友奈の元気がいつもよりない事、ガチ勢の東郷によってその疑問が確信に変わった。ならば何が友奈の身に起こっているのか、それを知ることが出来たのはその日の夜の事だった
その日の夜、そろそろ風呂に入ろうと考えていた所で、スマホに通知が来る
「ん? 東郷から……こんな時間になんだ?」
この時間に来る連絡に関しては基本的にグループチャットで行われるため個人宛てに来る連絡がだいぶ珍しい。そんな事を考えながらメッセージを開いてみると今から風先輩たちの住んでるマンションまでやって来てくれとのことだった
どうして風先輩たちの家なのだろう、と考えつつ風先輩たちの家まで向かう
俺が到着したころには既に勢ぞろいしていたようで、最後の到着になってしまった。そんなことを考えながら家の中に上がると目に入ったのは勇者御記と書かれている一冊の手記。それ自体はこの前見たものと同様なのだが前に見たモノよりも新しい
「それは?」
「これ、友奈の部屋から見つかったんだって」
「……何で人様の部屋から発見してるのかはこの際置いときます、何でそんなものが友奈の部屋に」
「最近友奈ちゃんの様子がおかしかった、この中にその原因が書かれてると思うんです」
東郷のその言葉を聞いて勇者部全員の表情が少しだけ変わる
「こんなもんが出てくるなんて……」
「私からも良いかな」
「園子?」
「私もゆーゆが心配になって調べてみたんよ。最近みんなより早く帰ってたでしょ、実は大赦に行ってたんだ」
「大赦……」
「結論を先に言うと、ゆーゆの様子がおかしいのはね、ゆーゆが天の神のタタリに苦しめられてるからなんだ」
天の神のタタリ、その言葉を聞いた俺たち全員は息を飲み表情が固まる。せっかく日常に戻った筈だったのに、天の神の名前を此処で聞くとは思わなかったから……それに、天の神のタタリを受ける原因になったのは恐らく──
「そのっち、それは──」
「聞いてわっしー、大赦の調べで、このタタリはゆーゆ自身が話したり書いたりすると伝染する。それがわかったの、だから、この日記は非常に危険なものなの……それでも見る?」
「……見るわ、友奈ちゃんが心配だもの」
言葉に出したのは東郷、それでもここに集まってる全員の思いは同じだ
「じゃあ読んでみよう、ゆーゆの御記を」
友奈の書いている御記を開き、一番最初から読み始める。その中に語られていたのは俺たちの最後の戦い……あの巨大な御魂を破壊する為に友奈が戦った後、彼女の身に何が起こったのか
最後の戦いの後、友奈の魂は一時的に東郷が居たらしいブラックホールの中にいた。そしてどう戻ればいいのかわからなかった所を一人の勇者に救われたこと
そして、あの戦い……正確には俺たちが満開によって失った身体は奉げられた供物が戻ったのではなく神樹様によって作られた代替えのパーツを代わりに当て嵌められたものであること……そして、友奈の身体は外の世界が炎に包まれる限り治ることはなく、今年の春を迎えられないだろうということ
そこからは、友奈の日記になっていた。自分の身体が不調であることや彼女の感じていた恐怖、現在に至るまでの気持ちが、嘘偽りない友奈の言葉で書かれていた
「そんな……」
「治らないってどういう事よ、春は迎えられない?」
案の定、友奈の身に起こったタタリは東郷の身代わりとなったことが切っ掛け、その事実はどうしようもなく東郷自身に重くのしかかってるんだと思う。動き出した彼女の事を園子が止めたが、止めなかったらどうするのか、それを一番わかっているからだろう
そう言う俺も、あまりにどうしようもない真実に何を言うこともできなかった
それはみんな同じだ、たとえ真相を知ったとしても。俺たちは、友奈に対して何もできない
時は遡り夕暮れ、勇者部に西暦の勇者たちの事を話してから数日の時が経ち、いい加減俺の覚悟も決まった日のこと。今まで生きてきて錆びついてしまった身体を動かす為に、俺は一人長棒を振るう
最近は色々な武器を使い分けて戦っていたが今の俺には急激な回復力も元々持っていた不死性も失ってしまっている、だからこそ──
「──下手なリソースを割くことはできない」
最後の一振りを振り終えた俺は長棒を置いて汗を拭く。そういえば気になることがあったのを忘れていた
「雪花、そういえば今の俺のタタリの状況ってどうなってんだ?」
『……正直、だいぶ来てるよ。いつどこから崩れてもおかしくない』
「そうか、でも……ここで止まると一生後悔する、そんな気がする」
『相変わらずだね、要は』
「よし、それじゃあもう一回────」
──バキリ
俺はその後の言葉を続けることが出来なかった。何かが割れる音と同時に力の抜けた俺の身体は地面に叩きつけられる
『要ッ!』
「──大丈夫、特に、問題は……」
そうは言うものの不思議なくらい全身に力が入らない。その状態がしばらく続いたが唐突に抜けていたはずの力が戻り、持っていた長棒を支えになんとか立ち上がることが出来た
「雪花、もしかして……さっきのが」
『うん、さっき要の魂の一部が欠けた。わかってるよね魂が完全に砕けるとどうなるか──』
「わかってるよ、わかってる」
『要、お願いだから無茶だけはしないで……このままだと──』
「悪い、その願いは聞けない……ここで無茶をしなかったら一生後悔することになる……そんな気がする。だから無茶もする、そうじゃなきゃこの世界を守ったあいつらに合わせる顔がねぇ」
結局やらないといけない事は変わらないんだ、なら……俺の命を燃やし尽くしてでもやらないといけない事をやるだけだ