽いなぁ、言っておくけど私が憑いてなかったらあの場所で魂が粉々に砕けちゃってたんだからね』

「それに関しては感謝するけど、この性分は今更直せないぞ」

『そのための私ですよ、他の人でも良かったけど最終的にはみんな要の無茶をオッケーしちゃいそうだし』

 

 信用されてるのかされてないのかよくわからないが、まぁ今やるべきことは一つか

 

「それじゃあ雪花、行くか」

『行くってどこ……あぁ、あの子たちの所ね』

「とりあえず結城達がどうなのかを確認しときたい」

『オッケー、それじゃさっそく向かいましょうか』

 

 そこから着替え終えた俺は、横で浮いている雪花と共に事務所を出て讃州中学へと向かおうとしたところで──

 

 

 

『そういえば要、学校側に連絡とか入れなくて良いの?』

「……忘れてた」

 

 雪花にそう言われて事務所に引き返し、連絡を入れた

 

「よし、それじゃあ改めていくか」

『再度オッケー、それにしても要なんか雰囲気変わった?』

「伊達に長生きしてないからな、嫌でも丸くなる」

『そー言うもんかなぁ』

「そー言うもんなんだよ」

 

 なんというか、もうすることはないだろうと思っていた雪花との会話がまたできているという事実が少しだけ嬉しくなる。天の神の中……と言っていいのかわからないが、あの空間や俺の意識の中だけじゃなく、こうして隣で歩きながら会話ができる。その事実で俺の心は少しだけ温かくなる

 

『あのー、流石にそこまで言われると流石の私でも照れる』

「……そういえば、今のお前は考えてること読めるんだったな」

 

 すっかり忘れてた、あー恥ずかしい

 

『……まったく、要は雪花さんの事好きすぎでしょ、しょーがないなぁ!』

「俺と別れるときに”私の事忘れないで”なんて未練がましいセリフ残したのはどこの誰だったっけ?」

『そ、それは確かに私ですけど……要も要で私の事引き摺り過ぎでしょ!? 何イマジナリー雪花さんって、すっごい恥ずかしいんだけど!?』

「何年……というか何百年も前の事を掘り返すなよ、恥ずかしい!」

『要にとっては何百年前でも私にとってはほんの数年前ですしー、全くしょうがないな恋人出来そうなのに作らない所為で純情こじらせてる要さんは』

「やかましい、アクロバティックコミュ障」

『私コミュ強ですけど! どこがコミュ障だってんですか』

「ムードメーカー装ってるのに全然他人に心開かない所」

 

 

 売り言葉に買い言葉、頭に来るが楽しい会話を続けながら。俺たちは讃州中学へと続く道を歩いていく

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