仮面ライダー神器   作:puls9

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第四十節 斬り拓け! 希望を燈す神器と共に

 

神器とペルセウスが激突する少し前。黄金のオーラを放つ杯を見上げながら英雄は黄昏ていた。無言でポケットから何かを取り出す。それは色褪せてボロボロになった一枚の写真。写っているのは複数の男女。年齢や肌の色といった人種の違う人々が並んだ集合写真だ。その中の中心からやや左に年若い日本人と褐色の子供が仲良く手を繋いでいる。その日本人こそ若き日の英雄の姿。

 

 

「……」

 

 

目を閉じ、英雄は思い返す。世界平和の為に聖杯を求める事となった全ての始まりを。

 

 

 

 

 

 

「ヒデオ! 遊ぼう!!」

 

 

元気な声が木造家屋に響く。呼びかけられた英雄は持っていた段ボールを近くの床に置くと腰を落とし、声の主に目線を合わせた。

 

 

「すまない。まだ今日の作業が終わってないんだ」 

 

 

申し訳無さそうに英雄は言った。

 

 

「えー! つまんない!」

 

 

不満そうに口を尖らせるのは褐色の小さな女の子。この村に住む齢九歳の少女、メイリーだ。

 

 

「ヘイ、ヒデオ! 今日の作業は終わりだ。先に上がりな」

 

 

傍らにいた金髪の男が段ボールを積み上げながら声をかける。

 

 

「何を言ってるんだ、マイク。まだ作業はこれからだろ?」

「おいおいおい。お前には最も重要な仕事があるだろ? その子と遊んでやることだ」

 

 

マイクと呼ばれた男が陽気に笑う。

 

 

「そうそう。こっちの事はあたし達に任せな」

 

 

タオルをバンダナ代わりにしたタンクトップの女性が賛同するように力こぶを見せる。

 

 

「ジェーンさん。……分かりました。行こうか、メイリー」

「うん!」

 

 

英雄はメイリーと共に家の外に出ていった。

在りし日の天鎧英雄はボランティア活動に従事していた。かつてより正義感の強かった英雄は戦争や紛争といった出来事に心を痛めていた。自分にも何か出来る事があるはずだと行動を起こし、中東の地域で支援活動に参加するに至ったのだ。

メンバーは同じ志を持った国籍すらも異なる仲間、アメリカ人のマイクやイギリス人のジェーン達だ。英雄は彼らと共に定期的にこの村を訪れては物資を届け、現地の人達と交流を深めていた。とりわけメイリーは英雄にとても懐いていた。

 

 

「ワタシね。いつかヒデオの国に行ってみたい。その時は案内してね!」

 

 

彼女はよくそう言っていたし、英雄自身もそんな日が来る事を願っていた。

そんなある日。

 

 

「避難勧告……ですか……」

「ああ。この間、反政府勢力との衝突があっただろう? その内のメンバーがこちらの方に逃げ出したらしい。政府軍がそれを追っている。直にここらも戦場になる可能性が高い」

「そんな……」

 

 

思い出のあるこの村が戦火に包まれるかもしれない。それを考えるだけで英雄は悔しげに顔を歪ませる。

 

 

「この村の人達はどうなるんですか?」

「十km離れた所に別の村がある。そこで受け入れてもらえる事になった。車を数台確保してある。彼らをそこまで送り届けたらオレ達も退避する。いいな」

 

 

いつも陽気なマイクがいつになく真剣な顔をしている。英雄も頷くとすぐさま準備の為に動き出した。

 

 

「ねぇヒデオ? どこに行くの?」

 

 

車に乗り込みながらメイリーが不安気な表情を浮かべる。隣に座った英雄は心配をかけまいと笑顔を作った。

 

 

「少し遠くにお出かけするんだ。大丈夫。すぐに戻ってこれる」

「やっぱり内戦が起きるの?」

「!?」

「大人の人達が言ってたよ。戦いが始まるって」

「……そうだ。この村が戦火に巻き込まれる可能性がある。それで隣の村まで避難するんだ」

 

 

逡巡の末、メイリーに真実を打ち明ける。

 

 

「ヒデオも一緒?」

「その村までなら。避難勧告が出ていて、俺達はこの国から出ていかなくてはいけない」

「そっか……。また会えるよね?」

「ああ。きっと」

 

 

互いに淋しげに笑い合う。そんな中、車のエンジンがかかる。

 

