仮面ライダー神器   作:puls9

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第十三節 黒龍の刺客、大地の剣

「やぁ、久しぶりだね。そっちの進捗はどうかな?」

 

噴水広場のベンチに座り、白髪の青年が携帯で通話をしていた。昼下りの広場は多くの人で賑わっていた。休日と言う事もあり、親子連れが楽しそうにしている。

 

「うんうん。順調! そう、それは良かった」

 

青年の言葉には親愛と安堵の色があった。電話の向こうにいる相手とは長い付き合いであるようだ。

 

「え、こっち?  問題ないよ。無茶なんてしてないってば」

 

その時、広場に1台のバイクが入って来た。バイクは駐車スペースに停まると、乗っていた人物が降りる。ヘルメットを取り現れたのは燈哉だった。それに気付き、白髪の青年は話を中断し、顔を上げる。

 

「あー、腹減った」

 

燈哉は買い物袋を手に近くの空いてるベンチに腰を下ろす。どうやら白髪の青年に気付いていないようだ。それを見て、白髪の青年は含み笑いを浮かべる。

 

「悪いね、急用だ。切るよ。 ……あぁ、そうだ。ワンちゃんにもよろしく言っておいて」

 

青年は最後に別れを告げると、そのまま通話を終えた。携帯電話をポケットにしまうと、青年はベンチから立ち上がる。そして、青年はそのままゆっくりと燈哉の方へと歩いていった。

 

「やぁ、あの時以来だね」

 

突然声をかけられて、燈哉は思わず顔を上げた。青年の姿を見て、目を見開く。

 

「あーっ、あの時の!?」

 

燈哉の反応を見た青年は嬉しそうに微笑んだ。

 

「その節は助けてくれてありがとう」

「探したんだぜ! 全然見つからなくてさ!」

 

燈哉は青年の両肩を掴み安堵の笑みを見せる。そんな燈哉に対し、青年は苦笑した演技をしながら答えた。

 

「ごめんね。何とか脱出出来たけど、一刻も早くあの場から逃げたくてさ」

「何にせよ、無事で良かったぜ」

 

そう言うと、燈哉は手を離す。すると、青年は燈哉の隣に腰を下ろし言う。

 

「そういえば名乗って無かったね。僕はアスク。よろしくね」

 

白髪の青年――アスクは手を差し出す。燈哉はそれに応えるように握手を交わした。

 

「俺は立脇燈哉。よろしくな」

 

互いの自己紹介が終わるとアスクが先に口を開いた。

 

「これから昼食?」

「そうなんだよ、バイトが長引いてさ」

 

燈哉が買い物袋からコンビニ弁当を取り出し、開ける。弁当の中身はハンバーグ定食であった。箸でハンバーグを挟み、勢い良くかぶりつく。

 

「美味しそうだね」

「おう、美味いぞ。なにせ、うちのスーパーの人気メニューだからな」

 

アスクの言葉に燈哉は誇らしげに笑う。

 

「そうなんだ。今度、僕も買ってみるよ」

 

そう答えた後、アスクの顔が真剣な表情に変わった。

 

「そうだ。実はトーヤに話したい事があるんだ」

「話したい事?」

 

燈哉は口で咀嚼したハンバーグを飲み込みながら聞き返す。

 

「この前の騒動の時、君が使っていたトロフィーの事さ」

「あぁ、あれか」

 

燈哉はペットボトルのお茶を飲む。

 

「以前何処かで見た気がして、僕なりに調べてみたんだ。そしたら、ここから南西にある洞窟でそれらしき物が描かれた言い伝えを見つけたんだ」

「その話、詳しく聞かせてくれ!」

 

燈哉は勢い良く身を乗り出す。目の色を変えて食いついた。

 

 

 

 

 

 

「お呼びでしょうか、ファブニール様」

 

薄暗い石畳の部屋。椅子に座るファブニールの前に多くのレジェスター達が跪いていた。だが、彼らの顔には疑問符が浮かんでいる。それもそのはずここにいる面々はファブニール一派の中でも末端に位置する存在であり、ファブニールに関わる機会等あり得ないのだから。その為何故呼ばれたのか分からず困惑していた。

 

「ああ、今日お前達を呼んだ理由はただ一つだ……」

 

