仮面ライダー神器   作:puls9

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第二十節 ラウンダー、新生

大型ショッピングモールの外。燈哉とアスク、三体の上級レジェスターが集うその現場に新たな仮面ライダーが現れる。

片や刺繍の模様が入った蒼いチェーンメイルに槍を携えた勇士。片や深緑色の挂甲を纏い、刀を構えた戦士。

 

「ご無事ですか? アスク様」

 

蒼い仮面ライダーがアスクの前に跪く。それは若い女性の声だった。

 

「あぁ、大丈夫だよ」

 

アスクが蒼いライダーの頭に手を乗せ、優しく撫でる。

 

「招集を受けて駆け付けてみれば、凄い状況だな」

 

深緑のライダーがアスクに声を掛ける。その声は少し影のある青年の声だった。

 

「感動の再会の所、悪いのですが、どちら様ですかね?」

 

アペヤキが忌々しげに、三人のライダーを睨む。彼の隣にはイフリートとゴリアテが並んでいる。

 

「私は仮面ライダーアルスター。アスク様の敵を排除します」

 

アルスター。そう名乗った蒼いライダーが槍を構え、アスクの隣に並ぶ。

 

「仮面ライダーサマイクル。こいつの同志だ」

 

親指でアスクを指差し、サマイクルも隣に並ぶ。

 

「二人共、準備はいい? 行くよ」

 

三人のライダーがアペヤキ達に向き直る。両者互いに武器を構え、戦闘体勢を取った。

 

「ハアッ」

 

両者が同時に駆け出した。まずはサマイクルがアペヤキへ攻撃を仕掛ける。手にした刀を巧みに操り、攻撃を繰り返す。

 

「くっ」

 

その攻撃を防御しつつ、アペヤキは反撃のタイミングを窺っている。だが、その隙をアルスターが突く。槍が素早く繰り出され、アペヤキに直撃。

 

「がっ!?」

 

よろめいた所にさらに連続攻撃が行われ、アペヤキの身体は宙に舞い……地面に落ちた。

 

「フン!」

 

追撃に迫った二人の前にゴリアテが立ちはだかる。盾を構え、長槍を振り回す。その一撃は重く、地面に亀裂が入る程の衝撃が伝わった。

 

「ちっ!」

 

舌打ちをしながらサマイクルが飛び退く。アルスターも後に続き回避。

 

<雷神!>

 

サマイクルが刀の鍔を回転させる。龍の意匠が付いたレリーフを矢印に合わせトリガーを引く。

 

<召喚!!>

 

刀より羽の生えた龍が出現。ゴリアテに牙を向ける。

 

「むっ!!」

 

盾でその牙を防ぐも、サマイクルとアルスターが追撃に動く。

 

「おらおらおら!!!」

 

イフリートが火球を連続発射。燃える炎が二人を阻む。遠距離からの攻撃に防戦一方となる。

 

「ハアッ!!」

 

間にアスクが割って入った。グラムを振り、火球を消し飛ばす。

 

「ぐへぇ!?」

 

その威力は凄まじく。爆風にあおられ、イフリートが吹き飛ばされた。そのまま地面を転がる。

 

<グラム!>

<必殺神技!!>

 

グラムが黒いオーラに包まれる。アスクがそれを振り降ろし、イフリートに斬撃を見舞う。

 

「ぐわぁああああああああああ!?」

 

イフリートが断末魔をあげて爆発。

 

「ちいっ! ここは退きますよ」

 

それを見て、アペヤキとゴリアテが引き上げる。その場に四人が取り残された。

 

 

 

 

 

「くそっ!!」

 

壁に拳が打ち付けられる。卓人が悔しげな表情で俯く。

 

「どうして……どうして僕は無力なんだ……」

「僕に……僕にもっと力があれば……」

 

そう言って膝を抱えしゃがみ込んでしまう。その様子をセイレーンレジェスターは無言で見つめている。

 

「ねぇ」

 

セイレーンレジェスターが口を開く。

 

「どうしてそんなに戦いたいわけ?」

「えっ?」

 

思いがけない言葉に卓人は顔を上げた。

 

「他に仮面ライダーがいる以上、別にあなたが戦う必要なんて無いじゃない」

「このまま安全圏で普通の生活を送ればいい。違う?」

「……」

 

卓人は立ち上がるとセイレーンレジェスターを見据える。

 

「ノブレスオブリージュって知ってる?」

「何それ」

 

セイレーンレジェスターは首を傾げる。

 

