「ば、化け物めぇ!」
首に十字のネックレスを掛けた男は、
千切れた腕の付け根から血を流し、怯えた表情を私に向ける。
「すまんな、こちとら鬼なもんでな。化け物だよ」
「いつか神罰が下るぞ·········っ!」
「おう、ちょっとやそっとじゃ死なんようにできてるんでな、大丈夫だよ」
憎々しげに言う男の普段から聞き慣れたような言葉に半ば呆れながら、腕を振り上げる。
「じゃあな」
振り上げた腕を力一杯降り下ろす。
その拳は男の頭を豆腐のように、
最早そこには何もなかったかのように減速せず砕き、男の後ろの岩に突き刺さる。
飛び散った血は私の顔や体にかかって、鉄のような匂いを放つ。
終わったか。
溜め息を一つこぼし、死体に手をつけず、夜の闇へと足を向ける。
人は食わない。もう飽きてしまった。
ずっとずっと食い続け、食う意味を忘れ、
そんなに食わずとも大して変わらないことに気付いてからは滅多に食わないようになった。
たまには食わないといけないが。
少なくとも食に困ることはない。
強き化け物で宝を持つ私達鬼は、遥か昔から人に命を狙われる位置にいた。
人は名声を求め、富を求め、私達に襲い掛かる。
しかし、人は理解していない。
鬼は人の想像以上の力を有していることを。
馬鹿な人間は私達がほとんど力を出していないことに気づかず、襲い掛かってくる。
そんな人間は捨てるほどいるので、食に困らないのだ。
ただ、さっきの輩はそういうのではなかったようだが。
たまにいるんだ。
私達化け物に神罰を下そうとする宗教の信仰者が。
奴等はまだましな部類だ。
まだ私達が遥かに強い存在であることを理解しているから。
しかし、奴等にも厄介な点がある。
遥かに上であることを知っていながら、来るのだ。
人が襲われるのを放ってはおけない。どうにかしなければならない。そんな心持ちらしい。
更に信仰者も強き者は中々強いもので、稀に楽しめるやつがいる。
さっきのは弱かったがな。
木の枝に遮られて僅かに入ってくるだけの月の光だけが目の前を照らす光源である中、私は盃に酒を注ぐ。
なみなみとつがれた酒を掲げ、月を相手に私は酒を飲む。
「あぁ、いい月だぁ················」
葉の隙間から覗く満月を見て、風情を感じる。
しかしすぐに、似合わないな。と自分に苦笑いする。
鬼はもっと豪快なもんだ。
一応鬼にも風情を感じる落ち着いたやつはいるが、まぁ珍しい。
友を思い浮かべ、くくくと笑っていると、ふと言葉が口に出る。
「妖怪の山に帰るかぁ···············」
自分でも考えすらしていなかった言葉が口に出て、驚く。
が、すぐに思い切り笑う。
『鬼は嘘をつかない』、これは事実だ。
鬼は本心しか言わなくて嘘が大嫌いだし、私は嘘をつくくらいなら死んだほうがいいと思っている。
つまりはだ。
今、口に出たことは何となく自分でも自覚していなかったが冗談とかではなく本心だということだ。
笑いがおさまり、酒を全て飲み干し、呟く。
「帰るか················」
足をここでの家へから妖怪の山の方へ向ける。
遠い遠い道のりだ。どれほどの時間がかかるかはわからない。
だけど、私は何となく、面白い道のりになりそうだ。と感じていた。
新連載
増やしすぎても
やめられない
parui 心の俳句(字余り)
季語がなかったら俳句じゃなかった気がしますがいいでしょう。
連載量がそろそろ不味いですね。
この春は連載と打ちきりの季節になりそうです。
『~(誰々)は~(ほにゃらら)』系タイトルにハマっております。
全キャラ達成目指したい。
前書きのliquorは、日本酒がsakeでなんか似合わなかったのでこうしました。
勇儀姐さんカッコいい。
色んな敵と戦わせます。じゃんじゃん幻想いりさせます。
某神父様を幻想いりさせたいです。てかします。