 

「メイリー、シートベルトを」

「うん!」

 

 

車が走り出す。英雄は窓から村の景色を眺めていた。慣れ親しんだ場所が遠のいていく。紛争地帯に舗装された道は少ない。ひたすら獣道が続く。

 

「きゃあ!?」

 

ガタガタと大きく揺れる車内にメイリーが小さく悲鳴を上げる。英雄は彼女の体を抱き寄せた。

 

「大丈夫だよ、メイリー。すぐに着くさ」

 

英雄は信じていた。避難勧告が出ている村に着けばきっと大丈夫だと。

 

「ねぇ、ヒデオ?  次会う時は……」

 

メイリーが何かを言いかけた時、近くで爆発が起きた。

 

「なんだ!?」

「まさかもう始まったのか!?」

 

マイクとジェーンが慌てた様子でハンドルを切る。英雄はメイリーを庇いながら揺れる車体に振り回される。

 

「ぐっ……!」

 

次の爆発は車を直撃した。

 

「うあ!?」

 

衝撃で車体が横倒しになった。英雄は後部座席でメイリーを抱きかかえる。

 

「う……痛たた……」

 

ジェーンが車から這い出してくる。マイクは車から少し離れた所に倒れていた。

 

「ヒデオ! マイク! 大丈夫!?」

「ああ、なんとか……うっ!」

「クソッ! なんてこった!! 戦闘が始まっちまった!!」

 

メイリーを抱えながら英雄は車から出てくる。マイクも左足を引きずりながら寄ってきた。車を直撃した爆弾が炎上を始めている。このままではガソリンに引火して爆発を起こすだろう。

 

「もうすぐ件の村だ。走るよ!」

 

巻き込まれてはひとたまりもない。ジェーンがマイクに肩を貸しながらが英雄達を促す。英雄はメイリーの手を取り、走り出した。

 

「はぁ……はぁ……」

 

英雄達は必死に走った。しかし、その間にも爆発は起こり、爆音と熱風は着々と距離を詰めてくる。

 

「あっ!」

 

ジェーンが悲鳴を上げた。マイクを庇いながら足をもつれさせた彼女は地面へと倒れてしまう。

 

「マイク! ジェーンさん!」

「馬鹿野郎! 足を止めるな!!」

 

駆け寄ろうとする英雄にマイクが制止の声を上げる。瞬間、上空から放物線を描き、爆弾が直撃。マイクとジェーンが爆炎に飲み込まれる。爆風に煽られ、英雄とメイリーはふっ飛ばされる。

 

「くっ……!」

 

英雄は手を強く握る。けっしてメイリーを離さないように。そして地面に叩きつけられる。

 

「大丈夫か! メイ……リー……」

 

慌てて顔を起こし、メイリーに声をかけようとして止まった。繋いだ手の先には何も無かった。英雄の左手には肘の辺りまでが残った手が握られていた。

 

「あ……あぁ……」

 

英雄が周囲に視線を彷徨わせる。そこで見た。目の前には巨大なクレーターができているのを。クレーターの中心には丸焦げになった二人の人型が折り重なるように倒れ伏し、そこから右に少し離れて右手の無いメイリーが突っ伏していた。服の一部は焼け焦げ、ボロボロだ。よろよろと英雄がメイリーに駆け寄る。そっと首筋に触れ、脈を測った。

 

「は……ははっ……」

 

英雄の口から乾いた笑いが出る。悪夢を見ているようだった。メイリーの脈は止まっていた。

 

「う……うぅ……」

 

英雄はメイリーの死体を抱きしめた。涙が止めどなく溢れてくる。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

英雄は天を仰ぎ、喉が裂けんばかりに慟哭した。それはこの世界の誰にも届かない嘆きの咆哮だった。

その時、再び上空から放物線が迫る。英雄は咄嗟にメイリーの体を庇う。その襟首を誰かが引っ掴んだ。軽々と引っ張られ、英雄は連れられていく。

 

「やあ、大丈夫かい?」

 

やがて洞窟の中に連れて行かれ、英雄は見知らぬ者に声をかけられる。それは中性的な白髪の青年だった。

 

「君は……?」

「僕はアスク。通りすがりの旅人さ」

 

アスクと名乗った青年はニッコリと笑う。が、すぐに無念そうな顔に変わる。

 

「その子は残念だったね……」

「……何故、人は争うんだ。……どうすればこんな悲劇を終わらせられるんだ……」

 

