「あんたとの因縁、ここで断ち切る!!」
蒼と紅。二本の剣を携え、天華が駆ける。
「ちっ! あなた達、いきなさい」
妲己に操られたレジェスター達が行く手を阻む。だが。
「ハアッ!」
無数の矢がレジェスター達へ放たれた。フェイルノートを手にしたラウンダーが次々とレジェスター達を撃ち抜いていく。
「おらよっと!」
背後から天華へ飛びかかるレジェスターを神器が抑え込む。ムラマサで斬り伏せ、指一本触れさせない。その為、天華は難なく妲己の元へたどり着いた。
「覚悟しろ」
ドスの効いた声で天華が斬りかかる。妲己も双刀を取り出し応戦。激しい鍔迫り合いが始まる。右手に持った蒼い剣――<エンオウケン・蒼>と左手に持った紅い剣――<エンオウケン・紅>を同時に縦切り。勢いよく振り下ろす。
妲己はそれを双刀を交差させ受け止める。しかし、天華の攻撃は終わってない。すかさず右足で蹴りをかます。
「がっ!?」
後方へ仰け反った。そこへさらに追撃。両手を水平に薙ぎ払う。防御が間に合わず、妲己はより後ろへ下がる。
「あんたの能力のタネは知ってる。戦闘能力は私の方が上。負ける訳は無い」
形勢は徐々に天華に傾き、妲己を押していく。
「流石に数が多いね」
レジェスターの一体。タイガーレジェスター・トウコツの爪を躱しながらラウンダーが呟く。
「俺に手がある。卓人、こいつら一か所に集めてくれ!」
神器がラウンダーにドウジキリアームズトロフィーを投げ渡す。その意図を察したラウンダーは頷くと後方へ跳躍。一気に距離を取り、すかさずトロフィーをフェイルノートにセット。
<ドウジキリヤスツナ!>
<必殺神技!!>
風を纏った無数の矢がレジェスター達を巻き取り、一か所にまとめる。
「今だ!」
<オニマルクニツナ!>
<必殺神技!!>
ムラマサが炎を纏う。神器がそれを振り下ろし、レジェスター達が浄化の炎に飲み込まれた。
「これは……!?」
「俺達は一体!?」
炎が晴れ、レジェスター達が正気に戻った。そんな彼らの前に妲己が転がってくる。天華の一撃が妲己を吹き飛ばしたのだ。
「そうだ……俺達はこいつに!!」
妲己を見るなりレジェスター達が憎悪の顔で妲己を睨む。そして、
「やっちまえ!」
操られていたレジェスター達が次々と襲いかかる。
「なっ!?」
コントンの牙が、トウコツの爪が、キュウキの鎌が、トウテツの角が、他にも操られていたレジェスター達の攻撃が次々と妲己に命中していく。
「やっ!? 痛っ! やめなさい!!」
両手で防御するも多勢に無勢。妲己の体は着実に傷ついていく。
「やめなさいって言ってるでしょうが!!!」
狐火を作り出し暴発。彼女を取り囲んでいたレジェスター達が吹っ飛ぶ。
「このっ! あんた達、覚えてなさい」
狐火が妲己の体を包んでいく。
「まずい! 逃げるぞ!!」
神器が慌てて叫ぶ。妲己はこれで一安心とばかりに安堵の笑みを浮かべる。
「私のことを忘れないでください」
<ゲイボルグ!>
<必殺神技!!>
赤い閃光が突き抜ける。必中の槍が妲己を貫いた。
「ぎゃああああ!!!」
妲己が悲鳴をあげる。アルスターの一撃が決まる。だが逃亡は継続中。妲己が廃ホテルから姿を消した。
「逃げられた」
「まだよ!」
天華が外へ駆け出す。
「あいつは深手。あの傷ならそう遠くへは逃げられない。今日必ず仕留める!」
門出市の繁華街に悲鳴が上がる。逃亡を果たした妲己がその中心部へ転がり込んできた。街行く人々は突如現れた異形の怪人に慌てふためいていた。
「うるさいわね」
傷口を抑え、苛立たしげに人々を睨む。
