不知火 要は勇者でない   作:SoDate

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勇者の章,6-1 開幕

 英霊之碑に到着した俺たちを待っていたのは師匠と安芸先生、ああやって二人で並んでる姿を見るのもだいぶ久しぶりだけれど今はそれを気にしている場合じゃないんのが少しだけ悲しい所ではある……よし、切り替えていこう

 

「……来たか」

「あの、急に呼びだして一体何の──」

「結城友奈の身に起こってること、その様子だともう知ってるっぽいな」

 

 師匠のその一言を聞いた瞬間、どうしてここに呼びだしたのかを理解するのと同時に身構えてしまう

 

「一応言っておくが言わなかった事情は知ってるだろ?」

「それは、まぁ……」

「なら、話さなかったのはお前らの知ってる通りだ」

「それで、友奈ちゃんは一体どこにいるんですか?」

「彼女は今、大赦にいます」

 

 東郷の問いかけに答えたのは師匠ではなく隣にいた安芸先生。とりあえず友奈の居場所がわかったなら話は速い

 

「それじゃあ、大赦に乗り込むわよ」

「ちょっと待った、その前に話しておかないといけない事がある」

「話しておかないと……いけないこと?」

「あぁ、事態は想像以上に切迫してるって事だ」

 

 師匠がそう言った直後、安芸先生のポケットから着信音が鳴った。スマホを取り出した先生は画面を確認すると、師匠の方を向いて首を横に振った

 

「……やっぱダメだったか」

「何が、ですか?」

「端的に言うとこっちでも友奈の神婚を止められなかったって事だ……裏で色々動いてくれてたみたいだが、全部無駄になった」

「それなら、なお急いで大赦に向かわないと──」

 

 風先輩がそう言ったタイミングで師匠は自分の胸を抑えて倒れそうになる、自分で踏みとどまったのと先生が支えてなんとか倒れることはなかったが急にそうなるのは少しだけ不可解だ

 

「師匠?」

「悪い……そんで、話しておかなきゃいけない事だが。近々──天の神が攻めてくる」

「それ、どういうことですか?」

「そのままの意味だ……昔のことになるが、天の神は人間が神に近づいたことにキレて裁きを下した。そんなやつが人と神様の結婚を許すと思うか?」

 

 天の神が、人が神に近づくことを許さず裁きを下したのなら、人が神と結婚してその仲間入りをするなんて許してくれるはずがない

 

「それじゃあ、天の神は──」

「間違いなく、人類を滅ぼしにくる」

 

 直後、俺たちのスマホから鳴り響いたのは樹海化警報、けれどその警報はいつものではなく東郷が壁を破壊した時に鳴り響いた緊急事態を示す音だった。その音もスマホの画面にノイズが走りシャットダウンされてしまう

 

「な、なんだッ!?」

「まさか、これって──」

「想像より早めに来たな」

 

「来たって、まさか──」

 

 自身と共に、青空が焼け始める。地平線の向こう側から迫ってきているのは巨大な壁のようなナニカ……俺たちの想像よりもはるかに強大な存在だった

 

「現実の世界に敵!?」

「あれが……天の神」

 

「一応、大赦から言われた命令は伝えとく。神婚完了まで敵の進行を抑えろだとよ」

「そんな命令、聞けるわけないでしょ!」

「だろうな、だからお前らはお前らの選択を最優先で叶えろ。恐らくこうなった以上友奈も樹海の中にいる筈だ……世界なんざ気にしないで。お前らのやりたいことをやるんだ」

「師匠……それじゃあ、敵は──」

「俺が抑える……安心しろ、どうせ死にゃしねぇ身体なんだ、後ろはしっかり任せとけ」

 

 そう言って笑っている師匠だったけれど、それはどうしようもなく────

 

「先行って準備してろ、俺も準備終わったらすぐに行く」

 

 

 止まってしまった俺たちの背中を押すように師匠はそう言うと道を譲る

 

「……行きましょう、友奈を助けるわよ」

 

 風先輩のその言葉に頷いた俺たちは、師匠よりも先に天の神と対峙する

 

 

 

 

 

 

「ありがと、安芸ちゃん。身体支えてくれて」

「気にしないでください、それよりもさっきの言葉」

 

 八重樫たちを行かせた俺はその場に座ると、深呼吸をすると安芸ちゃんの言葉に返事をする

 

「どうせ生い先短いこの身体だ、随分と長いこと頑張ってきたが……そろそろ潮時なんだろうな」

 

 一度実感してしまうと何となくわかる、無茶しないで生きててもどっちみち俺の命は友奈と同じく春を迎えられることはないだろう。ただ無茶をしたらそれが今日明日の命に変わるってだけ、それなら俺は今まで勇者を見てきた者として今代の勇者がやりたいと思ったことをサポートする

 

「さてと、それじゃあ俺も行ってくる」

「……絶対に、帰ってきてくださいね」

「確約は出来ないけど、努力はする」

 

 座っていた場所から立ち上がると俺も勇者部の方に向かおうとしたところで、安芸ちゃんに手を掴まれた

 

「どうした?」

「確約してください、帰って来るって」

「いや、だから──」

「絶対に、死なないで」

 

 それに対して、俺は迂闊な返事をすることが出来ない、なんせ今の俺は普通に死ぬ、そして今回の戦いは本気で命を燃やす覚悟で行かないと勝てる勝負じゃないから

 

「……それじゃあ、行ってくる」

 

 だから安芸ちゃんの頭に手を置いて雑に撫でてから勇者部の所に向かうと、既に勇者服に着替えた勇者部のメンバーが目に入る

 

「悪い、待たせた」

「大丈夫です……それより、安芸先生は」

「樹海の仕様は多分いつもと変わらないから大丈夫……来たぞ」

 

 勇者たちに並び眼前の敵に前を向けた俺たちは色とりどりの花弁に視界を遮られ、眼前の景色は樹海へと変わった

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