「聖葉卓人君並びに他ニ名様、君達を夢の世界へ招待しよう。我が王がお待ちだ」
キッチン大洗の店内にて呆然とする三人の前でマーリンは恭しくお辞儀をする。
「我が王って……?」
「まさか!」
「それは着いてからのお楽しみさ」
楽しげな顔でマーリンがウインクする。その時今まで黙っていた紗耶が挙手。
「あの……。私も行っていいですか?」
「勿論だとも。客人は多い方が楽しいからね」
マーリンが杖をかざす。
「それじゃあ、準備はいいかな? いくよ」
魔法陣が展開。赤紫の光が店内を包みこんだ。燈哉達が目を開けるとそこは西洋風の建物の一室。
その部屋は白を基調とした石造りで、燈哉達の背後に唯一の扉があり、床には赤い絨毯が扉から奥へと一直線に敷かれていた。そして絨毯の先には玉座が置かれ、そこに人が座っている。金髪碧眼の男性だ。短く整えられた短髪。身に纏っているのは胸元に宝石がはめ込まれた鎧。そして、頭の上には王冠が乗っている。
その男の姿を見た燈哉達は自然と傅き、頭を垂れていた。
「よく来てくれた、客人達よ。私はアルトリウス・ペンドラゴン。……アーサー王と呼んだほうが分かりやすいだろうか?」
優しい眼差しで笑いかける。その言葉を聞いた四人は驚愕し、感嘆する。
「今日君達を呼んだのは他でもない。聖葉卓人。君に最後の試練を与えるためだ」
「最後の試練……?」
卓人が顔を上げる。アーサー王は玉座から立ち上がると卓人へ近づいた。
「如何にも。ここまで懸命に戦い、時に迷い、それでもなお立ち上がって来た君だからこそ私が果たさねばならない事だ」
アーサー王が懐からトロフィーを取り出した。それを見た卓人が驚愕する。その手にあったのはカリバーンアームズトロフィー。卓人は慌てて自分のトロフィーを取り出す。そこには確かにカリバーンアームズトロフィーがある。
「ここはマーリンが作りし夢の世界。同一の力を再現するのはお手の物だ」
「まさか、カリバーンアームズトロフィーを……?」
「その通りだ。さて、試練について教えよう。内容は簡単だ。私と戦い、己の価値を示せ」
「己の……価値……」
卓人の顔が険しくなる。
「そうだ。自分にとってこれこそが自分だと誇れるものだ。それを示した時、これを君に渡そう」
アーサー王が腰の剣を見せる。それは控えめながらも宝石が散りばめられた絢爛な美しい剣。鞘に至っても鮮やかな白が輝いている。
「分かりました。その試練、受けて立ちます!」
卓人がトロフィーを構えた。同時にアーサー王もトロフィーを構える。
<<カリバーン!>>
両者がベルトにトロフィーをセット。
「「変身!!」」
<<夜明けの王! 引き抜け、選定の剣!!>>
<<カリバーンソード!>>
二人がラウンダーへと変身を遂げ、カリバーンを引き抜く。
「ハァッ!」
「フッ!」
剣と剣がぶつかる。けたたましい音を響かせ、卓人の試練が始まった。
石畳の部屋。玉座に座り、閉じていた目を開け、アスクが口を開く。
「二人共、準備して。敵が来るよ」
「「!?」」
その言葉にリラックスしていた二人が勢いよく立ち上がる。それと同時に部屋の扉が蹴破られた。大きな音を立て、ドアが地面に倒れる。そこから入ってきたのは英雄達三人。
「こいつらは!?」
虎杖と壱子がトロフィーを取り出す。警戒心を跳ね上げ、三人を睨みつける。そんな中、英雄が一歩前に出た。
「久しぶりだな、アスク。あの時は世話になったよ。その事に関しては礼を言おう」
「うん。久しぶりだねぇ、天鎧英雄」
アスクが玉座から立ち上がり、壱子達と並ぶ。
「アスク。知り合い……なのか?」
あまりに気安く話す両者を見て、虎杖が困惑気味に聞く。
「聖杯を手に入れる。その為に僕は三つの伏線を用意していた」
アスクが右手の人差し指を立てる。
「一つ。当時最強と謳われていたファブニールの打倒。その為にわざわざ頭を下げて取り入り、内から排除計画を練った」
