「話していくのは……一番最初からで良いか?」
俺の目の前に座っている勇者部一同が頷いたのを見て、黒板使いつつ俺も話を始める
「すべ手の始まりは2015年の7月、空からバーテックスが来たことだ……ここら辺は御記にも書いてあっただろ?」
「はい」
「空からって降ってきたと書いてありましたが、原因は一体何だったんですか?」
「それは俺たちにもわからなかった、原因が一切不明で唐突に現れた星屑どもが人類に襲い掛かって来たからな」
東郷からの質問に関してだが、どうして天の神が人類に対して牙を剥いたのか。その原因は分かってない……三百年経った今だからこそ人の所業が天の神の怒りに触れたって考察は出来るが当時は本当にわからなかった
「とりあえず話を続けると、人類は正体不明の敵に対する対抗策はなかった……その後、四国に建造された壁の中に人類は逃げ込み、四国以外がその場所の土地神の力で張られた結界の中が、人類にとってのセーフハウスになった。ここまでが最初の始まり」
「四国以外にも、安全な場所があったなんて……」
「安全って言っても、四国程万全じゃなかった、だから馬鹿みたいにバーテックスは襲ってきたしな」
「そっか、確か御記に師匠は壁の外から来たって……」
「あぁ、俺が壁の内側に来たのは西暦の勇者たちの初陣が終わってから少し経ってからだ」
ここら辺はかなり鮮明に覚えてるというか、嫌でも忘れることが出来ない出来事だったからな……そろそろ次行くか
「そんじゃ次……って言うかお前らにとってはこっからが本番だな、人類の脅威であるバーテックスに対抗するための存在として選ばれたのは神の力が宿った武器に選ばれた年端もいかねぇ女の子たち、乃木のご先祖たちだな」
「神の力が宿った武器……」
「そう、今の勇者システムはシステムの中に武器が纏まってるが西暦の頃はシステムと勇者の使う武器は別枠だった。そんで勇者の使う武器には神の力が宿ってたって訳だ。例えば乃木若葉の使ってた武器、生太刀は日本刀に神の力が宿ったものってな感じにな」
相も変わらず千差万別な武器だったりするがそこら辺は一旦おいておいて、横道にそれたのを本筋に戻す
「とりあえず話を戻すが、バーテックスと戦う戦士としての勇者は俺が知る限り四国以外に二か所、諏訪と北海道にもいた」
「諏訪の勇者ってもしかして」
「お察しの通り、この鍬の持ち主だ。彼女の名前は白鳥歌野、俺は直接の関わりはなかったが、乃木若葉とは通信機越しに話をしてたらしくてな。アイツらにとってかけがいの無い仲間の一人だったらしい」
正直、白鳥歌野という人とは、一度でいいから話をしてみたかった。一人の勇者として最後まで諏訪を守り抜いた人がどんな人だったのか……もっと言うと、その勇者の横に立っていた人たちとも
「師匠?」
「あ、あぁ、すまん。少し物思いに耽ってた……それで、北海道の勇者だが」
「それも御記に書いてあったわね、確か不知火さんが一緒に戦ってた人で、名前は──」
「秋原雪花、犬吠埼姉の言う通り北海道で戦ってた勇者で……俺の相棒見たいな奴だった」
「相棒……」
「色々話せることもあるがそこら辺話すと長くなるからとりあえず端折るぞ。聞きたかったら全部終わってから聞いてくれ」
雪花の話は色々と長くなるし、もっと言うと幽霊状態でも本人が近くにいるところで変に話して後でからかわれるのは面倒だ……そういえば、さっきから雪花が話かけてこないな。いつもならそこら辺漂ってる筈なのにそれもないし。まぁいいか
「それじゃ、こっからは俺が若葉たち西暦の勇者たちと合流してからの話だが……その前に何か聞いておきたいことあるか?」
「はいはいはーい!」
さっきから所々で質問には答えてたが、改めてここで一回質疑応答の時間を取っておく。そしてすぐに手を上げながら立ちあがったのは乃木
