タワーマンションを包みこんだ電光が晴れる。腕を組み、静かに立つアンズー。その視線の先にはアルスターとサマイクルを庇うように前に出て防御体勢を取っているアスクの姿があった。装甲の一部が雷で溶け、焼け焦げた臭いが漂っている。ぐらりとアスクの体勢が崩れるも、剣を床に突き刺し、片膝をつくことで倒れるのを回避。
「ぐっ……」
だがダメージは大きい。苦悶の声を上げ、仮面の奥で顔が歪む。
「仲間を庇ったか……」
アンズーが冷たく呟く。
「それは違うね。この二人は僕の駒だよ。まだ失うわけにはいかないだけさ」
アスクが顔だけを動かしてアンズーを見る。
「アスク。少し休んでろ!」
サマイクルが前に出る。クトネシリカを手にアンズーへと向かっていく。
「ここは私達が!」
アルスターも続く。サマイクルと共にアンズーへと攻撃。
「遅い」
アンズーは素早く回り込み、サマイクルへと回し蹴り。防御が間に合わず大きく後ろへと飛ばされる。
「ぐおっ……!」
マンションの柵を破壊し、サマイクルの体がマンションの外へと投げ出された。
「虎杖さん!?」
マンションから落下したサマイクルに焦りを募らせながらも、隙が生まれている。その隙を突き、アルスターがアンズーの背後から迫る。
「覚悟!」
背後からゲイボルグを突き下ろす。しかし、アンズーは体を即座に反転、左手で横から弾く。
「くっ……」
軽く弾かれただけでも、衝撃は十分。空中でバランスを崩れた。そこにアンズーのアッパーが炸裂。
「かはっ……!?」
アルスターの鳩尾に直撃し、体が宙に浮く。そのまま後ろへと倒れこむ。だが、床に落ちる衝撃はやってこない。アスクが背後からアルスターをキャッチ。その体を抱きかかえた。
「ワンちゃん、無事……?」
アスクがアルスターの体を支えながら起こす。
「あ、ありがとう……ございます……」
息も絶え絶えにアルスターが礼を言う。
「さて、どうする?」
アスクが顔を上げる。目の前にはアンズーが仁王立ちしていた。アルスターのダメージは大きい。サマイクルの無事は分からない。今まともに戦えるのはアスクだけだ。
「これは、まずいね」
冷や汗が頬を伝う。仮面の奥でアスクは自嘲気味に笑みを浮かべていた。
「なら次は俺達とやろうぜ」
アンズーが振り返る。タワーマンションの屋上の昇降口に燈哉と卓人が並んで立っていた。
「来たか。待ちわびたぞ、ファブニールを倒した者よ」
アンズーが口角を上げ、燈哉を見る。卓人は眼中に無いのか、その瞳には映っていない。
「っ……」
その事実に卓人は小さく歯噛みした。それを燈哉は見逃さなかった。
「一つ訂正させてもらう。ファブニールを倒したのは俺じゃない」
燈哉がトロフィーを手に、真剣な顔でアンズーを睨む。
「俺達だ! 行くぞ、卓人!!」
燈哉の言葉に一瞬目を見開き、口元に笑みを浮かべ、卓人は頷いた。
「あぁ! 行こう、燈哉!」
卓人もトロフィーを取り出し、同時に起動させる。
<ミカヅキムネチカ!>
<アロンダイト!>
「「変身!!」」
燈哉と卓人の前にミカヅキムネチカとアロンダイトが出現。光と水を纏い二人の姿が変わっていく。
<高潔!交錯!光明!光剣の戦士!!>
<ミカヅキライトニング!>
<湖の騎士!打ち砕け、強靭の刃!!>
<アロンダイトセイバー!>
二人の姿が完全に変わり、神器とラウンダーへと変身を果たした。ラウンダーがアロンダイトを突き出す。
「僕らの剣で!」
神器がそれに交差するようにミカヅキを重ねる。
「運命を斬り拓く!」
互いの剣を打ち合わせ、金属音が響く。それを合図に二人は駆け出した。
