動き出す刻   作:屋根裏散歩

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話の内容は第十二話の途中に入る話となります


第十三話 雛飾り前夜

「何か思い出になるような事をしてあげたいなぁ……………」

 

僕は執務の合間にそんな事を考えていた。

 

「そうですね、何かないでしょうか」

 

大淀も考えていたようだった。

 

「少し早いですが雛祭りをするというのはいかがですか?」

 

山城が意見を出した。

 

「雛飾りか……………確か倉庫に祖母のやつがあったはず……………」

 

僕は父さんの携帯に電話を掛けた。

 

「父さん久しぶり、元気?」

「ああ元気だ、お前から電話とは珍しいな」

 

少しぶっきらぼうではあったが親子の会話を交わし、本題へと入った。

 

「父さん、倉庫にばぁちゃんの雛飾りあったよね?」

「あったはずだが、どうした使うのか?」

「うん、鎮守府って女の子しかいないから時期も丁度いいから飾ろうかと」

「しまいっぱなしよりは良いだろうからな、持っていっていいぞ、あと必要なものが有れば好きにしていいからな」

「それじゃぁ、今週の金曜の夕方に行くよ」

 

僕はそう言うと電話を切った。

それからすぐに僕はレンタカー屋に4トントラックを予約した。

 

「山城、今週末から日曜迄空いてる?」

「はい……………特に予定は」

「父の借りてる倉庫に荷物を取りに行くから手伝いを頼める?」

「構いませんが」

 

こんな調子で、僕は明石、夕張、陸奥、間宮、千歳に声を掛けた、結果は全員即答でオッケーだった。

 

「それじゃ、トラックは明石と夕張に任せるよ」

「おまかせ」

 

明石と夕張が手を振りながらトラックへと乗り込んだ。

 

「残りは僕の車へ」

 

千歳と陸奥、山城が後部座席へ間宮は助手席へと乗り込んだ。

 

「士郎君、先ずは私の家にお願いします」

 

間宮も何か荷物を取りに行くようで、実家の前で一旦降ろして欲しいとのことだった。

 

早朝に鎮守府を出発して昼近くなる頃、僕達は故郷の街に到着した。

 

「士郎君、直ぐに追いつくから先に行っていて」

 

そう言うと、間宮が車から降りて彼女の家へと入っていった。

 

「私前に移ってもいいですか」

 

千歳が助手席に移動した。

 

「それじゃ、僕の家に一旦向かうよ」

 

それから直ぐに僕の家に着いた。

 

「父さん、只今」

 

父さんが玄関前で待っていた。

 

「息子がお世話になっています」

 

父さんが山城達に頭を下げた。

 

「おじさま、ご無沙汰してます」

 

明石が答えた。

 

「明海ちゃん、元気そうだね」

 

その後、父さんと山城達が挨拶し終えると、僕は倉庫の鍵を借りた。

 

「俺も行くよ」

 

父さんもついてくることになった。

 

「自分の車で行くから気にするな」

 

父さんがガレージから自分の車を出した。

 

そして間宮と合流して倉庫に着くと、父さんが倉庫の中を指さして、

 

「必要な物が有れば好きに持っていけ」

「先ずは雛飾りをさがし「雛飾りなら一番奥に纏めて置いてある」」

 

父さんが一番奥の一角を指差した。

 

「箱に内容物の名前とナンバリングしているから分かると思う」

 

僕達は奥へと向かった。

 

「これだね、結構あるな」

 

僕は箱の数に驚いた。

 

「仕方ないさ、お袋の雛飾りは7段飾りと言われるやつだからな」

 

父さんがそこまで言うと、千歳と山城を見て口を開いた。

 

「千歳さんと山城さんは着物を普段から着ているみたいなんだな、それならこの桐箪笥を上げるよ、着てあげてほしい」

 

父さんの言葉を聞いた二人が桐箪笥の引き出しを開けた。

 

「これは!」

 

引き出しの中身は着物だった。

 

「よろしいのですか?」

「うちは女の子いないからな、構わないよ」  

 

それを聞いた二人の顔が一瞬曇った、何故なら彼女達も最上の事を知っていたのだから、だがそれを口には出さなかった。

 

「気にせずにもらってよ」

 

僕の後押しで、二人共お礼を言うと箪笥ごとトラックに積み込んだ。

それ以外にも掘り炬燵や日常雑貨や趣味の物を積み込むと倉庫の半分以上が空いた。

 

「これなら倉庫も大きさ変更して安く済むな」

 

父さんが俺は此処でといっても別れていった。

 

「それじゃ僕達も帰ろうか」  

 

僕達は途中遅めの昼食を間宮の実家の食堂で摂ると鎮守府へと帰ることにした。

 

「只今…」

 

僕はゲート脇の警備室に声を掛けると、最初に食堂へと向かった。

 

「食堂脇に雛飾りを飾るから」

 

食堂の片隅に雛飾りの入ったダンボールを積んでいった。

 

