空港に飛行機が着陸する。キャリーケースを引きながら現れたの中肉中背の男性だった。彼は空港を出て、空を見上げる。
「久方ぶりの日本か……」
そう呟く男性の携帯が鳴る。
「私だ」
携帯を取り出して通話する。
「そうか。ならば一度合流しよう」
そう言って通話を切り、携帯電話を仕舞う。
「さて……始めようか、我々の戦いを」
男性はそう呟くと人混みの中へと消えていった。
それは五年前の話。
潟永虎杖の父親は犯罪者である。門出市郊外の金嶋大橋崩落事故。これが全ての始りだった。後に警察の調査にて虎杖の父が務める建設工事の整備に不備があったとして業務上過失致死罪が適応された。工事の総責任者であった父は当然の如く法により裁かれ、有罪となり拘留された。
ここで終わってくれればどれだけ良かっただろうか。潟永虎杖は思い知る事となる。犯罪者の子は犯罪者。正義の味方は悪を根絶やしにせんと迫るのだと。
最初に電話が鳴った。深夜零時にしつこく鳴った。睡眠を邪魔された虎杖は眠い目をこすりながら受話器を取る。
「はい。潟永です」
「死ね」
そう一言を残して電話が切れた。その日は得も言われぬ恐怖を感じ、一睡も出来なかった。それからその電話は毎日続き、いつしか電話の線はコンセントから抜かれる事になった。
続いて家に落書きがされていた。犯罪者の家。地獄に落ちろ。見るも憚るような罵詈雑言がスプレーで書き殴られていた。幸い自分や家族に被害はなかったが、顔も知らぬ人間がどこからか悪意を持って覗いでいるかも知れない。そう考えると恐ろしくなり、遠くの安アパートに引っ越す運びになった。この頃には母が精神的に追い詰められ、徐々にやつれていった。
そして、損害賠償や引っ越しにより嵩んだ金銭。生活は日々困窮していく。
それでも頑張れたのは彼にはまだ希望があったからだ。それは最愛の妹の存在だ。
「大丈夫?」
目に入れても痛くないほど可愛い妹が心配してくれている。心配させないよう笑って見せるも、笑顔を模る事で精一杯だ。自分が弱ってはいけない。高校を中退しバイトに励んだ。犯罪者の家族と言うことで中々採用されなかったが、なんとか内定を貰った。
「こんにちは。昨日引っ越してきました。今日からよろしくお願いします」
バイトに向かおうと玄関を出た所で話しかけられた。相手は中性的な白髪の青年。その傍らには夏だというのに長袖長ズボンの少女がいる。見るからに訳ありだがそれはこっちも同じ。深くは詮索せず、軽く会釈をしてバイトへ向かう。
そして、その日の夜。妹の様子がおかしかった。
「どうしたんだ?」
「……ううん。なんでもないよ」
と、曖昧に笑って自室に籠もった。どうにも嫌な予感がした。それは翌日に現実となる。目を覚まし、居間に向かうと妹が首を吊っていた。テーブルに遺書が置かれている。遺書には虎杖の知らない彼女の現実が書かれていた。学校でいじめにあっている事。心配をかけたくなくてそれを隠していた事。そして我慢の限界が来てしまった事。遺書には謝罪の言葉と涙の跡があった。
「あ。あ、ああ……」
虎杖が力無く崩れ落ちる。手に力が籠り、持っていた遺書がぐしゃぐしゃになる。
「あああああああ!!!」
内から湧き上がる衝動の元、虎杖は絶叫した。その時、電子音が鳴る。妹の携帯にメールが届いた。
差出人には番藤健一と表示されている。内容は、今日も躾けてやる。いつもの河川敷に来い。逃げたら恥ずかしい写真をネットにばら撒くぞ。そう書かれていた。虎杖は直感する。この差出人こそが元凶であると。怒りで目の前が真っ赤になる。気が付くと虎杖は河川敷に来ていた。手には包丁が握られている。
「お前らか。妹をいじめてたってのは?」
