不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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勇者の章,5-4 亀裂

 友奈の話を聞いた俺たちは、それを許容する事などできない。たとえ言葉を発することはなくともその気持ちは同じだったと思う

 

「あからさまに怪しいでしょ、何引き受けようとしてんの」

「ゆーゆ」

「違うと思います」

「友奈、お前が何を考えたがわからないけど、少なくとも間違ってるってのはわかる」

 

「みんな……」

 

「……今のみんなの反応でわかるでしょ、友奈ちゃんの考えが間違っているってことが」

 

「東郷さん……」

 

 案の定みんなから出た反応は否定的なものだった。自分たちの仲間が生贄にされようとしている、そして当の本人が自分の一人で抱え込んで勝手に結論を出そうとしている。そんなの俺たちからしたら許容できるものではない

 

「それにしても大赦め、友奈! 私たちもついてってやるからバッチリ断んなさいっ」

「神婚なんてする必要ありませんよ」

「園子、今から大赦に連絡いれられる」

「うん」

 

「ま、まっ──」

 

「もう我慢ならない」

「いくわよ、一度潰したほうが良い組織になるかもしれないね」

 

 正直な所、俺としても今回ばかりは大赦を許すわけにはいかない。今回だって何を考えたのかは知らないが友奈のタタリの事はあっちも知っていたことってのを考えるに俺たちにも聞かせたら反対するってのは目に見えてたから友奈個人に話をしに行ったんだろう

 

「待ってっ! だから、私は……神婚を引き受けるって──」

「その必要はないんだって」

「だって、死ぬんでしょ?」

「わけわからない、生贄と変わらないじゃない」

「あと、神樹様と共に生きるってどういう意味なのかな……」

「その、なんかゾクってくると言うか」

「とても幸せなことだとは思えないわ」

 

 神婚の話は横に置いておくわけにはいかないが神樹と共に生きるって言うのがどういう意味なのかも気になってくる。流石に今のままって訳にはいかないだろうから一体どういう事なのかを問いたださないといけない気もする

 

「でも、私が神婚しないと神樹様の寿命がきて、世界が終わっちゃうんだよ」

「神樹様の寿命はわかるけど、だからって友奈が行く必要がないでしょ?」

「寿命問題だってもしかしたら解決策があるかも知れないのに、自分から命を投げ出すなんてのは流石に違うだろ」

 

「──っ、勇者部は、人の為になることを勇んで行う部活、でしたよね?」

「友奈これは違う」

 

 風先輩は友奈が何を言おうとしたのかはっきりわかっていたのかすぐに否定をするが、それでも友奈は言葉を止めなかった

 

「でも、これも勇者部だと思うんです。誰も悪くない、世界を守るために、他に選択肢がないならそれしかないなら、私、勇者だから──」

「友奈ッ! 一回頭冷やしな」

「ゆーゆ、それしかないって考えはやめよう……徹くんが言ったように神樹様の寿命がなくなるまでの間に、もっと考えればいいんだよ」

「駄目、なんだよ。考えるって言うけど、私は……私にも、もう時間がなくて──」

 

 そこまで言うと、友奈は言葉を詰まらせる

 

「友奈……」

「私たち知ってるわ、友奈ちゃんが天の神のタタリで身体が弱っていることを」

「その話はやめてっ! 私は何も言ってないッ!!」

「友奈ちゃん、大丈夫よ」

「その件も含めて、解決して見せるから」

「大体おかしいですっ、なんで友奈さんがこんな目に遭わなきゃいけないんですか」

「でもね、でもね樹ちゃん。私は嫌なんだ……誰かが、傷つくことが、辛い思いをすることが……それが、今回は私一人が頑張れば──」

「駄目よッ! 友奈ちゃんが死んだら、ここにいるみんながどれだけ辛い思いをするとおもっているのっ! 私……想像してみたけど、後を追って、腹を切ってしまうかも知れない」

「で、でも……東郷さんだって、みんなを護るために火の海に行ったでしょ。あれだって、自分一人で世界を守れるならって思ったからでしょ」

「そうよ! でも壁を壊した私の自業自得でもあるのよ! 友奈ちゃんは悪くないじゃない! 反対よ! 腹を切るわよ!」

「そんなの……ずるいよ。私は、東郷さんの代わりに──っ!」

「代わりに……なに、友奈ちゃん……」

 

 そこからの話し合いは、もはや話し合いとは言うこともできない程にひどいものだった、互いが互いに意見をぶつけ合って、今までだったらあまり見ることのない光景

 