燈哉達とアンズーの戦いが始まった頃。とある山奥の崖の中に人工的に作られた洞窟。その前に足を踏み入れし人影――否、異形の影、六つ。額に天へと伸びし角を携えた者達。すなわち、オーガレジェスター。夜行衆の棟梁たる酒吞童子とその配下の鬼大五将。
「ここか……」
洞窟を見ながら酒吞童子が不敵に笑う。
「如何にもにございます! ここに棟梁の新たなる力が!」
茨木童子が声を上げる。酒吞童子は静かに頷く。
そして、鬼大五将を伴いながら洞窟へと足を踏み入れたのだった。
「ハアッ!」
同時に駆け出したがアンズーの元へ先にたどり着いたのは神器だ。光速移動でアンズーの懐へ潜り込み、ミカヅキを振るう。
「フン!」
アンズーが右腕で対応。光剣と雷爪がぶつかり、衝撃が響く。互いに拮抗する中、神器の脇を抜け、ラウンダーがアンズーへ迫る。
「セイッ!!」
アロンダイトが振り下ろされた。アンズーは素早く後退。攻撃を回避。だがそこへ神器が追撃に動く。さらに後退すれば次はラウンダーが。
「クッ……」
絶え間無く続くコンビネーションにアンズーが渋面を作る。二人の攻撃に耐え兼ねて翼を広げ、飛び上がった。
「燈哉!」
ラウンダーが叫ぶ。
「任せろ!」
<フェイルノート!>
<必殺神技!!>
神器がミカヅキにフェイルノートアームズトロフィーをセット。剣を振るい、無数の斬撃を放つ。
「そのような見え見えの攻撃が当たるものか」
アンズーが翼を動かし、全て避わす。だが。斬撃が空中で進路を変え舞い戻ってきた。
「何!?」
フェイルノートの必ず当たる特性を帯びた刃が四方八方から一つ残らず叩き込まれる。大きな音を立て、アンズーが墜落した。
「舐めるなよ!」
即座に立ち上がり、アンズーが雷撃を飛ばす。床を抉りながら電撃が迫りくる。
<オオデンタミツヨ!>
<オオデンタグランド!>
フォームを変えた神器がオオデンタを床に突き刺し、土の壁で防御。しかし、その壁はすぐさま砕かれた。アンズーの雷爪が壁を破壊しながら神器を攻撃。
「くっ!? がぁぁぁっ……!?!?」
咄嗟に剣で受け止めるも、流れる電気が神器の身体を駆け巡る。激しい痛みに襲われ、苦悶の声を上げる。
「燈哉!」
これ以上はやらせないとラウンダーが突っ込む。アンズーも自由の効く左手で迎撃。攻撃が胸を切り裂いたその瞬間。ラウンダーが水となって消える。そして、反対側から現れアロンダイトを振り下ろす。
水の刃がアンズーを捉えた。
「ぐおおっ!?」
アンズーが抑え仰け反った。
「今だ!!」
体勢を崩したアンズーへ、神器とラウンダーが駆ける。
<オオデンタミツヨ!>
<アロンダイト!>
<<必殺神技!!>>
剣が同時に振るわれる。斬撃が交差し、アンズーの胴を切り裂いた。アンズーが吹っ飛び、柵に叩きつけられる。
「がはっ……!」
口元から血が流れる。致命傷にアンズーが倒れ、身体を震わせた。
「よし!」
今にも消えそうなアンズーの姿に神器達が勝ちを確信する。だがそう問屋は卸さない。
「まだだ……」
よろめきながらアンズーが立ち上がる。その目は死んでいない。むしろ双眸は爛々と輝いている。
「吾輩は、こんなところで終わるわけにはいかないのだぁ!!!」
その時、異変が起きる。アンズーの言葉に呼応するように体が変化を引き起こした。
「なんだありゃ……!?」
「これは……」
二人が驚きの声を上げた。体躯が大きくなり、腕や足、背中に生えた翼までもが肥大化していく。見る見るうちにアンズーの体は神器達の三倍程の巨体でなった。
「グギャォォォォ!!!!!」
そして、アンズーの咆哮が街全体に響き渡った。