「高貴なるものの義務って意味だ」

「僕は名門、聖葉の家に生まれた。人より恵まれた暮らしをしてる自覚もある」

 

知らず知らずの内に拳を強く握りしめる。

 

「だからこそ……。だからこそ僕は戦いたい。人々を守る為に」

 

卓人が力強く宣言するとセイレーンレジェスターは目を細める。

 

「馬鹿らしい。なら勝手に死ねば」

 

吐き捨てるように言うと踵を返す。

一瞬、悲しそうな顔をしたのに卓人は気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

カラン、と鈴の音を立て、キッチン大洗の扉が開かれる。外から桃がゆっくりと店内に入ってきた。

 

「……」

 

店内には誰もおらず、開店準備をしていたあの日のままになっている。そんな静かな店内で桃はぼんやりと佇む。

 

「美鶴城さん……」

 

再び鈴の音が鳴った。振り返るとそこには紗耶が立っていた。紗耶が桃の方へ歩み寄ると、心配気な表情でその手を取る。

 

「一体何があったんですか? 教えて下さい」

 

桃は無言で黙っている。目を合わせる事もなく俯く。

 

「大洗さんはどこにいるんですか?」

「っ……」

 

その言葉に桃の体がビクリと跳ねる。怯えた様子で後ずさる。本当は今すぐにでも話したい。打ち明けたい。でも、

 

『駄目よ、桃ちゃん』

 

桃の背後に紫色の炎が漂う。声はそこから聞こえてきた。その声は妲己の声だった。

 

『話したら分かってるわよね?』

 

優しく諭すような口調の一方で、凄まじい圧が桃を包む。話したら成都の命は無い。それが分かっているから桃は逆らえない。

 

『あっ、そうだ。新しい命令をあげるわ』

 

いい事を思い付いた、とばかりに妲己の声がより一層明るくなる。桃がごくりと生唾を飲む。

 

『殴りなさい』

「えっ……?」

 

桃が目を見開く。まるで想定外の命令だった。

 

『その子の顔面、思いっきり殴りなさい』

「そんな……事……」

『出来ないとは言わせないわよ』

 

冷たく、静かで、有無を言わせない口調が桃の鼓膜から脳へ入る。

 

『さぁ選びなさい。家族か、お友達か。貴女はどっちを取るの?』

 

桃は唇を噛む。答えが決まらない。どちらかなんて選べない。次第に桃の表情に焦りが浮かぶ。

 

『さ〜ん』

 

急かすように間延びした声で妲己がカウントダウンを始める。

 

『に〜い』

 

このままではいけない。冷や汗が頬を伝う。視界は揺らぎ、意識が遠ざかる。がくがくと足が震えてくる。

 

『い~ち』

 

どうする? どうすればいい? 桃の呼吸が荒くなる。心臓の鼓動がどんどんと大きくなっていく。

 

『ぜっ……』

「う、うあぁぁぁぁ!!」

 

桃の拳が紗耶の右頬に突き刺さる。衝撃で紗耶は床に倒れ込んだ。振り切った拳には赤色が付着していた。それは紗耶の血だ。彼女の口元から血が伝う。

 

「あ……あ、あなた……には……か、関係のない事……よ! も、もう私に話しか、……かけないで!!」

 

震える声で、泣きそうな顔で、桃は叫ぶ。そしてそのまま逃げるように店を出た。

 

「はあ……はあ、はあ!」

 

店を出て桃は走る。路地を抜け、裏道を抜け、ただひたすらに走り続ける。やがて無人の公園にたどり着くと、水道の蛇口を捻る。

 

「う、うう……!」

 

水道の水を手ですくい、血に染まった自らの手を洗う。しかし洗っても洗っても汚れが落ちない。殴った時の感触が消えない。紗耶の怯えた表情が頭から離れない。

 

「ああ……ああ……!」

 

桃はその場に座り込む。そして込み上げる吐き気の抑えきれず、嘔吐した。

 

 

 

 

 

 

「そうか。敵の数が増えたか。やはりなかなかに侮れんな! ハッハッハッハッハッハ!」

 

タワーマンションのVIPルームにて、アンズーが豪快に笑う。アンズーの前にはアペヤキとゴリアテ、メドゥーサにギョウブ、そして妲己が立っている。

 

「笑い事では無いのですが……」

 

アペヤキがうんざりとした表情で言う。ゴリアテも無言で首肯する。

 

「流石はファブニールを討ち倒した者達。そうでなくては挑む意味もあるまい」

「ところでイフリート。そろそろ復活の時間ではないか?」

 