追加で中指を立て、二のハンドサインをつくる。
「二つ。仲間集め。世界は広いし、一人で全てを集めるのは至難の業。そこでワンちゃん達を利用した」
最後に薬指を立てる。
「そして三つ。ライバル作成。二人を仲間にしてもトロフィーを集めるのは難航すると踏んだ。だから、聖杯の話を吹聴して、色んな人達に集めてもらう事にした」
「!?」
「誰だって何でも叶う力は欲しい。だからそれを欲しがった人達がトロフィーを集めた所を強襲して奪う。彼もその為の伏線の一つだよ」
アスクが楽しそうに笑う。
「下衆め!」
白正が侮蔑の表情でアスクを睨む。
「やはりか。君に助けられた時、利用されているとは感じていた」
「そこはお互い様。聖杯の話はこっちに利があり、そっちにも利があった。悪い事とは思ってないよ」
「無論そこを糾弾する気は無い。むしろ感謝している。だが君は一つ想定し忘れている事がある。君達が私達に敗北する事だ」
英雄が二つのトロフィーを取り出し、構えた。アスクも応戦するべくトロフィーを取り出す。
<アイギス!>
<ハルパー!>
<グラム!>
<エッケザックス!>
<ゲイボルグ!>
<ガーンデーヴァ!>
<クトネシリカ!>
「「「「「「変身!」」」」」」
石畳の部屋で六人の仮面ライダーが一同に会した。
先陣を切ったのはシズレク。アスクへ向けて駆け出した。そこに素早く割り込んだのアルスター。俊足で距離を詰め迎え撃つ。エッケザックスとゲイボルグが激突。
「お前、速いな! けどパワーなら負けないぜ!!」
「くっ……」
だが、力勝負ではシズレクが有利。アルスターが軽々と押し負けた。そこに炎の矢が複数飛翔。アヴァターラの攻撃が迫る。
<夏熊!>
<召喚!!>
クトネシリカのレリーフを合わせ、サマイクルがエネルギー体の熊を召喚。アルスターを守る盾とした。
「潟永虎杖。周囲の理不尽で正しく生きれなかった者か……」
「あ?」
「お前の境遇には同情する。だからこそ安心しろ。俺達の願いが叶えば君は正しく生きられるのだから」
アヴァターラがガーンデーヴァを構えながら言う。その言葉にサマイクルの堪忍袋の尾が切れた。
「正しく生きるだぁ……。ふざけんなよ。誰もそんなの望んじゃいねぇよ!!!」
サマイクルがアヴァターラへ向けて駆け出した。大振りでクトネシリカを振るう。アヴァターラはガーンデーヴァで攻撃を受け止めると後方へ飛び退き、矢を連射。サマイクルをひるませる。
「へぇ。君の仲間も中々やるね」
「当然だ。共に世界平和を掲げる戦友なのだから」
四人がぶつかり合う中、アスクとペルセウスが向かい合う。
「世界平和ねぇ。くだらない」
仮面の奥で冷笑しながらアスクが吐き捨てる。
「物に頼らなきゃ出来ない世界平和なんて馬鹿みたいだね。やめたら?」
「そちらこそ罪なき者達を巻き込む無理心中に何の意味がある。どれほど悲惨な過去があろうと、やっている事は唯の八つ当たりだ」
「……まぁ。それを言われたらその通りだね。……けどさ。想像しちゃうんだよ。自分が死んだ後も憎しみが悲しみを呼び連鎖する理不尽極まる世界を。間違ったまま続く日常をさ」
アスクが肩を竦める。
「そう思うとやっぱり壊したくなる」
「これ以上は平行線か……」
ため息をつきながらペルセウスが戦闘体勢を取った。
「そうだね。なら後は戦いで決めよう」
アスクもまたグラムの切っ先を向け、構えた。両者が駆ける。先に仕掛けたのはペルセウス。リーチの長さで勝るハルパーがアスクに迫った。それを体を捻って躱すとグラムで横薙ぎ一閃。
「はあっ!」
鋭い一撃がペルセウスへ振るわれた。だが。アイギスが行く手を阻む。攻撃を弾かれアスクのバランスが崩れた。
「フッ!!」
そこへ再びハルパーが迫る。
「ちっ……!」
今度は避けきれず右肩にダメージ。装甲が火花を散らす。
「なら!」
<ヴァンパイア!>
