漫画と小説の二つで確認しながら執筆しているのですが
漫画版1巻だと収録されているお話もあんタマの話がラストなんですね
今回は少しだけコメディ色のある回かも?
ここ数日はバーテックスの襲来もなく、平和な生活を送っている現在
この前図書館で借りた本を読み終えた俺は、大社から渡された生活費と言う名の軍資金を使って買った本を読んでいると、タマたちの席がある方から話し声が聞こえてくる
「やっぱ音楽はパンクロックだろッ!」
「そんなことないよ、音楽はバラード、そしてラブソングが一番じゃないかな」
「いや、青春の叫び、情熱の発露!パンクロック!」
「染み入る曲調、心を揺さぶる恋!ラブソング!」
顔を動かしてそちらを見ると、タマと杏が珍しく言い合いをしていた
珍しいこともあるものだと思ったが今は本の続きを読むのが俺の中の最優先事項であることと、そろそろチャイムが鳴る時間であったため視線を本に戻すと、程なくして授業開始のチャイムが鳴る
時は進み昼食時間、全員そろって昼食を取っているとタマと杏の二人を見ていた高嶋が言う
「タマちゃんとアンちゃんって、本当に仲良しさんだね!」
「タマたち、ほとんど姉妹みたいなもんだしなッ!」
そういいながらタマは杏を抱きしめ、杏の方もはにかんだ笑みを浮かべていた
俺はふと気になったことがあり食べながら読んでいた本を閉じると、二人に話しかける
「ほとんど姉妹みたいなものって、どういう事だ」
「それは、えっと少し昔のことになるんですけど――」
そう前置きすると、杏は自分のことを話し始める
「私、小さい頃から病気がちで周囲から少し距離を取られてたんです。それが私に対しての気遣いだっていうのも何となくわかってたんですけど、特別扱いされて、少しずつ周りから疎外感を感じるようになって、それが嫌で大好きな読書にのめり込んでいったんです...孤独感を抱きながら物語の王子様のような人が救い出してくれるのを夢想する、それがタマっち先輩と出会う前の私でした」
それに合わせるように今度はタマが話始める
「タマは小っちゃい頃から今みたいな感じでな、女の子らしさって奴とは無縁だったんだ。毎日ケンカとか危ない外遊びをしてたから親には心配かけてばっかりで、少しは直そうとしたんだけどこればっかりはどうにもならなくて...多少憧れはあったけど女の子らしくなんてなれない、それがタマだった」
「「でも、初めて襲撃があったあの日」」
「他のみんなもそうだろうけど、タマたちの力化け物を倒すものだってのは理屈を超えて理解できた」
「でも、私には立ち向かう事なんてできないから、怖くて、逃げて、誰か助けてって願って」
「タマはこういう性格だから、自分にぴったりの役割だって思って、巫女の言葉通り近くの勇者を助けに行った」
「「その時思ったんです/その時思ったんだ」」
「「自分を助けてくれた女の子が/自分にはない女の子らしさを持った女の子を」」
王子様みたいだって――
この子を守ろうって――
話しを終えた二人は、少し正気に戻ったのか顔を赤らめるとぎこちない笑みを浮かべながら言う
「なんか、少し恥ずかしいな...」
「そうだね...」
「いや、二人の事をもっと知ることが出来た...いい話だな」
俺が二人にそう言うと、少しからかってやろうという笑みを浮かべた高嶋が二人に言った
「もう一緒に暮らしちゃえばいいのに」
「それは、寄宿舎の部屋が隣同士で入り浸ってるから」
「もう似たようなものですよぉ...でも、もしタマっち先輩と暮らすなら色々大変かも、部屋の中に自転車とかキャンプ用品とか色々置いてあるからそれを片付けてからじゃないと」
「タマの部屋に置いてあるのはただの自転車じゃなくてロードバイクだ。錆びないようにキャンプ道具だってそのうち使うから!...大体それを言うなら杏の部屋だって相当だぞ?本棚も机の上も枕元にも本ばっかりじゃん、それも恋愛小説ばっかりだ!部屋に行くたびに増えてるし」
