1話 ハズレの味は…
「さむっ…」
木製の扉を開けて青年は1段降りた。室内のような場所は暗く、薄っすらと商品棚のような物が見える。青年は壁のスイッチを押して電気を点けた
棚には10円の大玉の飴やガム、50円のラムネ、30円の運試しのガム、スナック菓子など様々なお菓子の類が並べられていた。それらを無視して壁に向かうと鍵を開け、横にスライドさせてからシャッターを上げた
「ぅぅ…元気だなー小学生は」
年をとったジジ臭いことを、学校へ向かう小学生を見ながら呟いたのはこの店の店主
とはいえ、ヒーローが好きなのは変わらないので。毎週やっている特撮ヒーローは逃さず見ている
「行ってくるね」
「おー、気をつけてな」
玄関口から出て通り過ぎたのはショートヘアーの澄人の妹、清瀬
手伝ってくれるのはありがたい反面、妹に将来を選ばせてあげられないことに澄人は悔しさも感じていた
「はぁ……にが……やっぱイチゴミルクはあめぇな」
ことあるごとに澄人には味覚が変化する。それは何も食べていないときでも。舞に手伝ってもらうのが間違っていると訴えるかのように、突然舌が苦味を感じたのだ。ゴーヤを食べているようなくらいに。常備している甘い飴を口に入れて、苦味を消して店の扉を閉めた
今日も仕事をするために商品の補充や予定を確認していった
昼も過ぎてやるべきことをやってテレビを見て退屈そうにしている澄人。駄菓子は主に子供がターゲットだから、下校時間になるまでは大体暇だったりする。たまに大人が来たりもするが
なにもかわらないいつもの日常、そう思っていたときだった
『えー速報です。三門市立第一中学校で…えぇ!? え、ぁ、
「っは!? 第一って舞がいる…」
寝耳に水とはこの事を言うのだろう。立ち上がった澄人はすぐに旧世代となってしまったスライド式の携帯を開いて舞に連絡をした
「たのむっ…出てくれ………っ、舞か!?」
『お兄ちゃん?』
大事な妹を失いたくはないと、無事でいてくれと必死で願いながら数コール後に応答があった
「無事か!? 怪我はないか?」
『うん。あたしは大丈夫。隣のクラスの三雲って人がボーダーの人みたいで、それで助かったよ。でも―』
大丈夫と聞いて澄人は安心した。両親を失い、祖父母に引き取られてから祖父も病気で亡くなって家族が減っていった。これ以上失いたくないと強く思っていたからこそ、舞の元気な声に安心できた
「どうした? なんかあったのか?」
『えっと、違反? とかしちゃったみたいで……嵐山隊の人に怒られてた』
「そ、そうか」
嵐山隊というのはボーダーの顔として広報活動などをしている部隊だ。その人たちに怒られているってことは規律違反をしたと言うことだ。間違いを犯せば怒られるのは当然だから澄人は大して気にしていなかった
「とりあえずもう帰るんだろ? 迎えにいくから待ってろよ?」
『え、でも…授業は続けるみたいよ?』
「は!? 襲われたんだろ? 何で!?」
『だって、壊れたの特別教室があるほうだし』
襲われたのは特別教室で、クラス教室で続ければ問題はないようで授業は再開するらしい。帰宅させるの正解だろと教師たちに怒るが、受験前と言うとことで少しも無駄にはできないらしい。面接対策や応用復習など3年生にとっては重要な時期だ
高校に行くことを選ばなかった澄人にはイマイチ共感はできなかったが、舞の将来のことを考えると少しでも力を付けさせてあげたかった
「はぁ…わかった。でも放課後には迎えに行くからな。今日は店を早めに閉める」
『あ、うん、わかった』
結局、舞のためと考えて帰らすことは諦めた。代わりに迎えに行くことだけ伝えて通話を切った。そのあと横の扉が開いて年老いた女性が座っていた
「すみくん。舞ちゃんは大丈夫かね?」
「うん。無事だって。今日は早めに閉めて迎えに行くよ」
すみくんと呼んだのは澄人の祖母の清瀬フネ。2年前に病気を患ってから一気に体が不安定になり怪我もしやすくなった。殆ど家の中で生活をすることになり、せめてこれくらいはさせてと2人のご飯を作っている
「そうだね。そうしたらいいよ」
舞の無事を知って安心した祖母は開けた扉を閉めた。澄人は学校が終わるころまで店を開けていたが、結局それからきたのは2人ほどの大人だけだった。約束通り迎えに行くために父親が買っていた車を使って学校まで迎えに行った
「お兄ちゃん!」
「ん。開いてるぞ」
校門の近くで待っていると舞とその友達もきた。舞と仲の良い奴だったなと思い出し、断る理由もないからと一緒に乗せて発進した
「すごい綺麗だったねー!」
「ねー! でもアタシは嵐山さんが推しかな」