<コンバイン!!>
背中に蝙蝠の羽を模した機械翼が追加される。そのまま飛翔すると素早くペルセウスの背後へ。加速し、一気に急降下。
<グラム!>
<必殺神技!!>
「せーのっ!!」
漆黒のエネルギーを纏った一撃が振り下ろされる。それに対し、ペルセウスは慌てることなくトロフィーをアイギスへセット。
<アイギス!>
<必殺神技!!>
アイギスよりエネルギーの壁が出現。アスクの攻撃を受け止めた。
「っ……!?」
必殺神技の効力が消えた。だがペルセウスには傷一つ無い。ペルセウスがハルパーを振るう。斬撃が飛び、慌てて避けるも機械翼に被弾。バランスを失い、石畳の部屋の壁を破壊し、外へと飛び出した。
「ちっ!」
片膝立ちでアスクは悪態をつく。分厚い盾による高い防御力とリーチの長い鎌による攻撃力。単純故に隙が無い。
「きゃあっ!」
「うわぁっ!」
壊れた壁がさらに壊れ、アスクのところへアルスターとサマイクルが転がってくる。そして、瓦礫の向こうからペルセウス達が迫ってくる。
「仕方がない……。逃げるよ」
アスクが左手を掲げる。未完の杯が現れ、空間を歪ませた。だが、
「させはしない」
ペルセウスも手を掲げ、未完の杯を出現させる。すると歪んだ空間が徐々に戻り始めた。
「!?」
<ハルパー!>
<必殺神技!!>
その隙をつき、ペルセウスがハルパーを横薙ぎ一閃。斬撃が三人を襲う。その拍子にアスクの手から未完の杯が零れ落ちた。
「くそっ!」
それをペルセウスが拾い上げる。二つの未完の杯を融合させ一つの杯にした。
「これでまた一歩理想へと近づいた」
残るトロフィーを手に入れるべく、ペルセウス達が歩き出す。三人が一歩近づくとアスク達が一歩下がる。なんとか距離を保つも追い込まれているのは変わらない。アルスターとサマイクルの仮面の奥で冷や汗が伝う。だが、アスクだけは冷静だった。さりげなく裏路地のある道へ誘導させる。そして裏路地が近づいたその時、
「二人共。走れ!!」
<グラム!>
<必殺神技!!>
アスクがグラムを振るう。漆黒の斬撃がペルセウス達の足元に着弾。煙が視界を覆った。
「!?」
やがて視界が晴れるとそこにアスク達の姿はない。
「奴らはまだ近くにいる。追うぞ」
ペルセウスの言葉に頷き、シズレクとアヴァターラが裏路地へと駆け出した。ペルセウスも後から続いた。
夢の世界。その城内にて剣と剣がぶつかる音が響く。激しい鍔迫り合いを繰り広げるのは二人のラウンダー。
「フッ!」
「くっ……!」
卓人とアーサー王の激突は卓人がやや劣勢。同スペックならば経験の差が物を言う。卓人の攻撃は尽くいなされ逆にアーサー王の攻撃が卓人の装甲に傷をつけていく。
「さて。そろそろ君の価値を示してもらおうか?」
カリバーンの切っ先を突きつけながらアーサー王が言う。
「……」
だが卓人は答えない。いや、答えられない。まだ己の価値について考えている最中だ。
「答えられないか……。ならば手本として私の価値を教えよう」
アーサー王が剣を下ろす。
「私の価値とは、多くの仲間達と志を共にして戦場を駆け抜けた事だ」
「!?」
「この世界において私は騎士道を貫く王として有名ではあるが、私の人生なぞ端的にまとめれば割と情けない事ばかりだった」
仮面の奥でアーサー王が自嘲する。
「親友と思っていた騎士に妻を奪われ、仲間達に離反され、挙句の果てには不義の子にクーデターときた。我ながら情けない事この上ない。それでも、」
アーサー王が剣を構える。
「それでも彼らと共に在れた事こそが私の誇り。私の価値なのだ」
「……、」
卓人がアーサー王を見る。仮面で見えないその顔は不思議と晴れやかな表情をしていると感じた。だが、それと同じくらい明確な決意と覚悟が宿っているとも。
「次は君の番だ! 聖葉 卓人! 君の価値はなんだ!! それはどのようなモノだ!!」
「僕の……価値は……!」
