仮面ライダー神器   作:puls9

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第七節 酩酊の息吹、求めるべき強さ

「いざ尋常に勝負と行こうかのう」

 

辺りにアルコールの匂いが立ち込める。大剣を手に酒呑童子がゆっくりとこちらへ迫る。

神器達も武器を構え直し、臨戦態勢を取った。

だが、突如として全身の力が抜ける。

咄嗟に片膝を着いて崩れ落ちるのを阻止。何とか踏みとどまった。

 

「何だ!?」

 

頭がぼんやりとして、瞼が重くなり、目の焦点が定まらない。体からは込み上げるような強い吐き気に襲われる。それはまるで酒に酔ったかのように。

 

「くっ!?」

「これは!?」

 

左右を見回すとラウンダーと天華もまた片膝を着き、口元を抑えている。

 

「クハハハハハ! 恐れ入ったか、仮面ライダー共。これぞ棟梁の酩酊の息吹。その匂いを嗅いだ者は動く事すらままならぬのだ!」

 

まるで自分の事の様に勝ち誇りながら茨木童子が言う。

だが、よく見ると茨木童子達、鬼大五将の面々の顔色は悪い。星熊童子、虎熊童子はうつ伏せに寝転がり、金熊童子、虎熊童子は両手で口を押さえて嘔吐を我慢している様子である。

 

「いや……何でお前らまで効いてるんだよ!?」

 

神器が呆れた様に呟いた。

 

「仕方ないだろう! 棟梁の力は規格外。俺様達ですら足元にも及ばぬのだ」

 

顔を真っ青にした茨木童子が叫ぶ。

 

「故に貴様らが棟梁に勝てるはずもない! さっさと諦めるがいい!」

 

そうしてる間にも酒呑童子の歩みは進んでいる。酒呑童子は鼻歌を歌いながら余裕綽々といった様子だ。

 

(まずい……このままじゃ)

 

神器が仮面の奥で歯噛みする。そして、今ある力を振り絞り、オニマルを横薙ぎに振るう。炎の刃が壁の様に酒呑童子の視界を塞ぐ。

 

「二人共、走れ!」

 

神器が叫びながら回れ右して走り出す。

 

「「!?」」

 

突然の行動に驚くが、すぐに状況を理解したラウンダーと天華は、慌ててその後を追った。

やがて炎の壁が消滅すると、そこには既に神器達の姿はなかった。

 

「ふむ。逃げたか……」

 

酒呑童子が残念そうに呟く。だが、すぐに笑顔を作り直す。

 

「まぁ、よい。こういう時は呑むに限る。お前達、共をせよ」

 

踵を返し、酒呑童子は鬼大五将に声をかける。

 

「「「「「えっ!?」」」」」

「……何か不満か?」

 

明らかに嫌そうな反応を示す鬼大五将に対して、酒呑童子はギロリと睨みつける。

 

「「「「「いえ、滅相もございません! 喜んで同席させていただきます!!」」」」」

 

冷や汗を流しながら必死に取り繕う鬼大五将。彼等は、酒呑童子には逆らえない。

 

「行くぞ」

 

その様子に満足げな笑みを浮かべ、酒呑童子は、五体を伴いその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

キッチン大洗の扉が勢い良く開け放たれ、燈哉達がおぼつかない足取りで中に入ってくる。

 

「燈哉!?」

 

紗耶が慌てて立ち上がり、その肩を支える。顔色は悪く、明らかに疲弊していた。傍らでは成都が卓人と桃を介抱している。

 

「悪い、水を持ってきてくれないか?」

 

息も絶え絶えな様子で燈哉は言う。

三人の様子から只事ではないと感じたのか紗耶と成都の顔つきが変わる。

 

「僕が持ってくるよ」

 

成都が急いで台所へ駆けていく。程なくして、水の入ったコップを三つ、お盆に乗せて戻ってきた。

 

「ありがとうございます……!」

 

礼を言いながら、燈哉は受け取った水を一気に飲み干す。同じ様に卓人と桃もコップを受け取り、口を付ける。そして、店内に静寂が訪れる。最初に言葉を発したのは桃だった。

 

「手も足も出なかった……」

 

コップを握りしめながら桃は絞り出すように言った。その表情には悔しさが滲んでいる。

 

「それどころか戦いの土俵にすら立ててなかった」

 

燈哉もまた拳を強く握る。

 