アンズーが虚空に問う。瞬間、炎が集まり人型を形成する。

 

「おうおう! その通りよ! 復活のお時間だ!!」

 

炎の魔人、イフリートが叫ぶ。それを見てアペヤキは嫌そうな表情を浮かべる。

 

「いきなり出てきて騒がないでほしいものですね、イフリート」

「うっせぇな! 燃やすぞ!? あ゛!?」

 

イフリートは炎でできた腕を振り上げ、アペヤキに怒鳴る。

 

「静まれ、イフリート」

 

アンズーが剣呑な表情で言った。

 

「うっ……はい……」

 

イフリートは萎縮した様子で黙る。アンズーの眼力は凄まじいものがある。それは幹部全員が縮み上がるほどのものだった。

 

「提案があるのですが」

 

アペヤキが挙手する。

 

「なんだ?」

「今回我々は一時撤退しましたが、それはあくまで人数的に不利であったが故です」

 

アペヤキは少し間を開け、更に続ける。ここからが本題だと言わんばかりに真剣な顔つきだ。

 

「ですが、一対一であるならば話は別です。一対一ならばこちらが有利。必ずや仮面ライダー達を打ち取れるかと」

「成る程」

 

アンズーは興味深そうに目を細める。まるで、名案だと言いたげな様子だった。

 

「私は既にターゲットを定めております。吉報を持ってこれるでしょう」

 

アペヤキはそう言って、部屋から立ち去った。

 

(そう。あの者が戦えない事は他の誰も知らない。つまり、私は楽に手柄を立てられると言う事)

 

アペヤキはほくそ笑むと、ターゲットを探すべく飛翔した。

 

 

 

 

 

 

 

石畳の部屋。戦いを終え戻ってきた燈哉の目の前には、アスクとその両隣に二人の人物が立っている。それはアスクと共にレジェスターを撃退した仮面ライダー達の正体だ。

一人は黒髪ロングの少女。線の細さと背が低いのが相まってあどけなさを感じさせている。

もう一人は長身の青年。短く整えた髪に、精悍な顔立ちをしている。仏頂面と目の下に深い隈が出来ているのが気難しい印象を与えている。

 

「ほらよ」

 

戻って来て早々、青年がアスクに大きな袋を渡す。

 

「トロフィー!?」

 

中には大量のトロフィーが入っていた。燈哉が驚きの声を上げる。

 

「お疲れ様。向こうも大変だったでしょ?」

 

受け取ったトロフィーを未完の杯に吸収させ、アスクが問いかける。

 

「当たり前だ。生活圏もかなり変わってくるからな。英語話せて良かったと思わなかった日は無かったよ」

 

皮肉交じりに青年が悪態をつく。渋面に刻まれた眉間のしわが大変さを物語っていた。

 

「向こうって?」

「彼らには海外でトロフィーを集めてて貰ったのさ。僕がファブニール攻略を計画してた裏でね」

 

そう言うとアスクが両手で二人を指し示す。

 

「紹介しよう。こっちの女の子は槍原 壱子(うつぎはら いちこ)。そして、こっちが潟永 虎杖(かたなが こじょう)

「そっか。俺は立脇 燈哉、よろしくな」

 

燈哉が笑顔で手を差し出す。それに対して、槍原 壱子と呼ばれた少女は軽く会釈を返す。一方の潟永 虎杖は、無言で近寄るとその手を払い除けた。

 

「お断りだ。見ず知らずと馴れ合う気は無い」

 

低い声で虎杖がそう言うとそのまま少し離れた席に向かい、椅子に腰掛ける。

 

「ごめんね、彼らちょっと人見知りでさ」

 

呆気に取られる燈哉にアスクが苦笑しながら謝罪する。

 

「あ、あの……」

 

か細い声で壱子がアスクに話しかける。その手には紙袋が握りていた。

 

「これ……。良かったらどうぞ」

 

俯きがちになりながら壱子が紙袋をアスクに手渡す。

 

「これは何かな?」

「えっと、服……です」

「服?」

 

アスクが紙袋の中を覗き込む。そこには綺麗に折り畳まれた服が入っていた。

 

「あぁ、それ。壱子が向こうで買ってたやつ。お前に似合いそうだってよ」

 

虎杖が答える。先程とは打って変わって楽しげに笑みを浮かべている。

 

「お気に召さなければ……捨ててくれて構いません……」

 

消え入りそうな声で壱子が言う。

 

「ふーん。ちょっと外すね」

 

アスクが紙袋を手に部屋を出る。そして数分後に戻って来た。その格好は今までの服装と違っていた。

 

