仮面ライダー神器   作:puls9

37 / 46
第三十七節 盾の英雄、杯を求めて

「俺の名は仮面ライダーアヴァターラ。その命、貰い受ける」

 

銀色の装甲纏いし仮面ライダーが厳かに言う。

 

「くっ……」

 

カッパレジェスターが怪人態へと変わり、先手必勝とばかりに鉤爪で攻撃。

しかし、アヴァターラは手前の弓、<白炎弓ガーンデーヴァ>を掴むとフレーム部分に取り付けられた刃でそれを捌く。そしてそのまま、カッパレジェスターの胴を切り払った。

 

「がはっ!」

直撃を受けたカッパレジェスターが火花を散らして膝をつく。

 

<ガーンデーヴァ!>

<必殺神技!!>

 

アヴァターラがガーンデーヴァで狙いを定める。エネルギーが収束し炎を纏った矢が放たれた。

 

「いぎゃぁぁぁぁ!!」

 

矢はカッパレジェスターの鳩尾を貫いた。カッパレジェスターが吹っ飛ぶ。

 

「おい! しっかりしろ!!」

 

その様子を見た燈哉達がカッパレジェスターの元へと駆けつけた。だが、彼の身体は徐々に粒子となり空に還っていく。

 

「申し訳……ありません。頼み事をしても良いです……かい?」

 

苦しみながらたどたどしくカッパレジェスターが力無い笑顔を見せる。

 

「店の方々にお伝え下さい。あっしは旅に出たって。突然の事ですいませんって……」

「何言ってんだよ!?」

「お願い……します」

 

その言葉を最後にカッパレジェスターが消滅した。床にトロフィーが転がる。

 

「すまないが、そのトロフィーを渡していただこう」

 

アヴァターラが変身を解除して手を差し出した。対照的に燈哉の顔が険しくなり、拳を強く握りしめた。

 

「ふざけんな!!」

 

立ち上がり、勢いをつけて殴りかかる。だが、その拳は届かなかった。横から現れた手がそれを受け止めたからだ。

 

「血気盛んだね~」

 

受け止めたのは羽渡豪人。好戦的な笑みで燈哉達を見ている。

 

「豪人、口元が緩んでいるぞ。気をつけろ」

「おっといけね! 気をつけるよ、白正(しろまさ)

 

豪人は逆の手で両側の頬を触り、口を元に戻す。白正と呼ばれた青年が呆れ顔で眼鏡の位置を直している。

 

「何でこんな事をした? あいつは確かに一度悪い事をした。けど、今はちゃんと更生して頑張ってたんだぞ!!」

 

燈哉が二人を睨む。燈哉の後ろにいた卓人と桃も怒りと不快感を露わにしている。

 

「願いを叶える為には全てのトロフィーを集める必要がある。それだけだ」

「そうそう。まぁ、多少の犠牲はやむを得ないってやつだ」

「お前ら!!!」

 

仕方なしといったように答える二人に燈哉の怒りは臨界点を超える。掴みかからんばかりに足を踏み出す。

 

「悪いが二人を非難するのはやめてもらおう」

 

声の方を見るとそこにはキャリーケースを持った中肉中背の男。鋭い目つきで燈哉を見ていた。

 

「天鎧さん!」

「お久しぶりっす!」

 

豪人が嬉しそうに声を上げ、白正が丁寧なお辞儀をする。

 

「誰だアンタは?」

 

燈哉が聞くと、男は短く答えた。

 

「私は天鎧英雄(あまがいひでお)。彼らを仲間に引き入れ、全てのトロフィーを集めんとしている者だ」

 

英雄が顔だけを動かして二人を見る。

 

「天鎧さん。こちらを」

 

豪人と白正が英雄にトロフィーを差し出した。

 

「あれは!?」

 

その中に見逃せない物を見つける。龍蛇の顔がついたサーペントレジェスタートロフィー。

 

「辰巳の……レジェスタートロフィー!?」

 

目を見開き、驚愕を露わにした。

 

「あぁ、あの廃墟にいたレジェスターなら俺が倒した」

 

白正が眼鏡をクイッと上げながら答える。

 

「何で……。辰巳は悪い事をしていないのに……」

 

唇を噛み締め燈哉は悲痛な面持ちで三人を睨む。

 

「お前らの目的はなんだ! そこまでして叶えたい願いってなんだ!!」

 

燈哉が叫ぶ。

 

「世界平和だ」

 

