(急げ! 早く出口まで行かないと!)
緋眼妖華のアジト。その廊下を白髪の青年が走る。やがて、曲がり角に辿り着く。
(よし! ここを曲がれば……っ!?)
角を曲がった青年はナニかに勢い良くぶつかる。
「うわっ!」
青年が尻もちをついて倒れる。そして、顔を上げる。そこにはエレファントレジェスター・サンビョウが棍棒を担ぎ、立っていた。
「妲己サマノメイレイ……ココ、トオサナイ」
「ははは。待ち伏せってわけか……」
青年が苦虫を噛み潰したよう表情で立ち上がる。サンビョウが棍棒を振り下ろすそして、。激しい轟音がアジト内に響き渡った。
「それじゃあ、始めましょうか」
キョウコウとカントウを従え、フォックスレジェスター・妲己が微笑む。
対する燈哉達は変身の体勢を取ろうとしてトロフィーを構える。その時、激しい轟音が響いてくる。
「あら、あっちも愉しそうね」
妲己は轟音の響く方向を見てクスリと笑う。
「まさか!?」
燈哉が慌てて辺りを見渡す。そして、何かに気付き、焦りの表情を浮かべる。
「どうしたの、立脇?」
桃が訊ねる。
「いないんだ! ついさっき出会った人が!」
「! じゃあもしかして……」
桃が轟音の聞こえた方を見る。
「……立脇、行って」
一度、目を閉じ、深呼吸してから桃が言う。
「何言ってんだよ!?」
驚く燈哉に桃は真っ直ぐな瞳を向ける。
「大丈夫、同じヘマはしない」
「でも……っ」
「私を信じなさい。他人を信じるのはあんたの得意分野でしょ」
桃と目が合う。その目には強い意志が感じられた。
「……わかった」
燈哉は桃の目を見て決意する。
「無理だけはするなよ」
「そっちこそ」
二人は同時に駆け出す。
燈哉は走りながら変身。
<ドウジキリヤスツナ!>
<風雲!風流!封殺!風剣の戦士!!>
<ドウジキリウインド!>
風に乗り、加速。勢い良く妲己達を飛び越える。
「行かせないわよ」
妲己が手で指示を送る。それを受け、キョウコウが行く手を阻もうとする。
次の瞬間、神器とキョウコウの間に氷の龍が割って入る。
「!? これは……」
「悪いけど邪魔はさせない」
キョウコウの前に桃が天華へと変身し立ち塞がる。その隙に、神器は廊下を駆け瞬く間に姿が見えなくなった。
そして、その場には天華と妲己、キョウコウとカントウが残る。
「うふふ。貴女一人で私達の相手が務まるかしら?」
「務まるかどうか試してみなさい」
天華は不敵に笑い、レイエンキョを構えた。
緋眼妖華、アジトの一室。薄暗い牢屋の中に金属が擦れ合う音が響く。
「これでよし、っと」
そう呟いたのはフィッシュレジェスター・コン。視線の先には両手を手錠で繋がれ、天井から宙づりにされた卓人がいた。卓人の目は虚ろで、妲己に操られた状態のままだ。
「……」
無言のまま、卓人は宙づりになったまま動かない。
「あーあ。にしても暇だな。妲己様が来るまでこいつに手は出せないし」
コンがチラリと他の牢屋を見る。そこには何人もの人間が捕らえられていた。恐る恐るこちらを見ている者、傷付きぐったりしている者、絶望に打ちひしがれている者等様々だ。
「早く妲己様、来ないかなぁ」
コンが小さく呟く。
「残念だけど、それは無理なんだよね」
不意に声が聞こえた。牢屋の暗がりから姿を現したのは、頭部に捻れたような角、背中には蝙蝠の如き羽が生えた異形の怪人。手には杖を携えている。それは以前、薫風山にて燈哉と相対したレジェスター。自称デビルレジェスターだった。
「貴様、何処から入った!?」
コンが怒号を上げる。自称デビルレジェスターは肩をすくめた。
「まあまあ、そんな事は気にしない、気にしない」
軽い口調で言うと、彼はそのまま宙づりになっている卓人に近付く。
「悪いね。彼は私が目をかけてる大切な存在でね」
言うと、自称デビルレジェスターは杖を掲げた。瞬間、杖が輝く。卓人の拘束が外れ、妲己の呪縛が解ける。
「という訳で返してもらったよ」
そう言うな否や、自称デビルレジェスターは姿を消した。
