仮面ライダー神器   作:puls9

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第五節 竜宮城、海戦

「ただいま」

 

空洞から外へ。変身を解除し、燈哉が戻ってくる。向かう先には紗耶と桃がいる。

 

「燈哉。どうだった?」

 

すかさず紗耶が聞いてくる。その表情は不安と期待が入り混じっていた。

 

「おう、完璧だ。このトロフィーがあれば何とかなる」

 

そう言ってシルバーの台座の上に日本刀が突き刺さった青色のトロフィーを見せる。それを受けて紗耶の表情がみるみる晴れていく。

 

「それじゃ、行くよ」

 

桃が歩き出そうと一歩踏み出す。

 

「ちょっと待て」

 

そう制したのは燈哉だ。振り返る二人に燈哉は遠くを指差す。そこにはカッパレジェスターが一体さまよっていた。

 

「なぁ、美鶴城。あれ顔以外氷漬けに出来るか?」

 

燈哉が提案する。

 

「もちろん」

 

桃は意図が読めたのか肯定する。

そして、二人はトロフィーを取り出し、変身。神器と天華となりカッパレジェスターへと向かっていった。

 

 

 

 

 

福津市の海底。そには北欧風の宮殿が広がっていた。

その宮殿の中で豪華な椅子に怪人が腰掛けている。頭にはイカのような鰭、顔にはタコのような口、手は数多の触手でできている。その姿は近世ノルウェーで語り継がれた海の怪物、クラーケンそのもの。

 

「クックック」

 

クラーケンレジェスターは酒の入ったグラスを持ちに愉快そうに笑う。その周囲には若い少女達を侍らせている。だが、彼女達の表情はとても暗い。なぜなら、彼女達はいずれも町から攫われてきたからだ。その為、クラーケンレジェスターの触手が彼女達の四肢に触れる度、恐怖から小刻みに震えている。

 

「クラーケン様。大変です!」

 

そう言って入った来たのはカッパレジェスター。しかし、今までの個体より位が高いのか、鎧を身に着けていた。

 

「どうした?」

「それがこの町にまた新たな仮面ライダーが現れたのだとか」

 

クラーケンレジェスターはその報告を聞いても動じなかった。それどころか、興味なさげな顔をしていた。

 

「放っておけ」

「しかし」

 

カッパレジェスターが食い下がる。

 

「問題ない。どれだけ強かろうがどうせここまで辿り着けんのだ。気にするだけ無駄である」

 

クラーケンレジェスターの言葉にカッパレジェスターは納得したのか笑顔になる。

 

「それもそうですね」

「そうだろう、そうだろう」

 

クラーケンレジェスターも笑みを浮かべる。そして、二体は笑いあった。

 

 

 

 

 

「で、知ってる事はこれで全部か?」

 

水勢寺のある山の麓。神器と天華が対峙しているのは、顔以外を氷漬けにされたカッパレジェスター。その鼻先にムラマサを向けながら、神器が問いかける。

 

「へい! これで全部でございやす」

 

カッパレジェスターが青い顔で必死に答える。

 

「クラーケンレジェスター。それが敵の親玉、か」

 

天華が呟く。

 

「まぁ。なんにせよ、竜宮城に空気があるって分かったのは大収穫だな」

 

神器が嬉しそうに言う。竜宮城に空気があるという事は、拐われた人達が生きている可能性が高いという事だからだ。

 

「それは確かに」

 

傍らに立っていた紗耶も同意する。

 

「それにしても何で人を拐ってんだ?」

 

神器がカッパレジェスターに尋ねる。

 

「あー。……それが、その」

 

言い淀むカッパレジェスター。

 

「クラーケンレジェスターの旦那。無類の女好きでありやして……」

 

恐縮した様子のカッパレジェスター。それを聞いて両者の間に何とも言えない空気が流れる。

 

「ちなみにお前らは何でクラーケンレジェスターに協力してるんだ?」

「いやー、それは……。」

 

またしても言い淀み、目を泳がせるカッパレジェスター。そして観念したようにため息をつくと口を開いた。

 