英雄が答えた。

 

「え?」

 

その言葉を理解するのに時間を要した。

 

「人種、肌の色、宗教、文化の違い。様々な理由でいがみ合う者達を聖杯の力で手を取り合わせる。そうすればこの世界は平和となる」

「具体的にはどうするのかな?」

 

卓人が会話に割って入る。

 

「聖杯の力で皆の意識を変える」

「それって『洗脳』って言うんじゃない?」

 

桃も口を挟む。

 

「そうだな。確かにその通りかもしれない。だが、」

 

英雄が重々しく頷いた。その眼には揺らぎのない意志が見て取れる。

 

「たとえ後ろ指を指されようともこの願いを譲る事は出来ない。何があろうとも私は叶えてみせる」

 

その言葉に燈哉達は息を呑む。その姿はまさに覚悟を持った人間の姿だった。

 

「僕はお断りだね。誰かを犠牲にした平和なんてお断りさ」

 

卓人が言う。その目には静かな怒りが見て取れた。

 

「私も同感。知らない間に操られてるとかまっぴらごめん」

 

桃もぶっきらぼうにそっぽを向いて言う。二人はトロフィーを手に構える。

 

「……どうでもいい。世界平和とかどうだっていい。今はただ、お前らを倒す!」

 

燈哉もトロフィーを取り出し構えた。

 

<クサナギノツルギ!>

<アロンダイト!>

<エンオウケン!>

「「「変身!!」」」

 

三人は変身を遂げ、それぞれ武器を構えた。

 

「さぁ、お前達も変身しろ!」

 

クサナギの切っ先の突きつけ、神器が言う。

 

「言われるまでもない」

「さっさとやろうぜ!」

 

白正と豪人がトロフィーを取り出す。

 

<ガーンデーヴァ!>

<ナーゲルリング!>

「「変身!」」

 

アヴァターラとシズレクとなり、武器を取る。そして、英雄もアームズトロフィーを二つ(・・)取り出した。片方は金の台座の上に刃の曲がった藍色の鎌が乗ったアームズトロフィーと金の台座の上に鈍色の盾が乗ったアームズトロフィー。盾のトロフィーのみ通常と反対にプレートがついている。

 

<ミソロジックドライバー!>

 

トロフィーを翳すと英雄の腰にスロットが二つ付いたベルトが巻かれる。英雄は二つのトロフィーを起動させた。

 

<アイギス!>

<ハルパー!>

「変身……」

 

英雄が厳かに宣言し、中央のボタンの押し込む。瞬間、二つのトロフィーのプレートが展開し、中央で重なった。

 

<鉄壁!攻撃!完璧!紺碧の英雄!!>

 

英雄の前に鎌と盾が出現。鎌から朱鷺、盾から蛇が現れ英雄に纏わりつき装甲へと変化。

 

<ライダー・ザ・ペルセウス!!>

 

最後にペルセウス座を象った仮面を装着。英雄の変身が完了した。

 

「仮面ライダーペルセウス。願いを叶える為、盾突くならば容赦はしない」

 

右手に魔剛鎌<ハルパー>を、左手に純神盾<アイギス>を手にペルセウスが構える。

 

「二つのトロフィーで変身!?」

 

ラウンダーと天華が驚きを露わにする。

 

「驚く事の程でもない。未完とはいえ聖杯の一部。願いさえすればドライバーを強化する事に造作もない」

 

ペルセウスが手を掲げる。空間が歪み、未完の杯が浮いて現れる。それを見たラウンダーと天華の警戒心が跳ね上がった。

 

「関係ねぇ!!」

 

神器が真っ先に駆けていく。目指すはペルセウス。クサナギを振り上げると渾身の力で振り下ろした。ペルセウスは慌てる事なくアイギスを向ける。剣と盾がぶつかり、けたたましい音が響く。

 

「ちっ、硬え!」

 

ペルセウスはびくともしていない。アイギスにも傷一つ見受けられない。

 

「僕達も行こう」

「ええ」

 

ラウンダーと天華も駆け出した。だが、彼らの前にシズレクとアヴァターラが立ちはだかる。

 

「おっと、こっからは行かせないぜ」

「豪人。ラウンダーの相手は任せる。俺は彼女の担当をさせてもらう」

 

アヴァターラがガーンデーヴァを構えながら言う。

 

「了〜解!」

 

シズレクは即座にラウンダーの元へと飛び込んでいく。

アロンダイトとナーゲルリングが激突。激しい鍔迫り合いが始まった。

それを尻目に天華とアヴァターラが向かい合う。

 

