「・・・全く。彦と俺の事はあれほど書物に残すなと言ったのに」
「い、犬さん?」
「悪いなミコト・・・今まで黙ってて」
「え」
「産屋敷。柱合会議なんて大事な所で聞いてくるんだ、お前が知りたいのは過去。彦や縁壱・・・始まりの剣士達が居た時代の事か・・・?」
「貴方が見て聞いた事を聞きたいんだ。教えてくれるかい?」
「そのうちミコトにも話さないといけないと思ってたから良い機会か。だが、オレは彦と過ごしてきたからオレが話せるのは彦が中心になるが良いな?縁壱の事は大体槇寿朗が話したから」
「うん。お願いするよ」
い、犬さんの雰囲気が今までと違う。
そして犬さんから語られたことには驚いた。
神子之彦様は山中の集落で育ち犬さんと出会った。そのまま楽しい日々を過ごしたけどある日、夜まで山で仕事をして変えると集落は複数の鬼に襲われたらしい。
彦様は死んでいた鬼殺隊の刀を使って鬼を殲滅したみたい、そしてその時には彦様は既に桃の力を使っていたらしい。その後は俺と同じでしばらく鬼狩りの旅をしていた。だがある時、鬼殺の剣士 継国 縁壱と出会った。
縁壱のすすめで彦様は鬼殺隊に入り僅か一月で柱になり、一年で縁壱さんの次に最強と呼ばれる剣士になった。2年間鬼殺隊で過ごしていたみたいだが、ある日彦様は任務で遠出にから帰ると縁壱さんが鬼殺隊を追放されたという。
理由は、一つ、始祖の鬼 鬼舞辻無惨を取り逃がしたこと。
二つ、女の鬼を見逃したこと。
三つ、縁壱さんの兄、国継 巌勝が当時の産屋敷家当主を殺しその頸をもって鬼に寝返ったのが理由だったらしい。
烏からその報告を聞いた彦様は直ぐに鬼殺隊に戻り継子の子からも聞いて鬼殺隊本部へと向かい縁壱さんを責め立てた数人の柱に文句を言うがその時に気づいたらしい。
鬼殺隊のほぼ全員が自分を鬼と同じ化け物として見ていた事に。それに絶望した彦様は縁壱さん同様に鬼殺隊を抜け、また旅をしながらの鬼狩りに戻った。その頃から彦様は俺と同じで笑いながら鬼を殺すようになったらしい。
そして、それ以降一人で鬼狩りをして無惨と遭遇して瀕死に追いやったが巌勝が現れ無惨に逃げられた。そのあと巌勝を追い詰めるが縁壱さんがトドメを刺さないとダメだと思い見逃した。
同日に縁壱さんが見逃した鬼と会ったとか。
「まあこれが当時の鬼殺隊、国継縁壱、大和神子之彦の話だな」
その部屋の中には重たい空気が流れていた。
「そんな過去、俺知らなかった」
「本当は15になった時に話すつもりだったが知らない方が幸せかもと思ったんだ。そしたらつい、な」
「犬さん、神子之彦さんは私達産屋敷家を恨んでいたのかな?」
お館様は少し不安そうな声で犬さんに聞く。
「それはないな」
犬さんはその質問を否定した。
「当時の鬼殺隊の中で彦を仲間と友とみていたのは産屋敷家、縁壱、当時の煉獄家当主、そして彦の継子のあの子だけだった。それ以外の奴は彦を・・・彦が強いのを化け物だからとか抜かす者も居た。
殆どの奴は縁壱は天に神に愛された者。彦は人に化けた物の怪とみていた・・・」
犬さんはもの凄く怖い目付きで睨む。それは此所の誰かではない、恐らく昔に神子之彦を悪く思っていた人達に対してだろう。
「ごめんね犬さん。恐らく言いたくないことだったよね」
「気にするな。俺はアンタ、産屋敷家と煉獄家には感謝してるからな」
「い、犬さん」
「ん?」
次に恐る恐る聞くのは甘露寺だった。
「その、神子之彦さんは鬼殺隊を去った後は幸せになれたんですか?」
「ああ。まあ子孫であるミコトが居るからな。彦は去った数年後に彦を探して鬼殺隊を去った継子の子と婚姻したぞ」
「そうなんだ。俺本当に彦様のこと何も知らないんだが・・・」
「・・・ミコト君」
「ほえ?」
槇寿朗はまたミコトに向き合うと頭を垂れる。
「改めて謝らせて欲しい。あの時、理由もよく知らず散々君のことを逃げた一族だと罵倒してしまった。本当すまなかった」
「律儀ですか!?一度ちゃんと謝って貰ったので大丈夫よ。ね、犬さん!」
「・・・プイ」
「なんで顔を逸らすの!?」
「まあ冗談はさておき、ちゃんと殴ったことも暴言吐いたことも謝ったしな」
「ね、ね!だから頭上げて下さい!」
「ああ」
