仮面ライダー神器   作:puls9

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第十五節 五つの剣、束なりて

霊園の外。地に倒れ伏す燈哉へファブニールの手が振り下ろされる。その鋭い爪が燈哉へ触れるその刹那、横から割って入った人影がそれを受け止めた。

 

「……驚いたな。まさかお前が人間を庇うとは」

 

ファブニールが目の前の人物を睥睨する。

 

「なぁ、酒呑童子ぃ!」

 

そこには酒呑童子が立っていた。大剣でファブニールの手を抑えるが、膂力は相手が上。徐々に押され始めている。

 

「鬼大五将!」

「お任せを!!」

 

酒呑童子の呼びかけに鬼大五将達が答える。熊童子と金熊童子が左右から現れ、挟み打ち。振るわれた拳と金棒がファブニールに突き刺さる。しかし、ファブニールはびくともしない。

 

「効かねえなぁ!!」

 

ファブニールが身体を振り回し、熊童子、金熊童子を吹き飛ばした。酒呑童子は攻撃の寸前に後方に退け、回避。

 

「だが、目的は果たした。良くやったぞ、お前達」

 

酒呑童子が不敵に笑う。その傍らには燈哉を担いだ茨木童子と武器を構えた虎熊童子、星熊童子がいる。

 

「どういうつもりだ、酒呑童子?」

 

ファブニールが眉を顰める。彼は完全に予想外の事態に困惑していた。

 

「なぁに、簡単な事よ」

 

酒呑童子は視線を燈哉へ向ける。

 

「此奴は我の獲物。むざむざと殺されてはつまらぬ」

「成る程な。まぁいい。ついでだ。お前ら事潰してやるよ」

 

ファブニールが殺気立つ。圧倒的なプレッシャーが周囲を包み、鬼大五将達が竦み上がる。

 

「カッカッカ! 流石に今は分が悪いかのう」

 

だが酒呑童子だけは変わらず不敵に笑っていた。

 

「ここは退かせてもらおう」

 

酒呑童子は大きく息を吸い、酩酊の息吹を吐き出した。高濃度のアルコールの霧が辺りに充満する。ファブニールはつまらなそうな表情で背中の翼を羽ばたかせ、酩酊の息吹を霧散させた。霧が晴れるとそこには誰もいない。

 

「ちっ。取り逃がしたか……。次はぶち殺してやる!」

 

苛立つように言葉を吐くと、ファブニールは翼を広げ、空へと飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おまたせ」

 

キッチン大洗の店内で、桃がお盆を持って現れる。運んできたテーブルには紗耶と卓人が座っている。

 

「はい。新作のパンケーキとコーヒー」

 

テーブルの上にパンケーキとコーヒーが二つ並べられた。紗耶と卓人はフォークを手に取り、早速パンケーキに手を付ける。

 

「美味しい!」

「うん。そうだね」

 

店内に客は自分たち以外居らず、紗耶たちの声はよく響く。

 

「それなら良かったわ」

 

そんな二人の嬉しそうな表情を見て、桃の表情が微かに綻んだ。

その時、入り口のドアが開き、店内に鈴の音が鳴る。三人がその音の方を見れば、着物を着た男女が六人、店内に入ってくる。その姿を認識し、紗耶が驚きの声をあげた。

 

「しゅ、酒呑童子!?」

「「!?」」

 

卓人が勢い良く立ち上がり、桃が紗耶を庇う様に前に出る。

 

「まぁ、待つがよい。我は届けものを持ってきただけの事よ」

 

酒呑童子はそう言って茨木童子に目配せする。茨木童子は頷くと、担いでいたそれを放り渡した。

 

「燈哉!?」

 

紗耶が受け止める。茨木童子から受け渡されたそれは、ボロボロに傷ついた燈哉だった。

 

「まさか、あんた達が」

 