仮面の奥で目を瞑り、一呼吸置く。そして意を決したかのようにカッと眼を開き、駆け出した。アーサー王も応戦。二振りのカリバーンが激しくぶつかり合う。
「僕の剣で世界を救う。僕ならばそれが出来る。そう思って一人で突っ走ってきた。」
卓人がちらりと目だけを後ろに向ける。視線の先には燈哉達がいる。
「その結果、なすすべなく無力になった事もあった。前が見えなくなって迷走した事も。当然だ。自分一人で出来ることなんてたかが知れているから」
鍔迫り合いを制した、アーサー王が卓人をなぎ払う。後ずさり、片膝をついて卓人はアーサー王を見上げる。
「だけど、それは間違いじゃなかった。燈哉とぶつかれて、心を通わせる事が出来た。その日僕は知ったんだ。僕には仲間がいる事を!」
卓人が立ち上がると再び駆け出す。卓人の言葉を聞き、燈哉の口元は緩む。そしてそれは紗耶も桃も同じ。
「いけー、卓人!!」
「聖葉さん、頑張ってください!」
「見せてやりなさい、聖葉!」
仲間達の声援を受け、剣を持つ手に力が入る。
「僕の価値は彼らと出会えた事!」
カリバーンにトロフィーをセット。それを見たアーサー王も同じく必殺神技で応戦する。
<<カリバーン!>>
<<必殺神技!!>>
エネルギーを纏った一撃が激突。凄まじい衝撃が床に亀裂を入れる。力は互角。互いに譲らない。
「そして、一緒に世界を救える事だ!」
卓人が吼える。呼応するようにカリバーンが輝きを増す。
「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」
卓人のカリバーンが振り抜かれた。競り負けたアーサー王は尻もちをついて倒れる。その後方に弾き飛ばされたアーサー王のカリバーンが突き刺さった。
「僕の勝ちだ」
切っ先を向け、アーサー王を見下ろす。アーサー王は肩を小刻みに震わせると、
「ふっ。ふふふ、あっはっはっは!!!」
変身を解除する。そこには声を上げて笑うアーサー王の顔があった。
「見事だ。君を私の後継に選んで正解だった」
立ち上がりながらアーサー王が言う。
「貴方が僕を!?」
卓人は変身を解きながら驚きの表情を見せる。
「そうだ。マーリンが世界の危機を予言した。そこで私の剣を継げる者を探してた。そこで選んだのが君だった」
「何故、僕を……?」
「君が昔の私に似ていたからさ」
戸惑いを見せる卓人に対し、アーサー王がそう言いながら近づく。
「でも違った。君は仲間と心を通わせ共に戦っている。私にはできなかった事だ」
「……」
「私は一人で突っ走ってしまった。仲間を置き去りにしてね。だからこそ最期には皆離れてしまった」
アーサー王が腰の剣を取り出すとそれを卓人へ。
「最後に君と心を通わせる事が出来て良かった。この剣を君に託す」
卓人が傅き、恭しく剣を受け取った。その瞬間、剣はトロフィーへと変わる。ゴールドの台座の上に金が縁取られた白亜の剣が突き刺さっったアームズトロフィーへと。
「その剣はきっと君の助けになるはずだ」
「ありがとうございます、アーサー王」
卓人の言葉にアーサー王は満足げな笑みを浮かべた。
「さぁ、行きたまえ」
アーサー王の合図を受けて、マーリンが杖を掲げる。刹那。四人が現実世界へ、キッチン大洗へと戻ってきた。
「やったな!」
真っ先に卓人に声を掛けたのは燈哉。
「ああ」
卓人が頷く。その時、燈哉の表情が陰る。
「実は俺さ……。ほんの少しだけあいつらの言う世界平和に一理あるって思っちゃったんだ……でも、」
燈哉の顔が明るくなる。そして、卓人を見つめる。
「でもお前のおかげでやっぱり違うって思えた」
「なら、君の答えを彼らに見せつけてやろう。僕達、みんなで」
卓人が拳を突き出す。燈哉達もそれに応じる。
「ああ!!」
「はい!」
「ええ」
四人が拳を合わせる。
「行こう。リベンジマッチだ」
四人は店の外へと歩き出した。