仮面ライダー神器   作:puls9

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第四十三節 抜刀、最終決戦!!

アスクによる世界へ向けた宣戦布告から数時間後。門出市を中心に世界全体がざわめきつつある中、卓人は自宅の食堂にいた。

あの後一度英気を養ってから合流し、決戦に望む。話し合いでそう決まったからだ。お気に入りのブレンドを口元に運び、味わう様に飲む。リラックス出来ているようで口は弧を描いていた。彼の目の前、上座には父、聖葉 勇人の姿がある。こちらは対称的に緊張した面持ちだった。

 

「大丈夫、父さん?」

「あ、あぁ。問題ない。人々の避難活動は任せてくれ」

「うん。お願いするよ。大丈夫、僕達なら世界だって救える」

 

迷いなくそう言い切る卓人の言葉に勇人の中の不安が霧散していく。とその時、電子音が鳴る。約束の時間だ。タイマーを止め、卓人が立ち上がった。傍らに控えていた流川がコートを持ってくる。それを受け取り、礼を言う。

 

「あ、そうだ流川。シェフに伝えておいて欲しいんだけど」

 

コートを着ながら卓人は流川に目を向けた。

 

「なんでございましょうか?」

「今晩は僕の料理は要らないって言ってもらえるかい。終わったらみんなで打ち上げの予定なんだ」

 

流川の目が一瞬だけ丸くなる。だがすぐに気を取り直すと、ふっと微笑む。そして改めて卓人を見る。その顔は真剣そのもの。自分達が負ける事など微塵も考えていない事の証左だ。

 

「かしこまりました」

「じゃあ行ってくるよ」

「行ってらっしゃいませ、坊ちゃま」

 

家を後にする卓人の背に流川は礼儀正しくお辞儀した。

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。キッチン大洗の奥。住居スペースの神棚に桃はいた。行儀よく正座して、鐘を鳴らして、数珠を手に目を瞑ってお祈りをする。やがて鐘の音が止み、桃は静かに目を開けた。

 

「桃ちゃん……」

 

顔を出したのは成都。不安気な表情を浮かべてソワソワと落ち着きがない。そんな彼に苦笑しながら、安心させるように桃は笑う。

 

「何不安がってるの。この戦いが終わったら忙しくなるんだからね!」

「えっと……どういう事?」

 

頭に疑問符を浮かべ、成都は首を傾げた。すかさず桃が一枚の紙を取り出し見せつける。それは真新しいポスターだった。ポスターを受け取り、成都は内容をあらためる。

 

「えーと、世界救済……セール?」

「そ。世界が救われたってなったら、うちがいの一番にセールするの。そうすればこの店ももっと繁盛するでしょ?」

 

桃はイタズラっぽくウインク。以前の彼女ならこんな表情は浮かべなかっただろう。それを認識して成都の口も綻んだ。

 

「そうだね。このポスターたくさんコピーしておくよ!」

「仕込みも忘れないでね」

 

桃は玄関まで歩いていく。

 

「それじゃ、勝ってくる」

 

サムズアップを決めながら桃は決戦の地へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「やっぱすぐには目覚めないよな」

「当然だろう」

 

病室の中。豪人と白正がいる。二人の視線の先には未だ目覚めぬ英雄がベッドの上で眠っていた。腕には点滴、口には酸素マスク。絶えず脈を測る電子音が響いている。しかし、微動だにせぬまま眠る英雄の姿に、二人はもしかしたら一生このままではないか?という不安がよぎってしまう。だがすぐに考え直し、互いに決意の眼差しを見せた。

 

「勝ちてぇな」

「そうだな。天鎧さんが目覚めた時、良い報告が出来るよう最善を尽くすぞ」

「おうよ!」

 

二人は並んで病室を後にした。だから気が付かなかった。眠る彼の指が微かに動いた事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろトーヤ達も動き出す頃みたいだね。ヘル、お願い」

 

塔の中。玉座に座りながらアスクが言う。彼の手には未完の杯。そこから映し出された映像を見ながら合図を送る。

 