桃が酒呑童子達を睨みつける。卓人は桃の隣に立つ。その手にはアームズトロフィーが握られている。

 

「否。やったのは我らでは無い」

「だったら誰がやったのかな?」

 

卓人が一歩前に出る。その体からは殺気が放たれている。

 

「この街を統べりしレジェスター。すなわち、ファブニール」

「!?」

 

紗耶が驚きの表情を浮かべる。彼女が以前の会話を思い出したからだ。酒呑童子は構わず続ける。

 

「奴は立脇燈哉のみならず、貴様ら仮面ライダー達を潰そうとしておる。ついでに我らも目を付けられてしまっていてな」

 

酒呑童子はそう言いながらも全く困ってなさそうに笑う。そして、近くの椅子に腰掛けた。

 

「厄介な事に実力はあちらが上ときた。我ら全員でもやっと対等に持ち込めるか、と言った所よ」

「「「!?」」」

 

その言葉に、卓人と桃の目が見開く。かつて酒呑童子と相対したからこそ分かるその実力。その上とくれば驚くのも無理は無い。

その時、店の外から爆発音が響き渡る。店内のガラスが一斉に割れ、衝撃波が流れ込んできた。

 

「どうやら、ご到着のようであるな」

 

酒呑童子が椅子から立ち上がる。そして、ドアへ向かって歩き出す。

 

「我らはこれよりファブニールとの戦闘を行う。貴様らはこれから如何様にするか考えておくがいい」

「ゆくぞ、お前達」

「「「「「ハッ!!」」」」」

 

鬼大五将を伴い、酒呑童子が店の外へと出ていった。

 

「……椿坂さん。立脇君をお願い」

 

卓人が店の外へと向かう。紗耶が燈哉を抱えながら、顔を上げる。

 

「僕はファブニールと戦いに行く」

「一人で行く気?」

 

桃が卓人の下へ歩み寄る。その瞳は決意に満ちていた。

 

「私も一緒に行くわ」

「分かった」

 

卓人が力強く頷く。二人は並び立つと、共に外へと出ていく。それを見つめ、紗耶は思う。

 

(皆、どうか無事で……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深い眠りの中。燈哉は記憶の濁流を彷徨っていた。あらゆる断片が現れては消えていく。

その中の一つの記憶に意識が引き寄せられる。

ある夏の日。夕日が差し込む子供部屋。壁には世界地図が貼られ、机の上には地球儀が置かれている。その部屋のベッドの片隅に幼き日の燈哉が体育座りで一人座っていた。コンコンと部屋の扉がノックされる。

 

「燈哉。入っていいか?」

 

声の主は父、光哉だった。燈哉は返事をせず、体育座りのまま顔を膝に埋めた。

 

「入るぞ」

 

そう一言告げると光哉は部屋に入る。日焼けした浅黒い肌、服の上から盛り上がる筋肉。精悍な顔立ちをしたスポーツ刈りの男。彼こそが燈哉の父、光哉だ。光哉は、燈哉の隣に腰掛けると静かに話し始めた。

 

「学校で友達と喧嘩したんだって?」

 

光哉の質問に燈哉は無言。何も答えない。燈哉の手には引っ掻き傷や痣があった。

 

「……あいつらが悪いんだ」

 

暫しの静寂の後。燈哉がポツリポツリと話し始めた。

 

「冒険家になんか絶対なれないってバカにするから、だから」

 

その日、学校では作文の発表があった。お題は将来の夢。当然、燈哉は冒険家という題を選んで発表した。しかし、一部のクラスメイトからからかわれたのだ。

 

「それで喧嘩になったのか」

 

燈哉は黙って頷く。光哉は呆れるでもなくただ穏やかに再び話しかけた。

 

「なぁ燈哉。知ってるか?父さんの将来の夢」

「ううん」

 

燈哉が父の方を見て首を横に振る。

 

