仮面ライダー神器   作:puls9

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第三十二節 大和の神剣! いざ、尋常に!!

「待たせたな酒呑童子。リベンジマッチを始めようか!」

 

ビルの一角。その屋上で燈哉は不敵に笑う。相対するは酩酊の果てに暴走する酒呑童子・禍津。

 

「集え、五つの剣!」

 

燈哉の掌に五つのトロフィーが集約された。

 

<天下五剣!>

<刀剣集結!>

 

それをベルトにセット。燈哉が叫ぶ。

 

「変身!」

<火剣!水剣!風剣!光剣!土剣!天下五剣!!>

<ワールドファイブレード!>

 

神器へと姿を変え、燈哉は酒呑童子を見据える。逆に酒呑童子は冷めた目で神器を見ていた。

 

「何をするかと思えば。今さらその姿で我にかなうと思っているのか?」

 

失望したようにため息をつく。だが神器は動じない。

 

「だからこそだ。まずはこいつで一矢報いる。やられっぱなしじゃ性に合わないからな!」

 

トロフィーとベルトを連続で操作。

 

<オニマルクニツナ!>

<ジュズマルツネツグ!>

<ドウジキリヤスツナ!>

<ミカヅキムネチカ!>

<オオデンタミツヨ!>

 

神器の周りに五本の剣が突き刺さる。そして神器は右手にミカヅキを左手にはドウジキリを手に取った。

 

「新戦法を見せてやる!」

 

ドウジキリを振る。風が逆巻き、地面に突き刺さった三本の剣が宙に浮かぶ。それと同時に神器が駆け出す。光の速さで酒呑童子へと迫っていく。宙に浮かんだ三本の剣も風に乗って神器の後を追う。

 

「フンッ!!」

 

酒呑童子が先手を打つ。ムラサメが神器へ向けて振るわれた。神器はミカヅキを手放すと宙に浮かぶオオデンタを手に取り迎え撃つ。激しい衝撃とともに二本の剣がぶつかり合う。だが、やはり膂力は酒呑童子が上。徐々に押され始める。

 

「だからこうする!」

 

神器がドウジキリを振るった。風に操られジュズマルとミカヅキが上から酒呑童子目掛けて降っていく。

 

「ちっ」

 

それを後方に飛び退き回避。その隙を神器がつく。オオデンタを手放し、傍らを漂っていたオニマルを掴み振り下ろす。炎の斬撃が放たれ、一直線に向かっていく。

 

「スゥーッ、ハァッ!!」

 

酒呑童子が大きく息を吸い込み、酩酊の息吹を吐き出す。炎の斬撃と激突し、爆発とともに黒煙が立ち込める。酒呑童子は構えを解かぬまま目だけを動かし周囲を見渡す。その時、黒煙が揺らいだ。中から神器が飛び出してくる。

 

「!?」

 

意表を突かれ酒呑童子の動きがワンテンポ遅れた。その隙を逃さずオニマルとオオデンタを突き出した神器が酒呑童子をかち上げる。

 

<天下五剣!>

<必殺奥義!!>

 

すかさずベルトを操作。神器が跳躍。エネルギーが集約した足を突き出し、酒呑童子の胴を捉えた。

 

「うおおおりゃあああああ!!!」

 

屋上の柵を破壊し、酒呑童子がビルから落下。地面に叩きつけられ土煙が巻き上がる。それを見届けると神器がゆっくりと屋上へ着地した。

 

「よし。これで一矢報い――っ!?」

 

瞬間、禍々しい閃光が視界に奔る。耳をつんざくような轟音と共にビルが木っ端微塵に粉砕された。その衝撃で神器が屋上から投げ出された。慌ててドウジキリを手に取り、風を纏って空を飛ぶ。だがそれはあまりに迂闊。待ち構えたかのように斬撃が神器を襲った。

 

「ぐわぁっ!?」

 

斬撃に吹き飛ばされ神器が地面に激突。

 

「痛たたたっ」

 

腰を抑えて神器が立ち上がる。

 

「やってくれたなぁ、立脇燈哉ぁ!」

 

その前に酒呑童子が憤怒の形相で現れる。その体には軽微ながらも確かなダメージが入っていた。呼吸も少し荒い。だがそれでもこのままでは勝てない。神器はそう悟る。

 