「かしこまりました。アスク様」

 

そう言うと、霞かかった麗人、ヘル・レジェスターが杖を掲げた。魔法陣がいくつも足元に展開。するとその魔法陣から無数の人影が湧き出してくる。それは体全体に包帯を巻いた模様をした怪人だった。大きく開いた口から鋭く大きな牙がむき出しになっている。

 

「さぁ、お行きなさい。ワタシのグール・レジェスター達!」

 

包帯を巻いた怪人、グール・レジェスターがユラユラとおぼつかない足取りで塔の外へと歩き出していく。

 

「ふふふ」

 

ヘル・レジェスターはそんな彼らの後ろ姿を見ながら笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

噴水のある広場。いつもは賑わっているその場所は閑散としていた。世界の危機なのだ。集まる人など基本いない。彼らを除いては。ベンチには燈哉と紗耶が並んで座っている。

 

「思えば遠くまで来たよなぁ」

「え?」

「俺が仮面ライダーになった時もここで待ち合わせしてたなって、思い出してさ」

 

懐かしむように燈哉は遠くを見つめる。その横顔を見て、紗耶はどこか寂しい気持ちになってしまった。

 

「フラグを立てるつもりはないんだけどさ。俺、この戦いが終わったらまた世界を旅しようと思ってるんだ」

 

紗耶の目が見開かれる。せっかく結ばれたのに離れ離れになる事など想像すらしていなかった。無意識に彼女の手がゆっくりと燈哉へと伸びていく。

 

「だからさ」

 

燈哉が紗耶へと体を向けた。そして、こちらへと伸びる彼女の手を取った。優しく包み込むように両手で掴む。彼の顔は真剣そのもので目は真っ直ぐに紗耶を見つめている。

 

「一緒に来てくれないか?」

「私と?」

「あぁ。一人で回るのも楽しかったけど、紗耶と一緒ならもっと楽しいと思うんだ」

 

燈哉は破顔して笑う。そんな彼につられて紗耶も微かに微笑みを作った。

 

「うん! 私も燈哉と一緒にいたい!」

「紗耶……!」

 

見つめ合う二人。その距離は少しずつ縮まっていく。やがて両者の唇が触れ合う直前まで迫り、唐突にがさりと葉が擦れ合う音で打ち止めとなった。ギギギッと油の切れた機械のように首だけを動かし、音の方を見る。

 

「ちょっと! 今良い所よ!」

 

と、携帯のカメラを燈哉達へ向けた桃。

 

「悪ぃ、足がぶつかっちゃった」

 

と、頭を掻く豪人。

 

「何をやってるんだ……」

 

と、呆れ顔で腕を組む白正。

 

「やぁ二人共。邪魔してごめんね。続けてくれて構わないよ」

 

こちらに気付き、片手を上げて応じる卓人。瞬間、二人の顔が朱色に染まる。

 

「い、いいい、いつからそこに!?」

「思えば遠くまで来たよなって辺りから」

「最初からじゃねぇか!!」 

 

燈哉がツッコミを入れる。

 

「うぅ。恥ずかしい……」 

両手で顔を覆い隠す紗耶。耳まで真っ赤だ。

 

「さて。燈哉達をいじるのはここまでにして、そろそろ向かおう」

 

卓人が顔を上げる。それに釣られてその場の全員がそびえ立つ塔を見上げた。

その時、悲鳴が上がった。皆の視線が集中する。視線の先には逃げ惑う人々とそれを追いかける無数のグール・レジェスター達。

 

「レジェスター!?」

「アスクがまた新しい奴を生み出したのかも」

「何にせよ行くしかないな」

 

五人が一斉にトロフィーを取り出した。

 

<ムラマサ!>

<カリバーン!>

<レイエンキョ!>

<エッケザックス!>

<ガーンデーヴァ!>

「「「「「変身!!」」」」」

 

五人の前に武器が突き刺さる。そして、装甲を纏い変身を遂げた。各々の武器を手にグール・レジェスターへと向かっていく。

 