まずは舞の友達を送るために車を走らせていると、駆けつけてくれた嵐山隊の話をしていた。どうやらテレビの有名人を直接見て興奮していた
舞が嵐山隊の話をして少し懐かしい気持ちになっていた。今の本部基地が作られるようになってから完成までの半年間。何度か面倒を見てやったことがあるからだ。あの頃もだったテレビに映ることに臆することもなく堂々としていた。肝の据わった奴だなと記憶にあるし、結構成長もしていた
「ねえ、アレってなに…?」
「あれ?……お、お兄ちゃん!! 商店街に!」
「なっ……トリオン兵!? なんでまた外に!?」
話も盛り上がっていたところで友達が、次に舞が外を見て澄人が驚いた。鯨のような白い巨体が宙に浮いていたのだ
「きゃぁぁあ!?…なに、爆発?」
「っち、面倒なのが出てきたな。悪いけど婆ちゃん回収してから避難所に行くからな!」
警戒区域外に出てきたトリオン兵はイルガーと言って拠点強襲用爆撃型。腹が開いて小さい爆弾を落としていく。澄人が面倒と言ったのはイルガーは宙に浮いているため接近は難しいというところだ。しかも装甲は厚いため半端な攻撃は意味がない。極めつけは確実に仕留められなかった場合自爆モードに移行して大規模の爆発をする
幸い交通量が少ないところまで来ていたことで速度を上げて店へ急いだ
「婆ちゃん!!」
「おかえり、すみくん。ご飯はまだかかるから待っててね」
「そんなことより避難するよ!
「うん!」
これから夕ご飯の支度をしようとしていた祖母の手を持って車へ、舞は玄関の横の収納棚から災害用防災鞄を持ち出し、避難所に向けて車を走らせた。空いている場所に受け取ったブルーシートを広げ荷物を置く。舞の友達は家族も来ていたので合流した
「お兄ちゃん…行かないの?」
「…言ったろ? ボーダーは抜けたって」
ゾロゾロと人が増えていく中、舞が不安そうに言った
一般人として過ごすことになってからボーダーとの関わりは無くなった。最初の1,2ヶ月は連絡などしていたが、徐々に減っていき半年も経たずにメールすら来なくなった。寂しさを感じてはいたが店の経営をしていくうちにそれすらも薄れていった
「ハズレ…か」
ネイバーが現れたのに何もしない。戦わない選択をした澄人にサイドエフェクトが反応し口の中が苦くなった。つまり、澄人にとってこの選択は「間違い」だということの証明だった
「ご飯配られているから取ってくるよ。舞は婆ちゃんと居て」
「うん…わかった」
「すみくん。ばあちゃんはそんなにいらないからね?」
「はいはい」
人も落ち着き始めたのか、ボーダーの職員の人が食事の配給を始めてた。3人分の食事を受け取り食べ進めていたら、メディア関係の人が避難した人たちにインタビューをしていた。何も知らないよりはマシだったとしても、家や店を壊された人だっている。そんな人たちに「ネイバーはどんな姿をしていましたか?」「現れたときどこに居ましたか?」なんて傷も治らないうちに好奇心で聞いていくのは誰もが見ていていい気分にはならなかった
そんな中で気になることを数人が続けて答えていた
「メガネのボーダーの人が助けてくれたんです」
「メガネを付けたボーダーの男子が瓦礫をどかしてくれたおかげで―」
「もうダメかと思いましたけど、白い服のボーダーの人が来てくれて―」
小さい子供や頭頂部が薄くなっているおじさんなどいろんな人が「メガネ」「ボーダー隊員」「白い服」「男子」と共通して言っていた。澄人にはそれが本当にボーダー隊員なのか疑問だった
ボーダーで白い服。つまりは訓練生ということになる。訓練生は本部以外でトリガーの使用は禁止している。それは本部設立前にみんなで話し合って決めたことの一つだし、何度か入隊試験で監督をするときにも説明はした
だから澄人には規則を破った彼は本当にボーダーの関係者なのか疑問だったのだ。訓練生で破れば文句なしの追放だ
とは言え、こうして人を助け。感謝の言葉を述べているということは人命を救い、救助活動をしていたのだから謹慎とかで済む可能性もあるかもしれない。なにより、澄人にはその隊員が自分よりヒーローだなって思えた
やがて
翌日には帰宅し、学校は一時閉鎖。店への被害は衝撃波が来たのかガラスがひび割れ1枚、破壊が2枚だった。窓の交換の依頼と散らかった商品や部屋の物を片付けるのに2日を費やした
子供のころは近所の駄菓子屋でよく遠足のおやつとか買った思い出がありますね~
とくにシガレットタイプのラムネ菓子はよく買ってましたね。ちなみにソーダー味が好きです
皆さんはなんの駄菓子が好きですかね?