「父さん。昔からレスキュー隊員になりたかったんだ。でも父さんさ。昔はガリガリで、皆から無理だって言われてたんだ」

 

光哉はそう言うと昔を思い出すように目を閉じて語り始めた。

 

「それが悔しくて無我夢中で体を鍛えた。お陰で今、ちゃんとレスキュー隊員をやれてる」

 

燈哉は何も言わない。しかし、静かに耳を傾けている。光哉は更に続けた。

 

「クラスの子にからかわれて悔しかったのなら見返してやれ。いつか必ず冒険家になって。どうだ、見たか!ってさ」

 

光哉が笑顔で燈哉の頭をガシガシ撫でる。燈哉はバツが悪そうに苦笑いした。

 

「父さんはなれると思う? 俺が冒険家に」

「なれるさ。最後の最後の最後まで。お前が冒険家になるその時まで諦めなければきっとなれる!」

「お前の運命はお前が斬り拓くんだ!」

 

光哉が燈哉の肩に手を置く。燈哉の顔に笑顔が生まれる。そして、燈哉は力強く頷いた。

 

「うん!」

 

それが父との最後の会話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりとまぶたを開け、燈哉が目を覚ます。目だけを動かし、周囲を見渡す。今、燈哉はベッドの上で仰向けになっていた。

 

「燈哉!? 大丈夫!」

 

燈哉が起きた事に気付いた紗耶が駆け寄る。心配げな表情で燈哉の顔を覗き込む。

 

「紗耶。ここは?」

「キッチン大洗の中だよ。大洗さんがベッドを貸してくれたの」

「そうか」

 

燈哉はゆっくりと上体を起こす。全身が重く、節々が痛む。

 

「痛っ!」

「無理しちゃ駄目だよ!安静にしてなきゃ」

 

燈哉の身体を支え、紗耶が心配そうに言う。

 

「今、聖葉さん達がファブニールと戦ってる」

 

店の外からは激しい戦闘音が聞こえる。紗耶は不安げな表情で店の外に視線を送りながら、これまでの経緯を説明した。

 

「そっか。皆、戦ってるのか。なら俺も行かないと……」

 

燈哉はゆっくりと立ち上がり、出入り口へと踏み出そうとして片膝をついた座り込む。

 

「っ!!」

「駄目だよ!死んじゃうよ!」

 

紗耶が出入り口に回り込み、大の字のポーズで立ちふさがる。

 

「それでも、行かなきゃいけない」

「行かせない。絶対に!」

 

立ち上がり、入り口へ向かおうとする燈哉を紗耶が必死に止める。彼女の目は涙で滲んでいた。

 

「大丈夫だ、紗耶。俺は必ず帰ってくる。約束する」

 

紗耶を安心させようと、燈哉は微笑みながら言う。

 

「俺を信じろ!」

 

燈哉は真っ直ぐに紗耶を見つめる。紗耶は涙を浮かべたまま、しばらく燈哉の顔を見つめていた。

 

「……分かった。私、ここで待ってるね」

 

やがて紗耶はそう答えた。その言葉を信じて燈哉は歩き出す。

 

「絶対に帰ってきてね!」

「ああ、任せとけ!」

 

紗耶と約束を交わし、燈哉は店を出ていく。そして、クロコマイルズを呼び出すと戦闘音のする方へアクセルを踏み込んだ。

それを見つめる影一つ。キッチン大洗の屋根の上でアスクが足を組み座っていた。

 

「さぁ、燈哉。せいぜい頑張ってくれ給え」

 

アスクが楽しげに呟く。

燈哉は風を切りながらその視界から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グァァッ!!」

 

ラウンダーが吹き飛ぶ。門出市の広場にてラウンダーに天華、そして鬼大五将の面々が倒れ伏している。唯一、酒呑童子のみ大剣を杖代わりに片膝をついて苦笑いしていた。そんな全員の視線は広場の中央で仁王立ちするファブニールに注がれている。