河川敷にいた学生服の集団に声を掛ける。
「あ? 誰っすか、あんた?」
「お前らに散々世話になった妹の兄だよ」
虎杖が集団を睨み付ける。すると集団のリーダー格らしき男が前に出てくる。
「あぁ。あいつのお兄さんですか。あいつはどうしたんです?」
「亡くなったよ。お前らのせいでな!!」
虎杖がリーダー格の男の胸ぐらを掴む。
「なんでこんな事をした! 答えろ!!」
「何でって。怖くないですか? 自分の教室に犯罪者の子供がいるの」
男が悪びれる様子もなく答える。嘲るようにいた嗤いながら。
「犯罪者の血を継いでるやつがいつ俺達に危害を加えるかって考えると恐怖を感じて〜。だったらこっちで犯罪を起こさないように躾けてやろうって決めたんですよ〜。なぁ!」
男の言葉に集団のメンバーも陽気な声で同意する。その結果、妹は首を吊った。だからこそ虎杖は笑えない。
「なんで……なんでそこまでするだよ! どうして!?」
虎杖は悲痛な声で訴える。
「正義だからですよ」
「え」
「犯罪者の子は犯罪者。でも善良な俺達はそれを見捨てる事は出来ない。だから教育する。俺達、間違った事はしてませんよね?」
「お前っ!!」
怒りに任せ包丁を振り上げる。すると、背後から衝撃を受ける。その拍子に包丁が手からこぼれ落ちる。振り返るといつの間にか後ろにまわっていた集団の一人が蹴りをいれたのだ。その隙に他のメンバーが手足を拘束。虎杖はまたたく間に制圧されてしまった。
「番藤、こいつどうする?」
「うーん。そうだな〜。あっ! 良い事思いついた」
リーダー格の男、番藤健一がしゃがみ込み、虎杖に目線を合わす。ニタニタと下卑た笑いを浮かべている。
「亡くなった妹ちゃんに代わってお兄さんを躾る事にしましょうか」
「おっ。良いね、それ!」
「やろう!やろう!」
健一の言葉に他のメンバーが賛同する。
「それじゃあ、皆でこいつに自分の立場をわからせるぞ! おーっ!!」
集団は意気込むと次々と虎杖を痛めつけていく。顔や腹に拳や蹴りが叩き込まれていく。
「あはははは! あははは!!」
周囲に健一の笑い声が響き渡る。端正な顔に最高に悪い笑みが浮かんでいる。周囲のメンバーも酷薄な笑みを浮かべ、暴行を加えて行く。その時、携帯の着信音が鳴った。
「やべ、弟からだ!」
健一が携帯を取り出した。
「悪いけど、そっちで進めて」
そう言うと少し離れた場所へ小走りで駆ける。それを他のメンバーは苦笑しながら見送った。
「相変わらずブラコンだよな」
「わかる!」
彼らは談笑しながらも虎杖を痛めつける事は忘れない。身体に傷跡が増えていく。
「くそっ!」
絶え絶えになった意識の中、絞り出すように呟く。彼らの顔を見るだけで怒りで心が狂いそうになる。そんな虎杖の首根っこが突如掴まれ、後ろに引っ張られた。
「!?」
尻もちをつき見上げると傍らに白髪の青年が立っていた。
「へぇ〜。随分面白い事をしているみたいだね」
青年はどこか底冷えするような声で言った。
「なんだてめーは? こいつの知り合いか?」
メンバーの一人が青年に問いかける。
「いや。ただ同じアパートのお隣さんだよ」
青年が飄々と答える。
「何、邪魔してくれてんの? お前も躾けられてえのか! ああっ!」
メンバーの一人が拳を振り上げる。青年はそれを軽々受け止めると捻り上げた。
「がっ」
「躾けられるのはどっちだろうね?」
青年が冷めた口調で言った。他のメンバーは突然の事に動けないでいた。
「さて、潟永虎杖くん。君はどうしたい?」
「え?」
青年が虎杖の元へ行くと手を差し出す。その掌にはトロフィーが握られている。
