カフェとトレーナー、時々お友だちと懲りない人々   作:fell@かぶとがに

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初めて明確に距離を意識した二人。
伝わってくる、アナタの体温。


今は、これくらいの距離でいいから、いつか

「無理が祟ったのかもしれない……今日はしっかり休もう」

「……はい……わざわざ連れ出してもらったのに、ごめんなさい……」

 

休日の昼下がり、私は疲労で倒れてしまい、トレーナーさんの部屋でお世話になっていました。

昨夜、休みだしどこかで息抜きをしよう、と連絡をいただいたので、喫茶店で美味しい珈琲でも味わいましょう、と話していたのですが……。

 

「このところ、厳しいトレーニングや大きなレースも続いていたからね。仕方ないよ」

「でも……折角の喫茶店……」

「またいつでも連れて行ってあげるから。たまには、何も考えずにのんびりするのも悪くないよ。しっかり休みな」

 

そう言い置いて部屋を出ようとするトレーナーさんの、服の裾を掴んで。

 

「……待ってください……」

「どうした?」

「寝付くまで……少し、隣にいてもらえませんか……?」

 

倒れて気弱になっているせいか、普段よりも素直な想いが口から出てきます。

いつから私は、こんなに一人が怖くなってしまったんでしょうか……。

 

こんな想い……トレーナーさんに伝えるには、まだまだ勇気がなくて。

まさか気取られたんじゃないかと心配になって、顔を見上げると。

 

「仕方ないなあ」

 

そう言って苦笑しながら、トレーナーさんが頭を撫でてくれました。

気付かれなかったと安心半分、子どもに見られてるんじゃないかと残念半分。

 

優しい、シルクのような撫でられ心地。

ベッドからは、いつも安心できるトレーナーさんの匂い。

 

「子守唄でも歌おうか」

「いえ……アナタの温もりを感じていたいので……このまま、静かに……」

 

そう呟いて目を瞑ると。

緊張が一気に解けてしまったのか、猛烈な睡魔に襲われました。

 

待って……もう少し、トレーナーさんの温もりを……。

そう思うのも無駄な抵抗で。

そのまま私は、夢の世界へと潜っていきました。

 

****************

 

「ふぅ」

 

珍しく小さな我儘を言うカフェを寝かしつけて、小さく伸びをした。

 

「カフェはちょっとストイック過ぎるところがあるからな……トレーニング内容を見直すか……」

 

暇になったことだし、隣室で少し調整するか、と腰を上げようとしたとき。

カフェの可愛い、穏やかな寝顔が目に入った。

 

「……いかんいかん、不純だぞ、そういうのは不純だ」

 

カフェと俺はウマ娘とトレーナー。

カフェのためには何をするのも吝かではないが、自分の感情で一線を越えてはいけない。

 

「さぁて、仕事だ仕事」

 

そう自分に言い聞かせて隣室へ行き、ソファーに腰掛ける。

そこで小一時間ほど、資料と睨み合っていると……。

コンコン、とドアがノックされて。

返事をすると、開いたドアからカフェが笑顔で顔を覗かせた。

 

「ん、体調落ち着いたか?」

 

そう声をかけるが、カフェは笑顔のままで返事をしない。

 

そこで、自らの異常に気が付いた。

 

「あ……身体が、動かない……?」

 

俺が気付くと同時に、目の前のカフェが、妖艶な笑みを浮かべた。

額に脂汗が滲む。無言のカフェが、一歩、一歩とこちらに近づいてくる。

 

そしてカフェはすぐ目の前に立ち塞がると。

熱のこもった目をしながら、俺をソファーに押し倒してきた。

 

「ちょっと待て、カフェ!」

 

口ではそう言うものの、意思に反して身体は微動だにしない。

そうこうしているうちにカフェは、俺の上着のボタンに手をかけた。

荒い息遣い、上気した顔。

 

そんなカフェを見ていたら、こちらも少しずつ、冷静さを保てなくなってきて……。

それでも最後の理性を振り絞って、目の前にいるカフェに告げた。

 

