「青葉、至急執務室迄」
僕は一人の艦娘の事が気になり表向きは広報部の青葉を呼び出した。
「青葉です、どうかしましたか?」
それから程無くして青葉が執務室にやってきた。
「ちょっと待ってて、川内と間宮も呼ぶから」
僕は青葉と同じ様に川内と間宮を呼び出した。
「私達を呼んだと云うことは諜報部案件ですね」
間宮が察すると、僕達は司令部地下の諜報部オフィスへと移動した。
「此処なら大丈夫です、で何があったのですか?」
間宮がいつものほんわかした雰囲気ではなく鋭い視線で僕に聞いてきた。
「最近陸奥の様子がね……………なんていうか言いにくいんだけど誰かの命令で何かをしようとしているというか……………」
僕はそれしか言わなかったが、その後を川内が引き継いだ。
「確かに陸奥さんは何かありますね」
僕と川内の言葉に間宮は黙って何かを考えていた。
「陸奥さんの事とは別件かと考えていたのですが、最近鎮守府から不審な電波の発信を確認しています、少し調査が必要なようですね」
この日はこれで解散となった。
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「工作員M、まだ奴を排除出来ないのか、早くしないと娘の命は無いものと思え」
それだけ言うと通信は一方的に切られた。
「どうしたらいいのよ、美遥…お母さんどうしたら」
その艦娘は途方に暮れていた。
だがこの時、間宮の艤装がこの通信を傍受して解析していた事は彼女は知らなかった。
数日後、諜報部オフィス
「提督、あの後謎の通信を傍受内容は『工作員M、まだ奴を排除出来ないのか、早くしないと娘の命は無いものと思え』通信は一方的な物となっています」
「内容にある工作員Mというのが誰なのかということか……………」
僕は工作員Mの正体が気になった。
「しかしある程度は絞り込めます、娘が居る年齢の艦娘であることから、戦艦ないし軽空母及び重巡である可能性があるので、かなり絞られます」
川内が真剣な眼差しで答えた。
「青葉、該当者の個人情報を」
「了解しました」
青葉が人事部サーバーへとアクセスを開始した。
「提督ありました…ですが……………そんな!」
「どうした?」
僕は画面に映し出された情報に驚いた。
「どういうことだ、4年前に該当艦娘は戦死というのは…」
「この情報変じゃないですか」
川内が疑問を呈した。
「身体の詳細が合わない所が少なからずあります」
今回から同席していた明石が診察カルテと見比べながら同意していた。
「つまり……………別人……………何故……………誰かが戦死した艦娘の戸籍を使って何かをしようと来ているのか?……………それともこの戦死ということ自体が作られたものなのか……………」
僕は考えていた。
「青葉、この戦死とされた艦娘の家に行ってみてくれ、何か分かるかもしれない、もし緊急を要する事態に遭遇した場合は現場判断を優先する、青葉は諜報部特務部隊を動員して事に応れ」
青葉が敬礼すると退出した。
しかし戦死したとされる陸奥の詳細は全く不明のままだったが、同様に一人の女性自衛官も行方不明になっているという事案が発覚した。
数日後
「こちら青葉です報告します艦娘『陸奥』を消息不明の女性自衛官である木山春生と特定、なお家人には何者かの監視がついています雰囲気から唯の兵士と思われます、今の所相手に動きはありません」
「夜陰に紛れて家に忍び込め、家人と接触を図れ」
僕は何か感じた為青葉に接触を命じた。
「了解」
青葉は短く答えると通信を切った。
「さて何が出てくるのやら」
僕は諜報部のオフィスを出ると執務室へと戻った。
「あら、提督」
執務室に戻ると陸奥が出迎えてくれた。
「最近、不審な通信を傍受したっていう報告を受けたからね、ちょっと通信管制室に」
僕がどこに居たか聞いた陸奥があからさまに動揺していた。
「陸奥どうかしたか?」
「いえ……」
そしてとある日の深夜、事態が動いた。
木山春生に対して明日中に提督を排除しないと娘を殺害するとの通信を傍受したのだ。
「間宮、至急警備兵を招集!川内は木山春生の実家に対して強行突入作戦を開始する、家人の保護と安全を最優先」
間宮と川内が慌ただ動き出した。
そして迎えた早朝。
「こちら突入班、屋内に人体による熱源を複数確認…年老いた両親と娘以外にも複数確認しました 送れ」