「旦那に協力すると良い思いが出来るって聞いて、参加してるんです」

「心底クズ野郎ね」

 

間髪入れず天華が吐き捨てるように言う。紗耶も言葉には出さないものの表情は明らかに嫌悪を示している。

 

「それで、このレジェスターはどうするの?」

 

紗耶が聞く。カッパレジェスターは現在全身凍りつき身動きが取れなくなっている。しかし、その氷は少しずつ溶けて行っているようだ。このまま放っておけばいずれ動けるようになるだろう。

そうなれば再び逃げ出す可能性だってあるのだ。

 

「あの! あっしはつい最近入ったばかりで、大層な悪事は働いていやせん!」

 

カッパレジェスターが情けない声を上げ、懇願するような視線を向ける。

 

「もう二度と悪い事はいたしやせん。この通りです! どうか見逃してくだせぇ!」

 

必死の形相で訴えるカッパレジェスター。だが、それを見る女性陣の視線は冷い。

 

「……本当にもう悪い事はしないんだな」

 

神器がまっすぐカッパレジェスターを見つめる。カッパレジェスターはその眼差しを受け止めると力強く答えた。

 

「へい! 約束いたしやす!」

 

それを聞いた神器はムラマサを振り下ろす。カッパレジェスターを覆っていた氷が砕け散る。自由になった身体を確かめるかのように軽く動かすと、改めて神器に向き直った。 

 

「ありがとうございやす!」

 

カッパレジェスターは深々と頭を下げ、足早に去って行った。その姿が見えなくなるまで三人は無言のまま見送り続けた。

 

「……まさか本当に見逃すとは思わなかった」

 

天華がぽつりと言う。その声音からは非難の色が感じられる。

 

「何が言いたいんだよ?」

 

神器が聞き返す。

 

「あんたは甘いって言ってるの」

 

天華がキッパリと言い放つ。

 

「レジェスターはどこまで行ってもレジェスター。たとえ今は反省してても、またいつか同じ事をする」

 

神器はそれを聞くと頭を掻きながら言う。

 

「それはそうかもしんねぇけど、あの目を見たろ? あいつなら大丈夫だと思う」

 

神器はそう言うと拳を握る。そして、天華を見る。

 

「俺はあいつを信じる。そう決めた」

 

神器が仮面の奥で笑う。その笑顔を見て天華はため息を吐く。

 

「……もしあいつがまた悪事をしたらどうするつもり?」

「その時は俺が責任を持って倒す。被害にあった人達にも土下座して謝る。それでも足りないなら、俺の命だってくれてやる」

 

神器が迷い無く言い切る。

 

「……その言葉忘れないでね」

 

天華が神器を真っ直ぐ見て言った。神器もまた天華を見返し、大きくうなずく。

 

「よーし! そんじゃあ、竜宮城攻略といきますかぁ!」

 

神器が元気よくそう叫んだ。

 

 

 

 

 

福津市の海岸。その砂浜の前に変身を解除した燈哉と桃、その後ろに紗耶が立っていた。

 

「この海の底に竜宮城があるのか……」

 

燈哉は呟くように言った。

 

「そう……みたいだね」

 

紗耶が緊張気味に答える。

 

「それで、どうするつもり?」

 

桃が問う。その言葉に燈哉は待ってましたとばかりに笑みを浮かべる。

 

「これを使うんだよ」

 

そう言って取り出したのは水勢寺で手に入れたトロフィーだった。燈哉はそのトロフィーの上部を押し込む。

 

<ジュズマルツネツグ!>

 

そして、トロフィーをベルトにセット。

 

「変身!」

 

勢いよくベルトのボタンを押す。瞬間、トロフィー右横のプレートが展開。

 

<水勢!推進!遂行!水剣の戦士!!>

 

燈哉の目の前に柄が数珠模様になった日本刀が出現。刀より放たれた水が藍色の鎧となって燈哉を包み込む。そして、最後に数珠を模した兜飾りの輪っかが仮面に貼り付く。

 

<ジュズマルウォーター!>

 

神器となった燈哉は目の前に突き刺さった刀、水剣<ジュズマル>を手に取る。そして、虚空に円を描くように振るう。するとジュズマルより大きな泡が出現。

 