「……あれが金色のトロフィー。上級レジェスターの力……か」

 

先程の戦闘を思い返し、卓人が呟く。その声音からは絶望感が感じ取れた。

 

「それって……負けたってこと……ですか?」

「あぁ。正直言って、勝てる気がしないね」

 

卓人は自嘲気味に笑う。その言葉に燈哉と桃は沈黙する。

 

「何か……打開策はないんですか?」

 

恐る恐るといった調子で紗耶が訊ねる。

 

「無いね」

 

卓人が即答し、再び沈黙が流れる。

重苦しい空気の中、

 

「あっ! だったら、新しいトロフィーを探すのはどうかな?」

 

沈黙を破り、声を上げたのは成都だった。

 

「残念だけど無理」

 

桃が首を横に振る。

 

「どうしてですか?」 

 

紗耶が不思議そうに尋ねる。

 

「情報が無い」

「あっ!?」

 

桃の言葉を受け、紗耶が小さく叫ぶ。

 

「その通り。どこにあるか分からない物を手掛かり無しに見つけるのは不可能だよ」

 

桃の言葉を引き継ぎ、卓人が言う。

 

「そんな……」

 

紗耶の声音がみるみる落胆の色を帯びていく。そして、一同に再び重い沈黙が訪れる。

その時、店内に電子音が響く。音の出所は燈哉のポケット。その中にある携帯端末だった。燈哉は慌てて携帯を操作する。

 

「なぁ、その情報が見つかったっぽい」

「「「「!?」」」」

 

燈哉の言葉に一同が驚愕する。

 

「ほ、本当なの?」

 

紗耶は思わず立ち上がり身を乗り出す。他の三人も同様に燈哉の言葉を待っていた。

 

「あぁ。メールによるとここみたいだ」

 

燈哉は再び携帯電話を操作し、画面を眺める。そこには地図アプリが表示されており、目的地のに赤いピンが示されていた。場所はここから南にある山岳地帯。薫風山。

 

「じゃあ、ここに行けば!」

「あぁ、新しいトロフィーが見つかる」

 

紗耶の言葉を受け、燈哉は断言する。二人の顔が一気に明るくなった。

 

「ねぇ。それ、本当に合ってるの?」

 

そこに待ったをかけたのは懐疑的な表情をした桃だった。しかし、燈哉はその問いに対し自信ありげな態度を見せる。

 

「おう! それなら心配いらないぜ。福津市の時、情報くれたのと同じ人だからな」

 

そう言いながら、桃に向かってサムズアップ。

 

「もっと言えば、鬼灯村の時にも情報くれたし。今のところ百発百中だな」

「……そう」

 

桃は一応納得したようで、頷くと近くの椅子に足を組んで座った。

 

「その人って誰なんだい?」

 

卓人が興味深げに訊ねる。

 

「一年位前に海外で出会った人なんだ。ムーマさんっていうんだけど。なんでも旅行好きで、色んな所を旅してるらしくて、日本にも詳しいんだ」

 

その当時を思い起こして、燈哉は楽しげに語る。

 

「トロフィーについて聞いてみたら、探してくれるって言ってくれて、それで度々情報をくれたんだ」

「成る程ね……」

 

燈哉の話を聞き、卓人は考えるような仕草を見せながら呟く。

 

「まぁ、何はともあれ。目の前に情報があるんだ、行くしかないだろ!」

 

燈哉が立ち上がる。

 

「悪いけど、僕は残るよ。夜行衆がいつまた街を襲うかわからないからね」

 

卓人が即座に断りを入れる。

 

「なら私も残るわ。防衛なら人数は多い方がいいでしょ」

 

それを聞いて、桃も賛同するように首肯する。

 

「わかった。……紗耶、一緒に来てくれ」

 

燈哉が桃の言葉を聞き、真剣な表情を紗耶に向ける。

 

「えっ!?」

 

突然の提案に紗耶が驚く。

 

「お前の歴史の知識は必要になるかもしれない。だから一緒に来てほしい」

「……うん、わかった」

 

紗耶が静かに頷く。燈哉が安堵の息を漏らす。

 

「それじゃあ、行くぞ!」

 

燈哉は外に出ると、カイノクロコマトロフィーを取り出す。

 

<カイノクロコマ!>

 

音声と共にトロフィーが形を変え、漆黒のバイク<クロコマイルズ>へと姿を変える。

 

「紗耶!」

 