「こちら監視班、屋内の不明人物についはスカルマスク着用、人相並びに所属不明 送れ」
僕は現地の青葉と川内からの報告を聞いた。
「青葉、家人の位置と不明人物の位置の詳細を確認せよ 送れ」
それから青葉達から室内の様子が送られてきた。
「不明人物6名は1階と庭先の物置内に2名を確認、両親並びに娘と見られるは家人は2階 送れ」
僕は明らかとなった位置情報を確認すると突入のサインを出した。
「青葉…it a go!」
1階の全ての窓と物置にスタングレネードが投げ込まれた、と同時に隣家のベランダからも突入を開始した。
数分後、うちの警備兵によってその家は完全制圧され、家人が保護されてきた。
「木山春生さんのご両親と娘さんの美遥さんで間違いありませんか?」
青葉が確認した。
「はい、一体これは…」
川内が説明していた。
「そんな!春生が!」
「作戦終了、これより撤収します」
僕は青葉からの報告を受けると、執務室へと戻った。
「陸奥、至急執務室へ」
僕は陸奥を呼び出した。
「私に何か用?」
陸奥が執務室に戻ってきた。
「この写真を」
僕は青葉が撮影した娘さんの写真を手渡した。
「これを何処で…」
陸奥の顔色が変わった。
「娘さんとご両親は無事に保護した、君が誰の命令で何をしようとしているのか話してほしい」
陸奥は少し俯くと、
「美遥と両親の安全が確認できたら話すわ」
陸奥の不安も理解は出来た、
「わかった、夕方には戻る話はそれからだ」
陸奥の表情はどことなく明るくなったように感じた。
「提督、作戦終了」
青葉以下の作戦部隊と保護対象者が鎮守府へと帰還した。
「それと現地で交戦した不明兵についてですが、尋問の結果、反艦娘同盟の構成員でした」
僕が青葉からの報告を受けている最中、陸奥がこちらに走ってきた。
「美遥!美遥なの、お母さん…お父さん…」
陸奥はその腕に愛娘を抱きしめると泣き出していた。
僕はその光景を横目に見ながら報告の続きを聞いた
「成程な、それなら全て繋がるよ……………となると黒幕はヤツか」
僕はこのあと青葉と川内が集めた証拠を纏めると大本営監査部へと送付した……………結果軍令部の高官複数とそれに賛同した兵士一般人が多数逮捕された。
「艦娘海軍大尉『木山春生』着任します」
そう陸奥は脅されて潜入していた女性自衛官だったのだが……………彼女の才能と指揮能力を僕は買って、そのまま着任させたと云うか今回の不祥事をネタに海自にねじ込んで強引に艦娘海軍に転籍させたのだ。
「艦娘海軍大尉『木山春生』着任を許可する、鎮守府副司令としてその手腕を振るってほしい」
木山大尉が敬礼すると、
「謹んで拝命いたします」
僕は静かに頷いた。
「木山大尉、確認なんだけど彼奴等って結局何をさせたかったの?」
僕は気になった事を聞いた。
「その事なんですが…何というかただなんとかしろ、さもないと娘の命はというだけで何をしろという指示命令は何もされなかったので困っていた処だったんです」
僕は木山大尉の言葉を聞いて呆れた、余りに杜撰で大雑把な計画に…いや計画と言えるのか?どちらかというと嫌がらせレベルだった。
「木山大尉、ご家族の件だけど……………これからの安全を考慮して特例として鎮守府内の士官用官舎での生活を許可します、そちらでご家族と生活してください」
大淀が上層部に許可を取り付けたようで、家の鍵と入営許可証を人数分持ってきた。
「大淀……………ありがとう」
「気にしないで、これくらい」
大淀……………また酷い捩じ込み方したな…。
大本営の大淀が涙目になっている光景が目に浮かんだ。
「しかし彼奴等って何がしたかったんだろう……………実際に工作員にもどうしろとかの指示もなくただ漠然と言うだけで娘の命はとか急かしたり……………ん?こんな時間か、木山大尉は本日より1週間の特別休暇とする、ご家族との生活の準備と団欒に使って欲しい」
僕はそう言うと、間宮の甘味へと青葉、川内を連れて向かった。
「私も行っても?」
木山大尉が娘を抱きながら許可を求めた。
「構わないよ、鎮守府の福利厚生施設は自由に利用しもらって構わないよ」
僕の回答に木山大尉は嬉しそうに頷いていた。
「さぁ美遥、ママと甘い物食べに行こっか」
「うん」
久しぶりに再開した母娘は嬉しそうに間宮へと向かっていった。
結局最後まで木山春生以前の陸奥については疑問しか残らなかった、何処の誰なのか、そして何処に消えたのか………。