「この泡には酸素が入ってる。強度もあるから人が入る事も出来る」

 

そう言って神器が二人を見る。

 

「つまり、この中に入って海中を移動する。そう言うことね?」

 

合点がいった桃が興味津々に泡を見つめる。

 

「おう、その通り! この姿なら水の中でも息出来るっぽいから、俺がお前を押していく」

「わかった」

 

言うが早いか、桃はトロフィーを取り出し、変身する。

 

<レイエンキョ!>

「変身」

<月夜の青龍!!氷!氷!氷!>

<レイエンキョフリーズ!>

「立脇、よろしく」

 

天華となった桃が両手を広げ受け入れ体勢をとる。

 

「了解」

 

神器は再びジュズマルを振るう。刀より出た泡が天華を包む。

 

「紗耶は安全な所に隠れててくれ」

 

そう言い残し、神器と天華は海へと沈んでいく。

海中をしばらく沈んでゆくと、やがて宮殿が見えてきた。

 

「あれが……竜宮城!」

 

海底にたどり着くと二人は近くにあった岩場に隠れ、様子を伺う。竜宮城の入口前には門番の役割を担うカッパレジェスターが二体立っていた。

 

「見張りか。厄介だな」

 

神器が呟く。

 

「私にいい考えがある」

 

そう言うと泡にレイエンキョを突き立てる。そして、内側から凍りつかせ氷の球が完成。

 

「立脇。蹴り飛ばせ」

「おう、任せろ!」

 

神器がトロフィーを押し、ベルトを操作。

 

<ジュズマルツネツグ!>

<必殺奥義!!>

 

海流がエネルギーと共に足に伝播。そのエネルギーを乗せ、氷の球を蹴り飛ばす。

 

「行っけぇ!!」

 

蹴られた氷の球は一直線にカッパレジェスターへ飛んでいき、二体まとめて吹っ飛ばし、消滅させる。その衝撃で球が砕け、中から天華が出てくる。

 

「よし! 上手く行ったな」

 

神器もすぐさま泳いで入口に到着。天華はレイエンキョを振るい扉を破壊。

 

「行くわよ」

 

そして、二人は内部に侵入した。竜宮城の内部は幻想的な空間が広がっていた。まるで水族館のような通路や部屋があり、壁には珊瑚礁を思わせるような装飾が施されていた。

そして、その通路を二人は駆けていく。その足取りに迷いは無い。

 

「やっぱ、情報収集しといて正解だったな」

 

先程のカッパレジェスターからあらかじめ竜宮城の間取りを聞いていた事が功を奏したのだ。

 

「作戦通り、あんたが囮になってカッパレジェスター達を叩く」

「その隙に、お前がクラーケンレジェスターを倒す。だろ?」

 

天華の説明を神器が引き継ぐ。

互いに確認が済むと、神器が天華を置いて先に進んでいく。そして、近くにいたカッパレジェスターに斬りかかる。

 

「し、侵入者!?」

 

驚くカッパレジェスターに、神器がジュズマルを振り下ろす。咄嗟の攻撃を受け、カッパレジェスターが消滅。

しかし、騒ぎを聞き付けて他のカッパレジェスター達が集まってくる。

 

「さぁ、来いっ!」

 

神器がジュズマルを構え、カッパレジェスター達に向かっていく。

それを尻目に天華は通路を進む。

やがて、豪華な扉がついた部屋の前にたどり着いた。その部屋こそがクラーケンレジェスターがいる場所だ。

 

「ここね」

 

天華はそう言うと扉を開け、中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

天華が部屋に入ると目の前には玉座があった。そこに腰掛けているのはクラーケンレジェスター。

 

「まさかここまでたどり着くとはな。どんな手を使ったのか知らんが褒めてやる」

 

クラーケンレジェスターが不敵な笑みを浮かべながら立ち上がる。

 

「あんたの称賛なんていらない。その変わり、あんたの命ここで断ち切ってあげる」

 

天華がレイエンキョの切っ先を向け、臨戦態勢に入る。対するクラーケンレジェスターは天華を見てニヤニヤと下卑た笑みへと表情を変えた。

 