追いついてきた紗耶にヘルメットを渡し、自分も被る。二人はバイクに乗り込み、エンジンをかける。

 

「しっかり掴まっていろよ」

 

その言葉に頷き、紗耶は燈哉の背中にしがみつく。それを確認すると、燈哉が勢い良くアクセルを踏み込む。轟音を上げながら二台のマシンが薫風山を目指し駆けていった。

 

 

 

 

 

ところ変わって、門出市のとあるビルの屋上。そこにはご機嫌な表情で優雅に酒を呑む酒呑童子の姿があった。傍らには茨木童子が、正面には残りの四体が座っている。

 

「さすが棟梁! いい呑みっぷりで!」

 

茨木童子は空になった盃に酒を注ぐ。酒呑童子は盃に入った酒を一気に飲み干すと、口元を拭うとニヤリと笑みを浮かべる。

 

「珍しい事もあるものよな。お前が出向いて来るとは」

 

酒呑童子の背後に人影が現れる。そこに立っていたのはファブニールだった。意外にして厄介な人物の登場に鬼大五将達は驚愕しながらも警戒態勢を取る。

 

「てめえには失望したぜ、酒呑童子。あの程度の雑魚三匹逃がすとはよぉ」

 

ファブニールはため息を吐くと、呆れたように首を横に振る。

 

「所詮は弱い群れでお山の大将を気取っているだけの雑魚だったというわけか」

 

ファブニールはつまらなそうに言う。それに対し、酒呑童子は何も言わない。ただ静かに盃を傾けるだけだった。だが、一体だけその言葉に反論する者がいた。茨木童子だ。

 

「貴様!」

 

茨木童子は勢い良く立ち上がるとファブニールを睨みつける。

 

「黙って聞いていれば好き勝手言いやがって……! そもそも今まで仮面ライダー共に返り討ちにあっていたのはそちらの方だろうが!」

「で? それがどうした」

 

ファブニールは全く動じる事無く茨木童子を見下すような視線を向ける。

そんなファブニールの反応を見て茨木童子は怒りに身を震わせる。

 

「俺はなあ、夜行衆の棟梁様がわざわざ出向いた上で取り逃がした。その事実に対して言っただけだ」

「……何だと?」

 

ファブニールの言葉を聞いて茨木童子の怒りはさらに増していく。

 

「なぁ、酒呑童子。俺はお前をかってたんだぜ。お前ならば俺を楽しませてくれるってなぁ」

 

ファブニールは嘲るように笑いながら酒呑童子を見下ろす。

 

「が、雑魚にかまけてこのザマか。期待外れにも程があるぜ」

「……もういい」

 

地を這うような低い声で茨木童子が言う。

 

「俺様達の事を雑魚だなんだと罵るのは構わない。……だが、棟梁の事を侮辱するのだけは許すわけにはいかない!」

 

そう言って茨木童子は怪人態となりファブニール目掛けて駆け出す。

対するファブニールは動じる事なく、面倒くさそうにため息をつく。

 

「雑魚が」

 

ファブニールの胸元から金色のトロフィーが出現した。それは台座の上に龍の顔がついたレジェスタートロフィーだった。

 

<ドラゴン・ザ・ファブニール!>

 

起動したトロフィーをファブニールが自らの元へと突き立てる。そして、ファブニールの身体を変異させた。

分厚い鱗に覆われた皮膚。背中からは一対の大きな翼。鋭く伸びた牙と爪。そして、頭部には鋭い角が伸びていた。それはまさしく、龍。あらゆる挑戦者を屠る財宝の番人。黒龍、ドラゴンレジェスター ファブニール。

その姿を見た茨木童子は一瞬だけ動揺したものの、一度火が付いた怒りは収まらない。

 

「ヤァァァァ!!」

 

茨木童子は飛び上がり、勢い良く鉄杖を振り下ろす。しかし、ファブニールは動かない。渾身の一撃がファブニールを捉えた。そして、鈍い音を立て、鉄杖がへし折れる。

 

「何!?」

 

驚きの声を上げる茨木童子に対し、ファブニールは不敵な笑みを浮かべる。その身体には傷一つついていない。

 

「こんなもんか?」

「きっさまああぁぁ!」

 

茨木童子は激昂して拳を繰り出す。その拳はしっかりと鳩尾を捉えた。しかし、ファブニールは微動だにしない。

 

「グァァッ!」

 