ファブニールはゆっくりと立ち上がると、その姿を怪人態へと姿を変えた。冷たい目で睥睨しながら、ファブニールはレジェスター達に告げる。

 

「死ね」

 

ファブニールが口から炎を吐き出す。

 

「「「ギャァァァァ!?」」」

 

その炎を浴びたレジェスター達は悲鳴を上げ、一瞬で絶命。石畳の部屋に多くのレジェスタートロフィーが転がる。ファブニールはそのうちの一つを手に取ると、眼前で掲げる。

 

「集えトロフィー。この手の中で一つとなれ」

 

そう言うと、レジェスタートロフィーが宙に浮かび上がり混ざり合う。

やがて光を放つ一つの塊となったそれは、ファブニールの手の中で小さな杯へと形を変えた。そして、さらに言葉を紡ぐ。

 

「杯よ、我が願いを聞け。強大なる力を持つ従僕をここに顕現させよ!」

 

瞬間、杯が光を放つ。杯の中から台座の上に龍を模した顔が付いたレジェスタートロフィーが出現する。

 

<ドラゴン・ザ・リンドワーム>

 

トロフィーが起動し、床に溶け込んでいく。そして地面が盛り上がり、その姿が顕になる。岩の様にゴツゴツとした分厚い皮膚、鋭い刺の背びれが生えた背中、巨大な手は地面につくほど長く、大きな牙を持つ頭部にはねじれた角が二本生えている。全長は五メートルを超える巨躯。その姿はまさしく伝説上の生き物である竜が一体、リンドワーム。

 

「いい加減、ウザくなってきたところだ。リンドワーム。うっとおしい小蝿共を潰してこい」

「キシャァァァァ!!」

 

リンドワームと呼ばれたレジェスターは雄叫びを上げると、地面の中へ潜り、その姿を消した。

 

 

 

 

「暗いな……」

 

燈哉が周囲を見渡す。そこは門出市から南西に進んだ場所にある洞窟、多太羅洞窟。燈哉とアスクはその中にいた。

洞窟の中は暗く、光源となるものは燈哉が持つ懐中電灯のみだ。

 

「ここにトロフィーがあるんだよな?」

「言い伝えによればね」

 

アスクの言葉を聞きながら、燈哉は洞窟内を歩く。

「気をつけろよ。何が起こるか分からないからな」

その時、燈哉の足元が音を立てて少しへこむ。瞬間、飛び出した何かが燈哉の鼻先を掠めた。

 

「うおっ!?」

 

咄嵯に飛び退く燈哉。横を見ると壁には数本よ矢が突き刺さっていた。

 

「どうやら罠が仕掛けられてるみたいだね」

「マジかよ……」

 

燈哉が脱力して、壁にもたれる。しかし、それが間違いだった。今度は壁がへこみ、天井から槍が降ってくる。

 

「嘘だろぉぉぉ!?」

 

叫び声を上げながらも燈哉はギリギリで回避。

 

「……トーヤ、明かりをくれない? 悪いけど、僕が先導するよ」

「お、おう!」

 

見かねたアスクが燈哉の持つ懐中電灯を受け取り、進む。

それを見て燈哉も慌てて後を追う。しばらく歩くと目の前にいかにもな罠があった。それはボタン式スイッチのようなもので、道の中央にポツンと設置されている。踏めば恐らく爆発でも起きるのだろう。

 

「これまたいかにもだね」

 

アスクが苦笑しながら呟く。

 

「こんなトラップに引っかかる訳無いのにね」

 

そう言って、スイッチを跨ぐ。瞬間─────床がへこんだ。

 

「「……えっ!?」」

 

二人は同時に間の抜けた声を上げる。同時に背後から轟音が聞こえ始めた。それは、徐々に近付いて来る。二人は恐る恐る振り返った。すると、そこには巨大な岩石が向かってきていた。その大きさは、二人を余裕で押しつぶせる程。

 

「「うわぁぁぁ!?」」

 

二人は必死の形相で駆け出す。

 

「トーヤ! 今こそ、ライダーの力を使う時だよ! 早く!」

「この状況で出来るかー!!」

 

燈哉が叫ぶ。それもそのはず、岩石から逃げてる今この瞬間にも新たに罠を踏み抜き、それを躱し続けているのだ。その為、岩石との距離は状況に縮まってきている。このままでは逃げ切れないだろう。

 

「ト、トーヤ!」

 