英雄はメイリーの亡き骸を抱きしめる。その瞳からは涙が溢れては零れ落ちていく。アスクは静かに口を開く。

 

「無理だね。人は争い、傷つけ合い、憎しみを連鎖させるもの」

「そんな……」

「でも希望はある」

 

アスクは英雄の前に歩み寄ると右手を差し出す。そこにはゴールドの台座の上に盾が乗ったトロフィーがあった。

 

「これは……?」

「これはアームズトロフィー。世界を塗り替える力の欠片。聖杯と呼ばれる存在の一部さ」

「アームズトロフィー……。聖杯……」

 

英雄はトロフィーを手に取る。ずっしりとした重量を感じた。

 

「全てのアームズトロフィーを集めれば聖杯は完成する。そうすれば君の望む世界も訪れる」

「俺の……望む世界……」

 

アスクは静かに頷く。

 

「やってみせる。俺が、世界平和を実現させる」

 

英雄は立ち上がる。その目に決意を宿して。

 

「ありがとう、アスク。……俺は行かせてもらう」

「ああ、頑張ってね」

 

英雄はメイリーの亡き骸を抱えながら洞窟を後にした。

 

「世界平和か……。まぁ、君が全てのアームズトロフィーを集められれば、だけどね」

 

その後ろ姿を見送りながらアスクが含む様な言い方で笑った。

それから英雄は仲間を募り、トロフィーを集め始めた。全ては絶対に争いの起きない世界の為に。

 

 

 

 

 

 

そして現在。

 

<クサナギノツルギ!>

<アイギス!>

<ハルパー!>

「「変身」」

 

工業地帯の中心部。燈哉と英雄の声が重なる。二人の前に武器が出現し、放たれたエネルギーが装甲となって纏わりつく。

 

<霧雲! 雨雲! 入道雲! 雨叢雲の戦士!!>

<ツムカリブレード!>

<鉄壁! 攻撃! 完璧! 紺碧の英雄!!>

<ペルセウス・ザ・仮面ライダー!>

 

変身が完了し、両者が武器を構える。二人の間を木枯しが吹き抜けた。瞬間、

 

「はあああああ!!」

「ふっ!」

 

それを合図に両者がほぼ同時に駆け出した。先手を取ったのはペルセウス。リーチの長いハルパーの刃が神器の首筋目掛けて迫りくる。

 

「うおっと!」

 

それを巧みなステップで躱し、神器が反撃に出る。クサナギで横薙ぎ一閃。

 

「効かん」

 

だが、アイギスがそれを簡単に弾く。神器は後ろに飛び、距離を取る。

 

「君は何故、私達の世界平和に対立するのかね?」

「やり方が気に入らないからだ!」

 

神器がクサナギの切っ先をペルセウスへ向ける。

 

「皆を良いように操って何が世界平和だよ! そんなやり方で胸を張って言えるのかよ!」

「言えるとも。この方法でなければ実現出来ない」

「出来る! 聖杯なんか無くたって! 皆で考えて一緒に実現するんだ。それが本当の世界平和じゃないのか!!」

 

神器が駆ける。クサナギを勢い良く振り下ろした。

 

「それを……」

 

脳裏でメイリーや仲間達が死ぬ光景が甦る。仮面の奥で奥歯を噛み締めながら吐き出すように英雄が激高した。

 

「それを甘いと言っている!!」

 

アイギスでクサナギを弾くと直ぐ様ハルパーを振るう。

 

「全ての人間が君のような考えなら戦争などとうの昔に終わっている! そうで無いからこそ、この方法しか無いのだ!!」

 

ペルセウスの斬撃が神器を吹き飛ばす。ハルパーの力に押され、大きな火花を散らしながら地面を滑る神器。

 

「皆で考えて実現する? そんなものは机上の空論! 絵空事の理想論だ!!」

 

ペルセウスが追撃。シールドバッシュで神器の体勢を崩し、ハルパーで斬りつける。

 

<ハルパー!>

<必殺神技!!>

 

神器は咄嗟にクサナギで防御するが、衝撃に耐えきれず後方に吹き飛ばされた。

 

「現実を見ろ」

 

地面を転がり倒れ伏す。その衝撃で神器の変身が解けた。

 

「燈哉!」

 

紗耶が慌てて駆け寄る。

 

「……だよ」

「何?」

 