「っは!? ……僕は一体。確か……そうだ! レジェスターに!」
覚醒した卓人が顔を上げる。そこで、舌打ちをしながらこちらを睨みつけるコンの姿を認識した。
「チィッ!!」
同時にコンが飛び出してくる。咄嵯の出来事だったが、卓人は冷静にそれを回避。そのままトロフィーを取り出し、起動させる。
<カリバーン!>
「変身!」
眩い光が全身を覆い、卓人がラウンダーに変身する。
<夜明けの王!引き抜け、選定の剣!!>
<カリバーンソード!>
カリバーンを構えながら、ラウンダーはコンに向かって駆け出した。
「はぁぁぁぁぁっ!!!」
「舐めるなよ小僧ぉっ!!」
渾身の一撃を放つも、コンはそれを難なく避ける。そして、口から泡を吐いた。
「ぐわっ!」
その泡を浴びた途端、泡が弾け、身体中に衝撃が奔る。体勢が崩され、ラウンダーが吹き飛ぶ。牢屋の鉄格子に勢い良く叩きつけられた。
「接近戦は不利か……。なら、」
<フェイルノート!>
ラウンダーがフェイルノートアームズトロフィーを起動。
<哀の騎士!撃ち抜け、無駄なしの弓!!>
<フェイルノートアーチャー!>
形態を変え、フェイルノートを構える。
「遠距離から決める!」
<フェイルノート!>
<必殺神技!!>
弓を引き絞り、弦がギリギリと音を立てる。エネルギーが矢を形作り、光が収束。
「やれるもんならやってみやがれ!」
コンが再び泡を吐く。無数の泡がラウンダーに迫る。
「ハァッ!」
ラウンダーが放つ一閃。放たれた光の矢が複数の泡を撃ち落としながら一直線に飛んでいく。
「グアァァァッ!」
光の矢が見事命中。爆発と共にコンが消滅する。
「はぁ、はぁ……」
息を切らしながら、変身を解く。そして、自らの手を見る。
(僕は確かに操られていた。それが自然に解ける訳が無い。という事は誰かが僕を助けた?)
そこまで考えて、視線を感じ、振り返る。そこには牢屋に囚われていた人々が卓人を見ていた。
「!?」
卓人が慌てて牢屋を抜ける。
「大丈夫ですか? すぐに助けます!」
卓人が再びトロフィーを取り出した。
場所は変わって、緋眼妖華のアジトの外。路地裏の行き止まりに自称デビルレジェスターはいた。鼻歌を歌いながら杖を掲げる。すると、空間が歪んだ。ピシリと音を立て、行き止まりが消え、巨大な宮廷が出現した。
「貴方様は……!?」
それを見ていた流川が近寄ってくる。
「やぁ、久しぶりだね。元気にしてた?」
自称デビルレジェスターが笑顔を浮かべる。
「予言しよう。もう間もなく戦いは終わる。今のうちに救急車を呼んでおいてくれたまえ」
「かしこまりました」
流川が携帯を取り出す。その後ろ姿を見ながら、自称デビルレジェスターは満足そうに笑うと、人間態へと姿を変える。
それは端正の整った容姿に紫髪の美青年。すなわち、ムーマ・ウィザードリィその人。
「さぁて、後は頑張ってね。期待しているよ、仮面ライダー諸君達」
ムーマは小さく呟き、着ていた白ローブのフードを被る。その姿は卓人が夢で出会ったマーリンそっくりだった。
再び杖を掲げる。空間が歪み、穴が出来る。その穴をくぐり、ムーマはこの世界から消えたのだった。
「ぐぁっ!!」
勢い良く壁に叩きつけられ、白髪の青年が苦悶の声を上げる。ヨロヨロと立ち上がった彼の前に、サンビョウが迫る。
「妲己サマ、イッテタ。ダッソウシャ、コロシテイイ」
とどめを刺さんとサンビョウが棍棒を振り下ろす。もはや避ける力も残っていないのか、肩で息をしながら青年は棍棒をただ見ている事しか出来ない。
――その時、
「うおぉぉぉりゃあぁぁっ!!」
叫び声と共に人影が青年とサンビョウの間へ割って入る。振り下ろされた棍棒を受け止めたのは神器だった。
「大丈夫か!?」
「君は!? ……どうして?」
青年が目を見開く。
「話は後だ! 早く隠れろ!」
神器は、青年を見て叫ぶ。青年が慌てて近くの柱に隠れると同時に、サンビョウが怒りの声を上げて棍棒に力を込める。
「ジャマモノハ、コロス」
たちまちのうちに押し込まれ、神器が吹っ飛ばされる。