「それじゃあ。こっからは真打ち登場だ。見せてやるよ、日の本最強の力を!」

 

そう言うと神器はトロフィーを取り出した。それは夢の中で手に入れたアームズトロフィーだった。ゴールドの台座の上に波打つようにうねる刃の剣が突き刺さったそのトロフィーを起動させる。

 

<クサナギノツルギ!>

 

その名を聞き、酒呑童子の目が見開かれる。そんな様子をよそに神器はトロフィーをベルトにセット。変身シークエンスに入る。

 

<霧雲!雨雲!入道雲!天叢雲の戦士!!>

 

目の前にうねる刃の剣が突き刺さる。剣から放たれた八つの雲が神器を包み込む。雲は白いアンダースーツに変わり、手首や足の関節の上に金色の輪がついている。そこに最低限の黒い挂甲が装着された。

 

<ツムカリブレード!>

 

すり鉢状の仮面の額に日輪の如き兜飾りが装着される。そして、複眼が青く輝いた。

 

「さぁ、第二ラウンド開始だ」

 

姿を変えた神器が目の前の剣――波神剣<クサナギ>を引き抜き、勇然と構える。

 

「洒落臭いぞ、立脇燈哉」

 

酒呑童子がムラサメを連続で振るう。無数の斬撃が放たれ神器に迫る。神器は慌てる事なくゆっくりとクサナギを持ち上げ、横薙ぎ一閃。その刹那、衝撃波が発生した。その威力は凄まじく、斬撃を消し飛ばし、酒呑童子を後退させ、そして遠く離れたラウンダー達と戦っていた夜行衆の一団を直撃。その一撃を諸に食らった鬼達が消滅した。

 

「何だこの威力は……」

 

酒呑童子が驚愕の表情を浮かべながら自らの手を見る。その手は心なしか震えていた。それはけして武者震い等の正の感情ではない。恐怖に慄く負の感情だ。

 

「我は強い。強くなったのだ!!」

 

それを認めまいと酒呑童子は神器へ駆ける。ムラサメを振り回し、斬りつける。しかし、自棄になった攻撃など通用しない。神器はそれを簡単に避わすとその背中へクサナギを振るった。重い一撃と共に酒呑童子が吹っ飛ぶ。

 

「おのれ……。力だ、もっと力をよこせぇぇぇ!!」

 

忌々しげな顔と汚れた体のまま立ち上がりムラサメを掲げる。酒呑童子の叫びに呼応するようにムラサメが妖しく輝く。禍々しい力が酒呑童子に流れ込み紫色の皮膚を徐々に赤黒く変え、体躯を肥大化させ目が血走ったように赤くなっていく。

 

「ガアァァァァ!!!」

 

咆哮を上げ、よりおぞましく。その様子に神器は動けずにいた。迂闊に動くわけにはいかず、思案に暮れる。その時、横を人影が通り抜けた。大剣を携えた茨木童子が酒呑童子の元へ駆けていく。

 

「棟梁ぉぉぉぉ!!!!!!」

 

茨木童子が勢いよく飛びかかる。酒呑童子が自らに迫る茨木童子を視認しムラサメを振るった。茨木童子の胴が斬られ、鮮血が舞う。だが茨木童子は止まらない。限界まで手を伸ばし酒呑童子の胸元へ手を突っ込む。

 

「うあああああああ!!!!!!」

 

そして渾身の力で引き抜く。茨木童子の手にはムラサメアームズトロフィーが握られていた。ムラサメの力が無くなり、酒呑童子の変化が止まる。赤黒かった皮膚は元の翡翠へと戻り、体躯も徐々に縮んでいく。

 

「そうりゃあ!!」

 

茨木童子は手の中のムラサメアームズトロフィーを遠くへと投げ飛ばす。

 

「はぁ……はぁ……」

 

今にも息絶えそうな呼吸のまま、茨木童子は酒呑童子を見る。

 

「なぁ、棟梁」

 

泣き出しそうな表情で茨木童子が言う。

 

「俺様は……俺様達はさ。棟梁が強かったから一緒にいたんじゃないんだ。棟梁といるのが楽しかったからいたんだ。だからたとえ棟梁が最強でなくても俺様達は失望なんてしない! 離れたりなんかしない! 負ける事に怯えてたなら俺様達を頼って欲しかったよ!!」