「ゆ、友奈さん……友奈さんが言うように、勇者はみんなを幸せにするために頑張らないといけないと思うんです」

「そ、そうだよ……だから私、頑張ってるよ……」

「で、でも──」

「みんなって言うのは自分自身もそこに含まれてるのよ、友奈」

「幸せ……だよ私は……それで……みんな助かるなら──」

「嘘よっ!」

「ゆ、勇者部五箇条ッ! なるべく諦めない、私はみんなが助かる可能性に賭けているんだよっ!」

「あんたが生きることを諦めてるじゃないッ!」

「勇者部五箇条ッ! 成せば大抵何とかなるッ! 成さないとなんにもならないッ!」

「友奈! 五箇条をそんな風に使わないッ!」

 

 傍から見ても、今の友奈が精神的に追い詰められているという事は分かる……多分、ここでどんな声をかけたとしても、俺たちの言葉は──友奈には届かない

 

「私は、私の時間があるうちに私の出来ることをしたいんですっ、だから、こうして、みんなにきちんと相談しましたっ」

「これじゃ報告だよ、ゆーゆ。相談しなきゃ──」

「相談してるよッ!」

 

「すとーっぷ!」

 

 このままじゃ埒があかなかった言い争いにストップをかけたのは、今までずっと沈黙を貫いていた銀だった。俺たちと友奈の間に割って入るように歩いてきた銀は、手をパンと叩いてから話を始める

 

「みんな、一旦落ち着いて。これじゃあ話し合いじゃなくて言い争い、互いの主張を押し付け合うだけじゃ何の解決にもならない……でしょ?」

「それは……」

「友奈、アタシはみんなよりも少しだけ付き合いが短いけどさ。それでも友奈が人一倍頑張り屋で、それでも一人で抱え込んじゃったりすることも知ってるつもり……だからさ、苦しいとか、辛いとか、思ったことは口にださないと」

「銀……ちゃん」

「アタシたちはね、みんな友奈を犠牲にしてまで生き残りたいとは思ってない。もしも方法、何か他に方法があるなら力になりたい。その気持ちは同じ」

 

 諭す……というよりも取り乱した友奈を落ち着かせるように言葉を続ける銀に対して、俺たちは何も言葉を挟まない……いや、挟んだら多分また言い争いになってしまうから、挟むことができない

 

「アタシも昔、須美たち三人を護るために一人で無茶した経験があるからさ、わかるんだよ。一人で頑張るってのはすっごい辛いし、心が折れちゃいそうにもなる。実際問題、多分アタシも不知火さんが助けてくれなけりゃあの場で命を落としてたかも知れないし…………でもそのお陰で、改めて仲間に頼っていいんだってのは感じることができた。だからさ……友奈も、アタシたちを頼ってくれていいんだよ? だって、仲間なんだから」

 

「私は……私、は……っ──」

 

 何かを発しようとした友奈だったけど、その言葉を発する前に顔を青くして部室から飛び出して行ってしまった。いきなりの事で少しだけ意表をつかれたけど、東郷と園子の二人が友奈の事を追いかけて出ていく

 

「……何をどうするのが、正解なんだろうな」

 

 大切な所で足が動かなかった、動かすことが出来なかった俺は、力無くその場に腰を掛けると頭を抱える。正直、俺本人も言葉を口に出すと喧嘩になってしまいそうで怖くて……でも、何て言葉をかければいいのかわからないくらい、頭の中がぐしゃぐしゃになっていた

 

「多分だけど、正解なんてないんだと思うよ?」

「正解が……ない」

「うん。世界全体からとか、大赦のなかから見たら友奈の判断が正解なのかも知れない……けどさ、それはそれとしてアタシ達にも曲げられない意地ってもんがある。だからきっと正解なんてないんだと思う」

「……そうなのかね」

「きっとそうだよ、そう信じれば大丈夫!」

 

 そう言って笑顔を見せる銀に対して、俺は目を向けることしかできなかった……どうやらずっと並んでいる気になっていただけで、銀は俺より何歩も前に進んでいたらしい

 

「なんか、気が付いたらでっかくなってたんだな。銀」

「どーいう意味だそれ」

「そのまんまの意味だよ……俺も、お前に追いつけるように頑張らないとな」

 

 力を振り絞って立ち上がると、俺は自分の頬を叩いて気合いを入れ直す

 

「俺も友奈を探してきます、自分の言葉は、しっかり伝えないと」

 

 そう言って部室を出ていこうとしたところでスマホに連絡が入った。誰から連絡が来たのか確認するとそこに表示されていたのは師匠の名前

 

「はい、八重樫です」

「……あぁ、八重樫か。悪いが今から送る場所に来てくれ。話がある」

 

 それだけ言うと師匠は一方的に通話を切り、MAPアプリの位置情報が送られてくる

 表示されていたのは────英霊之碑の位置情報

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