「どう、似合ってるかな?」

 

嬉しそうに笑いながらアスクが尋ねる。その身にまとっているのはシンプルなデザインの衣服だった。丈の長い黒のシャツに灰色のカーディガン、そして白いスキニーパンツと、どれも清潔感があり洗練された印象を受ける。

 

「着心地が良いね。ありがとう、ワンちゃん」

「いえ……そんな……。えへへ」

 

頬を紅潮させ、壱子がはにかむ。両手を頬に当て、耳まで真っ赤にしている。その喜びように彼女のお尻に犬の尻尾を幻視した。

 

「なぁ、あの娘ってさぁ……」

「見ての通りだよ」

 

燈哉がこっそりと虎杖に耳打ちをすると、無愛想ながらも彼も小声で返す。

 

「お前も大変だな……」

「余計なお世話だ」

 

燈哉は同情の眼差しで見るが、彼はそれを振り切るようにぶっきらぼうに答えた。

 

「さて、そろそろこれからの事を決めようか」

 

パン、と手を叩き、アスクが皆の注目を集める。

 

「これからの事?」

「そう、これからどう動くかって事さ」

 

燈哉の問いにアスクは頷きながら答えた。

 

「誰から倒す? 僕としてはイフリートを狙いたいね」

「やっぱあいつ死んでなかったのか」

「トロフィーも出なかったしね。恐らくだけど、体の一部を切り離してそこから再生出来るんだろうね」

 

アスクは神妙な面持ちのままそう告げる。

 

「つまり一つでも取り逃がしたら駄目って事か。面倒なこったな」

「アスク様、どう対処しますか?」

 

虎杖をボヤき、壱子がアスクに尋ねる。その声にはわずかに不安が滲んでいた。

 

「そうだねぇ……」

 

アスクが顎に手を当て思案に暮れる。そこに手が挙がった。燈哉だ。

 

「要は一つ残らず消せばいいんだろ?」

 

燈哉がアスクに近づく。

 

「なら俺に策があるぜ!」

 

自信有り気に笑みを浮かべ、燈哉が言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

街の中。卓人が歩いている。

 

「ふふふ。見つけましたよ」

 

建物の上でアペヤキが不敵に笑いながら見下ろしている。

 

「さぁ、手柄を立てましょうか!」

 

羽を広げ、卓人へ狙いをつけて飛ぶ。炎を纏い手を伸ばす。

 

「させない!」

 

横から影が割り込む。セイレーンレジェスターが蹴りで攻撃した。

 

「何!?」

 

アペヤキが蹴りを受け止めながら驚きの声を上げる。彼女の攻撃を物ともせず忌々しげに睨みつける。

 

「邪魔を……するな!」

 

アペヤキがセイレーンレジェスターの腕を掴み、力を込める。

 

「く……!」

 

セイレーンレジェスターが苦悶の声を上げる。

 

「さぁ、燃え尽きなさい!」

 

アペヤキが炎を燃え上がらせた。たちまち炎がセイレーンレジェスターに届き、燃え上がらせる。

 

「くぁぁぁぁ!!!」

 

セイレーンレジェスターが苦悶の声で絶叫。

 

「何だ?」

 

卓人が空を見上げる。そこでアペヤキと炎に包まれたセイレーンレジェスターの姿を見つけた。

 

「!?」

 

瞬間、弾かれるように卓人は走り出した。

 

「死になさい」

 

手を離し、セイレーンレジェスターに回し蹴りを叩き込む。セイレーンレジェスターが吹き飛び地面に倒れる。

 

「うぇ……ぁ……グボォッ……!」

 

苦悶の声を上げ、吐血するセイレーンレジェスター。アペヤキが地上に降りてくる。

 

「おや? まだ生きてましたか、しぶといですね」

 

呆れたような声で嘲笑するアペヤキ。そこに卓人が駆けてくる。

 

「大丈夫か!」

 

セイレーンレジェスターを抱きかかえ、卓人が呼ぶ。

 

「何……で……?」

 

意識が朦朧としながらセイレーンレジェスターは聞き返す。

 

「言ったじゃないか。人々を守る為に戦うって」

 

その言葉にセイレーンレジェスターは息を呑む。

 

「ふははは! こいつは傑作ですね! そいつはレジェスターですよ?」

 

アペヤキが愉快げに笑う。しかし、卓人は毅然と答える。

 

「だからなんだ? 彼女は何度も僕を助けてくれた。それで十分だ」

 

