動き出す刻   作:屋根裏散歩

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第二十六話 夏のド定番

「士郎、夏だよね」

 

明石が何かを言いたそうにモジモジしていた。

 

「夏だねぇ、で?」

 

僕はワザとトボけた。

 

「あれ見ない?」

「あれ?」

「動画サイトの心霊………」

 

明石が見たいのは心霊動画だったようだ、

 

「いいけど、ちょっと待ってね」

 

僕はそう云うと、キッチンに飲み物と摘むものを取りに行った。

 

「それじゃ」

 

僕は心霊系動画サイトを中心に再生していった。

 

「やっぱりこの人達のが面白いね」

 

明石がとある投稿者のシリーズを推した。

 

「あぁこの人達のね、確かに…あれ?」

 

僕はその動画に映された建物を知っていた。

 

「士郎どうかしたの?」

「うん、この建物さ僕知ってるんだよ」

「本当!」

「でも………心霊スポットじゃなくてさ、あくまでも噂何だけど、オーナーが破産して夜逃げして放置というのが真相らしいよ………ただお金の出処が良くない人達かららしくて…あんな噂がねぇ」

 

明石が噂の部分に喰い付いた。

 

「噂って何何?」

「あくまでもだからね、オーナー夜逃げじゃなくてさ、その良くない人達に殺されてビルの壁に埋め込まれたんじゃないかって話………」

「あら、私が聞いてるのは違うわよ」

 

いきなりだった、木山大尉が美遥ちゃんと部屋に入ってきた。

 

「木山さんが聞いてるのはどんな?」

 

僕は気になったので聞いてみた。

 

「危ない人達からお金を借りたという処迄は同じなんですけど、厳しい取り立てに耐えかねて、奥さんと娘さんを道連れに一家心中を図ったって話ですね、そして今でもその一家の幽霊が彷徨っているって」

「古典的な友達の友達からっていうやつだね」

 

明石が笑いながら言った。

 

「心霊スポットの原因なんてそんなものですよ、自殺の名所以外はね」

 

木山さんがそう云うと、

 

「これ、差し入れです、ちょっと作りすぎたので」

 

木山さんが手に持っていたタッパーをテーブルに置いた。

 

「有り難う…肉じゃがだ美味しそう、早速今晩頂くね」

 

木山さんはタッパーを置くと部屋から出ていった。

僕と明石はその後も心霊動画を見ていた。

 

「士郎ちょっと聞くけどさ………この鎮守府内には無いよね………その…」

 

明石が鎮守府内の有無を聞いていた、少し怖がりながら。

 

「ウ~ン…………」

 

僕はわざとらしく間を開けた、

 

「ちょっ!」

 

明石がポカポカと僕を叩いた。

 

「冗談、冗談、そんなの無いよ」

 

 

だが僕達は此時はただ知らなかっただけだった、それの存在を。

 

ーーーー数日後ーーーー

 

「提督、こちらの施設の解体許可を」

 

大淀が一枚の施設解体申請書を持ってきた。

 

「許可と」

 

僕は承認のサインをした。

 

「大淀、この施設って何なの」

 

僕は施設について聞いてみた。

 

「私も詳しくは知らないのですが、何かの実験施設らしく老朽化が激しい上に良くない噂話が多くて...」

 

大淀が最後を口にしなかった。

 

「良くない噂話?」

「はい」

 

大淀が少し間をおいて話し出した。

 

「まことしやかに伝わるのは、軍が無断に鹵獲した深海棲艦達を人体実験ののちに生きたまま解体したとか、犯罪を犯した兵士を人体実験ののち殺害したとかです」

 

僕はどちらにも共通している人体実験と云うワードが気になった。

 

「どうも気になるね、解体工事開始前に調査してみようか」

 

僕は明石を呼んだ、

 

「明石、執務室まで」

「はい、何か?」

 

僕は例の施設の事を話した。

 

「わかりました、電力回復させます」

 

明石に電力の回復作業を頼んだ。

 

「まぁ解体前に中を覗いてみようと思ってるけどね」

 

結局その施設の解体前に僕達は内部を覗くことにした。

 

「ブレーカーあげますね、照明は………半分適度はつくみたいですね、まぁ窓ガラスかなりホコリや苔で汚れてますから、昼間でも薄暗いのは仕方ないですね」

 

明石が照明を点灯させた。

 

「しかしこの施設かなりの古いみたいだね………木造とは………うわっ!」

 

僕は床板を踏み抜いた。

 

「下手に入らないほうがいいかも………」

 

大淀が恐る恐る歩いていた。

 

「しっかし、昔の田舎の学校みたいな感じですね」

 

夕張が部屋の中を覗きながら言った。

 

「確かに、そうそうこんなプレートついてたな」

 