「えっと~それで今回の話は何が肝ですか?」
「つまり、呼吸による痣発現の重要性と無惨の倒し方だ」
「鬼舞辻無惨に一撃入れたミコトとしてはどうかな?」
「そうでぐっわっしょ!?」
喋ろうとしたミコトは行くなり周りの柱の人達に詰め寄られて変な声が出る。
「本当に鬼舞辻無惨に会ったのか!」
「何処で何してた!」
「能力は何だ!」
「どうやって一撃入れたの?」
「お、落ち着いて下さい!」
「テメェなんでモット早く言わねぇ!」
「聞かれなかったからだよ!」
また誰かがミコトに聞こうとしたがお館様が人差し指を口元にもってきて全員を静かにさせると口を開く。
「それで、教えてくれるかな?」
「はい。まず会ったのは浅草から少し離れた場所です。一太刀入れれたのはほぼ奇跡ですかね?炭治朗はさっき槇寿朗さんが言った縁壱さんの身に付けていたとされる花札の様な耳飾りを着けてます。そんな炭治朗に人間に完全に擬態して安心してた無惨の動揺は凄いでしょうね。動揺が収まらない内に無惨は俺に見つかり俺の1番の最速の技で一撃を食らったんですね。
能力は詳しく分からなかったですが腕を鞭の様にして先を刃物みたいにしてました。その時は攻撃ではなく配下に血を分ける為でしたね。その後は空間転移出来る血鬼術を使う鳴女とか言う鬼の所為で逃げられました」
「教えてくれてありがと」
「いえ」
それからまた何か話し合っていたが鬼殺隊に関しての事でよく分からなかった。持ち場強化とかなんとかで、柱合会議は終わり解散となった、後半分からなさすぎて寝そうになった。あと産屋敷さんが白い鎹烏をくれた、名は
(この烏・・・確か二年前からずっとオレ達の近くにいたが鎹烏だったのか)
「どうしたの犬さん」
「何にも」
「それじゃあ犬さん。行こうか」
「そうだな」
「あの、ミコトさん」
「ん?なんですかしのぶさん」
「このあと時間ありますか?」
「ごめんなさい。急いで行かないと行けないところがあるんです」
「そう、なんですね」
なんだろう、見て明らかに残念そうにしている。何か大事な話かな?でも美久が心配だったから早々に話を切り上げて全力疾走で犬さんと那田蜘蛛山に向かう。
日は昇り初めだから昼前には着くな。道中で手に入れた竹カゴと日光を遮断できるほど分厚い布を手に入れないと。
「ここだ」
「どうだ」
「大丈夫、ちゃんと美久ちゃんの気配はある。美久ちゃん!」
シーン
「あ、あれ?気配はあるから死んでないはず・・・とりあえず岩どけるか」
「木は?」
「斬るよ」
「もう斬ってるし」
そして岩を退けると洞窟の奥で美久は吉備団子の入っていた袋を抱きしめながら蹲って寝ていた。
「鬼って寝るっけか?」
「禰豆子ちゃんもよく寝てるじゃん」
「あの子は特別だろ?」
「あーそうか。とりあえず美久を起こそうか」
美久は起きるとミコトに抱きつく。その姿には母蜘蛛だった時の姿はなく見た目同様子供の様であった。
ミコトも最初抱きつかれた時は驚いたがよくよく考えれば近くに鬼殺隊がいる中丸一晩過ごしたのだから心細くても仕方無いと思い優しく頭を撫でてあげる。
「よしよし。寂しかったのかな?」
「うん」
「ごめんね。そして起き抜けに更に悪いんだけどこのカゴの中に入って貰える?」
「?」
「えっと、入って貰って布でくるんで俺が信用出来る人のところに連れて行く」
「・・・分かった」
「ありがと」
美久はコクリと頷くと竹カゴに入る。そしてミコトは分集めの布でカゴを包むと背負う。
「大丈夫?苦しくない?暑くない?」
「大丈夫!」
ミコトは返事を聞くと犬さんに先導して貰い即座に走り出す。だが文字通り山越え谷越えで激しく動くために中に入っている美久は
「あううううあああうういううあいあえうごあん」
と、激しい振動で変な声を出していた。しかもこれが休みを入れても数時間続いたそうな・・・。
☆
「よし、着いたな」
「だな」
あれから丸一日走ってようやく着いた。久々に全速力で走り続けた気がするが、やっぱ成長したかな?桑島さんに教えてもらった。
『筋繊維一つ一つに意識してこそ、全集中の呼吸なり!』
だったか。昔だったら3、4日はかかっていたな。・・・てかまた美久ちゃん寝てる?