「きみ……カフェじゃないな……?」

 

そう口にすると。

目の前の何者かはひときわ大きく口角を上げた。

 

****************

 

……なんでしょうか。隣の部屋が、なにやら煩くて……。

折角いい気分で寝ていたのに、目が覚めてしまいました。

 

まだ少し、身体が重いですが……寝直しましょうか……。

そんなことを考えていると、大きな物音と共に。

 

「ちょっと待て、カフェ!」

 

隣の部屋から、トレーナーさんの切羽詰まった叫びが聞こえました。

 

「え……私は、ここに……」

 

トレーナーさんの身に、何かが起きている。

 

「急いで……行かなきゃ……!」

 

重い身体に鞭を打って、引きずるようにして隣の部屋へと行きます。

そこで、目にしたのは……。

 

「……何してるんですか、トレーナーさん……?」

 

私じゃない、謎のウマ娘に押し倒されている、トレーナーさんの姿でした。

 

待って、アナタ、何をしているの……?

その人は……私のトレーナーさんで……。

私だけの、トレーナーさんで……。

 

「……離せ……」

 

私はよたよたと、足を引きずりながら迫ります。

 

「私のトレーナーさんを……離せ……返せ……」

 

視界がぐらつく中、必死に手を伸ばします。

これは、ウマ娘じゃない。

この世の者ならざる、異質な存在。

トレーナーさんから、引き離さないと……!

 

そう思い、必死の思いで歩み寄り、その肩を掴むと。

振り返ったその顔は……。

 

「え……わた、し……?」

 

目の前の『私』は、いたずらっぽく笑うと。

トレーナーさんの頬にキスをして、そのまま消えてしまいました。

 

「え……」

「あっ……!」

 

突然のことに、私もトレーナーさんも反応できず。

そしてその顔を見て、私はようやくその子の正体が分かりました。

 

「今の……『お友だち』、だよな……?」

「……ええ、恐らく」

 

……私の想いを知ってるくせに……勝手なことをして……!

ふつふつと怒りが湧いてきます。

同時に、自分が招いたトラブルであることも自覚し、謝罪の言葉が漏れます。

 

「……ご迷惑をおかけしてすみません、トレーナーさ――」

 

そのとき。

背後から、ドンッ、と衝撃を受けました。

力が入らず踏ん張れなかった私は、そのままトレーナーさんの上に倒れ込んで……。

 

「危ない!」

「きゃっ……」

 

間一髪、トレーナーさんが抱きとめてくれました。

お陰で、怪我はせずに済んだのですが……。

 

「ありがとうございます……トレーナーさん……」

「ああ、それは構わないんだけど、その……」

「?」

「その……早く降りてもらってもいいかな……?」

 

言われてみれば、かなり不安定な体勢で。

トレーナーさんにも負荷がかかっているのでしょう。

 

「あ……すみません……辛い体勢をさせてしまって……」

 

すぐに降りようとしたのですが。

 

「いや、えっとそうじゃなくて……カフェとこんなに接してると、どきどきして頭がおかしくなりそうだから……」

 

トレーナーさんが、そんなことを急に言うものですから。

私も、堪えきれなくなって――。

 

「うわっ、カフェ?!」

 

私はそのままトレーナーさんを強く抱きしめて、胸元に顔を埋めました。

 

「や、やめよう、カフェ」

「だめ、ですか?」

 

そう、上目遣いでトレーナーさんを見上げると。

その顔はもう、熟した果実のように真っ赤になっていて。

 

「だめ、じゃ、ないけど……」

「でしたら……」

 

まだ少し残っている疲れが消えるまで。

 

「……しばらく……こうしていても、いいですか……?」

 

勇気を出して、伝えると。

 

「……俺も少し、疲れたから、ね」

 

そんな返事とともに、温かい両腕が抱きしめてくれました。

……暖かい、です……トレーナーさん……。

私、ずっと……こうしたかった……。

 