か細い声にペルセウスが眉をひそめる。

 

「現実ならとっくに見てんだよ!」

 

燈哉が勢い良く立ち上がった。

 

「現実を見た上で出した答えがこれなんだ! 絵空事でも理想論でもない! 俺達なら実現出来る事だ!」

「……何故そう言い切れる」

 

迷いのない燈哉の答えにペルセウスが疑問を抱く。

 

「知ってるか? 数百年前まで俺達は空を飛ぶことも出来なかったんだぜ」

 

燈哉が空を見上げる。そこには澄み渡る青空が広がっていた。

 

「電波で人と会話をする事も。月に行く事だって出来なかった。でもそれを実現したいと考えた人達がいて、自分も、って続く人達がいたんだ」

 

ペルセウスに向けて燈哉が告げる。

 

「きっと皆、最初はこう言われたはずだ。そんなものは机上の空論。絵空事の理想論。現実を見ろ、ってさ」

「……」

 

ペルセウスが黙って話を聞く。

 

「でも、そんな現実を覆して先人達は実現させた。俺達の生活は豊かになった。だから世界平和だってきっと出来る。俺達が諦めさえしなければきっと」

 

燈哉が拳を作り、胸の前で握り込む。不敵な笑みを浮かべてペルセウスを見つめる。

 

「俺は諦めない。最後の最後の最後まで! 世界が平和になるその時まで!!」

「この世界の運命は俺達、皆の手で斬り拓くんだ!!」

 

燈哉の叫びが空に響く。瞬間。空間が歪み未完の杯が出現すると中からカッパレジェスタートロフィーとサーペントレジェスタートロフィーが飛び出した。

 

「!?」

 

ペルセウスが目を見開く。呼応するように燈哉の懐から酒吞童子レジェスタートロフィー等、複数のトロフィーが宙を舞う。そして空中で重なり合い、新たな姿のトロフィーへと変わった。

 

「なんだ……これ!?」

 

呆気に取られる燈哉の元へ、そのトロフィーが飛来する。

燈哉がそれを手に取る。それはゴールドの台座の上に右側に数珠繋ぎの勾玉が左側に翼の装飾に縁取られた鏡が乗ったアームズトロフィー。その両端に曲線状の取っ手がついている。

 

「力を貸してくれるのか……?」

 

その言葉に応えるようにトロフィーが太陽の光を反射し輝いてみえる。まるで燈哉の背中を押しているようだった。

燈哉はそのトロフィーの取っ手を掴むと左右に引っ張り展開。中央が分離してスロットが露わになる。そして、トロフィーが起動した。

 

<ヤタノカガミ!>

<ヤサカニノマガタマ!>

 

そのトロフィーをベルトにセット。さらにクサナギアームズトロフィーの上部を押し込む。

 

<クサナギノツルギ!>

 

中央のスロットにクサナギアームズトロフィーを装填した。 

 

<三位一体!>

 

燈哉がベルトのボタンを押す。瞬間、燈哉の目の前でクサナギが地面に突き刺さる。右側では数珠繋ぎの勾玉が、左側では翼の装飾に縁取られた鏡が漂っている。

 

「変身!」

 

燈哉が力強く叫ぶ。

 

<漲る闘気!>

 

クサナギから放たれた八つの雲が燈哉を包み込みツムカリブレードへと変える。

 

<無敵の剣技!>

 

勾玉と鏡が衛生斯道を描きながら燈哉を、神器を囲み、縁取るように回転する。ツムカリブレードの上から勾玉が首にかけられ、金色の装甲が追加され、白い半透明の布が背後から靡く。それはまるで羽衣のよう。

 

<三種の神器!>

 

鏡が左手に装着され、クサナギが神器の右手に収まった。

 

<仮面ライダー神器!!>

 

すり鉢状の仮面の上から両端を翼の装飾で飾ったバイザーが取付けられ、複眼が希望を燈す黄色に輝いた。

 

<トリニティレガリア!>

 

仮面ライダー神器トリニティレガリア。新たな姿となった神器がクサナギを手に悠然と歩きだす。

 

「なぁ。俺の仲間になんないか?」」

「何?」

 

唐突な神器の言葉にペルセウスは眉を潜める。

 

「正直、世界平和って言っても何していいのか全然分かんない。だから本気で世界平和を目指してるお前の力が必要なんだ」

「!?」

「俺はお前と一緒に世界平和を目指したい。だから改めて勝負だ!」

 