「ほう、その声。貴様、女か。」

 

そう言うとクラーケンレジェスターは体にある全ての触手を広げ始める。

 

「安心せよ、殺しはせぬ。貴様は我が可愛がってやろう!」

 

広げていた触手が一気に天華に向かって襲いかかった。

 

「ちぃ!」

 

レイエンキョを振り回し、次々と触手を捌いていく。しかし数が多すぎた。切っても切っても湧いてくる触手により徐々に追い込まれる。

 

「しまった!」

 

そして、ついに触手が天華を捕らえた。両手両足に絡みつき、大の字のまま動きを固定される。必死にもがくも全く振り解けない。

 

「クックック。いい眺めだ」

 

クラーケンレジェスターは残った触手をしならせ、鞭のように次々と打ち付ける。

 

「ぐぁっ……!!」

 

触手で打たれるたびに鎧が火花散り、体に激痛が走る。仮面の奥で苦痛の表情を浮かべながら、天華は歯を食いしばる。

その様子を見たクラーケンレジェスターはさらに攻撃の手を強める。天華の首に触手を巻き付け、締め上げる。

 

「ぐぅ……!あっ……がっ……がぁっ!!!」

 

首への圧迫感に耐えきれず苦悶の声を上げる。気道が塞がれ呼吸ができない。やがて、意識が遠退いていき視界が霞んでいく。

 

(まずい……。このままじゃ……)

 

 

 

 

 

 

「ハァッ!!」

 

竜宮城のどこかの通路。神器がカッパレジェスターの軍勢を相手に奮闘していた。神器がジュズマルを振るう。刀から放たれた大量の水がカッパレジェスター達を押し戻す。

 

「やっとこの力に慣れてきたぜ」

 

神器がジュズマルを見ながら言う。

 

「おのれ……仮面ライダーめ!」

 

カッパレジェスターの一人がそう言って槍を手にし突進してくる。神器はそれをひらりとかわす。そしてジュズマルを地面に突き立てる。すると地面から流れ出した水柱がカッパレジェスター達を囲むように出現。そのままカッパレジェスター達に襲いかかる。

 

「ぐわっ!?」

「ぬおっ!?」

 

吹き飛ばされ倒れるカッパレジェスター達。

 

「これで終わりだ!」

 

<ジュズマルツネツグ!>

<必殺神技!!>

 

ジュズマルが水を纏い、エネルギーが集中する。

 

「ハァッ!!」

 

凄まじい程の力で圧縮された水の刃がカッパレジェスター達を切り裂く。

 

「ギャアアッ!!!?」

 

断末魔を上げ、カッパレジェスター達が消滅する。しかし、すぐさま別の足音が迫る。

 

「新手か……」

 

目の前には新たなカッパレジェスター達の姿があった。

 

(こっちに沢山集まれば、それだけ美鶴城の方が楽になる)

「来るなら来やがれ!」

 

神器がジュズマルを構え、叫んだ。

 

 

 

 

 

 

玉座のある部屋で、天華が窮地に立たされていた。触手により四肢は拘束され、呼吸すらギリギリの状況。さらに、蓄積されたダメージのせいで体の力も抜け始めている。

 

「どうやら決着はついたようだな」

 

触手の主、クラーケンレジェスターが勝ち誇ったように言う。

 

(どうする? 何か状況を打開する手は?)

 

天華が目だけを動かして周囲を見る。すると、部屋の片隅でひと塊となって震えている女性達の姿があった。その絶望に染まった瞳と目があった。

瞬間、

 

「この! 死ね!!」

「お前こそ、くたばれ!」

 

天華の脳裏に響くのは汚く罵り合い、傷付け合う男女の声。

 

「パパ……ママ……やめて……」

 

そう叫ぶのは幼き日の自分。桃は無意識に歩み出す。

 

「だーめ。危ないから近寄ってはいけないわよ」

 

耳元でそう囁くのは血のように赤いチャイナドレスの美女。女は口元に笑みを浮かべ、桃の肩に手を置き、歩みを阻む。

 