逆に拳を痛めたのは茨木童子の方だった。骨が砕け、激痛で思わず悲鳴を上げてしまう。

ファブニールはその隙を見逃さず、茨木童子の腕を掴むとそのまま上へと放り投げる。

 

「終わりだ」

 

そして、拳を握り、落下している茨木童子目掛けて繰り出す。空を飛べない茨木童子に逃げ場は無い。ファブニールの無慈悲な一撃が茨木童子に迫る。だが、その瞬間、黒い影が茨木童子とファブニールの間に割って入った。怪人態となった酒呑童子がファブニールの拳を受け止める。

 

「くっ!」

 

受け止めた瞬間、凄まじい衝撃が酒呑童子を突き抜け、床のアスファルトに亀裂が奔り、空中の茨木童子を吹き飛ばし、周囲のビルの壁を破壊する。あまりの力に酒呑童子も膝をついた。

 

「ゴボッ!」

 

酒呑童子の口から血が溢れる。その姿を見て茨木童子は驚愕する。

 

「と、棟梁!大丈夫ですか!」

「……平気だ」

 

酒呑童子はゆっくりと立ち上がると、ファブニールを睨みつける。

 

「今ので確信したぜ、酒呑童子。雑魚を庇うような奴じゃあ、俺には一生勝てないってな」

 

ファブニールは人間の姿に戻ると、酒呑童子に背を向ける。

 

「おい、夜行衆の雑魚共。喜べ、この街で好き勝手やることを許してやる」

「……何ぃ!?」

 

茨木童子が困惑する中、ファブニールは高らかに笑う。

 

「どうせお前らじゃあ俺には敵わない。矛先が自分に向かないようにビクビクしながらせいぜい仲良しこよしでもしてるんだな!」

 

そう言い残し、ファブニールは姿を消した。

 

「ファ、ファブニィィル!!」

 

茨木童子が苦虫を噛み潰したような顔で叫ぶ。悲痛な声がビルの屋上に木霊した。

 

 

 

 

 

「ここが薫風山か……」

 

山の麓。バイクから降り、燈哉は山頂を見上げる。

 

「ここに新たなトロフィーがあるんだよね?」

「あぁ」

 

隣で紗耶が問うと、燈哉は首肯する。すると紗耶はポケットから携帯を取り出し、画面を見せる。

 

「私も調べてみたんだけど、この山の中腹に祠があるらしいの」

 

そこには薫風山について書かれた記事が載っていた。

 

「祠……?」

「うん。なんでも、平安時代末期にとある武士達が、薫風山に祠を建てたみたい」

 

紗耶の話を聞きながら、燈哉はもう一度山を見上げた。

 

「へぇー」

「トロフィーがあるならきっとここだと思う」

「……まぁ確かに。他にそれらしき場所もないみたいだしな」

 

二人は山への道を歩き出す。道といっても舗装されたものでは無く、ただ草木を掻き分けただけの獣道だ。

 

「……」

 

しばらく進むと木々が無くなり開けた場所に辿り着く。そこには、苔生した小さな祠があった。

 

「……ここで間違いなさそうだな」

 

祠の前で燈哉が立ち止まる。

 

「よし! 開けるぜ」

「うん」

「ああ」

 

そして、燈哉の手が祠へと伸びる。

しかし、その手はすぐに止まった。

 

「ん?」

 

燈哉が後ろを振り返る。そこには不思議そうに首を傾げる紗耶と杖を持ったレジェスターがいた。頭部に捻れたような角。背中には蝙蝠の如き羽が生えている。

 

「レ、レジェスター!」

「え!? 」

 

紗耶は勢い良く隣を見て、レジェスターの存在を確認すると、これまた勢い良く燈哉の元へと駆け寄る。

すかさず燈哉が紗耶を庇うように前に出て、正体不明のレジェスターを睨みつける。

 

「誰だお前は」

「フフフ。よくぞ聞いてくれた!」

 

不敵な笑みを浮かべると、レジェスターは杖を掲げ、ポーズを決めた。

 

「私はイン……じゃなかった、デビルレジェスター! 見ての通り悪魔のレジェスターさ! ……ホントだよ?」

 

デビルレジェスターがおどける様に言う。その様は物凄く胡散臭い。

 

「何でこんな所にレジェスターがいるんだよ?」

 

警戒しつつ燈哉が尋ねる。すると、デビルレジェスターは肩をすくめて応えた。

 