「貴方達を利用してあげる。光栄に思いなさい」
妲己の瞳が赤く染まる。誰を操ってやろうかと吟味し始めたその背後から声がかかる。
「あれ? レジェスターじゃん。何でいるんだ?」
そこには偶々遭遇した壕人が立っていた。こんな街中に怪人態でいることに目が点になっている。
「まぁ、いいか」
<ナーゲルリング!>
「変身!」
気を取り直し、壕人はシズレクへ変身。立ち向かう。
「ちょうど良いわ。私の駒にしてあげる」
双刀を振り下ろす。シズレクはそれを回避。踊るように懐へ潜り込み、膝蹴り。
「ぎゃっ!!」
鳩尾に炸裂し、妲己が後退。
「このっ! 私を見ろ!!」
妲己が赤い瞳を向ける。風を切る音と共に妲己の左目から血が吹き出る。ナーゲルリングの一閃が切り裂いたのだ。
「ぎゃああああああ!!!」
妲己が左目を手で抑え悶絶。床をゴロゴロと転がる。
「わた、私の眼が!? ああああああ!!」
「よし! トドメといくか!!」
そんな事はシズレクに関係無い。ベルトを操作し必殺技の準備を始めた。
(ま、まずい!!)
妲己は再び狐火を出現させ、行方をくらました。
「ありゃ? 逃げられちゃった……」
シズレクが頭を掻く。
「とりあえず近くを探してみるか」
そして付近の路地裏へと足を進めるのだった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
息も絶え絶えに妲己はおぼつかない足取りで公園へと足を運んだ。
「ここなら……」
「ここなら安心だと思った?」
妲己の言葉を誰かが引き取る。顔を上げるとそこには天華が立っていた。
「!?」
慌てて振り返る。公園の出口には神器とラウンダーがそれぞれ退路を塞いでいる。周囲には他のレジェスター達も構えを取っている。逃げ場は無い。
「言ったでしょ。今日ここで終わらせるって」
エンオウケンの切っ先を妲己に向けながら天華が迫る。
「こ、このっ!!!」
妲己が双刀を手に駆ける。
「ハアッ!!」
だが。そんな破れかぶれの攻撃は通用しない。妲己の双刀は弾き飛ばされ、宙を舞って遠くに突き刺さる。彼女にもはや抵抗する術は無い。
天華はエンオウケンを地面に突き刺さす。そして、それぞれの柄にアームズトロフィーを差し込んだ。
<レイエンキョ!>
<ダボウ!>
<<必殺神技!!>>
二本の剣がエネルギーを纏う。天華の行動はまだ続く。今度はベルトのトロフィーを折りたたみ、再び展開。
<エンオウケン!>
<必殺奥義!!>
天華の足にエネルギーが集約していく。
「必殺技を三つ同時に!?」
燈哉が驚きの声をあげる。
「ハアアアッ!!!」
氷の刃と雷の刃が妲己を切り裂き、空高く打ち上げる。天華は高く跳躍し、妲己を追い越した。そして、二羽の鴛鴦と共に急降下。天華の両足が妲己の胴を捉えた。
「キャァァァッ!!」
悲鳴を上げ、妲己は地面へ勢いよく激突。ゴロゴロと転げまわり止まった。その体は粒子となって徐々に消え始める。
「そんな……私が、死ぬ……?!」
その事実に妲己は顔を青ざめ、周囲を見渡した。
「だ、誰か! 私を助けなさい!!」
「助けてくれたら何でもしてあげるわ! だから、早く!」
妲己の必死な声が響く。だが、誰も反応しない。その場の全員が目をそらし、そっぽを向いている。
「反応しなさいよ! ねぇ!」
「早く私を助けなさいよ!!!」
その言葉を最後に妲己は完全に消滅した。レジェスタートロフィーが芝生の上に音もなく落ちる。
「終わった……」
桃が変身を解く。その顔は晴れやかだ。
「さて、トロフィーを」