 

「どうした、こんなもんか?」

 

ファブニールは腕を組みながらつまらなそうに言う。その身体は汚れ一つなく、消耗した様子も見受けられない。

 

「まだだ!」

 

ラウンダーが駆け出し、カリバーンを振るう。ファブニールはそれを右腕で受け止める。硬い皮膚に阻まれ、カリバーンが弾かれた。

 

「くっ」

「ヤアッ!」

 

続け様に天華がレイエンキョで横薙ぎ一閃。金属音が響く。ファブニールが左手でレイエンキョの刀身を掴んで受け止めていた。 

 

「軽いな」

 

ファブニールはそのままレイエンキョごと天華の身体を持ち上げ、放り投げる。

 

「ならば、俺様達が!」

 

鬼大五将達が一斉に飛びかかる。ファブニールは体を反転。勢い良く尻尾を振り上げて打ち飛ばした。

 

「であれば、我の出番よな」

 

ファブニールの眼前に酒呑童子が迫る。持っていた大剣を豪快に振り上げる。

 

「チッ!」

 

ファブニールが後方に飛び、回避。大剣が地面にぶつかり、亀裂が奔る。そして、ファブニールの皮膚に擦れた傷跡がつき、煙が立ち上った。

 

「やはり、俺とまともに戦えるのはテメエだけか」

 

ファブニールが嬉しそうに口元を吊り上げる。

 

「だがな、」

 

ファブニールが酒呑童子の背後に回り込む。そのまま、拳を叩き込んだ。

 

「くっ!」

 

酒呑童子が振り返り、拳を受け止める。衝撃が酒呑童子の体を突き抜けた。後方に後ずさる酒呑童子。ファブニールはその隙を見逃さず、口から青白い炎を吐き出した。灼熱の炎が酒呑童子を呑み込む。

 

「やはりまだ俺には及ばない」

 

炎から抜け出した酒呑童子が再び片膝をつく。それを余裕綽々と見つめるファブニール。その場の全員がボロボロで、もはやファブニールと戦える者は一人もいない状態だ。

その時、エンジン音が響き渡る。広場に一台のバイクが現れ、ファブニールの前で止まる。ヘルメットを外し、バイクから降りたのは燈哉だった。

 

「立脇君!」

「立脇!」

「立脇燈哉!」

「神器!」

 

ファブニールを除く全員が声を上げる。ファブニールだけは冷めた視線で燈哉を見据えていた。

 

「俺に負けた雑魚が今更戻ってきたか」

「ああ。リベンジしに来た!」

 

燈哉が力強く言う。そして、アームズトロフィーを腰に翳す。

 

<ヒロイックドライバー!>

 

腰にベルトが巻き付く。そして、燈哉がトロフィーを起動させる。

 

<ムラマサ!>

 

「変身!!」

 

<抜刀!決闘!激闘!妖刀の戦士!!>

<ムラマサブレード!>

 

赤紫色の鎧を纏い、燈哉は神器へと変身を果たす。

 

「行くぜ!」

 

ムラマサを構え、神器が突撃。ファブニールへと迫る。

 

「ハァ」

 

ファブニールはため息を吐と右手でムラマサの刃を掴む。そのまま、左手で拳を握り、神器の鳩尾へ叩き込んだ。神器が勢い良く吹っ飛び、地面を転がると変身が解除される。

 

「そんな攻撃で俺を倒せるわけねえだろ」

 

ファブニールが呆れたように言う。そして、周囲を見渡し、誰から手に掛けるか吟味を始めた。その時、ヨロヨロと燈哉が立ち上がる。

 

「しつこいな。まだ動くのか?」

「当たり前だ。俺はまだ死んでねえぞ」

 

燈哉の目は死んでない。ギラギラと輝き、鋭い視線をファブニールにぶつけている。

 