「いやー。ここに用があって来たら、何か見知らぬカップルがいたから脅かしてやろうかと思ってね~」

「「カ、カップル!?」」

 

二人が揃って反応し声を上げる。それを面白そうに見つめながらデビルレジェスターが言った。

 

「あれ? もしかして違うのかい? 」

「おおお俺達はまだつ、つつつ付き合ってもいねぇよ!」

 

顔を真っ赤にして燈哉が答える。それに満足気に笑うとデビルレジェスターはさらに言葉を続けた。

 

「それで君達は何をしにここに来たのかな~?」

 

問われて、燈哉はチラリと祠を見る。そして、躊躇して口を噤む。

 

「……」

「これな~んだ?」

 

デビルレジェスターが見せつけるように何かを取り出す。それはシルバーの台座の上に緑色に輝く日本刀が突き刺さったトロフィーだった。

 

「それは!?」

「そう。この祠にあったアームズトロフィーさ」

 

得意げに言って、デビルレジェスターはニヤリと笑う。

 

「言ったよね?ここに用があるって」

 

それを聞いて、燈哉と紗耶の顔つきが変わる。

 

「君達の次の言葉を当ててあげようか?」

 

そう言うとデビルレジェスターは二人の目の前に移動して続けた。

 

「このトロフィーが欲しい、だろう?」

 

図星だ。

二人は無言でデビルレジェスターを睨みつけた。

そんな二人の様子を面白そうに見ながら、デビルレジェスターは続ける。

 

「でも残念。これは君達には勿体ない。だから渡せないね」

「何だと!」

「そんなに欲しければ実力で手に入れてごらんよ?」

 

燈哉が怒り、それを挑発するようにデビルレジェスターが言い放つ。

 

「いいぜ。やってやるよ!」

 

燈哉がムラマサアームズトロフィーを取り出す。

 

「ふふふ、そうこなくっちゃ」

 

嬉々とした表情を見せると、デビルレジェスターは杖を構える。

 

<ムラマサ!>

 

ムラマサアームズトロフィーをドライバーにセット。燈哉は構えを取りながら高らかに言う。

 

「変身!」

<抜刀!決闘!激闘!妖刀の戦士!!>

<ムラマサブレード!>

 

神器となりムラマサを手に駆け出す。

 

「ハァッ!」

 

刀を振りかざす神器をひょいひょいと躱すと、デビルレジェスターはその背後に回る。

 

「ホイッ!」

 

デビルレジェスターが杖を伸ばす。振り返った神器の頭に、勢い良く杖がぶつかる。

 

「ぐあっ……!?」

 

頭を押さえ、神器はよろめきながら後退。

 

「もう終わり?」

 

小馬鹿にしたような口調で、デビルレジェスターが呟く。

 

「まだだ! ハッ!!」

「おっと」

 

再度振るわれた刀を杖を使っていなし、足払いで転倒させる。

 

「ぐぉっ!!」

 

地面に叩きつけられ、衝撃で神器が怯む。

 

「くそっ!!」

 

燈哉は立ち上がると、再び刀を構え直した。

その様子を見て、デビルレジェスターは口角を上げる。

そして、ゆっくりと杖を持ち上げると、先端にエネルギーが収束していく。

 

「そ~れっ!」

 

やがて収束された力は光の弾となり、杖から放たれ、神器に襲い掛かる。

 

「うわぁあああああ!!」

「燈哉!!」

 

直撃を受け神器が吹き飛ぶ。慌てて紗耶が近寄る。

 

「燈哉!大丈夫!?」

 

心配そうな声で呼びかける。

 

「……あ、ああ。問題無い」

 

返事をして、神器は何とか立ち上がった。しかし、ダメージは大きく、よろめきながら肩で息をしていた。

 

「ほら。やっぱり、君には勿体無かったね」

 

デビルレジェスターがトロフィーを弄びながら言った。

 

「たとえ伝説に名を残した名刀であろうと使い手が未熟ならなまくらも同然」

「くっ……」

 

仮面の奥で神器が唇を噛む。そんな様子を愉快そうに眺めると、デビルレジェスターはさらに続けた。

 

「まだ、やる?」

「当然だ!」

 

神器は力強く答えた。その目は、諦めてはいなかった。

 

(でもどうする? どうすれば勝てる?)

 

神器は思考を巡らせる。

 

(今ある物で考えろ!)