「あんたはなんであいつに従ってるの? 聖杯で叶えた世界平和じゃあんたも操られてるのよ?」

「犯罪が無くなるからだ」

「え?」

 

天華が不思議そうに目を丸くする。アヴァターラが淡々と続けた。

 

「俺の両親は警察官だった。警察官は市民を守るだけじゃない。犯罪を犯した人達を救う職業だ。それが口癖だった」

 

アヴァターラがガーンデーヴァから矢を放つ。天華は横っ飛びで回避。だが、着地場所にさらに矢が放たれる。

 

「くっ……」

 

エンオウケンで受け止めながら後方へ飛び退いた。

 

「誰もが正しく生きれる訳じゃない。その結果が犯罪行為なら警察官が正してあげる。そう言っていた両親は二人を逆恨みした犯人に殺された。そこで俺は悟った。どう足掻いても正しく生きれない人間はいる」

「あんた……」

 

天華の動きが止まる。そこへ無数の矢が飛んでくる。隙をつかれ対応が遅れた。天華は地面に片膝をつく。

 

「そんな時、天鎧さんに誘われて俺はあの人に協力する事にした。聖杯の力があれば天鎧さんが必ず叶えてくれる。だから俺はあの人に聖杯を取らせる!」

<ガーンデーヴァ!>

<必殺神技!!>

 

業火の矢が放たれ、一直線に天華に突き刺さる。

 

「うぁぁぁぁ!!!」

 

絶叫を上げながら天華は地面を転がり、変身が解けた。

 

 

 

 

「おらおらおら!」

 

ラウンダーとシズレクの戦いも熾烈を極めていた。激しい連続斬りがラウンダーを襲う。

 

「うっ!ぐっ!」

 

だが、ラウンダーもやられてばかりではない。ナーゲルリングによる一閃がラウンダーに触れるその刹那。ラウンダーの体が液状と化して崩れ落ちた。

 

「!?」

<アロンダイト!>

<必殺神技!!>

 

背後に回ったラウンダーが渾身の一撃を叩き込む。

 

「ぐおっ!」

 

咄嗟に反転。ナーゲルリングで受け止めるも力負け。火花を散らしながらシズレクが地面を転がった。

 

「豪人。これを受け取れ」

 

シズレクの不利を見かねたペルセウスが未完の杯からトロフィーを取り出し、投げ渡す。

 

「おおっと」

 

受け取ったそれを見る。それは金の台座の上に琥珀色のバスターソードが突き刺さったアームズトロフィー。仮面の奥で笑みを浮かべ、シズレクがそれを起動させる。

「天鎧さん、あざっす!」

<エッケザックス!>

 

トロフィーをベルトにセット。ボタンを押した。

 

<巨人の刃! König von Dietrich!>

 

目の前に大きなバスターソードが突き刺さる。そして、シズレクの背後より現れた巨人がシズレクに覆い被さり、琥珀色の装甲へと変わった。

 

<エッケザックスギガント!>

 

最後に頭部に輪状の王冠がついた仮面がつきシズレクのフォームチェンジが完了する。

 

「さぁ。行くぜ!」

 

目の前の大剣<巨刃エッケザックス>を引き抜き、シズレクが意気揚々とラウンダーへ向かっていく。

 

「くっ!」

 

ラウンダーもアロンダイトを握り直し臨戦体勢を取った。そこにシズレクが大きく剣を振りかぶる。エッケザックスが渾身の力で振り抜かれた。

 

「おらっ!!」

 

ラウンダーの装甲から火花が散る。だが、その程度では倒れない。アロンダイトを横薙ぎに振るう。シズレクが手でそれを受け止めた。そして鳩尾を蹴り飛ばす。

 

「がっ!」

 

ラウンダーが後ろに仰け反る。

 

<エッケザックス!>

<必殺神技!!>

 

瞬間、エッケザックスが巨大化。その巨大な剣を軽々振り回し、ラウンダーに振り下ろす。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

アロンダイトで受け流そうとするが、その質量は大きすぎた。耐える事は出来ず、吹き飛ばされる。ラウンダーは倒れる桃の元へと転がり変身が解除された。

 

「卓人! 美鶴城!」

 

ペルセウスと交戦していた神器が叫ぶ。二人の元へシズレクとアヴァターラが迫る。

 

「させるか!」

 