再び軽い言い合いを始めた二人を後目に閉じていた本を読み始めると早めに食事を終えゲームをしていた郡が俺の方を向く
「貴方...朝からずっと本読んでるけど、それはなに?」
「そうだ!それタマも気になってたんだ!」
「実は私も...随分熱心に読んでるから何かなって」
その声を聞いて顔を上げると、三人だけでなく勇者全員大なり小なり気になっていたらしい、俺は帯を栞代わりに本を閉じると全員に向かって言う
「サルでもわかる上手い信頼関係の築き方と言う本だ」
「...すまないが、もう一度言ってくれないか?」
全員が沈黙するが、その中で乃木が俺にもう一度聞いてくる
「サルでもわか――「もういい!私の聞き間違いじゃないことは分かった!」
「そうか」
「大社から不知火さんが出かけたと聞いてはいましたが...どうしてそのような本を?」
「お世話になった病院の先生に言われたんだ、信頼を得るには自分が相手を信頼する事だと...しかし俺はどうみんなを信頼していると伝えればいいのかを分かっていない、だから先人の知恵を頼ることにしたんだ」
「不知火...流石のタマもその本はどうかと思うぞ...」
その言葉を最後に昼休み終了のチャイムが聞こえ、慌てて教室へと戻っていく
昼食の時間を終えた俺たちが午後の授業を受けていると世界の時間が静止する
俺と勇者たちはそれぞれの武器を構え、樹海化した世界で敵の進行を待っていると、猛スピードでこちらに向かってくる
「なんだこいつは」
「へ...変態さん!?」
「...進化体、だとは思うが中々に独創的だ」
乃木、高嶋、俺の三人は思い思いの感想を口にする、言葉を発しなかった郡や杏も若干引いていた
「あれは食えんな」
「バーテックスって食べられるのか」
「いや、食べられるかどうかとか考えないでください!要さんも食べられるなら食べようとか考えないでくださいね!」
若干気の抜けた雰囲気が漂っていた、珍しく一言も言葉を発していなかったタマが不敵な笑みを浮かべると全員の前に出る
「ふっふっふ、ここはタマに任せタマえ!」
「何をする気だ?」
「よくぞ聞いてくれた不知火!実はタマ、こんなこともあろうかと秘密兵器を持ってきていた!...タマだけに、うどんタマだぁ!!!」
「それを...どうするつもり?」
別に質問したわけではないが、得意げにうどん玉を取り出したタマに対し郡がそう言うとタマは得意げに言葉を続ける
「大社の人が言うには、バーテックスには知性があるんだろ?そしてあの、人の下半身みたいな姿...やつはもしかしたら人に近いのかもしれない!」
確かに一理ある...一理あるのだろうか?そもそも知性があると言っても奴らは人と同じものを食べるのか?と言うより食事の概念はあるのか?
「そっか!だったらうどんに反応して隙ができるかも!」
出来るのだろうか?できなくないか?
「その通りだ、友奈!この最高級讃岐うどんを前にして、人なら冷静ではいられないッ!文字通りくらえぇぇぇ!」
その声と共にタマは思い切り最高級讃岐うどんを投げたが二足歩行の進化体はうどん玉を素通りする、案の定と言うか当たり前な気がする
「「「「「」!!!???」」」」
勇者に戦慄走る...これは俺が可笑しいのだろうか、それとも彼女たちがうどんジャンキーなだけなのだろうか
「うどんに...なんの反応も示さないだと!?」
驚くところはそこなのか?
「釜揚げじゃなかったか!?」
考える所そこなのか?
「ううん、タマちゃん...釜揚げじゃなかったとしても...最高級うどんを無視するなんて...やっぱり分かり合うことは出来ないんだね」
「...そのようね」
そんなに深刻な事なのか...ッ!?