 

ムラマサ。オニマル。ジュズマル。手持ちのアームズトロフィーを思い返す。そして、点と点が繋がる。

 

「これだ……!!」

<ジュズマルツネツグ!>

 

神器はトロフィーを入れ替え、ベルトにセット。

 

<水勢!推進!遂行!水剣の戦士!!>

<ジュズマルウォーター!>

 

水流を纏わせ、ジュズマルを手に、デビルレジェスターに向けて駆け出す。

 

「へ〜」

 

それを見て、デビルレジェスターは興味深げに呟いた。

 

「ハッ!」

 

神器はジュズマルを地面に突き立てる。瞬間、辺りに水が浸透し、デビルレジェスターを囲むように迫り上がる。

 

「行くぞ!」

 

言うや否や、神器がジュズマルを振るう。

水の囲いが動き出し、デビルレジェスターを飲み込まんと迫る。

 

「逃げ場の無い攻撃か。いいね」

 

デビルレジェスターはニヤリと笑うと、称賛を送る。

 

「けど、」

 

直後、杖を突き刺す。杖に光が灯り、エネルギーが込められる。

 

「甘いよ」

 

やがて杖から放たれた波動が水を止める。

 

「いいや。それを待ってた!」

<ムラマサ!>

<必殺神技!!>

 

水を切り裂き、神器がデビルレジェスターに迫る。

 

「何!?」

 

驚きながらデビルレジェスターは杖を使って防ぐ。

瞬間、神器はジュズマルを手放し、デビルレジェスターの懐に潜り込む。

 

<ジュズマルツネツグ!>

<必殺奥義!>

 

水を纏ったエネルギーが拳に集まる。

 

「はぁあああ!!」

 

そのままアッパーのように振り抜く。

 

「ぐぅ……!?」

 

衝撃でデビルレジェスターは後方へと吹き飛ばされる。

そして、近くの大木にぶつかり、轟音を立てて倒れた。

神器はその隙を逃さず、ジュズマルを構える。

 

「ストップ、ストップ!」

 

デビルレジェスターは慌てて立ち上がると、神器に向かって叫んだ。

 

「降参! 降参するよ!」

 

両手を挙げ、無抵抗の意思を示す。それを受け、神器は構えを解く。

 

「いや~、負けた負けた。少し侮ってたかな? まぁ、いいか。ほい!」

 

デビルレジェスターが何かを投げ渡す。

神器がそれをキャッチする。それは祠にあったアームズトロフィーだった。

 

「これって……」

 

受け取ったトロフィーを見つめながら神器が呟く。

 

「君は実力を示した。ならそれはもう君の物だ」

 

言いつつ、デビルレジェスターはゆっくりと踵を返す。

 

「それじゃあ、また何処かで」

 

背中越しにひらひらと手を振りながら杖を掲げる。

そして、景色に溶け込むように姿を消した。

 

「ふぅ……」

 

変身を解き、燈哉が一息つく。

 

「燈哉!」

 

紗耶が近づいてくる。

 

「お疲れ様」

「おう。サンキュー」

 

燈哉は改めて手元のトロフィーを見る。

 

「新しいトロフィー、ゲットだね」

 

そう言って、紗耶は微笑んだ。

 

「それだけじゃない」

 

燈哉は空を見上げながら言う。

 

「今回の戦いで、痛感した。俺は新しい力だけに頼ってた事が」

「やっぱ、自分の実力も大事だよな」

 

燈哉は紗耶の方を見て小さく笑う。

 

「ふふ、そうだね。」

 

つられて、紗耶は笑顔になった。

 

「さてと。帰るか」

「うん」

 

2人は歩き出した。

新たなトロフィーを手にして――。

 

「うんうん。いい表情だね」

 

遠くから二人を見つめる視線があった。その人影は木の上に座り込み、楽しげに眺めていた。デビルレジェスターだ。

 

「新たなトロフィーと共に戦いの心構えを説く。や~、流石私! 頑張って計画したかいがあったってものさ!」

 

デビルレジェスターは自画自賛しながら笑う。

 

「これで燈哉くんは大丈夫。酒呑童子の件も何とかなるだろう。だとすれば、」

 

デビルレジェスターが立ち上がる。

 

「そろそろ大本命、卓人くんのパワーアップ計画を練らないとね」

 

デビルレジェスターはニヤリと笑みを浮かべると、闇に消えていった。

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