燈哉達が歩き出す。そこに人影が跳躍。アルスターがトロフィーの元へ一番に辿り着く。
「回収、完了」
トロフィーを拾い上げたアルスターの背後の空間が歪む。そこからアスクが姿を現した。
「アスク様、こちらを」
「ありがとう、ワンちゃん」
アルスターからトロフィーを受け取り、アスクはご満悦の表情だ。
「トーヤもありがとう」
「おう。こっちこそ助かった。ありがとな」
アスクの皮肉を躱し、燈哉が手を振って礼を言う。その言葉にアスクが一瞬目を見開き、肩をすくめ、自嘲気味に笑う。
「そうだった。君はそういう奴だったね……。ワンちゃん、帰るよ」
アスクはそう言うとアルスターを伴って歪みの中へ消えていった。
「さて、と。俺らも帰るか!」
燈哉の言葉を受け、全員が微笑みながら頷いたのだった。
「お主らはこれからどうする?」
戦いを終え、街灯の下に四体のレジェスターが集っていた。その内の一体。トウテツが問いかける。
「しばらくはゆっくりしたいもんだねぇ」
大きく伸びをしながらキュウキが答える。トウコツとコントンも賛同するように頷く。
「なら俺が休ませてやるよ」
どこからか声が響く。瞬間、四体の真ん中からシズレクが出現した。
「永遠にな」
<ナーゲルリング!>
<必殺神技!!>
エネルギーを纏った一閃が四体を薙ぐ。一瞬にして体が崩れ、四体が断末魔を上げる間もなく消滅した。レジェスタートロフィーがアスファルトに落ちる。シズレクがそのトロフィーを拾い上げる。そして変身を解き、近くに置いてあったずだ袋にトロフィーを放り込む。袋の中には大量のレジェスタートロフィーが入っていた。
「大量、大量♪ こりゃあ、俺の望みが果たされるのも近いかな~」
ずだ袋を肩に担ぎ、壕人は鼻歌を歌いながら闇の中に消えていった。
「皆、ごめんなさい」
キッチン大洗の店内にて桃が深々と頭を下げる。
「僕からもごめんなさい」
その隣で成都も頭を下げる。
「事情があったとはいえ、皆に刃を向けたのは到底許される事じゃない。だから本当にごめんなさい」
「気にしてねぇよ」
燈哉が腕を組みながら笑う。
「家族を人質に取られてたんだろ? 俺だって逆の立場なら同じ事をしてたかも知れない。だから俺は気にしてない」
「僕も同意見だよ」
卓人が微笑む。
「僕だって君の事情も知らず攻撃した事もあったし。むしろこっちこそ謝らせてほしい。ごめんなさい」
卓人が頭を下げた。
「二人共……」
桃が頭を上げ、二人を見る。そんな桃の前に紗耶が歩み出る。
「……良かった。無事で本当に良かったです」
目を潤ませながら紗耶が呟く。紗耶の表情に釣られ桃の目にも涙が溜まっていく。
「ごめんね。痛かったでしょ?」
桃が紗耶の頬に触れる。そこは以前妲己に脅され殴ってしまった箇所だった。
「大丈夫です。きっと美鶴城さんの方が痛かったと思うから」
紗耶が笑顔をつくる。その言葉を聞き、桃が紗耶を抱きしめる。
「ありがとう……紗耶」
「はい……桃さん」
二人の抱擁を見ながら、燈哉と卓人が笑い合う。
「一件落着だね」
「だな」
そんな彼らに成都が声をかける。
「お詫びと言ってはナンだけど。今日は腕によりをかけて振る舞うよ」
「うおっ! 持ってました!!」
燈哉が勢いよく椅子に座る。
「燈哉……」
「現金だね」
紗耶と卓人が苦笑しながら席に着く。三人はメニュー表を広げ、何するか相談を始める。成都は調理の為にキッチンへ消えた。
「ふふ」
口元を緩ませ、桃もキッチンへ歩いていく。
「皆。本当にありがとう」
入り口で振り返り、屈託の無い笑顔でそう呟いた。早朝のキッチン大洗に久しぶりの笑い声が聞こえたのだった。