「あ……あ……ああ」

 

体は小刻みに震え、歯の根は合わない。目尻に溜まった涙が頬を伝ってこぼれ落ちる。

そして、喧騒は止んだ。桃の目の前には血溜まりが広がっていった。

 

「違う」

 

仮面の奥で桃は、天華はそっと呟く。

 

「もう、あの時の何も出来ない私じゃない」

 

天華は渾身の力を両腕に込める。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

叫び声と共に、拘束されていた腕が徐々にベルトの方へ動き出す。

 

「なんだと!?」

 

クラーケンレジェスターは驚愕し、慌てて触手に力を込める。だが、天華は止まらない。

 

「ならば!」

 

他の触手をしならせ、鞭の如く打ち付ける。しかし、それでも天華は止まらない。ベルトまであと数センチだ。

 

 

「そんな馬鹿な!?」

 

動揺したクラーケンレジェスターの動きが止まる。すべての痛みを堪えて、天華の両腕がベルトへと届く。

 

<レイエンキョ!>

<必殺奥義!!>

 

天華の全身を冷気が覆う。体を伝い、触手が氷つき始める。

 

「まずい!!」

 

クラーケンレジェスターは慌てて拘束を解く。

自由となった天華が着地と同時に走り出す。クラーケンレジェスター目掛けて一直線。

 

「調子に乗るなぁ!!」

 

怒号とともに無数の触手が再び伸びてくる。天華はそれを最小限の動きでかわし、捌いていく。

 

「このぉ!!」

 

焦るクラーケンレジェスターの攻撃はさらに激しさを増す。しかし、天華はその全てを躱す。

 

「なぜ当たらん!?」

 

クラーケンレジェスターが足元を見て驚く。床一面が氷で埋め尽くされていた。天華はその床をさながらスケートのように滑っているのだ。

 

「これで終わり!!」

 

天華がレイエンキョにトロフィーをセットする。

 

<レイエンキョ!>

<必殺神技!!>

 

レイエンキョを前に突き出し、飛び込む。体を捻り、錐揉み回転を加えた一撃がクラーケンレジェスターを貫く。

 

「ぐわああああ!!」

 

断末魔を上げ、クラーケンレジェスターが消滅。天華もまた、力を使い果たし着地すると同時に変身が解ける。

 

「もう……大丈夫」

 

片膝をつき、桃は部屋の片隅にいた女性達に笑いかける。女性達は安心したのか互いに抱きしめ合い泣き出した。

 

「美鶴城、無事か!」

 

そこへ扉が開き、神器が顔を出す。その背後には囚われていた人達の姿があった。

 

「ええ。なんとか」

 

桃が答えると、神器は安心したように息をつく。桃はゆっくりと立ち上がる。

 

「そっちも片付いたみたいね」

「おう。ついでに囚われた人達も探してきた」

 

神器はそう言うとサムズアップする。

 

「そう。それじゃ、帰るわよ」

 

桃の言葉に一同から歓声があがった。

 

 

 

 

 

 

夕焼けに照らされた福津市の海岸。囚われていた人々が互いを抱きしめ合いながら、喜びを分かち合っている。

燈哉と桃はそれを遠巻きに見守っていた。

 

「燈哉!」

 

そこへ紗耶が駆けてくる。その後ろから成都もゆっくりと歩いてきた。

 

「桃ちゃん、大丈夫!」 

 

成都が心配そうに声をかける。桃の体には痛々しい傷跡が残っていた。

 

「平気。これぐらい何ともない」

 

桃はいつものようにクールな表情で答える。そして、燈哉の方を向く。

 

「今回は助かったわ」

 

桃はそう言うと踵を返し歩き始める。成都も慌ててついていく。

意外な言葉に燈哉は目を丸くするも、すぐに笑顔を浮かべる。

 

「おう! またどっかで会おうぜ!!」

 

その背中に向けて手を振る。

二人の姿が見えなくなるまで見送ると、燈哉と紗耶は互いに顔を見合わせる。

 

「さて……俺達も帰るか!」

 

燈哉の言葉に紗耶は大きくうなずく。そして、二人は歩き出した。

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