「くそっ! なんてパワーだ」
よろめきながら立ち上がる神器。そして、オニマルアームズトロフィーを取り出した。
「これならどうだ!」
<オニマルクニツナ!>
<筆頭!必勝!必殺!火剣の戦士!!>
<オニマルフレア!>
赤い装甲を纏い、オニマルを手に神器が構える。
「さっきのお返しだ!」
駆け出すと、サンビョウに向けて炎を纏った刀身を振るった。受け止めた棍棒が炎によって溶解。そのまま、サンビョウの腕へ迫る。しかし、サンビョウが燃える刀身を難なく掴む。サンビョウの分厚い皮膚が炎を通さない。
「何!?」
驚く神器に、棍棒を失ったサンビョウが拳で殴りかかる。かろうじてそれをかわすと、今度は蹴りを放ってきた。強烈な一撃を受け吹き飛ぶ神器。壁へ激突し床へと崩れ落ちる。
「ぐ……あっ……」
起き上がろうとする神器だったが、上手く体が動かない。そこにサンビョウがゆっくりと迫って来る。
(よし、今なら逃げられるね)
柱の影から青年が顔を覗かせる。サンビョウが神器に気を取られている今こそ、間違い無く脱出のチャンス。動き出そうとしたその時だった。神器が視界に入る。唐突に青年の動きが止まった。そのまま、目を閉じ、
「はぁ」
小さくため息をつく。そして目を開けると、青年はポケットから宝物庫で手に入れたアームズトロフィーを取り出した。
「まぁ、借りは返さないとね」
青年が神器に向かって叫ぶ。
「受け取れ、仮面ライダー!」
そう言って青年は神器へアームズトロフィーを投げ渡す。それは放物線を描き、吸い込まれるように神器の手中へ収まった。
「うぇ!? ちょっ、これって……」
神器が手の中のトロフィーを見て目を白黒させる。
「オオオオ!」
そんな事はお構いなしにサンビョウが突っ込んで来る。神器は反射的にトロフィーを起動させた。
<ミカズキムネチカ!>
トロフィーをベルトに装填。ボタンを押し込む。
<高潔!交錯!光明!光剣の戦士!!>
目の前に黄色の日本刀が出現。放たれた光が黄色の装甲となり、神器に装着。最後に三日月の兜飾りが付いた仮面が付く。
<ミカヅキライトニング!>
サンビョウの重い一撃が炸裂。しかし、土煙が晴れたそこに神器の姿は無かった。
「ナニ!?」
サンビョウが慌てて周囲を見回す。
「俺はここだぜ」
サンビョウの神器に立っていた。光剣<ミカヅキ>を構え、静かに告げる。
「反撃開始だ!」
瞬間、神器に姿が消える。目にも止まらぬ速さでサンビョウへ接近すると、すれ違いざまに斬りつけた。
「ソレガドオシタ。コノテイド、カスリキズニモナラナイ」
「あぁ、だろうな」
余裕を見せるサンビョウに、神器が素っ気なく答える。実際に、サンビョウの体には傷一つついていない。
「だから、こうするんだよ」
再び神器が消える。そして、今度は目にも止まらない速さで何度も斬りつける。
「ムダダ!」
吠えるサンビョウ。だが、その腕から血が噴き出した。
「なんだと!?」
突然の出来事に、サンビョウは驚きの声を上げる。
「お前の防御力が高いのはよく分かった。でもな、同じ所を何度も斬りつければダメージは出る」
神器がゆっくりと歩みを進める。サンビョウが怯み、後ずさる。
「これで終わりだ」
<ミカズキムネチカ!>
<必殺神技!!>
トロフィーをミカヅキに装填。刀身にエネルギーが宿る。
「ハァッ!!!」
三度、神器がサンビョウの視界から消える。一瞬の後、サンビョウの全身に斬撃の跡が現れた。神器がサンビョウの周囲を四方八方に駆け巡り斬撃を叩き込んでいく。やがて、全ての箇所から一斉に血が吹き出す。
「グギャァァァァ!!」
断末魔の叫び声を上げ、サンビョウが消滅した。
「あ~あ。結局、収穫は無しか……」
出口の前。青年が自嘲気味に呟く。
「まぁ、命があるだけ儲けものか。とりあえず礼は言っておくよ、仮面ライダー」
そう言うと青年は、人知れず緋眼妖華のアジトから脱出した。
「さあさあ、どうしたの?」
妲己が楽しそうに言う。双刀を振り回しながら、天華に迫る。瞬時に後退し、攻撃を回避。