「もし君が僕の手を取るというのなら、世界を滅ぼす機会をあげる」
「世界を……滅ぼす……」
「そう。僕はこの世界が大嫌いなんだ。弱者を踏みにじり、善人が損をする。悲しみと苦しみが連鎖して憎しみとなるこの世界が。君はどうだい?」
「俺は……」
虎杖は青年の手を、その中にあるトロフィーを見つめる。
「……妹を殺されたんだ」
虎杖が小さく呟く。
「どうして助けてやれなかったんだろうって後悔してる。もっと早くに気づけてたらよかったのに……」
そこで言葉を区切る。
「それと同じくらい、どうして誰も助けてはくれないんだとも思った。確かに俺の親父は犯罪者で遺族から非難を受けるのは当然だ。でも!」
虎杖が顔を上げ、青年の顔を見上げた。その目は怒りに燃えていた。
「でも! だからって妹が死ぬ必要なんて無かった!母さんが精神を病む必要も!絶対に、絶対になかった!」
虎杖は心からの叫びを木霊させる。
「俺はこの世界を許さない。異変に気付けなかった自分も。家族に害意を与えたそいつらも。知らん顔で日常を謳歌する人間達も」
虎杖が青年の手からトロフィーを奪うように手に取った。瞬間。使い方のビジョンが脳内に流れ込む。
「俺はこの世界を滅ぼす」
そしてトロフィーを起動させる。
<クトネシリカ!>
クトネシリカアームズトロフィーをドライバーにセット。
「変……身」
<霊威の宝剣!! ロンヌ! ロンヌ! ロンヌ!>
<クトネシリカカムイ!>
その姿を仮面の戦士、仮面ライダーサマイクルへと変え、クトネシリカを手に虎杖は構えた。
「手始めにお前達から始末する」
クトネシリカを構え、虎杖は宣言する。
「ひっ」
集団が後退る。
「死ね!」
サマイクルがクトネシリカを振り下ろす。横薙ぎに振るわれた刃が集団の一人の首を刎ねる。
「ひ、ひゃああああ!!」
恐怖に耐えきれず、残りのメンバーが逃げ出した。
「何だ!?」
その喧騒に遠くで電話をしていた健一が気付き顔を上げる。
「逃がすか!」
クトネシリカから斬撃を飛ばし集団のメンバーを次々と斬り捨てていく。
「畜生!」
『どうしたの、兄さん?』
通話相手の声を無視して、健一は携帯を持ったまま逃げ出そうとする。
「そうはいかない」
サマイクルが跳躍。健一の前に回り込む。
「ひぃっ!」
健一が腰を抜かし、尻もちをついた。
『兄さん! 兄さん!』
電話から声が聞こえる。だが相対する二人にその声は届いていない。
「やめろ!やめろよ、この犯罪者!!」
健一が後退り、吠える。その顔には恐怖の色が滲んでいる。
「その息子だからな。お望み通り悪になってやるよ」
<クトネシリカ!>
<必殺神技!!>
クトネシリカにエネルギーが集約される。サマイクルがゆっくりと剣を振り上げる。
「潟永ァ!!」
斬撃が健一を飲み込む。断末魔を上げ、その身体は跡形もなく消滅した。
『兄さん? 兄さん!』
未だ叫ぶ電話をサマイクルが踏み潰す。携帯は粉々に砕け散った。
「お疲れ。良い初陣だったよ」
青年が拍手しながら寄ってくる。サマイクルが変身を解除した。
「改めて自己紹介をさせてもらおう。僕はアスク。君と同じ志を持つ者さ。よろしくね」
アスクが手を差し伸べる。虎杖はアスクを見る。その目には強い意志が宿っている。アスクに嘘が無い事を確信した虎杖は手を伸ばす。
「あぁ、よろしくな」
虎杖がアスクの手を取った。
その日、その街で三つの事件が起こった。一つ目は市内の高校生グループが惨殺された事件。二つ目は獄中で刑期を待っていた潟永被告が首を切られ殺された事件。そして、三つ目は被告の家族の内、一人が首を吊って、もう一人が刃物で刺された殺人事件。なお、その一家の長男がその日を境に失踪。依然として行方不明となっている。