「私のご先祖様って、どんな人だったの?」
「若葉……か、一言で言うならクソ真面目だな」
「「「「「「「クソ真面目?」」」」」」」
「あぁ、頑固で融通利かなくて、それが原因でいざこざが起きたこともあるし……けど、誰よりも真っ直ぐで、勇敢で勇ましい者って意味の勇者なら。一番ピッタリだったかもしれん」
「凄い人だったのね」
「凄かったよ、勇者としても……うどん過激派としても」
「何か言いました?」
「何でもない」
マジで思い返すだけでもうんざりするというか、こちとらそこまでうどんに洗脳されとらんって時期にしつこくうどん勧めてきやがって。確かにここのうどんが美味いことが認めるが偶には別のモン食いたくなる時があるって言うか、むしろ俺はそっちの方が多いんだっつーの、うどん狂信者め
等とかつての思い出に愚痴をこぼしていると、壁の外で青色のカラスが何やらこっちを凝視していた……かと思ったらすぐに飛んでった
「まぁいいか、それじゃあ次に──」
「あのっ!」
「どうした、結城」
「私も知りたいことがあるんです……高嶋友奈ちゃんについて」
「高嶋友奈……そりゃ気になるよな、自分と同じ名前だし」
「はい、教えて……もらえますか?」
「もちろん」
「友奈……いや。高嶋はそうだな……結城、お前とそっくりだったよ」
「私と?」
「あぁ、明るくて、一緒にいる奴と自然と笑顔になって、いっつも他人を思いやって……そんな感じなのに大切なことは一人で抱え込む。そんな奴だったよ」
「──ッ」
明るく振舞ってるし、実際に全員のムードメーカー見たいな立ち位置の癖に大切なことは一人で抱え込んじまう。強いように見えて誰よりも普通の女の子だった
「……それじゃあ、話を続けるぞ」
そこから西暦勇者の戦いの記録を語り終え一息ついた俺は、複雑そうな表情をしている勇者部の一同を見ながら口を開く
「さてと、とりあえず俺が知ってるだけの西暦勇者の記録を話してきたわけだが……どうだった」
「どうだったと言われると……」
「なんというか、信じられないって言うのが本音です」
そりゃそうだ、特に千景の話は勇者部からしからショッキングなものでしかないだろう
「でも、最後まで戦い切ったんですね、私たちの大先輩は」
「あぁ、だからそのバトンはお前らが受け継ぐ番って事だ」
俺はそう言って、目の前にいた勇者部の一同に鍬を手渡した
「頑張れよ、後輩」
「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」
話が終わり、俺は一人丸亀城の教室に残り、空を見た。アイツらと一緒にいたころはこうして教室から空を見上げるということをあまりすることはなかった気もするが、それが一人になっちまったらこの有様だ
「お疲れ様です、要さん」
「……あぁ、勇者部の奴等は帰ったのか?」
「はい、しっかりと送り届けるように厳命しましたから」
「そうか、それで……何か俺に用でもあったのか?」
「えぇ、少し耳に入れておきたいことがありまして」
ひよりが耳に入れたいこと、それは結城の受けているタタリの効力の話だった
──結城の受けているタタリは、自分の身体を蝕んでいくもの。しかもそのタタリは他人に話そうとするとその人間にまで被害が及ぶ、それ故に他人に話すことが出来ない
「この事実を知った私たちにもどのような影響があるのかわかりません。直接話を聞かなければ大丈夫なのか……それとも──」
「まぁ、大丈夫だろう……それに、もしもの時は俺が何とかする」
この場所に来て、アイツらの話をしてようやくこっちもスイッチが切りかわった感じだ……これから先何かあったのなら、その時は神世紀の不知火要ではなく、一人の人間として──西暦を、若葉たちと共に戦った不知火要として、全力を尽くそう