「ちっ……」
天華は苦々しく舌打ちする。妲己、キョウコウ、カントウ。3体のレジェスターを相手に天華は攻めあぐねていた。ただでさえ3対1と不利な状況だが、下手に攻めれば前の二の舞だ。
(とはいえ、このままじゃジリ貧……)
天華も焦りを見せる。状況は好転せず、むしろ悪化していると言っていい。
「このまま攻めるわよ、行きなさい」
「はっ!」
「お任せを」
妲己の言葉に従い、キョウコウとカントウが動く。
キョウコウは手をしならせ鞭の様に天華を襲う。
既のところで天華は回避。だが、そこに追撃をかけるようにカントウが鋭く大きな犀角を向けて突っ込んでくる。
「くっ!?」
咄嵯に横っ飛びで攻撃をかわす。天華の横を巨体が掠める。
「まだまだよ!」
死角から双刀が迫る。ガキンッ!と双刀とレイエンキョがぶつかり合う。
ギリギリと刃同士が擦れ合い火花を上げる。
「いつまで保つかしら?」
「あんたには負けない。パパとママの仇を取るまでは!」
睨みあいながら二人は鍔迫り合いを続ける。
「仇?」
「忘れたとは言わせない。パパとママを殺したお前を絶対に許さない!」
憎しみの籠った視線を向け、天華は叫ぶ。妲己は表情を変えず口を開く。
「ごめんなさいね。心当たりが多すぎてどれのことかわからないわ。何処の誰だったかしら?」
「妲己ぃぃぃ!!」
怒りで全身が沸騰する。渾身の力を込めてレイエンキョが徐々に双刀を押し返していく。
「あら?そんな事してて大丈夫?」
妲己が余裕のある笑みを浮かべる。天華の横から衝撃が走る。
「がっ……ぁ……!?」
何が起きたのか理解できず激痛と共に吹き飛ばされ、勢い良く宝物庫の中へ叩きつけられた。中にあった宝が大きな音を立てて散らばっていく。
「あああっ! 私のお宝が!? 何やってるのよ、この馬鹿!」
妲己がカントウを罵倒。それだけでは怒りが収まらず刀を左膝に突き立てる。
「ぐうぅうぅ!?」
悲鳴を上げ苦痛に顔を歪める。
「後でお仕置きよ。覚えてなさい」
刺した刀を引き抜くと、妲己は冷めた声で言った。
「痛ったぁ! ……ん?」
天華が起き上がる。その傍らにはトロフィーが落ちていた。銀の台座の上に蠕動する蛇の様な矛が突き刺さったアームズトロフィーだ。
「これは……!? 使ってみるか」
天華がトロフィーを起動させる。
<ダボウ!>
トロフィーをベルトにセット。横ボタンを押し込む。
<うねる大蛇!!雷!雷!雷!>
天華の目の前に矛が出現。こそから、現れた紫電の蛇が天華の周りをゆっくりと旋回。天華に巻き付きながら装甲へと変わり装着される。
<ダボウサンダー!!>
稲妻の様な角が付きた仮面の複眼が輝く。
「それは、私のよ。返しなさい」
妲己がキョウコウとカントウをけしかける。
「お断り。返してほしかったら力づくできなさいよ、お・ば・さ・ん」
天華が蛇電矛<ダボウ>を構え、挑発。
「……ふふっ、良いわ。……ぶっ殺してあげる!」
一瞬の間を置き、静かに怒気を孕んだ声色で妲己が答える。
「行け!」
キョウコウとカントウが襲いかかる。天華は2体の攻撃を巧みにかわしながら、ダボウで受け流す。そして、すれ違いざまにダボウを突き出す。
「ぐっ、あああぁ!?」
矛の先端に電撃が纏い、カントウの体に直撃。カントウは感電し、動きを止める。
「カントウ!?」
キョウコウの動きが止まる。
「そこ!」
隙ありとばかりに天華の一撃がキョウコウに炸裂。
「ぐはっ……」
キョウコウが吹き飛ぶ。そして、天華はカントウに向き直る。
「まずは、一体」
<ダボウ!>
<必殺奥義!!>
ベルトのトロフィーを押し込み、横ボタンを押す。雷が迸り、天華の右足に収束する。
「ハァッ!」
跳躍し、空中で体を捻る。足先に電撃を纏った蹴りがカントウを襲う。
「くそぉ!」
カントウが立ち上がり、両腕を交差させ防御態勢を取った。
「ハアァッ!」
そのまま勢いよく、蹴りつける。大きな音を立て電撃が弾ける。
「ギャァアア!?」
断末魔の叫びを上げ、カントウが消滅。
「次はお前だ!」