「桐箪笥は一棹ずつ千歳と山城の部屋に、残りのダンボールは僕の部屋」

 

手伝ってくれる艦娘に指示を出していった。

 

「このゲームって?」

 

千歳が僕の部屋に運び込んだゲームと書かれたダンボールが気になったようだった。

 

「これはね」

 

僕はダンボールを開けると中身を見せた。

 

「やっぱり男の子ですね」

 

千歳が中に入っているゲーム機を見て微笑んだ。

 

「提督!後でやらせてください」

 

夕張が某レースゲームソフトを見つけると喰い付いてきた。

 

「構わないよ、とその前に雛飾りの方を開梱していこうか」

 

 

僕達へ食堂へと向かうと、雛飾りの入ったダンボールを開けていった。

 

「配置が……………」

 

僕はネットで調べたがイマイチわからなかった。

 

「祖母に聞いてみましょうか」

 

山城と千歳がそれぞれの祖母に電話してくれた。。

 

「七段なんて凄いですね」

 

大淀が出来上がっている台座を見て驚いていた。

 

「提督、祖母が知っているそうです、これから迎えに行っても宜しいですか」

 

どうやら二人共祖母が鎮守府近郊の街に住在らしくすぐに来てくれるとのことだった。

 

「二人共、迎賓宿泊申請書いておきますから後で署名捺印しておいてくださいね」

 

大淀が助けてくれた。

そして二時間後、千歳と山城の祖母がやってきた。

 

「孫が何時もお世話に……………」

 

二人の祖母が互いに顔を見合わせた。

 

「竹代姉さん!」

「梅ちゃん」

 

どうやら二人は姉妹のようだった。

 

「まさか孫に呼ばれて来てみたら」

 

千歳と山城はどうやら親戚のようだった。

だが驚くべきはそこからだった。

 

「この雛飾りを拝見して気になったのですが、提督さんにお聞きしたいのですが、このお雛様の持ち主のお名前を伺ってもよろしいかしら?」

 

千歳の祖母が僕に聞いてきた。

 

「祖母の名前ですか、松世…稲葉松世といいますが」

 

祖母の名前を聞いた二人が驚きの表情をした。

 

「そうですか…提督さんも血縁者ですよ、提督のお祖母様は私達の姉なんですよ、こんなことが起きるなんて…」

 

僕は山城と何と言っていいかわからずにいた。

 

「早い話、私達三人は親戚ということね」

 

千歳が微笑みながら簡潔に解説した。

 

「飾り付けとお雛様のセットは明日の朝から行うとして、二人共、ゲストルーム使っていいよ、今夜は家族で過して」

「ありがとうございます」

 

千歳と山城がそれぞれの祖母を連れてゲストルームへと向かった。

僕は解散を告げると自室へと戻った。

 

「士郎君、お腹すいたぁ」

 

明石が僕の部屋でゴロゴロしていた。

 

「こうしてみると爺ちゃんの炬燵って大きいなぁ」

 

それはゆうに6人は入れる大きさの炬燵だった。

 

「昔の家のものだからね、造りもしっかりしてるし」

 

明石が炬燵で寝転びながら答えた。

 

「昨日の残りでよかったら……………「いいです」」

 

僕は冷蔵庫から昨日の残りのカレーをレンジに入れた。

 

 

 

『翌日のお昼』

 

「ちょっと早いけど雛祭りを開催する」

 

千歳達の祖母も加わり、異動組の送別会も兼ねて豪勢な催しとなった。

 

そしてその日の深夜……………

 

僕はゲームをやっていて小腹が空いたので一階にある自販機コーナーに向かった。

 

「誰かいるのか?」

 

誰もいないはずの食堂に仄かな明かりが点っていた。

僕は恐る恐る扉を開けると中を確認した。

 

「!」

 

室内に暖かな光に包まれた老婆が雛飾りの前に佇んでいた。

 

「婆ちゃん!」

 

それは8年前に他界した祖母だった。

 

「士郎、立派になりましたね」

 

祖母は振り向くと、

 

「私の代でこの雛祭りもと思っていたので…」

 

祖母が優しく微笑みを浮かべていた。

 

「婆ちゃんの着物、山城と千歳にあげたよ」

「ええ構いませんよ、誰かに着てもらえるならそれが一番ですからね、これから士郎の部屋に行ってもいいかしら」

 

祖母が僕の部屋に来たいと言ってきた。

 

「構わないけど、明石がいるけど……………」

「明石?あぁ、明海さんね」

 

祖母が僕の後に付きてきた(後日その光景を目撃した青葉が心霊体験とか言って騒ぎになりかけた)。

 

「明海さん、孫の事を宜しくお願いしますね、それと節度あるお付き合いを」

 

明石が頷いていた。

 

「お祖母様、お約束します」

 

明石の返事を聞くと祖母は光の中に消えていった。

 

「お二人共幸せになるのですよ」

 

そう言い残して。

 

 

 

 

後に聞いたことだけど、千歳と山城の祖母達もうちの祖母がいた事に気が付いていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

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