不意にアスクが前を指差す。前方には壁があった。すなわち行き止まりという事である。

そして、二人は振り返る。岩石はもう目前まで迫っていた。

 

「「いやぁぁぁ!!!!」」

 

二人の絶叫が洞窟内に木霊した。

 

 

 

 

 

「買い忘れは……無いわね」

 

桃が手に持った買い物袋の中を見ながら言う。袋の中には玉ねぎや人参、ジャガイモ等の食材が入っていた。

 

「はい。こっちも大丈夫です」

 

隣で同じように買い物袋を覗き込んでいた紗耶が答える。

 

「悪かったわね。買い出し、手伝わせて」

「いえ、かまいません。荷物持ちでも何でも、私に出来ることなら」

 

申し訳無さそうな桃に対して、笑顔で言う紗耶。二人は今、商店街の通りを歩いていた。きっかけは少し前、商店街の店先でばったり出くわした事だった。そこで紗耶は桃が一人で買い出しをしていると知り、手伝いを申し出た次第だ。

 

「とは言え、助かったわ。正直言って一人じゃ重くて大変だったから」

 

そう言いながら右手の荷物を持ち直す。その時、二人の前で車が停まる。それは黒塗りのリムジンだった。

 

「やぁ、こんにちは」

 

顔を出したのはもちろん卓人だ。運転席には流川の姿もあった。卓人は二人の姿を確認し、意外そうな顔をする。

 

「あれ?立脇君は一緒じゃないんだ。珍しいね」

「えっと、はい。すいません」

 

申し訳無さそうに紗耶が笑う。

 

「別に誰が誰といようと自由でしょう?」

 

見かねた桃が苦言を呈する。

 

「それもそうだね。椿坂さん、ごめんね」

「いえ」

 

その時だった。商店街の西口から轟音が響き渡る。

 

「「「!?」」」

 

見ると何かが地面を抉りながら向かってきていた。

 

「椿坂さん。こっち!」

 

桃が紗耶の手を引き、共に横っ飛び。

 

「流川!」

 

卓人と流川が慌ててリムジンから転がり降りる。何かが勢い良くリムジンに激突。卓人が起き上がると同時に、リムジンが後方へ吹き飛ばされ炎上した。

 

「キシャァァァ!!!」

 

土煙が晴れ、ドラゴンレジェスター・リンドワームが姿を現す。卓人と桃が臨戦態勢をとった。

 

<カリバーン!>

<レイエンキョ!>

「「変身!!」」

<夜明けの王!引き抜け、選定の剣!!>

<カリバーンソード!>

<月夜の青龍!!氷!氷!氷!>

<レイエンキョフリーズ!>

 

姿を変え、二人は武器を手にリンドワームへと向かっていく。

 

(燈哉!)

 

近くの柱の影に避難し、紗耶が携帯を取り出す。

 

「ハァッ!」

 

そんな中でも戦いは始まる。ラウンダーがカリバーンを振り下ろす。しかし、リンドワームはそれを右腕で受け止める。

 

「グギャァァァ!!」

 

雄叫びをあげ、身体を反転。尻尾を振り回す。

 

「くっ!」

 

咄嗟に飛び退き、ラウンダーはギリギリ回避。その傍らを抜け、天華がレイエンキョを横薙ぎに振るう。

 

「ヤァッ!」

 

氷を纏った一撃が触れる瞬間、リンドワームの姿が地面に消えた。

 

「「!?」」

 

地面を抉りながらラウンダーと天華を囲むように旋回。

 

「キシャァァァ!!」

 

二人の死角から飛び出し、巨大な腕を叩き込む。

 

「「うわぁぁぁ!!」」

 

重い一撃を受け、二人が地面を転がる。

 

「こいつ、地面に潜れるってわけ?」

「みたいだね。手強い」

 

立ち上がりながら、二人は肩で息をしている。目の前にはリンドワームが追撃の為に迫っていた。

 

「二人共!!」

 

柱の影に避難した紗耶が思わず一歩前に出る。リンドワームがゆっくりと紗耶の方を向く。

 

「ひっ!?」

 

リンドワームが紗耶へ、進路を変える。

 

「まずい!」

「逃げなさい、椿坂さん!」

 

リンドワームが紗耶へと突進。弾丸の如く、迫る。そこにけたたましいエンジン音が響く。

 