神器がすぐさま彼らの間に割って入り、クサナギにトロフィーを装填する。

 

<クサナギノツルギ!>

<必殺神技!!>

 

エネルギーを纏った斬撃をシズレクとアヴァターラへ飛ばす。その一撃が二人に届くその前にペルセウスが立ち塞がる。アイギスにトロフィーを装填した。

 

<アイギス!>

<必殺神技!!>

 

アイギスが光輝く。そして、光が放たれ巨大な壁となって神器の一撃と衝突。黒煙が晴れるとそこには無傷のペルセウスが立っていた。

 

「なっ!?無傷……!」

「無駄だ。お前の攻撃は私に通用しない」

 

ペルセウスが冷徹に言い放つ。神器は愕然とした。そんな隙を三人は見逃さない。

 

<ガーンデーヴァ!>

<必殺神技!!>

 

炎の矢が神器を襲う。

 

「がぁっ!!」

 

神器が宙を舞う。

 

<エッケザックス!>

<必殺神技!!>

 

シズレクがエッケザックスを巨大化させ、そのまま地面に叩きつける。

 

「ぐあぁぁぁ!!」

 

激しい轟音が鳴り響き、神器の体がアスファルトに叩きつけられバウンド。再び空中へ投げ出された。そこに駄目押しの一撃。

 

<ハルパー!>

<必殺神技!!>

 

ペルセウスの持つハルパーから斬撃が放たれる。

 

「ぐわぁぁぁ!!」

 

神器の体が一刀両断。その身が爆炎に包まれた。変身が解け、燈哉の身体が地面に投げ出される。そのはずみでファブニールレジェスタートロフィーを筆頭に複数のトロフィーが地面に散らばった。

 

「燈哉!」

「立脇!」

 

二人が駆け寄る。その体を優しく揺さぶる。その様子を見ながらペルセウスがトロフィーを拾い上げる。

 

「うぅ……ぐぅ……! 返……せ!」

 

燈哉が地面に倒れ伏しながら手を伸ばす。

 

「すまないがこれは我々にとっても必要なものだ。返すことは出来ない。むしろ、」

 

ペルセウスが燈哉達を見下ろす。

 

「残るトロフィーをこちらに渡してもらおう」

「誰が……お前なんかに……!」

 

燈哉が歯を食いしばりながら睨みつける。卓人と桃も同じだ。

 

「そうか……」

 

ペルセウスが溜め息混じりに呟く。そして片手を上げる。それを合図にシズレクとアヴァターラが三人の元へと迫る。

 

「くっ……!」

 

燈哉は体を起こすのがやっとだ。とても戦う事は出来ない。瞬間、花の香りがした。

燈哉達を囲うように魔法陣が展開する。

 

「!?」

 

魔法陣から光が放たれ、周囲を照らす。その眩しさにペルセウス達は腕を顔の前に持ってきた。やがて光が収束するとそこに燈哉達の姿は無かった。

 

「追いますか?」

 

変身を解き、白正がすかさず聞く。今にも飛び出しそうな程身を乗り出している。だがそれを同じく変身を解除した英雄が手で制した。

 

「いや、いい。物事には優先順位と言うものがある。今は彼らより先に打倒すべき敵がいる。そちらを狙う」

「分かりました」

 

白正が頷き、姿勢を正す。その横で豪人が鼻歌混じりで笑顔を作っている。英雄は先程拾い上げたファブニールレジェスタートロフィーを未完の杯へと入れる。

 

「杯よ。道筋を示せ」

 

杯から立体映像の地図が出現。そこに赤い点が二つ映る。一つはキッチン大洗に。もう一つは……

 

「さぁ行こうか」

 

地図を把握すると、英雄が歩き出す。豪人と白正を伴って、街の中へと消えていった。

 

 

 

「あだ!?」

 

キッチン大洗の店内に燈哉達が転移。勢いよく床に激突した。

 

「いてて。助かったぜ、マーリン」

 

ぶつけたお尻を擦りながら顔を上げる。目の前には椅子に座り、優雅に佇むマーリンの姿があった。

 

「無事で何よりだね」

 

マーリンが燈哉達へと歩み寄る。

 

「さて。さっそくだけど本題といこうか」

 

マーリンが卓人の方を向く。

 

「聖葉卓人君並びに他ニ名、君達を夢の世界へ招待しよう。我が王がお待ちだ」

 

その言葉に呆然とする三人の前でマーリンは恭しくお辞儀した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。