友奈の抱える秘密が何なのか、その正体を知った俺たち勇者部は出来ることなら彼女の力になりたいと思う反面、具体的に何が出来るのかわからないまま一日は過ぎていった、翌日、通学路を友奈と東郷の二人と一緒に歩いて学校に向かう。一見すると何でもない日常の一幕に思える光景だったが、友奈は歩くのもやっとと言った様子
『──結局、俺や東郷に出来ることってないのかよ』
心配そうに友奈の方を見ていた東郷を少しだけ見つめた後、俺にも何か出来ることがないのか思考し始める。今の友奈は俺たちが御記を読んでその身に起こっているタタリの事を知らないものだと思っている。そしてタタリの効果がある以上彼女は決して俺たちに相談してくることもない
「……最近、あったかくなってきたね」
「うん……」
「もうすぐ春だ──」
普段であれば絶対にありえない友奈の言葉に空返事をする東郷の姿を見ても、今起こっている事態がどれだけ深刻であるのかを表している。かくいう俺は二人の会話に特に割り込むわけでもなく考えを巡らせながら歩いていると、ふと友奈が足を止めた
「東郷さん、徹くん。私ね……結婚する」
「うん……うん!?」
「……なんだって?」
「突然ですが、結城友奈は結婚します」
なんだって? 結婚……血痕? 結城友奈は血痕します?
いやいやいや待て待て待て、結城友奈は血痕しますは流石に文脈めちゃくちゃだ。てことは正しいのは結城友奈は結婚します?
「な──ななななにを言ってるの友奈ちゃん!? 中学生なのに、大体相手は誰!? まさか徹くん!? いつの間にそんな深い関係に?」
「まてまてまてまて! 俺だって初聞きだぞ!? というか急に結婚でどういうことだ!? 何処の馬の骨だ!?」
「落ち着いて二人とも……相手は、神樹様だよ」
「「へっ──」」
突然の告白を聞いた頭の中が真っ白になった俺たちは、友奈の結婚相手を聞いて更に頭の中が漂白されていった
なんとか再起動を果たした俺は隣で完全に昨日を停止して真っ白になってしまっている東郷を友奈と共に先導して学校まで向かう。まるで油の切れたブリキのロボットみたいに動いていた東郷は自分の席の座った後も機能を停止したまま
「どうすっかな……」
「あ、ははっ……どうしようか」
とりあえず機能停止をしている東郷は置いておくとして、神樹様と結婚とはどういう事なのかを聞かないといけない──と、俺が友奈に話しかけようとしたタイミングで教室の扉が開き夏凜が入ってくる
「あっ……か、夏凜ちゃん。おはよう」
「うん、友奈、おはよう」
夏凜があいさつを返してくれたのを見た友奈は少しだけ不安げだった表情を柔らかくする。夏凜の方もそれを見て若干安堵したように肩を下ろすと次に見るのは機能停止している東郷の方
「えっと……東郷、どうしちゃったの?」
「あぁっと、その──」
「東郷さんビックリしちゃったみたいで」
「なんで?」
「えっとね──」
流石に公の場で話すわけにもいかなかったのか友奈は夏凜の耳元に顔を近づける、恐らく話しているのはさっき俺たちが聞いたのと同じ情報なのだろう
「はぁっ!?」
友奈から話を聞き終えた夏凜もまた目を点にして驚く、そりゃそうだ。急に神樹と結婚なんて言われたら誰だって混乱する。とりあえずこの場で話していても埒が明かないから園子や銀、風先輩に樹ちゃんと勇者部全員に情報を共有して勇者部の部室まで向かう
「それで友奈、一体どういう事なんだ?」
勇者部全員が部室に集まったのを確認して、俺たちはとりあえず友奈に何があったのかを訊く
「えっと、この前の夕方のことなんだけどね、大赦の人が私の家を訪ねてきたんだ────」
そこから友奈が話始めたのは、どうして神樹と結婚──神婚することになった経緯だった。最初に友奈が聞いたのは三百年、四国に壁を張りこの世界を守ってきた神樹の寿命が尽きかけているということ
神樹の寿命が尽きれば四国を守っている結界が消え、人類は滅びる、それを回避するための方法が選ばれた人間が神樹と結婚すること……らしい。選ばれた人間が神婚を行うことで人は神と共に生きることになり、滅亡することはない……しかしその代償として、選ばれた少女は死ぬ
そしてその神婚の相手に選ばれたのが友奈。彼女が選ばれた理由は先の戦いで満開をした友奈は、身体だけでなく魂すら一度神樹に持っていかれている。そして代償として払った身体のパーツに魂を神樹の代替えバーツで補った友奈は存在そのものが神さまに限りなく近い”御姿”というものになっている
──大赦は、人類が神の眷属になるための生贄として友奈を捧げ様としている、ということだ
そんなの……絶対に間違ってる