「うおりゃぁぁぁ!!」

 

クロコマイルズに乗った燈哉がリンドワームに前輪を叩き込む。リンドワームが真横に吹っ飛んだ。

 

「紗耶、無事か!」

 

クロコマイルズから降り、燈哉が駆け寄る。

 

「う、うん」

「トーヤ。彼女は僕が安全な場所に避難させる。君はあいつを」

 

同じくクロコマイルズから降りたアスクが紗耶を誘導する。

 

「ああ。任せろ」

 

体を反転させ、燈哉がリンドワームへ向き直る。そして、懐からアームズトロフィーを取り出した。シルバーの台座の上に刃の太い象牙色の日本刀が突き刺さっている。

 

「さぁ、行くぜ!」

 

燈哉はトロフィーを起動する。

 

 

 

 

遡る事少し前。巨大な岩石が迫り、燈哉達は後退る。瞬間、落とし穴が起動し、二人は剣山が立ち並ぶ穴の中へと真っ逆さまに落ちていく。

 

「「うおぉぉぉ!!」」

 

空中で必死に態勢を変え、剣山の隙間に叩きつけられ、九死に一生を得る。それと同時に、岩石は落とし穴を飛び越え、壁に激突。壁を巻き込み木っ端微塵と化した。

 

「ヨッと!」

 

落とし穴から這い上がり、燈哉達が見たのは壁の向こうに鎮座しているアームズトロフィーの姿だった。

 

「やったぁ!」

 

燈哉とアスクは自然とハイタッチを交わしていた。

 

 

 

 

 

そして、紗耶からの救難要請を聞き、超特急で駆けつけたのだ。

 

「さぁ、行くぜ!」

 

燈哉がトロフィーを起動する。

 

<オオデンタミツヨ!>

 

燈哉の前に刃の太い象牙色の日本刀が出現する。

 

「変身!」

<土塊!怒号!怒涛!土剣の戦士‼>

 

日本刀が輝き、辺りの地面が迫り上がる。そして、装甲を形作る。その全てが装着され、最後に梅鉢紋の兜飾りが取り付いた。

 

<オオデンタグランド!>

 

神器へと変身し、燈哉は土剣<オオデンタ>を両手で構える。

 

「せ〜のっ!」

 

神器がオオデンタをリンドワームへ振り下ろす。リンドワームはそれを両手でガードするも、その硬い一撃を耐えられない。腕が弾かれ、刀身が胴へ直撃する。

 

「キシャァァァ!!」

 

腹を抑え、後退る。

 

「まだまだ行くぜ!」

 

追撃とばかりに神器が横薙ぎに払う。しかし、リンドワームは地面へ潜り回避。神器の周りを旋回する。

 

「燈哉、気をつけて!」

 

紗耶が叫ぶ。

 

「大丈夫だよ。トーヤなら心配ない」

「えっと、あなたは?」

「はじめまして。僕はアスク。トーヤの友達さ」

 

アスクが優しく微笑む。

旋回するリンドワームを捉えながら神器はオオデンタを地面へ突き立てる。すると、周囲の地面が隆起。リンドワームが地面から叩き出される。

 

「っし! これで決める!」

<オオデンタミツヨ!>

<必殺神技!!>

 

アームズトロフィーをオオデンタにセット。リンドワームの足元を陥没させ、その体を固定させる。エネルギーが凝縮されたオオデンタを振り下ろし、一刀両断。

 

「ギャァァァ!!」

 

リンドワームは断末魔をあげ、消滅。レジェスタートロフィーが地面に転がった。

 

「よっしゃぁ、勝ったぜ!」

 

変身を解き、燈哉は紗耶達へピースサインを送るのだった。

 

 

 

 

石畳の部屋に耳をつんざく様な轟音が鳴り響く。

怒りの形相でファブニールがテーブルを拳で叩き割ったのだ。テーブルは原型を留めない程、木っ端微塵と化している。

 

「どいつもこいつも役に立ちやがらねぇ!」

 

ファブニールの中からレジェスタートロフィーが姿を現す。

 

「もういい」

<ドラゴン・ザ・ファブニール!>

「この俺自ら方を付けてやる」

 

トロフィーが輝き、ファブニールは怪人態へと姿を変えた。

 

「覚悟しろ、仮面ライダー共。お前達の命日はもうすぐだ」

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