「いば……らき……」

 

酒呑童子は呆然とした顔で茨木童子を見つめる。

 

「俺様達がもっと強ければ頼ってもらえたのかな? なんて考えてもしょうがないかな……」

 

茨木童子は自分の胸に手を突っ込み、中からトロフィーを取り出した。それは自らの核となるレジェスタートロフィー。トロフィーを引き抜いた茨木童子の体は粒子となって消滅を始めた。

 

「あげるよ、俺様のトロフィー。ムラサメには劣るかもしれないけど。それでも俺様達は元の棟梁のまま強くなってほしい。元のかっこいい棟梁のままで最強になってほしい」

 

そう言うと茨木童子は破顔する。屈託のない満面の笑みで。酒呑童子の手に自らのトロフィーを乗せる。

 

「夜行衆は棟梁に惹かれて集まった集団。棟梁がいれば夜行衆は不滅。この危機を乗り越えてまたかっこいい所を見せてくれよ。俺様は地獄で見てるから。棟梁の勇姿を」

 

それが最後の言葉。茨木童子の体は崩れ、消滅した。

 

「……」

 

茨木童子のトロフィーを握りしめ、酒呑童子は立ち上がる。

 

「酒を飲んでも呑まれるなとはこの事よな」

 

自嘲気味に呟く。

 

「先に謝っておくぞ、立脇燈哉。これより我は貴様に八つ当たりをさせてもらう。我が愚行。貴様の首を取ることで清算とし、この戦いで散った同胞への手向けとする」

 

酒呑童子がレジェスタートロフィーを自らの胸に押し付ける。トロフィーが胸の中に取り込まれ、酒呑童子の体が新たに変化を始めた。禍々しかったかつての変化とは違う荘厳な金色の肌。体躯に変化は無いものの額に角が一本追加され、三つの角が雄々しく伸びている。

 

「我が名はオーガレジェスター・酒呑童子! 夜行衆を統べる鬼の棟梁! 貴様を討ち果たす者なり!!」

 

大剣の切っ先を神器へ向け、高らかに宣告する。

 

「俺は立脇燈哉! 仮面ライダー神器! お前を倒し、百鬼夜行を終わらせる!!」

 

酒呑童子に倣い、神器も叫ぶ。そして二人は獲物を構え、体勢を低くする。

 

「いざ!」

「尋常に!」

「「勝負!!」」

 

両者同時に駆ける。スピードを緩めぬまま一直線に。クサナギと大剣がぶつかり、周囲に衝撃が迸る。その威力に酒呑童子が仰け反るもすぐに体勢を立て直し一歩踏み込んで連続で斬りつける。

 

「よっと!」

 

咄嗟の判断で後ろに飛び退き攻撃を回避。今度は神器が仕掛ける。懐に飛び込み斬り上げる。

 

「くっ……。だが!」

 

酒呑童子は身を捩り剣を躱すと大剣で刺突。剣先が神器の左肩に触れる。装甲が火花散り神器は後退。左肩を押さえる。

 

「ちぃ……」

 

クサナギの力は神器の今までのどの形態よりも攻撃力が高く、軽装故に身軽だ。だが軽装故に防御力は心許無く、そう易易と攻撃を受けられない。

 

(まぁそれよりも……)

 

神器は改めて酒呑童子を見る。今の酒呑童子はムラサメの力を手にした時程のプレッシャーもオーラも無い。しかし、今の酒呑童子こそ一番の強敵だと、そう確信する。

 

「ふふふっ」

 

仮面の奥で口元に弧を描き、神器は笑った。

 

「不謹慎だけどさ。今すっげぇ楽しい」

「ほう」

 

酒呑童子も笑う。

 

「最初は文字通り手も足も出なかった。何だよ、酩酊の息吹って。ズルすぎるだろ」

 

仮面すら貫通するその威力の前に命からがら逃げるしかなかった初戦。

 

「ドウジキリを手にした時はいけると思ってたんだけどなぁ」

 

新たな力で挑んだリベンジマッチ。その力を持ってすら一矢報いる事しか出来なかった再戦。経験と実力の差を思い知らされた。

 

「ファブニール戦はまさかの共闘。一緒に戦ってくれて本当に心強かったよ」

 