「ハアッ!」

 

神器がムラマサで縦斬り。一刀のもとに斬り捨てた。

 

「フッ!」

「ヤッ!」

 

ラウンダーがカリバーンで一閃。その傍らで天華がレイエンキョで数体を氷漬けにする。

 

「おらおら!!」

「フンッ!」

 

軽快なステップで斬り伏せるシズレク。人々に迫る個体を正確に撃ち抜いていくアヴァターラ。

五人のライダーが次々とグール・レジェスターを撃破していく。だが、

 

「全然減らない!?」

 

その数は膨大だった。すでに一人二桁は倒しているにも関わらずその数はむしろ増える一方だ。

 

「仕方がない。お前達、ここは俺が引き受ける。進め!」

 

アヴァターラが叫ぶ。その言葉に残る四人が彼を見る。

 

「このままでは時間を無駄にするだけだ。アスクさえ倒せば問題は解決する」

「なら俺も残るぜ。ここにいる人達も放っておけないしな」

 

シズレクがグール・レジェスターを斬りながら言う。

 

「分かった。なら君達が残って人々を守る。僕達は塔へ行ってアスクを討つ。それで行こう!」

 

ラウンダーの提案に全員が頷いた。神器は紗耶へと顔を向けた。

 

「紗耶! お前は天鎧さんの所に居てくれ。頼んだぜ!」

 

そう言うと紗耶へカイノクロコマトロフィーを手渡す。

 

「分かった。任せて」

 

力強く頷き、紗耶は病院へと駆け出した。

 

「俺達も行こう!!」

 

神器とラウンダー、そして天華はグール・レジェスターを無視しながら塔へと駆けていった。勿論追いかけようとするグール・レジェスター達。その背中を炎の矢が射抜き、剣が斬り裂く。

 

「おっとお前らの相手は俺達だぜ?」

 

その行く手をシズレクとアヴァターラが阻む。

 

「いいや。お前達の相手はオレ様だ!!」

 

青い影が屋根から屋根へと飛び移り高く跳躍。二人の前に砂埃を舞い上げて着地した。

 

「ここでお前かよ……」

「厄介だな」

 

その正体はフェンリル・レジェスター。こちらを見て、好戦的な笑みを浮かべいる。二人は武器を構え直し、倒すべき強敵を見据えた。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

病院にたどり着き、玄関前で紗耶は息を整える。その背後で鋭い悲鳴が響く。

 

「えっ?」

 

振り返るとそこには両手の蛇をくねらせ愉快に笑うヨルムンガンド・レジェスターの姿。紗耶の顔を冷や汗が伝う。

 

「さぁて、トロフィーと手負いの獲物。一挙両得と行きましょうか」

 

ヨルムンガンド・レジェスターが一歩足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

「ここか……」

 

道行くグール・レジェスターを無視して、神器達は遂に塔へとたどり着いた。彼らの目の前には誂え向きな入り口がある。だが、そこには上へ続く階段と下へ降りる階段の二つがあった。

 

「どっちだ、これ?」

「普通に考えたら上だとは思うけど、あえて下の可能性も否定出来ない」

「!? 二人共!」

 

頭を悩ませる神器とラウンダー。その二人の肩を叩き、指を指す。すると、下へ降りる階段からグール・レジェスターが登ってきた。彼らは塔の外へと出て、三人の前に迫る。

 

「どうやらあのレジェスターは下からくるようだね」

「……二人共。私は下へ降りる。二人は上へ登って」

 

迫るレジェスターを斬り伏せるながら、天華が言う。

 

「どっちに本命がいるか分からないなら、二手に分かれた方が効率がいいでしょ?」

「そうだね。そうしよう」

「こっちにいなかったらすぐに引き返す。無理すんなよ!」

「それはこっちの台詞よ」

 

神器とラウンダーは上へ。天華は下へと降りていく。そして、三人の姿が見えなくなった後。人影が入り口に姿を現した。

 

「……」

 

無言のまま人影はそのまま階段へと進んで行き―――。

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