着地と同時に直ぐ様、妲己へ狙いを定め、駆け出す。
「ヤァッ!!!!」
「くっ!」
妲己がダボウを双刀で受け止める。だが、触れた瞬間に武器を伝って電流が妲己へ流れ込んで来る。
「キャアッ!?」
咄嗟に武器を手放し、後ろに下がる。
「まだまだぁ!」
一歩前へ踏み出し、天華の蹴りが妲己の鳩尾にヒット。
「ぐっ!?」
苦悶の声を漏らす。続けて追撃をかけようと構える。
「やっぱりね」
「何がかしら?」
腹部を押さえながら、妲己が聞き返す。
「あんたの能力は確かに厄介。でも、目を合わせなければ問題無し。」
「そして、何より」
天華が続ける。
「能力に胡座をかいて、戦闘に関しては取り巻きより劣る。もう、負けない」
「調子に乗るな!」
激昂した声を上げ、刀を振りかざし、突進。
「はぁっ!!」
上段からの振り下ろし。天華はバックステップで回避。刀は地面へ激突。衝撃と共に土煙が舞う。
「フッ!」
息を吐き、横に一閃。天華はしゃがみ込む様に攻撃を回避。その体勢のまま、膝裏を蹴り上げる。
「うっ!?」
よろめき、後退する。天華は更に追い打ちをかけるべく、距離を詰めていく。
「妲己様!」
そこにキョウコウが割り込む。鞭の様にしなる腕で薙ぐ。
それを天華はジャンプでかわし、後方に着地。
「これで終わらせる」
<ダボウ!>
<必殺神技!!>
トロフィーをダボウにセット。雷が蛇を象る。
「ハッ!」
天華がダボウを振るうと、蛇の様な電撃が二体に迫る。
「ちぃっ!」
妲己が舌打ちをして、無理矢理キョウコウと目を合わせる。目が赤く輝き、キョウコウを操る。そして、キョウコウが妲己を守る様に立ち塞がった。蛇の様な電撃がキョウコウを直撃。
激しい光が辺りを包む。光が止むと、そこには苦々しい表情をした妲己がいた。キョウコウを盾にし、一撃を防いたのだ。
「まさかここまでやられるとは思わなかったわ」
「でも、」
妲己の目が鋭くなる。
「次は容赦しない。この借りを返させてもらうわ」
妲己の周りに小さな狐火が七つ出現。その全てが妲己を取り囲み燃え広がる。そして、火が消えるとそこに妲己はいなかった。
「逃げられた……」
天華が呟く。そして、変身を解除した。
「……次は絶対に仕留める」
そう、桃は決意を新たにするのだった。
緋眼妖華との戦闘を終え、程なくして、流川が呼んだ救急車がアジトへとやって来る。囚われていた人達はそのまま、次々と救急車に運ばれていった。
「本当にありがとうございます!」
カッパレジェスターが深々と頭を下げる。
「探してた娘は?」
「無事に病院まで着いたそうです。親父さ達も喜んでました」
「そう。それは良かったわ」
桃が素っ気なく答えた。だが、その表情には安堵の色が滲んでいる。
「お前も早く会いたいだろ。さっさと病院に行ってやれよ」
燈哉が笑顔でサムズアップする。
「僕としては、レジェスターが人の為に動く事に驚きなんだけどね」
卓人が苦笑しながら言った。
「でもそのおかげで、緋眼妖華を潰せた様なもんだし良いんじゃね?」
燈哉が頭の後ろで手を組みながら笑う。
「皆さん。このご恩は忘れません。あっしもこれから病院へ向かうので、ここで失礼いたします」
カッパレジェスターは、三人に向かって一礼すると、颯爽と走り去っていった。
「良い感じの雰囲気を出してる所悪いけど、呑気にしてる暇は無いわ」
桃が真面目な顔で言う。
「このまま、妲己を野放しにしてはおけない」
「必ず私が倒す」
そう言って桃は歩きだす。
「僕も」
卓人が口を開く。
「同じ轍は踏まない。聖葉の名にかけて僕が世界を救う」
卓人が桃とは違う方向へ歩きだした。
「ちょっと、お前ら!」
燈哉が慌てて二人を呼び止める。しかし、二人は振り返る事なくその場を去った。
伸ばした手が行き場を無くしむなしく彷徨う。
「……ったく、どいつもこいつも勝手なんだから」
ため息混じりに呟き、燈哉は自らの頬を叩く。
「うっし! 俺も頑張るか!!」
そして、燈哉も二人とは違う方向へと歩きだすのであった。