そして現在。
「お前だけは絶対に許さない!!!」
路地裏の奥。廃工場の外でサマイクルと番藤健二――ウェアウルフレジェスター・オルトロスが対峙している。
「あっそ。殺れるものなら殺ってみろ」
サマイクルがオルトロスへと近づいていく。クトネシリカを振り上げた。
「殺してやる!」
オルトロスが双頭の顔で吠え、右手を発火させて応戦。刃と炎が激突する。
「まずい!!」
<カリバーン!>
<ムラマサ!>
<レイエンキョ!>
卓人を筆頭に燈哉達はトロフィーを取り出し変身。両者の間に割って入る。
「「邪魔をするな!!」」
声を揃え、サマイクルはラウンダーを、オルトロスは神器と天華を攻撃。それぞれが武器でその攻撃を受け止めた。
ラウンダーはサマイクルと激しい鍔迫り合いを繰り広げる。そんな中、ラウンダーが口を開く。
「君の過去を調べさせてもらった」
「……」
その言葉にサマイクルの動きが止まる。クトネシリカを肩に担ぎ、ラウンダーを睥睨。
「そうかよ。で? だからなんだ?」
「君が世界を嫌う理由は分かった。でも、だからこそ、もうやめるべきだ。世界を滅ぼして何になる?」
「すっきりするよ」
「何……!?」
嗤うサマイクルに対し、ラウンダーは困惑する。
「温室育ちは良いな。無駄に優しくて、羨ましいよ」
肩を竦め、サマイクルが馬鹿にしたようなリアクションを取る。
「お前達のその耳障りの良い言葉が俺の家族を救ってくれたか? 違うだろ? あの日から俺達は世界の敵になった」
「っ……。でもこんな事は君の家族だって望んで無いはずだ」
「俺が望んでんだよ!」
怒気を孕んだ声でサマイクルが肩を震わせる。
「死んだ奴の事を紙でしか知らないやつが代弁するな。ここでやめれば妹は帰ってくるのか? 俺はまた家族と仲良く幸せに暮らせるのか?」
「それは……」
ラウンダーは言葉に詰まる。その隙にサマイクルがラウンダーへ迫った。
「くっ!?」
「無理だろ? お前ら正義の味方に出来るのは悪を根絶やしにする事だけ。その過程で悪がどれだけ苦しもうが、悲しもうが、傷付こうが、自分達が正しければそれで良いもんなぁ!」
動揺するラウンダーへサマイクルがクトネシリカを叩きつける。押し切られる形で後退し地面へ片膝をついた。
「俺はあの日からこの世界がが大嫌いだ。
切っ先を突きつけ、サマイクルがラウンダーを見下ろす。その傍らで神器と天華がオルトロスと戦っていた。
「もうやめろ。元はと言えばお前の兄貴が原因じゃねえが!」
「うるさい、黙れ! 兄さんがそんな事をするわけ無いだろ! 嘘をつくな!!」
オルトロスが大きく息を吸い込むと双頭の口から炎を吹き出す。
「ちっ」
神器の襟首を引っ張りながら天華が避わす。
「無駄よ、立脇。あいつの兄貴、どう見繕っても典型的な身内に甘いタイプよ。それを享受してた奴が自分に不都合な事を信じるわけないでしょ」
「そりゃそうだけど……」
天華の言葉に神器が言葉を詰まらせる。
「とりあえずボコボコにして大人しくさせるわよ」
神器は天華の言葉に若干引きつつも頷き、再びオルトロスとのぶつかるべく足を踏み出した。その時、一本の槍が飛んできて行く手を遮る。
「もう昼時だけど、朝食はどうなったのかな?」
軽口を叩きながら現れたのは、アスクとアルスター。
「悪かったな。トロフィー集めに手間取っちまってよ。手早く終わらせたいから手伝ってくれ」
サマイクルがラウンダーとぶつかりながら言う。
「ふふふ。いいよ」
アスクはそう言うと神器に迫る。アルスターも天華にゲイボルグを振るっていた。
「くっそ! 面倒な時に来やがって!!」
