「もー、こんな寒いときに何でマンションのエアコン壊れるかな」
讃州中学勇者部は、今日も今日とて平和……という訳ではなかった
「私も昨日は、急に電灯が切れてとても困ったの」
「二人とも大変だったんだね」
「そう、災難よ災難」
「そんなことくらい、ウチなんて昨日、樹がカギ落として寒空の下二人して大変だったんだから」
「ちょ、言わないで」
「にしても、揃いも揃って災難って、嫌な偶然ですね」
今この場にいないメンバーが揃いも揃って、ちょっとした災難にあっている。年の瀬だって言うのに嫌な話だし今までの出来事が出来事な所為で嫌でも疑り深くなる
「園子参上なんだぜ~」
「三ノ輪さんちの銀さんもさんじょーう」
残りのメンツもやってきたようで目を向けると園子は手に包帯巻いてるし、銀は足に湿布を張ってる
「園子さん、その手」
「おぉ、大丈夫大丈夫。こうしてサンチョを被せれば──」
手に持っていたサンチョに自分の手を食わせる
「あってないようなものシュレディンガー」
「一体どうしたのよ」
「今朝ポットで火傷したんだ」
「大怪我じゃなくてよかったわ」
「うん、小怪我~」
「銀は銀で、転びでもしたか?」
「いやぁ、実は学校来るときタンスにぶつけちゃって、こっちも小怪我だから問題なし!」
「はぁ、揃いも揃って師走に碌なもんじゃないわね。勇者部全員厄払いにでも行った方がいいんじゃない?」
「ちょっと、縁起でもない事言わないでよ……でも必要かも知れないわね」
「俺、別になんにもありませんでしたけど」
けどここまで一斉にみんなが怪我とか災難に襲われる……となると流石に少しだけ違和感を感じる、なんというか俺たちの知らない所で何かが起こってるのでは……そんな気がしてくる
「うーん……」
「徹くん、どうかしたの?」
「いや、なんか引っかかるというか……魚の小骨が喉に引っかかってる感じ?」
「変に疑り深くなってるだけじゃないの?」
「そうなのかねぇ」
「そういえば、友奈ちゃんは何もなかった?」
「っ、うん、平気」
「良かった、友奈ちゃんにまで何かあったらいよいよ何か怪しいものね」
「また、大赦か―って──」
東郷とそうやって話をしていた友奈の表情は少しだけボーっとしてるような、変に何かを隠そうとしているような。そんななんとも言えない感じを受けたけれど、その感覚も園子の一言で吹っ飛んでしまった
「いやいやいや」
「流石の大赦でもそこまで出来る訳ないだろ? な、徹」
「そ、そうだな、ないない」
「だよねー」
そうは言うもののどうにも変な違和感が拭いきれない気がする
「はいはい、それじゃ、それぞれ持ち場につけ―」
風先輩の一言で俺たち勇者部メンバーも部活モードと言うことで、溜まってる残りの仕事にとりかかった。その途中で友奈と風先輩が一度部室から出て行ったが……何かあったのか?
ウチの仕事場兼自宅である事務所、見た目は只の一軒家なのだがこの一軒家は地下室が存在するのが最大の強みだったりするのでここを選んだってのがある……そして、ここに置いてあるのは西暦から今に至るまで色々な場所で集めてきた資料たち。その一部は四国に来るときウチの実家に寄って持ってきた物も存在している
『随分埃っぽい所だねー、書斎?』
「というより資料室だな、伊達に長生きしてる所為でその手の資料は腐る程ある……まぁ、読めるかどうかは置いておくとして」
『殆ど読めなかったら、それは流石に要の管理が杜撰なんじゃなーい?』
「んなこたどうでもいいんだよ、それじゃさっさと探すとしますか」
こういうのは最新の資料探すよりも先人の知恵を使った方が有効な場合が多いからな、今まで眠らせちまってた分も含めてしっかり仕事をしてもらおう
「とりあえず、最初は大赦のかき集めた資料から──」
そこから置かれてる本棚の中、ちゃんと年代別に纏めてる資料の中でも神世紀の割と古い方に目を通していく
「やっぱ神樹関係の祭りごと系は多いけど、それ以外はあんまりだな」
『今回のは神樹って言うか、バーテックス関連だし。天の神関連の記録とかないの?』
「天の神系の資料か……」
神世紀入ってから結構時間経ったときに、天の神……というかバーテックスを信奉してるアホどもが起こした事件があったが、そっち系の資料何処に置いたっけな
『探すだけなら私でも出来るし、いつ頃か位教えてくれれば探してくるよ』
「助かる、確か────神世紀72年くらいだった筈」
『了解、それにしてもよく覚えてるねぇ』
「一応、知り合いの名前とかは覚えとくようにしてるからな」
72年は、特に嫌な事件があった所為で余計印象に残っちまってる……それに丁度弥勒家とかを知り合ったのもそのころだったはず
『あっ、要要、ここら辺のとかそうじゃないの?
「そこら辺っぽいな、少し見てみるか」
そこから白神教事件記録、主にそこで起こったテロ事件だったり白神教の関わってると思わしき事件の記録をまとめた資料で情報探しをしていると少しばっかしだがバーテックスと天の神に関する資料が出てきた。
「ここら辺だな、それじゃもうひと踏ん張り──」
しますか、という前に机の上に置いてあったスマホから着信音が鳴る
「八重樫?」
『八重樫って、確か要のお弟子さんだよね?』
「あぁ、基本メールだから滅多なことがないと電話かけてこないんだが──もしもし、なんかあったか?」
『師匠ッ!? 風先輩が……風先輩が事故に遭って! それで──』
「とりあえず落ち着け、俺もそっちに向かうから。場所は?」
『今は、病院で治療を』
「わかった、すぐ向かう」
八重樫の電話を切ってすぐ、一旦資料はそのままにして病院まで向かおうとしたところで…………不意に体の力が抜ける
『要ッ!』
「っ──大丈夫、それより急ぐぞ」
それも一瞬だった、なら特に気にする必要はない……そう思い俺は犬吠埼姉の運ばれた病院に向かう