「諦めて大人しくしていろ。そうすれば、楽に殺してやる。お前らはどう足掻いても俺には勝てない。それが、お前らの運命だ」

「嫌なこった。俺は諦めない。最後の最後の最後まで! お前を倒すその時まで!!」

「俺の運命は俺のこの手で斬り拓く!!!」

 

瞬間、燈哉に呼応するかのように五つのアームズトロフィーが輝き、浮かぶ。オニマルが赤く。ジュズマルが青に。ドウジキリが緑でミカヅキが黄色。オオデンタが白。

五つのトロフィーは輝きを増し、燈哉の目の前で集約し一つとなった。それは、ゴールドの台座の上に宮殿の如き建物がついたトロフィー。宮殿の屋根にはつまみがついており、宮殿の中には五つの剣がそれぞれの色のレリーフとなって付いている。燈哉がそれを手に取り、まじまじと見つめる。

 

「あれは一体……」

「あんなトロフィー見たこと無い」

 

卓人と桃がその現象に目を見開いく。いや、二人だけでは無い。この場にいる全員が驚愕していた。

 

「カッカッカ。まさかあの様な奇跡を起こすとは」

 

酒呑童子が愉快に笑う。心底、嬉しそうだ。

 

「何だ。何なんだキサマ!」

「立脇燈哉だ!!」

 

燈哉が叫ぶ。トロフィーの上部を押し込み、起動。

 

<天下五剣!>

 

トロフィーをベルトにセット。さらなる音声が鳴る。

 

<刀剣結集!>

「変身!!」

 

ベルトのボタンが押され、トロフィー横のプレートが展開。ベルトの顔と重なり、神器の新たな姿が浮かぶ。

 

<火剣!水剣!風剣!光剣!土剣!天下五剣!!>

 

燈哉の周りを五つの剣が衛星軌道を描いて舞う。各々の剣からエネルギーが放たれ、火を纏い、水に包まれ、風が逆巻き、光で輝き、土に覆われる。黒のアンダースーツの上に、五色の鎧装甲が装着される。

 

<ワールドファイブレード!>

 

仮面の額に数珠。それに収まるように梅鉢紋。その上に三日月の兜飾りが重なる。さらに、兜飾りの左右から刀の角が二つ。最後にそれより長い刀が一本付き、神器の複眼が輝いた。

すかさずトロフィーのつまみを回し、黄色のレリーフを正面に向ける。上部を押し込んだ。

 

<ミカズキムネチカ!>

 

神器の左手にミカヅキが握られる。瞬時に光速移動を開始。ファブニールの右横にたどり着く。だが、ファブニールは眉一つ動かさない。左手を動かし、迎撃の態勢を整える。

 

<オオデンタミツヨ!>

 

白のレリーフを正面に向け、上部を押し込む。神器の右手にオオデンタが出現。勢い良く振り下ろした。

 

「オリャア!!」

「!?」

 

ファブニールの左手が火花散る。剣の勢いに負け仰け反った。神器はすばやく背後に回り込み、追い打ちとばかりにオオデンタを横薙ぎに振るう。

 

「ガァァァ!?」

 

ファブニールが前方に転がった。すぐさま顔を起こし、神器が睨みつける。その顔は憤怒に満ちている。

 

「やってくれたな!!!」

 

ファブニールがブレスを吐いた。青白い炎が神器に迫る。

 

<ジュズマルツネツグ!>

 

オオデンタを手放し、その手がジュズマルを掴む。剣から放たれた水が炎を包み込む。しかし、炎の勢いは強く、止まらない。

 

「けど、少しは弱まったぜ」

<ドウジキリヤスツナ!>

 

左手をミカヅキからドウジキリに持ち替え、振るう。風が炎を巻き上げ、神器の眼前で炎が止まる。

 

「これを、倍にして返す!」

<オニマルクニツナ!>

 