神器は攻撃を躱すとクサナギアームズトロフィーを取り出す。
「そうはさせないよ」
<フォックスレジェスター・妲己!>
<コンバイン!!>
アスクがレジェストライザーにトロフィーをセット。狐の耳が付いたバイザー付のヘルメットがアスクに装着される。
「妲己!? 立脇、目を合わせるな!!」
アルスターを抑えながら天華が叫ぶも時すでに遅し。バイザーが妖しく点滅し、神器の視界がそれを捉えてしまった。瞬間、神器の視界がモザイクで覆われる。
「なんだこれ!? 前が見えない!!」
周囲を見渡すも全部がモザイク掛かっていて、足元すら覚束ない。オニマルならば打開出来るかもだが、視界が悪くてフォームチェンジもままならず立ち尽くしていた。
「しばらくそこで立ち尽くしてるといいよ」
アスクはそう言うと、今度はサマイクルとラウンダーの間に入る。グラムでラウンダーに斬りかかった。
「コジョー。決着つけてきなよ」
「わかった」
アスクに促され、サマイクルがオルトロスへと向かった。
「そんなわけで、君の相手は僕。またトロフィーを奪ってあげようか?」
「悪いけど以前のようにはいかない」
<アロンダイト!>
ラウンダーがフォームチェンジ。アロンダイトセイバーへと姿を変える。次の瞬間、アロンダイトとグラムが激突した。
「力じゃあ僕には及ばないよ!」
アスクがグラムで押していく。徐々に後退するラウンダー。
「ふっ……」
ラウンダーが仮面の奥で笑う。するとアロンダイトを引っ込め、空を切るグラムへドロップキック。
「!?」
その勢いに弾かれ、ラウンダーは一直線に跳躍。神器の近くに着地した。
「言っただろう? 以前のようにはいかないって」
<オニマルクニツナ!>
神器のベルトホルダーからからオニマルアームズトロフィーをひったくるとアロンダイトに装填。
<必殺神技!!>
炎の刃で神器を斬った。たちまち神器の視界がクリアになっていく。
「うおお〜。見える! サンキュー、卓人!!」
「どういたしまして」
神器の言葉にラウンダーが返す。神器の復活に伴い、これで形勢逆転。
「へぇ、やるじゃん。けど、」
アスクが左に顔を向ける。
「向こうも終わりそうだよ?」
その言葉に燈哉達もアスクの視線の先へと顔を向けた。
「くたばれ! 兄さんの仇!!」
オルトロスが炎を吐き出す。対するサマイクルはクトネシリカを操作。
「勝手に言ってろ」
<夏熊!>
<召喚!!>
エネルギー状の熊を召喚し、盾代わりにする。
「なっ!?」
炎は熊を焼くが、その後ろのサマイクルには届かない。すかさずクトネシリカを再び操作する。今度は龍のレリーフへ。
<雷神の龍!>
<召喚!!>
雷の龍がクトネシリカより召喚され、オルトロスに噛みついた。
「がああああ!!!」
オルトロスが絶叫。その隙をついてサマイクルがベルトを操作。
<クトネシリカ!>
<必殺奥義!!>
エネルギーがサマイクルの足へと集約されていく。
「お前が何を思おうがどうでもいい。俺にとっちゃぁ終わった事だ。俺に今必要なのはトロフィーを集める事」
サマイクルが高く跳躍。空中で一回転すると足を突き出した。そのまま一直線にオルトロスの元へ降下していく。
「あいつらと一緒に世界を滅ぼす事だ!!」
オルトロスが腕を伸ばすも、サマイクルのキックの方が一足早かった。必殺の一撃を受けて、オルトロスが断末魔を上げる。
「っぐああ!! あ……、ごめ……にい……さ……」
オルトロスが粒子となって消滅していく。
サマイクルは地面に降り立つとトロフィーを回収する。彼の元にアスクとアルスターが集結する。
「さて。今日はここまでにしておこうか」
そう言うと、アスクが未完の杯を掲げ、空間に穴を開けた。