その言葉にセイレーンレジェスターが弱々しい笑みを浮かべる。

 

(あぁ、やっと分かった……。こいつが気になっていた理由)

 

真っ直ぐなのだ。ひたすらに。

 

「ねぇ知ってる? レジェスターって基本的に性根がねじ曲がってるの」

「そんな話してる場合じゃないだろ!」

「だからね、羨ましいかった。自分の思うままに突き進もうとする貴方が」

 

セイレーンレジェスターが穏やかに微笑む。まるで遺言を告げるように。

 

「私のトロフィーを使いなさい……」

「えっ」

 

セイレーンレジェスターの体の中からトロフィーが現れる。セイレーンのレジェスタートロフィーだ。

 

「これは願いの塊。強く願えばその姿を変える。貴方なら変えられるはず」

 

震える手で卓人にトロフィーを渡す。そして、セイレーンレジェスターは卓人の腕の中で静かに動かなくなる。体が粒子となって消滅していく。

 

「さようなら……」

 

その言葉を最後にセイレーンレジェスターは完全に消滅した。卓人が無言で立ち上がる。前髪に隠れてその表情は伺えない。

 

「……」

 

トロフィーを強く握りしめると、それに呼応するようにトロフィーが姿を変えた。シルバーの台座の上に青い刃の剣が突き刺さったアームズトロフィーへと。

 

<ヒロイックドライバー!>

 

トロフィーを腰へと翳し、ドライバーが巻かれる。

 

<アロンダイト!>

 

トロフィーの上部を押し込み、起動。アペヤキを睨みつけ、卓人が宣言する。

 

「変身!」

 

卓人の前に青い刃の剣が突き刺さる。剣より溢れ出した水が卓人を包む。

 

<湖の騎士! 打ち砕け、強靭の刃!!>

 

水が青く分厚い鎧へと姿を変え、装着。背中には赤いマントがたなびく。

 

<アロンダイトセイバー!>

 

複眼が輝き、卓人はラウンダーへと変身した。

 

「僕の剣でお前を倒す」

 

突き刺さっていた強湖剣<アロンダイト>を引き抜き、切っ先をアペヤキへと向ける。

 

「ちっ。変身しましたか。ですが、付け焼き刃で私に適うわけがありませんね!」

 

アペヤキが炎を纏い、弾丸のように突っ込んでくる。

 

「ハァァ!」

 

燃え盛る拳がラウンダーへと迫る。しかし、ラウンダーは慌てる事無く、その手を左手で受け止める。

 

「何……!?」

 

アペヤキが驚きの声を上げる。見るとラウンダーの左手が水の膜に覆われ炎の威力を軽減していた。ラウンダーはアペヤキの拳を掴んだままアロンダイトで切り裂いた。

 

「ギャァァァァ!!!」

 

悲鳴を上げて後退るアペヤキ。ラウンダーは続け様に剣を振るう。

 

「ハァァ!!」

 

鈍い音と共にアペヤキが吹っ飛ぶ。壁に亀裂を入れながら叩きつけられる。

 

「そんな……馬鹿な……。私がこうも一方的に……」

 

顔を歪めながらも、アペヤキは立ち上がり、周囲を旋回。炎を纏って、ラウンダーへ突っ込もうとする。

 

「認めない……。認める訳にはいかない!!!」

 

だが、それを読んでいたかのようにアペヤキの前にアロンダイトが突き出された。

 

「ぐぁ!!」

 

顔面を斬り裂かれ、顔を押さえながら倒れ伏すアペヤキ。そこにラウンダーが静かに告げる。

 

「とどめだ」

<アロンダイト!>

<必殺神技!!>

 

ラウンダーが必殺技を起動する。剣先に水のエネルギーを纏う。ラウンダーは、剣を上段に構えてアペヤキへ迫る。

 

「こ、こんなところで……!」

 

必死に体を起こし、炎の翼を羽ばたこうとするがもう遅い。

 

「ハアァァァッ!!」

 

ラウンダーは勢いよくアロンダイトを振り下ろした。水の斬撃が炎の翼ごとアペヤキを切り裂き、地面へ叩きつけた。

 

「グゲェェ!!」

 

断末魔と共にアペヤキは大爆発を起こす。黒焦げになり、無残な姿となったアペヤキが消滅した。

 

「……」

 

変身を解除した卓人がゆっくりと空を見上げる。そこには変わらず曇天の空が広がっていた。

 

「ありがとう、セイレーンレジェスター。対龍連合は、僕が潰す」

 

トロフィーを握り締め、卓人は静かに呟いた。

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