風で止まった炎をオニマルに纏わせる。自身の炎を合わせ先程以上の威力が斬撃となってファブニールへ放たれた。その炎は真っ直ぐに着弾。ファブニールの体が炎に包まれる。

 

「グガァァッ!」

 

ファブニールが全身を大きく振るい、すぐさま炎を掻き消した。だが、ダメージは大きく、その硬い皮膚にいくつもの傷が付いている。それは明確にファブニールに効いている証左でもあった。これならばいける。周囲に光明が戻る。

 

「スゥー、ハァー。……どうやら侮っていたようだな。だが、お前の弱点を見つけたぞ!」

 

ファブニールが深呼吸をして、冷静さを取り戻す。そして、翼を広げ、神器へと突進する。

 

<ミカヅキムネチカ!>

<オオデンタミツヨ!>

 

神器はミカヅキとオオデンタを手に、迎撃の態勢を整えた。しかし、ファブニールは寸前で緊急停止。口からブレスを吐き出した。

 

「やっべ!!」

 

剣を交差させ、防御する。だが、炎の前には無意味。瞬く間に青白い炎に包まれる。

 

「まず、テメエが同時に使える能力は両手に納まる二つだけ」

 

剣を振り回し、炎を消す。その両手に衝撃が奔った。ファブニールの尻尾が神器の手を攻撃。剣が手から落ちる。

 

「そして、剣が手から離れれば効力を失う!」

 

ファブニールの右ストレートが神器に直撃。重い一撃が神器の顔面を捉えた。たまらず地面に叩きつけられる。

 

「これで、終わりだな」

 

ファブニールがトドメの一撃を構えた。

 

<フェイルノート!>

<必殺神技!!>

 

無数の矢がファブニールに着弾。矢が放たれた方向にはフェイルノートを構えたラウンダーがいた。ファブニールの意識がラウンダーに向けられる。

 

「今だ、立脇君!」

 

ラウンダーが叫んだ。神器が死角に回り込む。

 

<オオデンタ!>

 

オオデンタを召喚。渾身の力を込めて叩き付ける。

 

「チィッ!」

 

神器の一撃がファブニールを後方へ弾く。舌打ちをしながらファブニールはブレスの構え。大きく息を吸い込み、吐き出す。その瞬間、

 

「させない」

<ダボウ!>

<必殺神技!!>

 

大蛇を模った電撃がファブニールの動きを止めた。天華がダボウから電撃を放ったのだ。

 

「立脇!」

<ドウジキリヤスツナ!>

 

天華の叫びに頷き、風を纏う。その勢いのまま、ファブニールの眼前へ。オオデンタを斬り上げた。

 

「グウッ!」

 

斬られた箇所を抑え、ファブニールが苦悶の声を上げる。

 

「俺様達を忘れるなよ!」

 

鬼大五将達が囲み、鉄杖を、メリケンサックを、鋸を、薙刀を、金棒を次々と叩きつけていく。

 

「そんなものが効くか!」

 

咆哮をあげ、ファブニールの両翼が羽ばたく。風が巻き起こり、鬼大五将達を吹き飛ばした。

 

「だが、お陰で隙が生まれたぞ」

 

懐に潜り込んだ酒呑童子が大剣を振り抜く。

 

「鬼刀・酒銘刃!」

 

酩酊の息吹を纏った刃が突き刺さる。酒呑童子は大剣を回転させ、さらに刃の奥へと突き入れていく。

 

「うぐぅ!?」

 

ファブニールが呻く。足元がふらつき、後退。片膝をついた。

 

「何故だ!?この俺がこんな奴らに!」

 

忌々しげにファブニールが歯噛みする。

 

「そんなもん決まってるだろ?」

 

神器がファブニールの前に立つ。その後ろにラウンダーと天華。鬼大五将と酒呑童子が並ぶ。

 

「俺には頼りになる仲間と手強い宿敵(ライバル)がついてる。ピンチになっても誰も助けに来てくれないお前には絶対に負ける訳がない!」

 

