僕はその女性の肩越しに彷徨う何かを見ていた。
「君、この子たち見えるの」
セーラー服にメガネの女のコから声を掛けられた。
「錯覚じゃなかったのか……確かに見えます」
そのメガネの女のコは何処かへ電話を掛け始めていた。
「候補者を発見しましました、はい、はい、そうです」
電話掛け終えると、その女のコは僕の方を振り返ると、
「私はこういう者です、何かお名前と住所を確認できる書類をお持ちですか?」
彼女は軍籍手帳を僕に見せながら、聞いてきた。
「僕は稲葉 士郎19歳です、住所は……」
言われるまま運転免許を見せた。
「私は大淀といい艦娘です、これから稲葉さんを提督候補者として艦娘海軍連絡所へ案内します」
僕は訳がわからないまま大淀と名乗った女のコに連れられて艦娘海軍連絡所へと連れて行かれた。
数時間後……
僕は机の上に山を造る書類を読み続けるはめになった。
大淀が次から次へと書類の山を作っていった。
「今日はこれくらいにしましょう」
午後8時、大淀がやってきて終わりを告げた…今日の分の。
まぁこれが一週間も続くのだが…………。
一週間後
「稲葉君、君が着任する鎮守府についての資料だ」
連絡所の幹部士官から分厚いファイルが手渡された。
僕は受け取るとカバンにしまった。
「それでは、一週間後の月曜日朝8時にまた来てくれ、鎮守府から迎えの艦娘が来ることになっているから」
僕は必要な事をメモすると連絡所をあとにした。
「父さんは余りいい顔してなかったな……」
僕は帰宅すると父に鎮守府への着任が決まった事とかを話した。
「そうか……」
父は只一言だけ言うと僕に着いてくるように言うと書斎へと入っていった。
「これから話す事は……6年前の真実と母さんと妹についてだ……」
そう言うと父は、僕に話し始めた。
「6年前のあの事件は、表向き箝口令が敷かれてはいるが……真実は艦娘による2.26事件とまで云われたものだった……私腹を肥やす提督に限界を達していた艦娘達が一斉蜂起して……提督を殺害したのだった…」
父は其処まで話すと一旦、水を口にした。
「問題なのはこの後だった、暴徒と化した艦娘達が市街地を襲撃して民間人を襲い重軽傷者多数を出したとされているが……真実は、提督の私兵が艦娘に成り済まして暴れただけだったんだ……軍としてはこの不祥事を揉み消す為に躍起になって……被害者に多額の現金と税制の優遇措置……例えば消費税を除くあらゆる税金の免除とかな…お前についていえば、総ての学費、治療費、税金の免除だな…」
そして父は一冊のポケットアルバムを僕に見るように手渡してきた。
「これは?」
「お前の妹である晶と母さんの写真だ」
僕は中を見た。
そこには恐らくは6歳くらいであろう僕と同じ位の歳の女のコ(ショートカットなので男の子でも通用する?)が写っていた。
「母さんは父さんが受け継いだ遺産目当てだったんだ、妹もいつの頃からかお金の無心とお前の存在を疎むようになっていてなそれでお前だけを引き取って離婚したんだ、晶については風の噂で艦娘になったそうだ、済まない……士郎には黙っていた……」
両親が離婚した理由を僕は父さんから聞かされた、翌日からは引っ越しの準備で忙しくなりそれっきりになってしまった。
そして迎えた着任の日。
「父さん、それじゃ行ってきます」
僕は車に乗り込むと、連絡所へと向かった。