神器が意気揚々と言う。

 

「俺が勝ったら仲間になってもらう。そして一緒に世界平和を実現させようぜ!」

「っ。……ならば証明してみせろ。私に、俺に勝って!!」

「ああ、言われるまでもない。勝ってお前を仲間にする。それが俺の世界平和への第一歩だ!」

 

神器が駆け出す。ペルセウスはそれに身構え、

 

「ふっ!!」

 

近づかせまいとハルパーで斬撃を放つ。神器は左手に装着された翼盾鏡<ヤタノカガミ>を向ける。

 

<鏡収!>

 

「!?……なんだと」

 

鏡の中に斬撃が吸い込まれていく。ペルセウスは驚愕した。

 

「はぁ!」

 

<反鏡!>

 

驚くのはそれだけじゃない。吸い込まれた斬撃が鏡から飛び出し、ペルセウスへと跳ね返っていく。

 

「くっ!?」

 

咄嗟に防御するも、驚きで動き出しが遅かった。ペルセウスの装甲に傷が入る。

 

「今度はこっちの番だ!」

<オニマルクニツナ!>

<鏡収!>

 

神器がヤタノカガミのスロットにオニマルアームズトロフィーをセットし、ボタンを押した。オニマルのエネルギーがヤタノカガミに吸収される。そして、鏡の前にクサナギをかざすと、

 

<反鏡!>

 

ヤタノカガミから放たれた炎がクサナギに纏わりつき、クサナギは炎の剣へと変貌した。

 

「行くぜ!」

 

羽輪玉<ヤサカニ>が輝き、羽衣が白い翼へと変わり、神器が飛翔。ペルセウスへと迫っていきながら炎を纏ったクサナギを振り下ろす。

 

「ぐっ!!」

 

紙一重で剣撃を回避するも、クサナギに纏わりついた高熱の炎がペルセウスの装甲を焦がす。

 

「決着の時だ」

<三種の神器!>

<究極奥義!!>

 

ベルトを操作し、金色のエネルギーが足へと集約される。神器は翼を広げると高く跳躍。渾身の蹴りを放った。

 

<アイギス!>

<必殺神技!!>

 

対するペルセウスはアイギスにトロフィーをセットし、必殺神技で迎え撃つ。アイギスが輝き、エネルギーの壁が何層も出現。神器はそれに構わず一直線に突き進んでいく。やがて、壁に激突。凄まじい衝撃が周囲に広がった。

 

「はあああああ!!!!」

「うおおおおお!!!!」

 

二人の叫びが木霊する。威力は神器が上。だが、複数の壁が何層も重なり、突破出来ない。

 

「まだだ!」

<オニマルクニツナ!>

<ジュズマルツネツグ!>

<ドウジキリヤスツナ!>

<鏡収!!>

 

続けざまに複数のトロフィーをヤタノカガミに装填する。そして、

 

<反鏡!!>

 

放たれたエネルギーが神器の足に纏わりつき威力を増していく。エネルギーの壁に亀裂が入った。

 

「うりゃああああーーー!!!」

 

そして壁が木っ端微塵に砕け散り、神器はそのままペルセウスの懐へ。胴に蹴りを叩き込まれ、体をくの字に曲げて吹っ飛ぶペルセウス。地面を転がり変身が解けた。

 

「私の負けか……」

 

地面に倒れながら英雄が言う。言葉とは裏腹に清々しい表情だ。起き上がると変身を解除した燈哉が立っていた。

 

「よし! これから俺達は仲間だ! よろしくな!!」

 

破顔して手を差し出す。英雄はその手を取ろうとして、

 

「!?」

 

手の動きを変え、燈哉を突き飛ばす。突然の事に驚き、燈哉の視界がスローモーションになった。刹那、鮮血が英雄の背中から飛び出し、空中を舞う。英雄の体が崩れ落ち、燈哉が尻もちをつくのとほぼ同時に地面に着いた。英雄の周りに血溜まりが広がる。

 

「おい。何やってんだよ」

 

英雄に駆け寄りながら声をかける。英雄にではない。その後方にいる存在にだ。鋭い眼光を前髪のすき間から見せ、燈哉は睨む。

 

「アスク!!!!」

 

視線の先には未完の杯を手にしたアスクがこちらを見下ろしていた。

物語は急転直下。それを指し示すように空には暗雲が広がり始めていた。

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