ファブニールがギリと歯を食いしばる。神器がトロフィーの上部を2回連続で押し込む。

 

<天下五剣!>

<必殺奥義!!>

 

神器の周囲を浮遊する五つの剣。神器が飛び上がり、追尾するように剣もまた飛び上がる。空中で一回転し、神器が右足を突き出す。

 

「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

莫大なエネルギーを纏った一撃がファブニールに命中。続け様に五つの剣が突き刺さった。

 

「ギャアァァァァ!!」

 

ファブニールの絶叫が木霊する。激しい爆発が起きた。神器は綺麗に着地を決めると、変身が解除された。そのまま、力無く崩れ落ちる。

 

「立脇君、大丈夫かい?」

 

互いの肩を支えながら、卓人と桃が寄ってくる。

 

「なんとかな」

 

地面に大の字で寝転がり燈哉は笑う。そして、視線だけを酒呑童子達に向けた。

 

「ありがとな、助けてくれて」

「勘違いするな。我はただ、ファブニールが気に入らなかっただけのことよ」

 

酒呑童子はそっぽを向いたまま答える。そんな酒呑童子を見て、燈哉は苦笑した。

 

「ファブニールが倒され、時代は動き出した。これから世界は大いに荒れるぞ。覚悟しておくがいい」

 

そう言い残し、酒呑童子は鬼大五将達を連れ去っていった。広場に燈哉と卓人と桃が取り残される。

 

「さて、俺達も帰るか」

 

二人の手を借り、燈哉が立ち上がる。そして、三人はキッチン大洗へと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い石造りの廊下を誰かが歩く。その体は傷だらけであり、壁を支えにノロノロと歩いている。体から流れる血がポタポタと廊下を濡らしていく。

 

「はっ、はっ、はっ、」

 

荒々しい呼吸。それの眼は充血し、既に限界を超えていた。やがて、現れた扉を開け、馴染み深い石畳の部屋へとたどり着いた。部屋の明かりが入ってきた誰かのシルエットを照らす。そこにはいたのはボロボロになったファブニールだった。

 

「随分無様な姿だね。ファブニール」

 

部屋の中央。ファブニールがいつも腰掛けている豪華な椅子に座り、アスクが声をかけた。

 

「退け、雑魚。そこは俺の椅子だ」

 

アスクの姿を見るとファブニールが悪態をついた。そんなファブニールにアスクは不敵な笑みで答える。

 

「違うよ。これはもう君の椅子じゃない」

 

アスクは椅子から立ち上がるとファブニールへ向かって踏み出す。

 

「トーヤ達はいい仕事をしてくれた。まさかここまで君を追い詰めてくれるなんて、嬉しい予想外だったよ」

 

そう言いながらアスクは、一歩、また一歩とファブニールへ近づく。

 

「お陰で君を倒しやすくなった」

 

その言葉を聞いて、ファブニールは鼻で笑った。

 

「お前如きが俺を倒すだと……。冗談も大概にしておけよ」

 

怒気を纏い、アスクを睨みつける。当の本人は涼しい顔で意に返さないまま答えた。

 

「出来るんだなぁ、これが」

 

アスクがトロフィーを取り出した。それは、ゴールドに台座の上に漆黒のロングソードが突き刺さったアームズトロフィーだ。それを見た瞬間、ファブニールが目に見えて動揺する。

 

「それは、まさか!?」

 

アスクがゆっくりとトロフィーを起動させる。直後、音もなく血飛沫が上がる。そして、ファブニールレジェスタートロフィーが地面に落ち、石畳の部屋に虚しく響き渡った。




仮面ライダー達の活躍をもって、黒龍(ファブニール)は討ち果たされた。

ここから先は混迷の時代。ファブニールに怯え、影に潜んでいた者、この世界の新たな覇権を手にせんとする者達が動き出す。

次回、新章突入
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