「あ、ミコトさん!」
「どうも~」
「あら!また来てくれたんですね!」
一人がミコトを見て声を上げると周りにいた人達も気づき次々にミコトに挨拶をする。そしてミコトも丁寧に挨拶をしていき珠世のことを聞き出し居る場所に向かう。
「ここだな。気配するし」
「聞く必要あったか?」
「・・・一応?」
「なんのだよ・・・」
「あはは。さて、すみませーん!」
珠世がいる医院の戸を叩き呼ぶ。しばらくしてから愈史朗が出てくるが、愈史朗は笑顔を浮かべてるミコトをしばらく見るとそのまま扉を閉めて鍵をする。
「ちょ!? 愈史朗!なんで鍵をするのと、待ってよ!!いやマジで!お願いがあるのよ!」
「五月蠅い!夜に叫ぶな」
ミコトの声に我慢が出来ずにまた出てくる愈史朗。
「じゃあ人の顔を見て戸を閉めないでよ!」
「それで、何の用だ」
「珠世さんに会いに来ました!」
「やはり帰れ!」
「待ってお願い!また鍵閉めないで!俺は旅人!!根無し草なの!」
「ミコト、お前意味分かってて言ってる?」
「?」
犬さんのツッコミにはてなを浮かべる。そして次に扉が開くとそこには珠世が出迎えに来ていた。
「こんばんは、ミコトさん」
「こんばんー」
「ワン!」
「珠世さん」
ミコトと犬さんの連携の良い挨拶に少し驚きながらも優しく微笑みかける。しそて中に入れて貰ったミコトは客間に案内され、ミコトの前に珠世が座った所で話す。
「なにか焦っていたようですがどうかしたのですか?」
「今回はこの子の事で来ました」
そう言ってミコトはカゴの中から寝ている子供、美久を出すとそれに珠世は驚き愈史朗は思わずミコトを殴り飛ばす。
「愈史朗!」
「イッテー!」
「貴様!此所に鬼を連れてくるとは何考えてる!!」
愈史朗の怒りももっともだ。鬼の始祖、鬼舞辻無惨は己が生み出した鬼の視覚や感覚を共有しておりそれに加えどれだけ離れていても全ての鬼の位置情報は常時把握できる。その為、ミコトの連れてきた鬼の所為で珠世がまた無惨に追っ手をかけられると思ったのであった。
「ま、まっぐべあ!」
「問答無用!!」
「愈史朗!何をしているのですか!」
「!?た、珠世様・・・」
「ちゃんと見なさい。ミコトさんが連れてきた鬼は今は寝ています。私達の事はまだあの卑怯者には気づかれていません、今のうちにこの鬼の呪いを解きます。ミコトさんはそのお願いで来たのですよね?」
「は、ハイそうです」
「分かりました。少々お待ちを」
それだけ言うと珠世は寝ている美久を抱きかかえて愈史朗と共に隣の部屋に消えていくとミコトは大きく息を吐き寝転ぶ。
「どうした?」
「さっきの珠世さん怖かった。やっぱ不味かったかな?怒ったかな?どうしよ~いい手土産もってきてないからな~・・・本当にどうしよ~」
「ミコトさん」
「ひゃい!」
完全に油断をして部屋に戻ってきていた珠世に気づかずにいて、いきなり名前を呼ばれたことに驚き変な声を出し寝転んでいた状態から3メートル近く飛び上がり正座の体勢で着地をする。そんなミコトを見て珠世は思わず目を見開いてから笑みがこぼれる。
「どうかしましたか?」
「い、いえ。あーと、美久の呪いはもう外せたんですか?」
美久という名前に首を傾げる珠世だが、その名前があの鬼の子だと理解して納得するとミコトの前に座り、静かに口を開く。
「ミコトさん、あの美久さん?は本当に只の鬼なのでしょうか?」
「・・・?どういう意味ですか?」
「率直に言いますと美久さん、あの子は私がする前から
「・・・は? ホントに?」
「はい。私も驚いています。ミコトさんは何か心当たりはありますか?」
「・・・んー。無いですね」
「そうですか」
「とりあえず美久には無惨の呪いが無かったんですね」
「はい。少なくとも私が診る前からだと思います」
「なるほど。美久は今どうしてますか?」
「まだ寝てますよ、愈史朗を付き添わせています(話が進まなくなりますので)」
「そうですか(どうりで壁越しに刺さるような殺気を感じるわけだ)」
「それでそのー、ミコトさんは今日の泊る所が決っているのでしょうか?」
「いえ、とくには」
「では此方で泊って行きますか?」
「良いのですか?」
「はい。それに別にミコトさんが美久さんを連れて来たことは怒っていませんよ」
「そ、それは良かった、です。では俺は少し小奈津ちゃん達に挨拶してきます。此所に着いてから真っ直ぐに珠世さんの下に来たので」
「分かりました」
その後ミコトと犬さんは小奈津ちゃんのところに挨拶に向かい少し話してからまた珠世の下へと向かう。
「小奈津ちゃん寝てたね~」
「まあ夜だからな。明日会いに行くと言ってたからいいだろ」
「そうだね。にしても珠世さん怒ってなくて良かった」
「はは」
~大正コソコソ噂話~
犬さんは何気に鬼舞辻無惨と同い年か年上です。
~ちょびっと設定?~
美久の呪いが解けていたのはミコトの■に原因があります。
良ければ評価や感想お願いします。
出来れば桃並みの甘さで。