部屋の入口扉の上には細長いプレートが付いていた。

 

「何か書いてある」

 

僕は目を凝らした。

 

「3………ー…後は無理か」

「本当に教室だったみたい」

 

明石が更にプレートの埃を拭き取った先には『3-A』と書かれていた。

 

「でも………何で鎮守府内に学校が?」

 

大淀が最もな疑問を口にした。

 

「確かに…不思議だね………」

 

僕達は更に奥へと進んだ。

 

「此処は…処置室?」

 

プレートに書かれた内容が一気に学校から別の施設であるかを匂わせていた。

 

「なんだろうね………この施設は」

 

結局何に使っていたのかわからずじまいだった。

 

「提督、どうやら地下室もあるみたいです」

 

明石が地中探査機の表示を見せてきた。

 

「でも………地下への階段とか無かったよね」

「ですね、何処かに隠されているのですかね」

 

僕達は改めて1階部分を再調査した。

 

「提督………此処」

 

夕張が階段のある場所で何かを見つけた。

 

「この位置のブレーカーって不自然じゃないですか」

 

それは夕張の言うとおり明らかに不自然だった。

 

「確かにブレーカーの位置も不自然だし、この部分に下に降りる階段の手摺があったんでしょう、そうすればこの色の違いは説明付きます」

 

僕は頷くと、

 

「明石、此処の床板を剥がそう」

「了解、妖精さんお願い」

 

明石がそう云うと、何処からか妖精さんたちがワラワラと出てきて床板を剥がしだした。

 

「やっぱりです、下に降りる階段がありました」

 

床板を剥がした結果ポッカリと開いた空間から下に降りる階段が姿を表した。

 

「今ブレーカーあげますね」

 

明石がブレーカーをオンにすると照明が点灯した。

 

「地下には一体何があるのでしょうね」

 

大淀が不安そうに階段を覗いていた。

 

「照明は問題ないみたいですね」

 

明石が念の為にと大型の懐中電灯を持つと先頭に立って階段を降りていった、勿論僕達も懐中電灯を持って。

 

「かなりカビ?臭いですね………なんの臭い何でしょうか」

 

明石も臭いを気にしていた。

 

「何かの実験施設だったのでしょうか」

 

夕張も恐る恐るついてきていた。

 

「これは!」

 

僕は廊下の両側に並んだ個室の一つを覗き込んで声をあげた。

 

「嘘だろ………、明石、この事は部外秘とする」

 

明石達も室内を覗くと同意してくれた。

 

「噂は本当だったのか!」

 

僕は手を合わせると、執務室に戻ると上層部に事のあらましを説明し対応を求めた。

 

「上層部の結果が出るまでの間、解体作業は凍結とする、なお施設への入口全て閉鎖とし、何人も立ち入りを禁止とする」

 

だが僕達が地下への入口を開けたことにより、事態は悪い方向へと動いた、

 

「提督、夜間の巡邏隊員からの報告であの施設で夜な夜な明かりが動いていると………」

 

僕に報告にやってきた警備担当が青ざめた顔をしながら報告していった。

 

「誰か侵入したのか?」

 

僕の問に大淀が首を横にふった。

 

「いえ、私も報告を受けてから出入り口を確認したのですが開けられた痕跡はありませんでした」

 

僕は隊員の事を考えると、

 

「取り敢えず、窓を全て板等で塞いでしまおう」

 

その日のうちに総ての窓が板で封鎖された。

窓が封鎖されてからは施設内を動き回る光を見ることはなくなった。

 

………だがしかし、別の問題が発生した、それは内部からうめき声が聞こえるとの声が聞こえだした。

 

「早急に解体作業を開始したい旨の上申をあげるよ」

 

僕は上層部に解体作業の再開許可の上申を出した。

結果は予想外に早く、翌日には憲兵隊と監察官が立会の為にやってきた。

 

「我々立会の元で作業を開始してください」

 

憲兵隊隊長が僕にそう告げた。

 

「では、解体作業開始!」

 

明石が監督の元、妖精さんたちがワラワラと出てきて作業を開始した。

 

結論から言うと、やはり地下室で違法な人体実験を行っていたのだった、そしてその被験者と数々の証拠を地下に封印して施設を放置してきたのだった。

 

「被害者のご遺体は此方で責任を持って処理致します」

 

監察官達が多数の遺体袋を地下から運びだし、トラックへ載せると何処かへと去っていった。

 

「では、我々もこれで」

 

施設の解体も終わり供養が終わると、憲兵隊も引き上げていった。

 

「結局は………だな」

 

僕達は施設跡に建立した慰霊碑を手を合わせた。

 

………慰霊祭を行った後からは不思議な現象は誰も見てもいないし聞いてもいないそうだ。

 

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