俺は全員の前に立つと槍の形にしていた血液の形状を盾に変え、全員を庇えるように構えた瞬間激しい衝撃と共に俺は吹き飛ばされた、体を叩きつけられ一瞬意識が飛びそうになったが、何とか起き上がるとバーテックスは身体をうねらせ、もう一撃を杏に向けて繰り出す
その攻撃をタマが受けたが、威力を殺しきれなかったのか杏共々吹き飛ばされた
「くそっ、早く合流を...ッ!」
俺が動こうとしたタイミングで、吹き飛ばされたタマたちの方から旋刃盤が飛んできた、進化体はそれを避けるが少し遅れて放たれた矢が旋刃盤のワイヤーに引っかかり進化体を真っ二つにした
「凄いな...」
思わず頬が緩みそうになるが二回頬を叩いて、気を引き締め直すと乃木達と合流し残った星屑の殲滅しに向かおうとして、近くに落ちているうどん玉の存在に気づく
「持って行っておくか」
俺はうどん玉を拾い上げると、手に持っていた槍をボールくらいの大きさに変えると、星屑が集まる方に全力で投擲した
そのボールを追いながらイイ感じの場所に辿りついたのを確認する
「自家製クレイモア地雷...爆砕!」
その言葉と共に俺の投げた血液ボールは爆散し、破片が次々と周りにいた星屑の身体にめり込み消滅していく
「一丁上がり...でいいのだろうか」
「前にも思ったが、容赦がないな」
隣にやって来た乃木にそんな事を言われたが、別にそんなことはないだろうと思う
「歴史書を読んで、相手のやって来た事を知ったからな...加減をする理由が見当たらない」
「それもそうだな、不知火、私に続け!」
「了解、背中は預けた」
その言葉と共に俺と乃木は残った星屑の方に向かう
それから程なくして戦闘と検査が終わり、翌日の食堂
アームホルダーで腕を固定されたタマが杏にうどんを食べさせてもらっていた、骨折はしていなかったらしいが左腕は暫く使えないらしい
「うまいッ!」
「良かったな、タマ」
「あぁ...不知火もありがとな、最高級うどん回収しておいてくれて!」
「成り行きだ、気にしなくていい」
実を言うと現在タマが食べているうどん玉は、昨日回収したうどん玉ではない
袋詰めされたとは言え、少し放置されていたものをそのまま渡すのはどうかと思い、検査の帰りがけに新しいものを買いそれを渡した。
更に余談になるが作戦に使われた方のうどん玉は責任をもって俺の昨日の夕食になった
「腕は...大丈夫なのか?」
昨日の事を思い出しながらひとりカレーを食していると、乃木がタマに腕の調子を聞いていた
「ただの脱臼だから心配無用!でも心配してくれてありがとな!」
「軽い怪我でよかった」
「窮屈だから取っちまいたいくらいだけどな...こんな時ばっかりは不知火の不思議体質が羨ましいぞ」
「取るのはダメだよ、怪我が長引いちゃう」
「...俺の体質も良いことばかりじゃない、すぐ直ると言っても痛覚はあるからな」
「そういうもんなのか...うまい!」
タマは俺のそんな言葉を聞きながら杏に食べさせてもらったうどんに舌鼓を打っていると、それを見ていた高嶋が遠慮がちにタマに言った
「そのうどん、私も一口...貰ってもいいかな?」
「友奈、あのうどんはいわば球子の戦利品だ...一口くれなんてはしたないぞ」
「若葉ちゃんこそ、よだれよだれ!!」
「見事なまでに説得力がないな」
「き、気のせいだ!」
「若葉ちゃんも食べてみたいくせにぃ、どう?タマちゃん」
「えー?どうしよっかなぁ」
戦いの間にあるつかの間の平和と勇者たちの日常、そこには確かに絆がある
まだ作りかけかもしれない絆、それを見ながらいつか自分がそこに入れると良いな等と考えながら、俺は残ったカレーに舌鼓を打った