「待て!」
卓人の制止を無視して彼らは穴の中へと消えていった。廃工場に燈哉達だけが取り残された。
「ふんふふ〜ん」
鼻歌を歌いながらアスクが廊下を歩く。鼻歌の通り、表情はご満悦のようだ。
「随分と機嫌が良いな。何かあったか?」
その様子が気になり、虎杖が問いかける。
「突然だけど問題。今僕達が持っているトロフィーは約四割、トーヤ達が持っているトロフィーがおよそ二割。では、残りのトロフィーは誰が持っているでしょうか?」
自分達が四割で燈哉達が二割なら残るは四割。そして、それを持っている者。対龍連合の際に出会ったあの仮面ライダーが脳裏に浮かぶ。だが、それでも四割を持っているようには見えない。とするならば。
「も、もしかして!?」
「そういう事か……」
壱子と虎杖が同時に答えにたどり着く。
「現れたんだな。残るトロフィーを持ってるやつが」
「その通り。つい先程、ここに到着した。つまり今、全てのトロフィーは門出市にある!」
石畳の部屋に着いたアスクが両手を広げ、歓喜を露わにする。
「というわけで二人共。ここからが正念場。気を引き締めていこう」
アスクの言葉に二人は神妙に頷いた。
「くっそ!!」
帰り道で燈哉が悪態をついていた。戦いを止めるどころかオルトロスを死なせる結果となってしまった事に後味の悪さを感じていた。
「今回ばかりは仕方ないわよ」
桃がそうフォローを入れる。その脇で卓人が掌を見つめながら終始無言だ。
「大丈夫か、卓人?」
燈哉が声をかけた。
「いや、全然。……彼に、潟永虎杖に響くような言葉を言えなかった。むしろ言い負けてしまったよ」
卓人が悔しげに笑う。
「でも、諦めないんだろ?」
「勿論さ」
不敵に笑う燈哉を見つめ返し、卓人は頷いた。
「あっ! 仮面ライダーの皆さん」
そこに声がかかる。声の方を見るとそこには岡持ちを手にしたカッパレジェスターの人間態がいた。
「お久しぶりです」
「おう、久しぶり。元気にしてたか?」
燈哉が片手を上げ、明るく声をかけた。
「へい、この通りです!」
カッパレジェスターはそう答えると、満面の笑みを浮かべた。
「せっかくの再会の所悪いんですが。まだ仕事が残っているので」
そう言うとカッパレジェスターは頭を下げ、走り出した。
「いや、大丈夫。仕事頑張れよ!」
燈哉が大きな声で手を振るとカッパレジェスターもまた手を振って応えた。
「さて、俺たちも行くか!」
「そうだね」
「そうしましょう」
卓人と桃も燈哉に続いて歩き出した。その直後、カッパレジェスターの前に人影が立ちはだかっていた。それは厳格そうな眼鏡をかけた青年だった。
「レジェスターだな?」
その眼鏡の青年に問われ、カッパレジェスターは驚いたように目を見開く。
「な、なんでそれを……」
「調べはついている。申し訳ないが、死んでもらう」
<ガーンデーヴァ!>
眼鏡の青年がトロフィーを取り出した。それは金の台座の上に炎を燻らせる弓が乗ったアームズトロフィー。眼鏡の青年がトロフィーを起動させる。その音声を遠くから耳にした燈哉達が振り返る。
「変身」
眼鏡の青年がトロフィーをベルトにセット。ボタンを押すと、トロフィー横のプレートが展開。顔の付いた部分が露わになった。
<炎の神弓!! サット!サット!サット!>
青年の前に白い弓が出現。そこから揺蕩う炎が青年に纏わりつき銀色のチャール・アイナの装甲へ変わった。
<ガーンデーヴァブラスト!>
最後に炎を模した仮面が頭部に装着され、複眼が黄色に輝いた。
「俺の名は仮面ライダーアヴァターラ。貴様の命、焼き払わせてもらう」
突如現れた仮面ライダーに燈哉達は驚愕し、目を見開いたのだった。