万象青銅輪廻   作:湯瀬 煉

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 取り敢えず、始動させてみました!!


第一章 無法者
プロローグ


 愛とは、何だろう。

 

 英雄譚でも、悲劇でも、喜劇でも、怪談でも。王道、邪道を問わずにまず讃えられるその概念は、一体どういうものだろう。

 

 異性を犯したいと思う獣欲か?

 人生の、その総てを捧げることか?

 信じ、人生の柱とする、あの感情か?

 己が生命の存続。それと同等、或いはその次程度に重要視するものか?

 または────己の所有物として、生涯独占したいと願う心か?

 

 どれも正しいのだろう。一般論でいえば、どれも当てはまる。答えは人それぞれ、なんて便利な言葉すら出てくるはずだ。

 もしくは、愛など、存在せぬという蒙昧すら現れるかもしれない。

 

 確かに、抽象的であることは否めない。自己中心的な感情である以上は愛とは呼べないという、ロマンチストも多々いる。

 だが、此処で私なりの感情を述べるとするならば。ある物を、生涯所有したいと思う心だと考える。子にせよ、異性にせよ、同性にせよ、道具にせよ、大切にしたい物はあるだろう。その心こそ、愛だと信ずる。

 

 ある者は破壊。───それは、王者ゆえの愛撫。

 ある者は滅亡。───それは、諦観の中の希望がゆえ。

 ある者は刹那。───それは、失えば二度と取り戻せないがゆえに。

 ある者は孤独。───それは、狂うほど求めても得られなかったから。

 

 これが愛だとするならば。人生とは、この唯一不変を求めるためのものだろう。誰しもが、紆余曲折を経ながらこの常道からは逃れられない。

 

 これは、愛を謳う者たちの物語。

 

─────────────

 

 

 

 

 

「づぅ…………」

 私は、あまりの激痛に身体を丸めた。

 直前の記憶が曖昧だ。先程まで自分が何をしていたのか、どうしてこうなったのか。

 身体を起こして、取り敢えず状況を把握することにした。場所は砂漠地帯。一面の砂丘風景に、空からは太陽が燦然と照っている。

 私は、身体つきからして女らしい。多分、結構豊満な方だ。名前は、■■■■■。───そこは、上手く思い出せなかった。近くには、緑色の槍が落ちていた。

 そして────周囲には。

「……うっ」

 死体。死体。死体。夥しい量の死で、満ちていた。

 

 そうだ、思い出した。

 私たちは、絶賛、狩りの途中だった。しかも悪いことに、狩られる方の。

 

 この世界は、大きく分ければ二つに分けられる。聖都と、無法地帯───その二つである。

 無限に広がる不毛の大地こそ、無法地帯の特徴だ。草木はまばらで、毒草も少なくない。人間には有害な生物で溢れている。

 例えば、周囲にいる死体や己の激痛の原因である、あの巨大トカゲのような。

 

 砂丘を移動中、唐突な地鳴りを覚えた私とその仲間は、次の瞬間地下から出現した、蛇に四肢を取り付けて巨大化したような怪物に襲われたのだ。私はかろうじて生きてはいたが、仲間は皆、捕食されるか身体の半分を吹っ飛ばされた。生存者は、確認できる限り一名。まあつまり、私だけということだ。

 落ちていた槍は、私の得物である。こういうことは日常茶飯事であるゆえ、無法地帯に住む者らは、だいたい武装して出歩くのだ。もっとも、今相対している相手ほどの脅威は中々いないのだが。

「はは。あれを倒すか、逃げるしかないわけか。無茶をいう」

 倒すには強すぎるし、逃げるには相手は大きすぎる。ゆえに、対処法に困窮した、その刹那。

 

Ich bin der Höchste König.(我こそ王の中の王)

 Ganz heilig, sieh meine Taten.(全知全能の神よ、我が業を見よ。)Und Verzweiflung. (そして絶望せよ)

 

 それは唐突。咄嗟に身をかがめると、私の身体の上を熱線が通った。その熱線はまっすぐに怪物の身体を貫き、巨大な風穴を開ける。バターでも溶かすような容易さで、あの巨大な生物を沈黙させたのである。

 

「オイオイ、ペトラ。テメェが一人で倒したら俺たちの仕事がなくなるだろうが」

「一、二周回っていつも通りだよね……。あ、生きてる人いる! 大丈夫ー?」

 

 先程の攻撃をした長髪の女のあとから、白髪の男女など、続々と彼女の仲間と思わしき者らが集結していく。各々、モンスターの元へ歩いていったり、私の身を案じたりし始める中、ようやく長髪の女が動き出す。

 

 ざく、ざくと。砂地を踏みしめながら前進し、腰を抜かしてへたれ込んでいる此方に手を伸ばした。

 青みがかった長髪に、黒いTシャツ、そこから黒いミニスカートを履いている女だ。見た目は、とても若かった。

 

「あなたは───運命を信じるか?」

 その言葉は、とても想定外であったはずなのに、どこか懐かしさすら感じて。

 気付いたときには、手を取っていた。

 

 このとき。私の運命が、回り始めていた。

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