不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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今回から勇者の章4話の内容に入りますが、少しだけ寄り道


勇者の章,4-1 御記

 1月5日

 時の流れと言うものは結構早いものでこの前までクリスマスムードだったのに今ではすっかり正月だ、犬吠埼姉も退院したようで昨日だか一昨日だかは勇者部全員で初詣に行ったらしい

 

『年明けなのに休んでない要さんは、年賀状?』

「三が日終わってるから普通に仕事だよ……それは置いといて世話になった人が多いからな、必然的に来る年賀状も多くなる」

『大変だねぇ』

「別に、長いこと毎年こうだからいい加減慣れる」

 

 そんなことを言いながら年賀状を捌いていると、スマホの画面にメッセージ通知。送り主は乃木? 

 

「珍しいな」

『要、あの子の連絡先持ってたんだね』

「あの子のご先祖さまとは戦友だからな」

『理由になってなーい』

 

 そんな話をしながら乃木からのメッセージを開くと、今から乃木の家に来られるかという内容だった

 

『どうするの?』

「天の神の云々とかはかなり気になる所ではあるが、とりあえず時間は取れるし。行くか」

 

 とりあえず今ある分の年賀状を片付けて、乃木の住んでるマンションに向かう準備をする

 

『そういえば要、住所知ってるの?』

「結構前にひよりに教えて貰ったから問題ない」

『プライバシー……』

 

 一応本人には許可取ったらしいから問題ない……筈

 

 

 

 

 

 乃木園子宅に集まった勇者部一同、どうして集まったのか、それは昨日の初詣にてクリスマスと正月をまともに満喫できなかったという風先輩に満喫できなかった分をしっかり満喫してもらおうという訳だ

 

「えぇっ、八マス戻る」

「ふっふっふ、また引っかかったわね」

「八マスって、スタート地点……っ」

 

 そして、現在はですごろくに興じている真っ最中なのである

 

「怪我でクリスマスとお正月が出来なかった私のために用意してくれたなんて、乃木ぃ、ホントにありがとうねっ」

「だぁいせぃこうッ!」

「友奈もありがとね、入院してる間溜まってた依頼やってくれたんでしょ」

「えっ、あっ、私は……何かやってないと落ち着かなくて」

 

 偏見だけど、友奈の言ったそのセリフは基本的に悩みを抱えてる人なければ出てこないセリフのはず……やっぱり何か隠してるんじゃ

 

「じゃなくて、元気が有り余ってるから!」

「……えっと、4進むっと。えっと、ふと人生をやり直したくなってスタートに戻る……ってなにこれッ!?」

「ふっふっふ」

「えい、いち、に。歌コンテストで優勝を逃すもディープなファンに支えられ百万円貰う……って園子さんこれ良いことなんですか悪いことなんですかっ!?」

「むふふ、秋から準備してたんよ、もういくつ寝るとって」

 

 そう言いながら園子が樹ちゃんに渡したのはお手製の札束、流石園子、すっごい手が込んでる

 

「園子はこういうの張り切るからなー」

「小学校の時から割とそんな感じだったな、そういえば」

 

 俺と銀もそんなことを話しつつ次の人を見ると手番は風先輩。ずっと額につけてた十回休み鉢巻を取りながら俺たちに向かってサイコロを見せてくる

 

「では、ここは部長の威厳で優勝をかっさらっていくとするかねっ! てや!」

「「「「「「「おぉー」」」」」」」

 

 風先輩の振ったサイコロの出目は六、最大値。その数分のますを風先輩の駒が進んでいくのだが……

 

「……車に跳ねられてお楽しみを全部失う、心のショックで十回休み……きーっ! なにこれぇ!?」

「人生ッ!!」

「きょ、強烈な人生観ね……」

 

 何ともまぁ……いや、乃木家の当主である園子だからってのもあるのかも知れないな。何だかんだ園子自身も縛りが多いだろうし

 

『園子様、他にお申し付けはございますでしょうか』

「ありがとー、でも今日は大丈夫だから」

「すごいねぇ、お手伝いさんがいるなんて」

「家を出るための条件なんよ」

「アンタも苦労してるのね」

「さてと──」

 

 お手伝いさんがいなくなってすぐ、被っていた獅子舞を置いた園子はその足で家の奥の方まで向かっていった

 

「面倒なのもいなくなったし、ここからが……本番、よっと」

 

 そう言いながら園子が持ってきたのは大きな包み、見た感じかなりの重量っぽいが大丈夫なのだろうか。そんな考えとは裏腹に園子は持ってきた包みを床にどさっと置くと、埃が舞い散る

 

「ちょっと、埃臭い……」

「ない、それ?」

「ほら、私複雑な事情で家に色々あるじゃない?」

「それは、確かにそうだけど……」

「またいきなりねぇ」

「それで、荷物の整理に行ったんだ」

「なんでまた?」

 

 そう言った園子はチラリと友奈の方に視線を向けると、再び包みの中。乃木家の家紋が書いてある籠から何かを取り出す

 

「色々調べたかったしね」

「手の込んだ前振りだったけど、本当の目的はそれね」

 

 夏凜のその言葉を聞いた園子は取り出した一冊の本? をじっと見た後に俺たちの方に差し出す。東郷がそれを受け取ってタイトルを見るとそこに書かれていたのは──

 

「勇者、御記……」

 

 それを見たみんなは息を飲む。勇者御記というタイトルの本、そしてそれが出てきた乃木家の籠、色々と考えるとそれが結構重要なのものであるというのが何となくわかったから

 

「随分、古いものみたいですけど……」

「園子、これって──」

「乃木家に伝わる三百年前のものみたいだよ」

「読んだの?」

 

 その言葉に対して首を横に振った園子は、ゆっくりと立ち上がりながら言葉を紡ぐ

 

「これから、もう私だけが知ってるなんてよくないし、私も嫌だからね……初回は、みんなで一緒に読もうと思って」

 

 その言葉を聞いた後、ゆっくりとページが開かれ内容が読まれ始めた

 

私たちの戦いの記録を記し、未来の勇者に託す──

 

「未来の勇者って……」

「乃木、何てもの見つけてくるのよ」

「これ。私たちがなぜ今こうなのか、私たちは読まなきゃならない……みんなも、一緒に見てくれる?」

 

 少し不安そうに、けれど確かな決意を持ってそう言う園子の手を握ったのは風先輩と銀の二人

 

「もちろんよ」

「当たり前だろ」

「ありがとう、ミノさん、ふーみん先輩……ありがとう、みんな」

 

 園子の言葉に全員頷いた後。東郷が再び本を読み始めた

 

西暦2015年7月、絶望は空からやってきた──

 

 

 そこから、記されていたのは当時未知の存在だったバーテックスのこと、そしてその被害によってどのような状況になったのか。大社という存在が人々の導き手となり、神樹の結界が出来た事、そして──西暦勇者たちと、壁の外から来たという一人の青年について

 

初めての戦いを終えてから数日、樹海の中で一人の男と出会った。その男の名前は──

 

「──不知火……要」

 

 聞き間違える筈もない、勇者御記、三百年も前の勇者との戦いの記録に記されていたのは他でもない──俺たちにとって聞き馴染んだ人の名前だった

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