そうして二人で、穏やかに。

言葉にせずとも想いを伝えあって。

 

暖かな微睡みに身を委ねて。

心地良いひとときを過ごしました。

 

****************

 

一方、隣室では。

 

「どけェタキオン、何にも聞こえない!」

「煩いねぇモルモットくん! カフェたちにバレたらどうするんだい?!」

 

必死に耳を当て、壁の向こうの状況に心躍らせる二人の姿があった。

 

「そこまで押されて黙ってるなんて男じゃないぞ! 抱け、抱けェ!」

「カフェ、押されてばかりではなくたまには自分から押したまえ! ええい、ここに及んでは私が自ら出向いて――!」

 

すると、コンコン、と。

何者かが、ドアをノックした。

 

「……モルモットくん、来客だぞ」

「今はそれどころじゃない、やり過ごそう」

 

そう話して、二人してノックを無視していると。

 

「……おい、今度はガチャガチャいいだしたぞ」

「何を怯えることがあるんだい、この物件はウマ娘の力でも破れない――」

 

ガチャン、と。強力な力で、ドアノブが破られる音が響いた。

そこから現れたのは……。

 

「……や、やぁ、カフェ。いつの間にこっちへ来たんだい……?」

 

焦り顔を浮かべるタキオンに、笑顔を貼り付けたカフェがにじり寄る。

 

「よ、よう、マンハッタンカフェ……何か用かな……?」

 

傍らのモルモットの言葉にも、カフェは一言も返さない。

ただただにこにこと微笑みながら、一歩、一歩と近づいていく。

 

「……カフェ……だよねぇ……?」

 

タキオンとモルモットの作り笑顔が恐怖の色に染まると同時に。

ふっと、部屋から明かりが消えた。

 

****************

 

「……いくらアナタでも、あれはやりすぎ……」

 

翌日、トレセン学園の廊下にて。

私はお友だちに、前日の凶行を抗議していました。

 

「私を任せられるか試してみた……? そんなの、余計なお世話……それに……私もまだなのに、キスまでして……」

 

でも。

昨日のお友だちの行動がなかったら、トレーナーさんに素直な気持ちを伝えることができたでしょうか。

……心の底の想いまで、全部は伝えられませんでしたけど……。

 

「あ……」

 

すると前方に、学園の人と立ち話をしているトレーナーさんの姿がありました。

そして私の視線に気づくと、にこりと笑って手を振ってくれて。

 

「……ふふ、私のトレーナーさん……」

 

私も微笑んで、手を振り返しました。

今は、これくらいの距離でもいいんです。

これから少しずつ、一歩ずつ近づいていって……。

前を走るお友だちとの距離を、縮めていくように……。

 

「……あ、タキオンさん」

「お、おや……カフェ……さん……」

 

すると続いて、研究資料を手に歩くタキオンさんにも遭遇しました。

ですがその表情は、いつものように面倒な絡みをしてくるときのものではなく、どこか怯えているような……。

 

「……どうしたんですか? そんなに怯えて……」

「い、いや、なんでもないよ! わ、私はモルモットくんと実験成果の評価をしなければならないから、これで!」

 

そう早口でまくし立てると、逃げるように去ってしまいました。

 

「……私、何かしちゃったのかな……?」

 

傍らのお友だちにそう問いかけると。

お友だちは楽しそうに、くすくすと笑っていました。




アグネスタキオンだ!
実装おめでとう、私はきみを待っていたよ!
続き物を想定してなかったので内容は軽めだよ。

前評判に比べるとしっとりは控えめだったが……ポテンシャルはしっかり示していたねぇ。
やはりきみはこういうウマ娘なのだよ、カフェ!
自覚したのなら存分にしっとりしたまえ、私は陰から眺めて楽しむから。

しかしそれにしても、お友だちは近距離パワー型過ぎやしないかい……?
モルモットくんも怖がって警戒色に光ってしまっているじゃあないか……。

なおカフェが出るまで天井近くまで課金したようだ。
PS5が定価で買えるねぇ。
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