神器は――燈哉は思う。あの戦いは間違いなく分岐点だった。誰一人欠けても勝ちは無かったし、自分だけの勝利じゃない。そして世界の運命が変わる戦いでもあった。

 

「そんで今。なんの後腐れも無く戦えてる。茨木童子に感謝だな」

「まったくだ。あやつには感謝の念が絶えん」

 

ムラサメの力に溺れ暴走した酒呑童子。その力に一度屈しはしたもののクサナギを携え、今ぶつかっている。

 

「そろそろ決着をつけようぜ」

「望むところよ」

<クサナギノツルギ!>

<必殺奥義!!>

 

ベルトを操作し、エネルギーが足に集う。剣を持ったまま勢いよく飛び上がり、足を突き出した。そして真っ直ぐに酒呑童子へ向かっていく。

 

「鬼刀・酒銘刃!!」

 

大剣に酩酊の息吹を纏わせ神器を迎え撃つ。両者の技が激突。

 

「はああああああ!!!!!!」

「うおおおおおお!!!!!!」

 

互いに雄叫びを上げせめぎ合う。高い攻撃力のツムカリブレードに対し酒呑童子が意地を見せる。両者互角のまま後方へ吹っ飛んだ。

 

(着地を決めた後すぐさま攻撃へ転ずる! この勝負絶対に負けられぬ!!)

 

酒呑童子が歯を食いしばりながら次の攻撃への構想を立てる。それが明暗を分けた。

 

<ドウジキリヤスツナ!>

<必殺神技!!>

「何!?」

 

神器が体をよじりながらクサナギにトロフィーをセット。剣を振るう体勢へと移る。地面に激突まであとわずか。だが、神器は着地の事など一切考えていない。

 

「いっけぇぇぇぇ!!!!!!」

 

渾身の力を込めてフルスイング。衝撃波が一陣の風となって酒呑童子へと向かう。

 

(酩酊の……息吹!!!!!!)

 

それを阻まんと酒呑童子が酩酊の息吹を吐き出した。しかし、クサナギの威力にドウジキリの力が合わさった今、酩酊の息吹は無力だった。その斬撃は酩酊の息吹を掻き消し酒呑童子の首を斬り裂いた。酒呑童子の首がはね跳び、重力に伴って落ちていく。

 

(ここまでか……。約束を果たせない、愚かな棟梁ですまぬ)

 

酒呑童子が薄く笑う。

 

(あぁ……願わくば。願わくばもう一度だけ皆と酒を呑み交わしたかったなぁ――)

 

酒呑童子が粒子となって消滅。二つのレジェスタートロフィーは地面を転がり、寄り添うようにして止まった。

 

「ぐえっ!」

 

地面に大の字で倒れ、神器は変身を解除する。

 

「終わった……。俺の勝ちだ」

 

右手を上へ伸ばし、掌から拳へ変える。

 

「おーい!」

 

声が聞こえ、燈哉が首を動かす。視線の先には戦いを終えた卓人と桃がこちらへ駆けてきている。それを見て燈哉は笑った。

 

 

 

 

 

「酒呑童子が死に、これで邪魔なレジェスターはあらかた片付いた。後は君くらいかな? 面倒なのは」

 

遠くでムラサメアームズトロフィーを拾い上げながらアスクが言う。目だけを動かし片隅を睨みつける。

 

「初めましてだね。遥か昔からの先達、始まりの君。ヒューマンレジェスター・アスク」

 

物陰からマーリンが姿を現す。飄々としているが杖を握る手には汗が滲んでおり、緊張しているのが見て取れる。

 

「その挑発受けて立とうか?」

 

アスクがトロフィーを取り出す。

 

「いや、やめてほしい所かな。私では君に勝てないからね」

 

両手を上げてマーリンは戦う意思は無い事を示す。

 

「とは言え君の願いを叶えさせる訳にはいかない。彼らと共に阻ませてもらうよ」

 

マーリンが視線を遠くに向ける。そこでは燈哉達が喜びを分かち合っていた。

 

「いいや。必ずこの願いは叶える。何があろうと世界は僕が滅ぼす。いずれ君も倒す。それまで首を洗って待っていろ」

 

そう言ってアスクは歩き出す。マーリンも魔法陣を発生させ、その姿を消した。

これにて百鬼夜行は終結。街は平穏を取り戻したのだった。

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